大倶利伽羅ラプソディ   作:立花祐子

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笑顔でさよならを(終)

本丸-

 

短刀達がそれぞれ芝生に座り、空を見上げている。

 

「空って…こんなに…青かったんだね。」

 

今剣が、しゃくりあげながら呟いた。短刀達がそれぞれにうなずき、涙を拭っている。

五虎退が、嗚咽をこらえきれず泣き出した。

薬研籐四郎が、その五虎退の頭を抱き、涙を堪える。

 

……

 

乱が花畑の中に座り込み、作ったばかりのシロツメグサの花冠を、手に持って見つめている。

 

「倶利伽羅がいなくなっても笑顔でなんて…できるわけないじゃない。」

 

そう呟き、ポロポロと涙を流している。

 

……

 

鍛刀部屋の炉の前で、短刀の前田藤四郎と平野藤四郎が、膝を立てて座っている。

獅子王が戸を開いた。

 

そして中の2人を見て、表情を曇らせた。

 

「待ってるのか。」

 

獅子王は、傍の床机に座りながら、2人に話しかけた。

2人は、黙ってうなずいた。

 

「大倶利伽羅さん、きっと帰って来る。」

 

前田が呟くように言った。平野がうなずいた。

 

「……」

 

獅子王は、涙を堪えながら2人の頭を撫でると、黙って鍛刀部屋を出て行った。

 

……

 

石切丸は、池のほとりに立ち、空を見上げている。

 

「…私に…もっと力があれば…」

 

そう呟き、うつむいた。

 

……

 

長谷部と光忠が、宿舎の縁側に座り、空を見上げている。

光忠が口を開く。

 

「あいつらが戻ってきたら「倶利伽羅」って呼んでやらなくちゃな。」

 

長谷部が、力なく笑う。

 

「でもそれだと、どの大倶利伽羅を呼んだのかわからないだろう。」

「そうだな…。」

 

光忠も力なく笑い、やがてうつむいて目を手で覆う。そのふるえる肩に、長谷部が手を乗せた。

 

……

 

1代目大倶利伽羅は、武装姿で第1宿舎の大庭に立っていた。

 

その大倶利伽羅の目の前で、ジャージ姿の幻の大倶利伽羅たちが、鬼ごっこをして走り回っている。

 

『2代目!案外、機動低いな!』

『やかましいっ!ちょこまか動くな3代目!』

『おい!4代目!座り込んじゃって、もうばてたのか?お前!』

『俺、タイム!2代目も3代目も元気すぎ…』

『タイムなんてルールはない!ほら立て!』

『ほら、4代目立てよ!』

『やめてー!腕ちぎれる!』

 

2代目3代目がそれぞれ、4代目の手を引っ張る姿で、幻が消える。

 

大倶利伽羅が、その場に崩れるように両膝と両手をつき、肩を震わせて泣く。

 

 

…本丸の空は、付喪神達の悲しみをよそに、青く晴れ渡っている。

 

……

 

女審神者は、パソコンの前で顔を覆って泣いていた。

…その時、メールが入った。

 

「!…」

 

女審神者は涙を拭いながら、メールを開いてみた。

 

……

 

『主様 命を授けて下さったのに、こんな形で終わらせる俺達を、どうぞお許しください』

 

……

 

2代目3代目4代目「大倶利伽羅」がそれぞれ、暗闇の中を傷つきながら前に進んでいる。

黒い影が3人を傷つけ、そして3人に斬られ消えていく。

 

……

 

『俺達、この本丸に生まれて本当に幸せでした。』

 

……

 

2代目が、地面に倒れ、息を弾ませる姿。

3代目が、背中を斬られ、のけぞる姿。

4代目が、膝から崩れ落ちる姿。

…だが、3人共、体勢を立て直し、前に進みだす。

 

……

 

『俺達の育った本丸が、永遠に平和でありますように…』

 

……

 

その3人の遠く前方に、光が差してきた。

3人共、目を見開き、足を引きずりながら歩いていく。

そして、近づいてきた光に向かって、3人は手を差し出した。

 

……

 

『大倶利伽羅より』

 

……

 

光に包まれると共に、3人の姿が塵(ちり)となって消えていく。

消える瞬間まで、笑顔で…。

 

……

 

パソコンの画面に、2代目3代目4代目の大倶利伽羅が武装姿で肩を組み合い、それぞれが満面の笑顔でピースをしている写真が映る。

 

 

-Fin-

 

Back music「それがあなたの幸せとしても」by Heavenz様

 

……

 

-妄想CAST-

 

1代目 大倶利伽羅「ku-ya様」式

2代目 大倶利伽羅「ES様」式

3代目 大倶利伽羅「RIRAKO様」式

4代目 大倶利伽羅「ミズタ様」式

 

