ユウキがキリトを選んでいたら   作:壺井 遼太郎

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ユウキ対リーファ

「でわでわ、第一試合を始めま~す!!」

 

「選手は指定の場所に移動してください。」

 

控え室

 

「じゃあ、リーファ。ボクは手加減しないよ♪」

 

「私だって!!」

 

軽く拳をぶつけ合って、お互い別の道を通り、所定の位置についた。

 

「では、プレイヤーの紹介をさせていただきます。北ゲートに立っているのは!!ALOに突如現れ、無敗のインプ種族のプレイヤー!!絶剣、ユウキー!!」

 

「対して、南のゲートに立っているのは、ALO初期から今まで、スピードでは誰にも劣らない、シルフ種族のプレイヤー!!魔法剣士、リーファー!!」

 

わぁー!!と叫ぶ観客達の声が控え室まで響き渡るが、二人にはまるで聞こえていない様子で数歩進み、剣を同時に引き抜いた。

 

「10!!9!!8!!7!!6!!5!!4!!3!!2!!1!!0!!」

 

二人は同時に走り出した。訳では無かった。カウントが0になった瞬間、リーファが急上昇し始めた。

 

「え?」

 

剣を構え、前に重心を移動していたリーファの急な動きにより、完全に虚をユウキはつかれた。

 

「ユウキさんには悪いけど、普通の勝負じゃ勝てないからね。」

 

いきなりリーファの周りに僅かな魔方陣が出現した後に、今度は巨大な魔方陣が現れ、早口で詠唱していく。

 

「はぁ!!」

 

ユウキの周りに風が巻き起こり、ユウキの姿を一瞬で隠した。風属性最上位魔法《タイラント・ハリケーン》。タイラント・ハリケーンは数々の風が巻き起こる為、スペルブラストは不可能に近い。だが、通常より威力が高い。恐らく、先程の短いスペルは、バフの《エンハンス・エアロ》を使い、威力を底上げしたのだ。

 

「おおおと!!これはユウキ選手、大ダメージは免れないでしょう!!」

 

「タイラント・ハリケーンは、私達シルフに使えるプレイヤーは多いが、威力はリーファに勝てるプレイヤーは居ない。その上、エンハンス・エアロを使用している為、体力を相当に削られているでしょう。」

 

風が止む気配は無いが、リーファは長刀を構えた。控え室にいるメンバーは、ユウキがこのくらいで倒せない事は、皆分かっている。

 

リーファが長刀を構えたと同時にタイラント・ハリケーンの中からユウキが飛び出してきたのだが、リーファが反応出来ていない。理由は単純だろう、タイラント・ハリケーンは、渦を巻いているが、風が吹く方向は常一定なのだ。つまり、ユウキはダメージ覚悟でタイラント・ハリケーンの風に乗ったのだ。

 

「う、っそぉ!!」

 

「はあ!!」

 

瞬く間に8発の斬撃を入れ、リーファは後ろに下がった。

 

「お兄ちゃんに似て、無茶苦茶な事するね。」

 

「キリトに似てるって、嬉しいねぇ♪」

 

息を整え、剣をもう一度構えた。

 

(もうフェイントは使えない。なら、空中戦なら私の方が有利!!)

 

空中戦はリーファは、おれ達の中でも、中々追い付けない。ここでリーファはスピード勝負に賭けた。ユウキはエアレイドをマスターしてるといっても、それでも古参組のリーファには勝てないと踏んだのだろう。

 

「リーファ、さっきのお返し♪」

 

「え?」

 

ユウキの周りに先程のリーファと同じ、《魔方陣》が発生した。しかも中々大きい魔方陣だ。恐らくリーファと同じ高レベル魔方だ。だが、リーファも止めようと動き出すが、ユウキの詠唱速度が、リーファの倍早い。

 

詠唱を終了した瞬間、今度はリーファがどす黒い雲に飲み込まれた。闇属性最上位魔法の《アビス・ディメンジョン》だ。この魔法は見るのは初めてでは無いが、デュエルで使うプレイヤーはあまり居ない。理由は詠唱時間が、先程リーファが使ったタイラント・ハリケーンより長い。

 

リーファは詠唱を邪魔されない様に虚を突いて、ユウキにタイラント・ハリケーンをぶつけた。そうでもしないとユウキのスピードでなら、簡単に止められるからだが、ユウキはアビス・ディメンジョンを使うのに、接近して来るリーファに臆せず、詠唱をあそこまで速くしたから大した物だ。

 

「うわぁ、わあああ!!」

 

「残念だったね♪」

 

今度はユウキが右の剣を左に絞り、一気にリーファの周りを一回転し、リーファに四連撃を叩き込み、ライトブルーのライトエフェクトが四角形を作った。片手剣垂直四連撃の《ホリゾンタルスクエア》

 

「ああああ!!」

 

リーファが声をあげ、エンドフレイムを起こして、リメインライトになった。

 

「終了ー!!いきなり魔法勝負で押し勝ったのは、ユウキー!!」

 

「いやぁ、タイラント・ハリケーンを抜け出し、リーファに八回攻撃を入れ、尚且つアビス・ディメンジョンで動きを封じてからのホリゾンタルスクエアは見事でした。」

 

「では、次の選手は準備を始めてくださーい!!」

 

ユウキがリーファのリメインライトを拾い上げ、ゲート近くに戻ると、蘇生用アイテムでリーファを蘇生した。

 

「お疲れ♪」

 

「つ、強すぎるよぉ~。」

 

「リーファも強かったよ。最初のフェイントで、完全に油断しちゃったしね♪」

 

「え、と。私達の次って誰だったっけ?」

 

「次はリズとシリカだね。」

 

「リズさんとシリカちゃんか~、あんまり戦ってる所を見たこと無いから分かんないんだよね~。」

 

「リズはレプラコーンだから戦闘には向かないけど、シリカ自体が戦闘には向かない。」

 

「む~、どうしてですか。」

 

声をした方を見ると、シリカが少々不機嫌な様子だった。

 

「シリカって短剣だよね。前に戦ってる所を見たけど、仲間に頼り過ぎてるんだよね。頼るな、とは言わないけど、リズの方が積極的に前に出てるから、リズの方が少し上かな。」

 

「ま、まぁ、シリカちゃん、頑張ってね。」

 

「は、はい!!行くよーピナ!!」

 

「きゅる♪」

 

モンスターをテイム出来るケットシーは当然使い魔を連れて大会に出場しても問題ない。理由は、テイムしたモンスターは、テイムしたプレイヤーから離れられないからだ。例外も稀にいる、シリカのピナは、アルゴリズム等を無視して、キリトの近くに居たり、遠い所まで行ってしまう。ピナは預けようとすれば出来るが、本人が嫌なんだから仕方がない。

 

「ピナって、何でアルゴリズムを無視してキリトの側や、遠い所まで行けるんだろうね?」

 

「それは、全く分からないね。」

 

ユウキとリーファは回復用のポーションを煽り、控え室に向かった。


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