ユウキの病院を訪ねたその日の夜
カタカタとパソコンのキーボードを叩き、スグに「カタカタうるさい。」と言われることが数十回に及んだが、殆どの準備は終了し、後はユウキに入って貰わないと確認できない。
アミュスフィアを頭に被り、ALOにログインし、ユウキに「準備が出来たから来てくれ。」と頼むと、すぐに返事が帰ってきた。ALOに入り数秒でログアウトし、現実のベッドに戻った。
「ユウキー?居るかー?」
「はーい♪ちゃんと居るよ~♪あんまり前が見えないけど。」
「じゃ、今から初期設定するから、視界がクリアになったら合図してくれ。」
パソコンをいじり、機械の中からウィーンと言う音が聞こえ、ユウキが「そこ」と言ったタイミングで止めた。
「じゃあこれで初期設定は終了したから、後は自由にしてくれ、おれはもう寝る。」
「お休みー♪」
「お休み。」
短く返事を返すと、設定に思ってた以上に手間取っていた為、目をつぶるとすぐに寝てしまった。
翌日の朝
「ふあああ!!」
「おはよう!!」
「おはよ、昨日からずっと入ってたのか?」
「うん、動きにちょっと慣れたくて。」
「じゃあ、おれ今から朝飯だけど、どうする?ついてくるか?」
「じゃあ、そうするよ。この機械に話しかけてるキリトの事もあるし。」
「分かったけど、こっちじゃキリトじゃなくて《和人》、《桐ケ谷和人》だ。」
「分かったよ、キリト。」
わざとだろ、と言いたい所だが、旧SAOのメンバーも未だにキリトと呼ぶのは多いので、諦め、ノートパソコンと携帯を持ち、キッチンに降りた。
「おはようスグ。」
「おはようお兄ちゃん。」
「おはようスグちゃん♪」
「おは、え?今の誰が言ったの?」
「ユウキ、イタズラも程々にしとけよ。」
「分かってるって♪」
「え?ユウキって、絶剣の!?」
朝から騒々しいスグにある程度説明し、携帯のカメラで朝食を撮り、ノートパソコンに繋いで、写真をインストール。写真のデータを機械に転送した。恐らく今のユウキの前には、同じ朝食があるはずだ。味はどうにも出来ないので、AIを使い、味を感じるように作った。ユイに手伝って貰い、SAO等のMMOゲームに搭載されている、《味覚再生エンジン》も搭載している。患者の中には病院食以外の物を食べたい人が多いので、作ったシステムだ。
朝食を食べ終え、制服を着て、学校に登校する時にも、ユウキに説明しているばかりだった。
「ユウキ?授業に出るんなら先生に断りが居るから、職員室に行くぞ。」
「あぁ、ボク昔から苦手なんだよね、職員室。」
「大丈夫だ、ここの先生は皆良い人だから。」
職員室の扉を開け、挨拶をしてから、中学二年(SAOに囚われた時には中学二年生だった為、)の授業を担当している先生全員に許可を貰っていった。
職員室の外に出て、挨拶をもう一度すると扉を閉めた。
「これで全部の授業を受けられる様になったぞ。」
「ありがとうね♪」
「じゃあ今度は学校の紹介をするからな。」
「了解♪」
学校の紹介をしていても、元々は廃校になった物を再利用する形なので、まだ使えない部屋が多い。あらかた紹介を終え、教室に入ると、クラスの全員が、おれの肩に乗せている装置に興味を持ち、全員が一気に質問をしてきて、質問にほぼ全て、ユウキと協力して片付けると、本鈴がなった。
授業を全て受けると、先生に少しだけ呼ばれ、ユウキをこれから先も連れてきても良いとの事だった。理由はユウキの授業への意欲が良い為だった。先生に説明した時にはイジメにあってから二年間学校に行って無いと説明したので、先生からは、「では、問題が無くなってからでも良いので、この学校に来なさい。中学二年生のでも構わないなら、入学出来る様に校長に説明するよ。」と言われた。これは、いつでも来て良いと言う意味なのは理解出来た。