燭台切光忠「SAM様」式

へし切長谷部「XAIN様」式

 

今剣「ゆるん様」式

乱藤四郎「なかむら様」式

薬研藤四郎「ぱぴこ様」式

前田藤四郎「2PC様」式

平野藤四郎「2PC様」式

五虎退「カクタス様」式

 

(特別出演)

 

獅子王「るか様」式

石切丸「帽子屋様」式

 

 

-未公開ショット-

 

 

1代目「大倶利伽羅」と光忠が、真剣な表情であやとりをしている。そこに長谷部も加わっている。

 

……

 

2代目「大倶利伽羅」と3代目「大倶利伽羅」が、短刀達とそれぞれ横並びになり「花いちもんめ」をしている。

 

……

 

3代目「大倶利伽羅」が縁側で大の字になり、子猫3匹を胸に乗せて眠っている。その両端を、2代目「大倶利伽羅」と4代目「大倶利伽羅」が挟み、笑いながら見ている。

 

……

 

1代目2代目「大倶利伽羅」と石切丸が、短刀達と一緒に餃子を食べている。

 

……

 

短刀達の枕投げ大会の様子。その中で、3代目「大倶利伽羅」が2代目「大倶利伽羅」の投げた枕が見事に、顔面に当たっている。

 

……

 

ジャージ姿の3代目「大倶利伽羅」が後ろを振り返りながら走っている。その後を、4代目「大倶利伽羅」が追い、何故か1代目「大倶利伽羅」をおぶった2代目「大倶利伽羅」が追っている。

 

……

 

3代目4代目「大倶利伽羅」がホスト姿で、格好良く並んで立っている。

 

……

 

女装で、化粧を施された2代目「大倶利伽羅」が、女の子らしくウィンクしている顔のアップ。

 

……

 

ホスト姿の3代目「大倶利伽羅」が、酔っぱらって仰向けになって寝ている1代目「大倶利伽羅」の両足を両脇に抱え、廊下をひきずって歩いている。その後ろを、同じホスト姿の4代目「大倶利伽羅」が、光忠の両足を両脇に抱えて同じようにひきずり、その後ろを女装した2代目「大倶利伽羅」が、長谷部の両足を両脇に…(以下同文)

 

……

 

重傷の3代目「大倶利伽羅」の両脇を、自分たちも傷ついた体で支えて歩く1代目2代目「大倶利伽羅」。その3人に向かって、短刀達が駆け寄っている。そして、その短刀達の後ろを、光忠と長谷部が追っている姿。

 

……

 

4代目「大倶利伽羅」が口の端を上げて、こちらに流し目を送っている。

 

……

 

(上空カメラ)シロツメクサの花畑に、3代目「大倶利伽羅」が片方の腕を枕に微笑みを見せて寝ころび、その胸を枕にして寝ている1代目「乱藤四郎」が、こちらに向かって両手を挙げて笑顔を見せている。

 

……

 

(記念撮影)

 

あぐらをかいて座っている1代目「大倶利伽羅」の肩に、2代目「大倶利伽羅」が手を乗せてかがみ、3代目4代目が1代目を挟んで、片膝をついてこちらを笑顔で見ている。

 

……

 

光忠を先頭に、2代目3代目4代目「大倶利伽羅」が横並びになり、手に持ったトマトにキスをしながら、それぞれこちらを見ている。

 

……

 

長谷部をはさんだ2代目3代目4代目「大倶利伽羅」が全員正装して、持った花束を我先に差し出している。(プロポーズ?)

 

……

 

両手でピースしている獅子王の両端を、2代目3代目4代目「大倶利伽羅」が挟み、同じように全員両手でピースをしている。

 

……

 

あぐらをかき、両手を広げて微笑んで座っている石切丸の後ろから、十手観音のように「大倶利伽羅」達の腕だけが8本出ている。腕の本数から、1代目も混じっている模様。

 

……

 

1代目2代目「大倶利伽羅」を、3代目4代目「大倶利伽羅」が挟んだ全員が武装姿で刀身を持ち、厳しい表情で横1列に並んで歩いている。

 

……

 

大庭-

 

武装している1代目「大倶利伽羅」が、自分を抱く光忠の肩に顔を伏せ、泣いている様子。その背に長谷部が手を乗せて、うなだれている。

 

……

 

 

2代目3代目4代目「大倶利伽羅」が、現代の学生服(ブレザーに、緩めた細ネクタイ)姿でカバンを持ち、並んでポーズをとっている。

 

 

……………………

………………

…………

……

 

 




……

-あとがき&懺悔-

最後までお読みいただきありがとうございました。

アクセスしていただいた方、そしてお気に入りにご登録いただいた方、さらに点数をつけていただいた方、本当にありがとうございます。励みになりました!

