泥酔問答
です。
もう一度言おう。
泥酔問答
です。
キャラ崩壊しているのでご注意。あとロリが相変わらず大変な目に。
次に被害にあったのはイスカンダルだった。にぱにぱと笑いながら近づいてきた白野は、えいしょ、えいしょとその膝をよじ登り、巌のような肩に片手をかけた。そしてーー
「あはははははっうーたん!うーたんだよ!ぎるー」
「おおおおおっ何をするん…嬢ちゃん、離しっ」
あろうことか、真っ赤なヒゲを掴んで遊び始めた。
「ぷっふはははははは!白野よ、そやつはオランウータンではない、体毛はそうだがどう見てもゴリラであろう…くくっ、良い様だなぁ、征服王とやら、それ、手助けはしてくれよう?」
「ぬおおおおっ!?」
一人涼しい顔をしていたギルガメッシュは、友の名を呼び、天の鎖でもってイスカンダルを縛り上げた。これで、片手でいなされていた白野のやりたい放題である。どこからか取り出したヘアゴムで細かい三つ編みを施したイスカンダルの髭を留めた白野は、今度は「らいおーん!」とご機嫌に叫んでは、セイバーとギルガメッシュの腹筋を大いに苛んだ。
「ハハハハハッ筋肉ダルマが言い様だ!良いぞ!白野!実に良い」
「ぷぷっすみませんっ…くッ、あまりも…ふふふふふふふふふ、ゲホッ」
「ちょっ、ライダーが…ぷっくくくくくくくくく、僕をバカにしたツケっふ、あはははははははははっ」
そして、極めつけは。
「ライダー、らいおん!ツインテール!」
「もうよせとあれほっクハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、これは凄まじい…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「はくのっ…ひいっもう許し、くだっ…笑い死…ふふふふふふふふゲホッゲホッ」
「ひーひっーー、ダメ…もうぼく、ふっ、息できなっぷっあははははははは」
一頻り笑終わった面々が、最後に目をつけたのはギルガメッシュだった。筋力Bを誇るサーヴァント2名が、躊躇いなくギルガメッシュの腕と足を押さえ込み、白野に差し出している。因みにウェイバーは天の鎖から解放されたイスカンダルのデコピンを食らって完全に伸びてしまっていた。
「なっ、貴様ら!?おのれ、打ち首にするぞ!!」
「なんでしたらこちらのリボンもお貸ししよう」
完全に出来上がったセイバーからリボンを受け取った小さい悪魔は、まさか矛先が自分に向かうとは思わず、往生際悪くジタバタと暴れるギルガメッシュへ迫る。
「えへへ、ぎるーちょんまげ〜」
ご満悦と言わんばかりに胸を張る白野の目の前では、解いた金髪をサラサラと風に晒したセイバーと、髭を編まれたままのライダー、それから立てた髪を結わえられ、珍しくげんなりとした表情を見せるギルガメッシュという三王が残された。まさに死屍累々である。
「フッククククク…改めて見ると、ひどっげふっ、惨状ですね、フフフフフフフ」
「いやぁ、「全くだ」」
最も被害の少なかったセイバーが腹を抱えて大笑いを始めると、つられたのか、深夜のアインツベルン城で笑いの渦が巻き起こった。
「でー、ギルガメッシュ、あなたは一体なんでせいはいを欲するんですー?えらそーにしてる割にはー、一週回って興味なさそーですが」
「ふっ、奪うのではない。そもそもにおいて、アレは我の所有物だ、世界の宝物は一つ残らずその起源をわが蔵に遡る。つまり…我のものは我のもの、お前のものも我のものという事だ、フッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「世界最古の…ジャイアニストめー、これでもくらえー」