「じゃあ、考えておきます。」
笑いながら教師は帰っていくと、機械から息を吐く音が聞こえ、カメラが上に動いた音が聞こえた。
「ユウキ?どこか行きたい所あるか?」
「え?良いの?時間とかは大丈夫?」
「大丈夫、家に帰るのが遅いなんて事はよくあるしな。」
「じゃあ、」
ユウキが行きたい所の道をおれに教えながら、歩いていくと、空は紅く染まり、白く、周りの家と比べると小さい家が建っていた。
「ここがユウキの家。」
「うん、また見れるとは、思ってなかったけどね。」
家自体は小さいが、庭は広いが、管理者が居ない庭は枯れた雑草が生え、木のテーブルは色褪せ、家は全て雨戸が閉まってある。
「ほんの少ししか住めなかったけど、楽しかったよ。庭でバーベキューしたり、本棚作ったりしてさ。」
「へぇ、バーベキューか、今度皆でおれのプレイヤーホームでやるか?」
「うひゃ!!それだとジュンとタルケンが大量に食べるから相当の量がいるよ。」
「え?ジュンは想像がつくけど、まさかタルケンが大食いなのか。」
話をそらしたつもりだったが、すぐにユウキは自分の家を見つめた。
「ユウキ?今何歳だ?」
「え?15だけど?」
「じゃあ、あと4ヶ月で16だよな。その時に誰かと結婚すればこの家はその人がずっと守ってくれる。ジュン何てどうだ?」
「あぁ~ダメダメあんなお子様じゃあ。じゃあ、キリト。」
「あはは、考えさせてもらうよ。」
「む~、ボクは本気だよ!!」
「え、ええええええ!!」
声を一気に上げてしまったが、すぐに手で口をおおう。
「そ、そうだ、ユウキ。ALOで一ヶ月後に《アルブヘイム横断レース》と、二ヶ月後に《ALO統一トーナメント》があるって、インフォメーションで出てたけど、どうする?」
「もちろん両方共参加するよ♪」
「アルブヘイム横断レースじゃ、おれとスグがALOの中で最速に入ってるぞ。危うく今回の第二回が無くなる所だったぞ。」
「ん?そう言えば、スグちゃん。ボクの事絶剣って言ってたけど、ALOユーザーなの?」
「あぁ、スグはALOでシルフのリーファって、名前なんだ。髪の毛は若干緑が入った金髪でポニーテールだな。」
「ああ、居たねぇ観戦の時に。」
「ユウキ、今度おれ達が居た世界を教えるからユウキのも教えてくれよ。」
「良いけど、覚悟した方が良いよ♪ボク達は色んな世界を旅して来たからね♪」
「じゃあ、帰ったらALOにログインして、スリーピングナイツのメンバーとおれの仲間ととりあえず合わせた方が良いな。すぐに仲良くなれそうな気がするけど。」
「じゃあ、もう帰ろっか♪」
帰りはお互い話ながら帰った。機械の要望、片手剣をどう動かせば良くなるのか等話していたが、おれは気付いたら肩に乗せてある機械では無く、すぐ隣にユウキと手を繋いで歩いている感じがしていた。恐らくユウキのAIDSの発症が収まればこの幻が現実になるのだろう。
AIDSの発症が無くなる事を祈り、おれと機械の中に居る、
嫌、おれと隣に居るユウキと一緒に家に向かい、足を進めた。
遅れて申し訳ありませんでした。ちょっと試行錯誤していたので投稿が遅れました。
それと、僕のSSを投票して頂いた方、どうもありがとうございます。よろしければこれからも見ていってください。
もうひとつの作品の、黒と紫のソードアートオンラインですが、ちょっと問題が発生して、その問題が解決するまで投稿が出来ません。そこはご了承ください。