まじめな話、アクセス数が増えるたびにニヤニヤし、お気に入りがついて小躍りし、さらに点数をつけていただいた日にゃ、花咲か爺さんのように、エアー花吹雪を撒きました(爆)
本当に本当に、ありがとうございました!

1話書き終わると、すぐにアップしたくなり、アップするたびに、誤字を見つけたり(特に「獅子王」さんをずっと「獅子丸」って書いてたのには赤面!)、ちょっとシーンを増やしたくなったりして、書き直しを繰り返しながらのアップでした。最初の方でお読みいただいた方には、見苦しかったと思います。申し訳ありません。

ある意味「大倶利伽羅」常識をぶち破ったようなこのお話(--;)、いろんな方が作られた刀剣乱舞のMMD動画を見ているうちに、思いついたものです。

MMD動画には、同じキャラクターでも「モデル」さんが何体か存在し、またそれぞれの「モデル」さんに個性があります。
中でも「大倶利伽羅」さんの「モデル」さん達は個性が強く、またどの「モデル」さんも格好良く、楽しませてもらっています。

「CAST」にも書いた通り、このお話でも、私の中で決めていたモデルさんがあります。
MMD動画をごらんの方にしかわからないとは思いますが…

1代目「大倶利伽羅」…「ku-ya様」式…頼りがいのある、お兄さんタイプ
2代目「大倶利伽羅」…「ES様」式…幼い顔をしているが、実は芯がしっかり
3代目「大倶利伽羅」…「RIRAKO様」式…目つきの鋭い、今どきイケメン
4代目「大倶利伽羅」…「ミズタ様」式…妖艶な美しさ。流し目にズキュン

いかがでしょうか?

正直、2代目以降は、他のキャラクターさんでも良かったわけです。でも、あのクールな「大倶利伽羅」さんが、声を上げて笑ったり、泣いたり、ふざけたり、枕投げしたり(!)ってのがいいのではないかと、ご本体さんへの申し訳なさに何度か挫折しかけましたが、最後まで突き進んでしまいました。(ああ、苦しい言い訳だ。)

また、書いているうちに、キャラクターがそれぞれ崩れてしまって、さらに「大倶利伽羅」さんご本体にも申し訳なく、モデルさん達にも申し訳ないかなと。
1代目は貫禄が付きすぎて、ちょっとおっさん化してしまってるし、2代目は、泣き虫ちゃんになってるし(女装までさせちゃったし(--;))、3代目はチャラ男で「乱」ちゃんを、口説いちゃいますし(本当にごめんなさい!乱ちゃんのイメージも壊しちゃってごめんなさい!)4代目はなんとか「大倶利伽羅」さんらしさを残しつつも、闇落ちさせちゃったし…ああ、懺悔は尽きません。本当にごめんなさい。

ちなみに、念のため申し上げますが、作中でキャラクター達が抱き合ったり、馴れ合ったりが激しいですが、立花は腐女子ではございませんことをご了承いただければと思います。(どSタイプは否定しない)

……

作中で、光忠が「手合いは木刀で」というシーンがありますが、実は立花、若いころ「殺陣(たて)」(いわゆるチャンバラですな)を学んだことがあり、その先生が「居合(いあい)道」をしてらっしゃったので、居合もちょっとかじらせてもらいました。
2代目「大倶利伽羅」が3代目「大倶利伽羅」に「刀を握るのは、相手を斬るときだけ。でないといざという時に力がでない」というセリフは、先生から言われたことです。ですが…です。木刀はまだ軽いので、それができますが居合用の「模造刀」は結構重いんです。慣れるまで手が震えて大変だったのを思い出します。聞くと、本物の刀はもっと重いとか!!!昔の人ってすごいですね。

でっ、個人的なお話ですが、1つだけご報告を。
「闇落ち」で、冒頭2代目が言う「大倶利伽羅が出なくて、下手な小説かいている奴」は、もちろん私のことなんですが、なんと、その話を書いた直後「大倶利伽羅」様が、出てくださいました!!課金も何もしてません。本当に偶然に出てくださいました。今、大事に大事に育てております。
ちなみに、うちの本丸には「へし切長谷部」様が3振りいらっしゃいます(^^;)事務仕事がきっとはかどっていることでしょう(笑)(光忠様は2振り(^^)きっと「大倶利伽羅」様を甘やかしてますね(笑))

また、ラストに書かせていただいた「Back music」の「それがあなたの幸せとしても」という曲は、ぜひ、聞いていただきたい1曲です。特に「KK」様のVocal版は、テノールばりに声が美しく、陶酔してしまうほどです。ご存じない方は、是非、聞いてみてください。

そんなこんなで、私の妄想からできたこのお話。
最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました!

立花祐子

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