22層森の家
「キリトさ~ん。そろそろ行きますよ~?」
「わかったー。」
眠りかけていた所を起こされ、シリカ達の元へ向かった。
今回、《MMOストリーム》の掲示板に挑戦者求む、と書き込みがあった。そして生意気だなとそのプレイヤーの幻のOSSを懸けてデュエルを挑んだ、20人以上が返り討ち。そしてついた二つ名が《絶剣》。それでアスナ達と一緒にその絶剣とデュエルをしに向かうことにした。
24層、巨大木の下
「もうやってるな。」
「空で戦ってる。私達が苦労したエアレイドをマスターしてるなんて。」
エアレイドには嫌な記憶が頭に有りつつも、上を見上げた。確かに空で戦っている。木で隠れて余り見えないが、インプとサラマンダーで、サラマンダーが押されている。恐らく、インプの方が絶剣だ。サラマンダーの方には悪いが、これ程で押されている程度なら20人以上を返り討ちに出来る筈がない。
「うわぁぁぁぁ!!」
サラマンダーが攻撃に耐えきれなくなり、地面に落ちてきた。そして降参と大声で言った。
「これで67人抜きかー、誰か止めれないかねぇ。」
笑顔で言っているノームを横目に降りてきたインプを見た。
絶剣は地面に降りると、お辞儀をし回りにVサインを送っていた。だが、あの絶剣ことインプは、
「お、女の子!?」
「絶剣って、女の子だったの!?」
おれが考えていた事を、リズとリーファが声をあげた。それに平行し、絶剣はそのアバターに驚く程ピッタリな声で叫んだ。
「次にやる人はいませんか~!?」
「じゃあ、私が。」
アスナが我先にと手をあげた。
「ルールはありありなの?」
「うん。アイテムや魔法は使ってもいいよ♪ぼくはこれひとつだけどね♪」
絶剣は言うや、左手の剣の上に手を置いた。ここまでの余裕ぶりを見ると、彼女の実力は相当な物だ。絶剣は忘れた様子でアスナに聞き返した。
「そうだ。お姉さんは、地上と空中どっちが得意?」
「どっちでも良いの?」
「うん♪」
「じゃあ地上戦で。」
「OK、ジャンプは有り、でも翅を使うのは禁止ね。」
翅を仕舞うや、ウインドウが届いた。《yuukiからデュエルを誘われました。受けますか?YES/NO》と書いてあった。ここがSAOの世界ならば全損決着モードは選ばないが、時代は変わった。今いるのはあの時のデスゲームではない。ALOの新生アインクラッドなのだ、全損決着モードを選択し、剣を引き上げる。
「ふー、はぁー。」
一呼吸をして、タイムが0になった瞬間、アスナは突進し、左に二発、時間差で右に突きを入れたが、パリィされてしまった。
「強い!!」
「アスナの突きを返したヤツなんてそういないぞ。おれも返せるのか分からない。」
アスナは諦めずに攻撃を繰り出していたが先程のパリィにより、流れは完全に絶剣の流れになった、拳術スキルによるスタンで、《カドラプルペイン》を放ったが、全て叩き落とされ、アスナは降参した。結果はアスナが2割まで削られ、対する絶剣は5割に割り込みイエローに止まった。
「お姉さん、強かったね♪」
「ありがとう、次は負けないから。」
短い握手を行い、アスナは回復用のポーションを飲み、絶剣にヒールの魔法をかけた。
「負けちゃったぁ。」
「よく頑張ったわよアスナ。」
「次にやる人居ませんかー?」
「じゃあ今度はおれが。」
「お願いしまーす♪」
先程と同じ様にウインドウが届き、ユウキと読むのかデュエルの申請のYESを押して、剣を抜いた。
「おにいさん、強いね。」
「そう言って貰えると光栄だよ。」
カウントが0になった。挨拶がわりに突進し、左に剣を思いきり振った。
「ほい!!」
短い気合いと共に剣を受け流した。だが、それは予想の範囲内だった。振り切った剣をもう一度、先程より強く振り、攻撃しようとした剣にぶつけ、狙いを反らした。
「危なかった。」
剣を当てる前にユウキの剣を見ていたが、想像以上に早かった。もう少し遅ければ確実に腕を切られた。
「ふふ♪」
不思議なその笑みに、同じく笑顔で返した。これ位でへこたれる位なら、茅場と勝負なんてしない、小手調べなんて舐めた真似をした自分に怒りながら、剣をもっと自然に構えた。
プレッシャーのかけ方が違うのが分かったのか、ユウキは警戒をした。動き出したのは、ほぼ同時だった。剣を弾き、止め、避け、攻撃を見極めながらも、反撃を緩めてはいなかった。だが、対するユウキは全て的確にパリィや避けに専念している。ここまでの反応速度はおれには無い、瞬間、キリトはひとつだけ分かった、ユウキがSAOサバイバーでは無いことに、もしあの世界に居れば、二刀流スキルはおれには無かった。けど、
「それでも、負けるつもりは毛頭無い!!」
「!?」
SAOの世界でも味わった、自分だけが加速し、世界が遅くなるあの現象を思い出しながら、剣技を集中した、自分でも分かる。剣が一発ごとに洗練されていく、だが対するユウキも剣のスピードを上げていった。
(このままじゃ負ける!!)