もはや完全に呂律の回らなくたなったセイバーがギルガメッシュにからみ酒をすると、こちらも無駄な高笑いとともに返す。白野はというと、ギルガメッシュの腕の中ですうすうと気持ちよさそうな寝息を立てている。答えながら酒を干したギルガメッシュの盃に、セイバーがおぼつかない手つきでドボドボと酒を注ぐ。
「貴様は注ぎ方が雑だな、白野にも劣るぞ」
「ろりこんはー黙ってなさーい。ゴリラー、おいゴリラー貴様はどうなんっでっすっか!」
「いやぁ…まあ」
またもや叩きつけるようにしてライダーの盃を満たしたセイバーに、ライダーが言い淀む。そして意を決したように宣言した。
「受肉だ」
「は?」
「フッ」
「余は転生したこの世界に一個の命として根を下ろしたい。そして、再びオーケアノスを!」
「ハハハハハッ!ゴリラ風情が何を言っている。見果てぬ夢の先に何がある!」
「ほんとうれすよー、そんなものはー王のあり方じゃないれすー」
馬鹿にする2人に、赤ら顔のイスカンダルが思わず顔を顰める。
「ならば貴様の望みはなんだ、言ってみろ!!」
「ふふふ…よくぞきいてくれた、わたしはこきょーを救済する。万能のがんぼーきで、ブリテンを滅びの運命から救うのでーす」
「え?よりによって自らが歴史に刻んだ爪痕を否定すると言うのか、貴様は馬鹿か?」
「うるさーい!こちとら剣を預かって故国にしんめーを捧げたんだ、その滅びを悼んで何がわるーい!」
「悪い。途轍もなく悪い。第一王が捧げてどうする?国が民草が王に捧げるのだ。断じてその逆ではありえん」
「何をーぼうくん。やーい暴君」
「暴君であるからこその英雄ぞ。貴様のように己の治世を悔やむ王など暗君と言うのだ。やーい暗君」
「程度が低いな。我クラスともなれば、黙ってても万物が我に捧げるのだぞ!」
「「黙れジャイアン!!」」
お互い睨み合った両王の舌戦はまだ続く。とは言え、ここまで来ればただの子供の喧嘩も同然だが。
「だいたい人を巻き込んで滅ぶのは武人だけでいいれすー正しい治世と統制で民草守れなくて何が王だ」
「ふんっ正しさの奴隷か…優等生ごっこはさぞかし楽しいんだろうな、セイバー」
「優等生で何が悪い!理想に殉じてこそ王だ!」
「ちがーう!王とはな、誰よりも強欲に誰よりも豪笑し、誰よりも激怒する、清濁なく含めて人の臨界を極めたる者、そうあるからこそ臣下は王を羨望し、王に魅せられる。一人一人の民草の心に我も王たらんと憧憬の火が灯る。第一なあ、貴様は救うだけで導きはしない。欲を見せない、貴様の背を追うものは皆苦しいんだよ気付けよ。で道に迷ったら肝心の王は澄まし顔で小綺麗な理想を追い求める訳だ。貴様は所詮王の偶像に縛られたただの小娘よ!」
「そのマケドニアは貴様が連戦しすぎて滅んだがなーあれだけ専制君主で民に嫌われておいて、俺についてこいなどとよく言えまふねーこれぞ暴君て感じれすかー?」
「ほう?やるのか小娘」
「やってやろうか?ゴリラが。マーリン呼ぶぞマーリン」
最高に下らない睨み合いをしている両者を見やり、ギルガメッシュは一人手を叩いて笑っている。
「白野、これ起きんか白野!見ろ!あれが暴君と暗君の典型例だ!面白いぞ!こら、吐くな、我の宝物に吐くな、厠行かんか、こら!」
「ウォゲエエエエエエエエエオエエエエエエエエ」
「ええい助けろそこな下郎!」
「大丈夫れすかー?しっかりしれくらさい、はくのー、はくのー」
「叩くな馬鹿め、余計酷く吐いておるではないか」
「あー、すまんアインツベルンの、とりあえず水を貸してはくれまいか」