ユウキがキリトを選んでいたら   作:壺井 遼太郎

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ボスの偵察

翌日午後3時

 

「全員揃ったか~?」

 

「キリトさ~ん、全員居まーす♪」

 

「さんはやめろ。」

 

「はーい♪」

 

ユウキの元気の良い言葉を上げると、ジュンは何やら頭を抱えていた。

 

「どうしたんだジュン?」

 

「いや~、キリトって名前、割と最近聞いたような気がする。何だっけな~?」

 

割と最近、と言う言葉を聞いた時点で嫌な予感がした。ジュンを始め、他のメンバーも、そう言えばと、考え始めた。SAO事件の事は公表されて無いにしろ、最近、もっと目立つ所で、ある件を、しかも嫌な思い出である、あのアバターで、

 

「あ!!思い出した!!」

 

手をポンと叩き、ジュンが叫んだ。その事に興味を引かれたのか全員がジュンに聞き始めて、ジュンがこの場に居るスリーピングナイツ+αに聞こえるように言った。

 

「キリトって、この前の《第三回BoB》の優勝した人の名前だ!!」

 

「あー!!」

 

「名前って言うより、剣技も似てたような、」

 

ジュンはそこで気付いたのか、おれにニヤニヤした目で見てきて、思わず、言うな!!と考えたが、考えても虚しく、ジュンが言った。

 

「キリトさん。BoBの優勝した、あの《黒髪の女の人》だ!!」

 

「えー!!キリト女じゃないよ!!」

 

「この間、見た目が女の激レアアバターのコンバートした人が居た、て書き込んでた人が居た。」

 

おれがコンバートした事を知っているのは、アスナ達旧SAOプレイヤーと、シノン、そして、最初に居た場所で話しかけてきた男性プレイヤーだけ、ここまで考えて誰だか検討がついた。最初の男性プレイヤーだ。彼はおれがコンバートキャラだと知ってから未練たっぷりの様子で行ってしまった為、恐らく愚痴で書き込んだのだろう。

 

「ともかく!!ボスの偵察に行くぞ!!」

 

「そう言えばそれが目的でした。」

 

会話に花を咲かせていた為、本来の目的をすっかり忘れていたらしいシウネーが答えた。

 

「忘れるなよ。ユイ、ナビゲーションを頼む。」

 

あ、と考えたとしても、時既に遅し、ユイがポケットから、はいパパ、と出てきた。

 

「パパ!?」

 

「キリト、これって!?」

 

「嫌、プログラムがバグっておれの事パパって言ってるだけのナビゲーションピクシーだから、な!!」

 

後半はユイに向かって言った。実際おれの事をパパと言うが、ママは居ない。

 

「ねぇ、ユイちゃん?ママって誰?」

 

ストレート過ぎる質問に、ユイは笑って答えた。

 

「私にママは居ません。居るのはパパだけです。」

 

「じゃあボクがママになろうか?」

 

「ストップストーップ!!話をこれ以上脱線させるな!!」

 

「はーい。」

 

「ユイ、ちょっと頼みがある。」

 

「何ですか?」

 

「おれが今から言う事を映像にしてアスナ達に送ってくれ。」

 

「?分かりました。」

 

ユイに送って貰う言葉と、自分のアバターのある映像をアスナ達に送るように頼み、振り返りユウキ達に指示をした。

 

「皆、スリーピングナイツにはヒーラーはシウネーしか居ないから被ダメは極力抑えるように、おれとユウキが遊撃、ノリとタルケンは隙が見つかったらウィークポイントを探してくれ、タンクのジュンとテッチはバシバシ叩かれるから、歯を食いしばれよ。」

 

「お、おう!!」

 

「じゃあ行くぞ!!」

 

片手を前に出し、全員が手を乗せ最後にグーを作りぶつけた。

 

27層ダンジョン入り口から入って間もない通路

 

「中は、思ってたより広い。」

 

マップを覗き、最短3時間位の距離と考えて前を歩いていた。

 

「え!?」

 

変な声を上げたのは、目の前でモンスターが湧いたからではなく、ジュンとテッチが一瞬でそのモンスターを片付けたのに驚いたからだ。その先は最早戦闘とは言えなかった。全員息の合った動きで瞬く間に片付けていく。

 

「おれが居なくても良かったんじゃないか?これ。」

 

「いえいえ、いつも私達出会ったモンスターと全て、トラップも全て掛かりました。お陰でボス部屋に着く時は消耗しきってました。」

 

「どうやったらそうなるんだ。」

 

話をしてる内に回廊の奥が広がり始めた。

 

「イエーイ!!一番乗りー!!」

 

「あ!?ジュン待てー!!」

 

ジュンが一人でボス部屋の扉まで走っていくのを見てから、ユウキが後ろから追いかけた。

 

ボス部屋に着く前にユウキに捕まり、おとなしく全員で行くことになって歩いていた時、周りから嫌な感じがした。通常なら、ここでサーチャーを使えば良いのだが、魔法は苦手なので、ピュアファイターのキリトは、腰からピックを抜いて投げようとした瞬間、

 

「わー!!ストップストップ!!」

 

「武器を閉まってから、ここに居る理由を言え。」

 

前でストップと叫んだ男が後ろの二人に頷き、武器を仕舞うように指示した。

 

「おれ達、これからボスに挑もうと思って、モンスターにタゲられるのが嫌で隠れてたんだ。」

 

「そうか、もし邪魔するような事があったら、分かってるな。」

 

少し怯えながらも、どこか自信がある様子で頷き、後ろに歩いていった。

 

「っふ~。」

 

短いため息をつくと、後ろで戦うのをワクワクしてる様子で明るい表情のメンバーに振り向いた。

 

「ALOで対人戦って私達やってみたかったです。」

 

「ユウキとやれば良いだろ。」

 

一通り周りを見てから全員に声を張って言った。

 

「これから先はボス戦だが、やられてもすぐにセーブポイントに帰らずに、ボスの行動パターンを見ていくぞ。」

 

全員が元気良く「はい!!」と返事をしてからジュンが扉を開けると中に入ろうとした時、ユウキが振り向いて何かの音を聞いたのか耳がピクピク動いていた。

 

「どうしたユウキ?」

 

「ん~ん、何でもない。」

 

「じゃあ中に入るぞ。」

 

ユウキの手を引っ張り、ボス部屋の中に入り、扉が閉まると双頭巨人型ボスが出現した。

 

「行くぞ!!」

 

「「「「「「おー!!」」」」」」

 

シウネーを除いた6人がボスに向かって突撃した。


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