そう考えた時には左手は勝手に左後ろの背中に手を回していた。ピンチに押され背中にあると錯覚しているのか、剣を抜こうとしていた。だが、運良くユウキが僅かに警戒した。その一瞬を逃さず、最上位剣技《ノヴァアセンション》を発動した。僅かに生まれたこの絶好のチャンスを逃せば負ける、ユウキは右に剣を下げ、紫色のライトエフェクトを纏った。
「うぉおおお!!」
「てりゃああ!!」
お互いの体力は既にイエローを越えてレッド寸前、つまり先に叩き込んだ方が勝ちだ。だが、ノヴァアセンションの高速攻撃より先にほんのコンマ1秒早く、左肩に突きが入った。それに負けじと剣を振るが、あからさまにユウキの方が早い、右下に抜けた剣が今度は右肩から左下にかけて5回突きが入った。突きだけの技なんて片手剣には存在しない、これこそがデュエルで懸けているOSSなのだ。
余りにも強力で、美しい技だ。おれは9連撃を叩き込んだ辺りで、お互いのHPが後一撃食らったら終わりの所まで減っていた。だが、10連撃目をぶつけようとした時には、ユウキの剣は前に動いていた。そして、左肩から右下の3発目の所と、右肩から左下の3発目の重なっている所に、11発目の突きが来た。ここで逃げる手もあっただろうが、そんな事は絶対にしない。
(ここまで戦ったんだ最後の一撃まで食らうのが剣士だ。)
11発目の攻撃が当たり、激しい砂ぼこりがたった。目を閉じたはずなのに、まだ見えている。突きを見ていると、当たる直前で止まっていた。逆におれの剣は、ユウキの首筋近くで停止している。
「おれの、負けだ。」
「ううん、引き分けだよ。それにお兄さんで決ーめた♪」
「え?」
「はい♪」
手をこちらに差し伸べそれに掴むと、ユウキはおれを連れて飛び始めた。
「ちょ!?キリトー!!どこ行くのー!?」
「後で連絡するー!!」
アインクラッドの外に出ると、ユウキが止まり、こちらを振り向いた。
「お願いします。ボク達に手を貸してください。」
ボクと言う一人称が似合う彼女は、頭を下げた。
「良いから、頭を上げてくれ。」
「分かりました。」
「いやぁ、にしても随分強かったな。おれなんて最後負けるかと思ったよ。」
「それはボクもだよー♪お兄さんのノヴァアセンション速すぎて、弾けなかったもん♪」
「でも、それだと強いヤツを探してたみたいだけど、おれ以外に居たんじゃないか?」
「う~ん、強い人は多かったけど、ボクにOSSを使わせたのはお兄さんが初めてなんだよね♪」
「本当、おれより強い君にそれを言って貰えるなんて光栄だよ。」
「えぇ~、照れるな~♪」
「それで、手伝うのは良いけど、どこに行くんだ?」
「あぁ、ボクに着いてきて♪」
そう言われ、おれはユウキの後を追いかけた。
どうでしょうか?こう言うマザーズロザリオ編を作って見たくて作ったのですが、何かあったら、感想宜しくお願いします。