ご注文はフルーツですか?   作:Mr,嶺上開花

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作者からのお願い:ごちうさみたいな緩やか日常系書くの初めてなので、作品崩壊しても怒んないでください


1羽 親は旅立ち子は戸惑う

ここはフルーツをメインに据えて飲み物やデザートを提供する喫茶店。その名もフルーチェハウス。店の看板にはライチの絵柄が書いてあり、中に入ると木造りの雰囲気の良い空間が広がっている。

店の名前こそあまり大々的に知られてはいないが、それでも知る人ぞ知る名店であり、リピーターも数多い。

 

そんな店の移住区画にあるとある部屋。そこには必死に机の上のメモ、正確には書き手紙を読む一人の少年の姿があった。

 

「久々に珍しい果物をトレジャーしに南米の方に1、2年くらい行ってきます?…巫山戯てんのかあの年中お盛んカップル!!」

 

この少年ーーと言っても既に今年で17歳だがーーの名前は結城頼智、その名前の漢字から良くライチと呼ばれている。当然初めはその渾名を頼智自身そこまで良くは思わなかったが、高1になった時に「これ使えばクラスでキャラ立ちするんじゃね?」と思い今までとは売って変わり自分から使い始め、今に至る。

 

「…ってどうするんだよ店は!あの馬鹿共(両親)、自分達で作った店を放り投げやがって…うん?」

 

頼智は両親の置き手紙にまだ読んでいない部分があるのを見つける。

 

「店はお父さんとライチに任せます…次帰ってきたら殴る。一発と言わず百発殴る。」

 

読んでいる時に思わずグシャグシャにしてしまった置き手紙をポケットに無造作に突っ込みながら頼智は思わず頭を抱える。そう、たった今、この瞬間にフルーチェハウスは一つの問題に突き当たってしまった。

 

「従業員はあの馬鹿親入れて8人だったから現在6人…人が足りない!」

 

フルーチェハウスは火曜日と第三木曜日のみ休日の喫茶店なので他の曜日は基本的に営業している。それでいて客も少ないと言うわけではない上、雇っているバイトも学生が殆どだ。これだと幾ら何でも店を回せない、一時的には回せるかもしれないが二ヶ月、三ヶ月と回すのは不可能に近いだろう。

 

「ただいま〜」

 

「そうだな…最低でも後一人、できれば二人戦力がいれば…そうだっ!」

 

頼智は何か閃いたように顔を上げると猛ダッシュでドタバタと音を立てリビングへと走る。

ドアを思い切り開けると、ソファーで寛いでいる少女に頼智は頭を下げた。

 

「頼む林檎!バイトを辞めてうちを手伝って!」

 

「…えっ。嫌だ」

 

「取り付く島も無い!?」

 

冷蔵庫から取ってきたりんごジュースを飲みながら雑誌を読んでいた少女の名前は結城林檎、頼智の2つ下の実妹だ。

林檎は現在甘兎庵というお茶がメインの喫茶店でバイトをしている、つまり喫茶店でのバイト経験があり今の人手不足のフルーチェハウスでも即戦力となるのだ。なので頼智はそのような打算込みでヘッドハンティングした次第…なのだがーーー

 

「頼むよ林檎!この通り!」

 

「だが断る」

 

「別にボケて欲しいわけじゃないよ!?…じゃあ逆に聞くけどなんで辞めたくないの?」

 

「賄いのお茶とデザート美味しい。あと千夜も優しい」

 

「…おお…いつの間にコミュ障の林檎にも友達が…」

 

実はこれまで、林檎には友達が居なかった。その原因は主に本人のコミュニケーション能力の低さにある。「こんにちわ」と言われてもコクリと頷くだけ、「今度帰りにカフェ行かない?」と誘われても「嫌だ」としか答えなかったのだ。そんな訳で数ヶ月前に林檎が甘兎庵で働くと聞いた時の頼智の心情は穏やかなものではなかったが、どうやら無事上手くやれているようで頼智は少し肩の荷を下ろす。

 

「お兄ちゃん。はたくよ?」

 

「おっとと、まあそれはともかく。本当に困ってるんだ…頼むよ林檎」

 

「…逆に聞くけど何でそこまでしてここで働いてほしいの?」

 

「そういやそうだった…。…これを見てくれ」

 

頼智はポケットからグシャグシャになった両親の置き手紙を取り出す。それを林檎はとても嫌々そうに開き、そこに書かれた文字を見て目を見開く。

 

「パパもママも、もう今家にいないの?」

 

「うん。部屋を見た感じ、今日の、僕達が高校に行っている時間の間に出発したっぽい」

 

飲み終わったコーヒーのコップを片さずに行ったしな…あの母親、とこっそりぼやく頼智。因みに頼智が今日高校から帰った時には既に店のドアにCLOSEの看板が掛かっていたので、頼智はそれをOPENにした後バイトの人といつも通りに営業をしている。

 

「…ん。ならいいよ」

 

置き手紙を頼智に返すと、林檎はそう即断した。

 

「そっかぁ…っていいの?甘兎庵の方大丈夫?」

 

「あっちはバイトの人もっと雇ってるから一人抜けたくらいじゃビクともしない」

 

「そうなんだ…良かった…」

 

「最初からこの紙を見せてくれれば良かったのに」

 

「う"っ…!」

 

心底安心したようにそう呟く頼智に、辛辣にそう突っ込む林檎。

 

「…パパもママも居ないなら、もう一人くらいバイト雇っても良いんじゃない?」

 

「そうなんだけど…現状を考えると出来れば即戦力になる人の方が欲しいからね…喫茶店経験あってバイト探してる子とか居ないかな…出来れば学生で」

 

「いるよ」

 

「…えっいるの?友達で?」

 

「うん」

 

「…まじで?」

 

「当然」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は移り、頼智の両親が旅に出て二週間後、音信不通になり一週間後のフルーチェハウスの前。

 

「えっと…ここで良かったわよね…?」

 

ワンピースを着た金髪のショートカットの少女がそこには立っていた。

 

 

 




この女の子…一体誰なんだ…!?!?

次回予告

漸く始まるバイトの面接…!しかしフルーチェハウスの面接は謎の少女にとって苦難の連続でーーー

次回、バイト不採用!?デュエルスタンバイ!
(*嘘です)

追伸
6月9日 林檎の年齢を中3(ココアや千夜、シャロと同年齢)に訂正。申し訳ないです。
ついでに頼智は現在高2なので、原作開始後は高3になります。


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