ROCK-ON!   作:ローリング・ビートル

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We can work it out

「お、お姉ちゃん……」

 

 憂は全裸の姉を見ながら、口をパクパクさせている。俺は眼を逸らそうと思っても、逸らせずにいた。

 この前、似たような場面に遭遇したが、その時と違い、湯気で隠れていない。完全に見えてしまっている。 

 憂より少し小さめだか、形のいい柔らかそうな胸も、意外と女らしくくびれている腰も、その下も……

 

「憂~、ほんとに恐かったよ~」

 

 唯がフラフラとこちらへ歩いてくる。俺には気づいていない。

 

「え、江崎さん、見ちゃだめ!」

 

 憂が視界を塞いでくる。

 その行動により、やっと唯がこっちに気づいたようだ。

 

「え?」

 

 寝ぼけたような声が聞こえる。こちらからは見えないが、おそらく、何が起きてるかわからないような顔をしているだろう。

 

「え?え…………きゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 雷をはるかに超える爆音のような悲鳴が、平沢家に響きわたった。

 

 *******

 

「すいませんでしたぁ!」

「…………」

「すいませんでしたぁ!」

「…………」

「あのー、唯さん?」

「…………」

 

 平沢家のリビングを静寂が包んでいる。外では豪雨が降り続いているため、ホラー映画のような雰囲気だ。

 ちなみに今、俺は土下座の姿勢をキープしている。唯はこちらに背を向けてギターを弾いているところだが、さっきからさわ子さんのバンド『デスデビル』の曲のフレーズばかり弾いているのが、何だか恐い。

 

「お、お姉ちゃん………、もう許してあげたら?江崎さんだってわざとじゃないんだし、それにそもそもお姉ちゃんが裸で出てきたんだし…」

「唯、本当にごめん。何でも言うこときくから」

 

 ギターの音がピタリと止む。唯は、ゆっくりとこちらを向いた。

 

「フンス!」

 

 小さな両手で、俺の顔を掴んでくる。

 ガッチリとホールドされたので、強制的に唯としっかり目を合わせた状態になった。それに少し近い。風呂上がりなので、シャンプーのいい香りに包まれて、理性を持っていかれそうだ。

 視線を少し下げると、就寝用のラフな部屋着が見える。今さっきこの中を……

 

「フンス!」

 

 唯が指に力を入れる。

 

「いたたたた!!!」

 

 この姉妹の読心術、レベル高すぎだろ!

 

「江崎さん」

「はい」

「今度皆をケーキバイキングに連れてって」

「は、はい」

 

 や、やばい断れない。てか皆って誰だよ。一体何人だ。

 

「ありがとう~~」

 

 俺の顔から手を離し、とろけるような笑顔を見せる唯。さよならエフェクター資金。

 

「それと、もう一つ!!」

「な、何でしょうか?」

「あの……いつも忙しい憂のかわりに朝ごはんお願いします♪」

 

 ……まじか。

 だがもちろん断ることなどできなかった。


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