Fate/Zero Gravity   作:色慾

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※ロリスパンキング注意


第15話

拠点のスイートルームに戻ると、まずは容赦なくバスタブへ放り込まれた。それも頭から。泡風呂に沈められては引き上げられて、身体を洗われているのか、水責めなのかよく分からない仕打ちを受けた。その癖、風呂上がりに髪を梳かして乾かしてくれる手つきはいつも通り優しい。

 

「えっと……ギルガメッシュ?」

 

「仕置をする、と言ったはずだが?もう忘れたとは言わせまい」

 

バスローブを纏った王様の膝の上に、白野は今全裸で腰を上げ、うつ伏せの状態で拘束されている。そうして、高く振り上げた右手が勢いよくお尻に振り落とされた。これは、もしかしなくても……。

 

「お尻ぺんぺん、という奴だな。貴様の国ではこれが幼子の躾方だと言うのでな」

 

「あうぅっ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

容赦なく尻たぶを襲う痛みと、羞恥心で顔が燃えるように熱い。思わず絶叫すると、ギルガメッシュの手がピタリと止まった。

 

「ほう。謝るか。では、何が悪かったか述べてみよ」

 

「無茶な作戦でセイバーを傷つけて、キャスターを逃してごめんなさい。それから、ギルがメッシュに貰った大切なかぎっ……いっ!?」

 

再び、容赦なく手が打ち下ろされる。しかも、心なしか先ほどより力が増している。

 

「やはり何も分かっておらんな。剣士だ槍兵だと言う有象無象など元よりどうでも良いわ!あの鍵はまあ我の財ではあるが、取ったところで奴らには扱えぬ代物ゆえ、大事はない!我が言いたいのは、そう言うことではない」

 

涙目になりながら、王の叱咤を拝聴する。振り返って見ることはかなわないが、今頃お尻は動物園の猿のように真っ赤に腫れ上がっているに違いない。不意に、手つきが和らぎ、ギルガメッシュの声が低くなる。

 

「貴様はなぜあの時一言『来い』と言わなかった。海魔の動きなど見えていたというのに、貴様は止めを刺すことを優先した」

 

ぎゅうっと心臓を掴まれたような錯覚を覚えた。それは、あの場で何が起こるかわからなかったから。(サーヴァント)を動かすは(マスター)の務め。最善を尽くすためにも、ギリギリ見極める必要があった。ギルガメッシュだってそれは分かって居たはずだ。

 

「……馬鹿者」

 

覆いかぶさるようにしてギルガメッシュに抱きしめられる。さらりと金髪が背中に触れ、なんだかくすぐったい。背中から聞こえた半ば拗ねたような呟きに、漸くその気持ちが少し分かった気がした。

 

「貴様とて我が財と言わなかったか?再び我の前から消え失せるなど、断じて許せん」

 

「…ごめんなさい。私は勝手にいなくなったりはしないよ」

 

「フン、分かれば良い。だが、これとそれとは別だ。貴様が忘れぬよう、尻叩きの刑に処す」

 

先ほどの様子は何処へやら、すっかりいつもの調子で王はニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべてこちらを見下ろす。その晩、人知れずスイートルームには男の高笑いと、幼い女児のすすり泣きが響いたと言う。

 

 

 

「遠坂時臣……何用かね?見ての通り私達は忙しい」

 

冬木大橋の全身だった古橋の下、月明かりすら差さないそこに、宝石魔法を駆使する男は立っていた。拠点を爆破され、苛立ちを隠しきれないケイネスの問いに、男は鷹揚にステッキを掲げるだけで答える。傍の影より出でた片腕の暗殺者は、黄金の鍵をケイネスに放ると、恭しく一礼をして、どこへとなく消えて行った。

 

「小娘から盗みを働くのに、相当骨が折れたと見える。だが、約束のものはしかと受け取った。解析次第、貴様にも報せるとしよう」

 

「それは重畳。ところで、君のサーヴァントはキャスターを仕留めきれなかったようだな」

 

「誰かがコソコソと動き回っていたお陰でね。鍵のためとは言え、随分な真似をしてくれる」

 

「おや?ご機嫌を損ねてしまったようだ。とは言え、ランサーがあの子に情けをかけなければ、こうはならなかったとは思うが」

 

「フン、虫けら風情の討伐に余計な労力を掛けたくはなかったのでな」

 

「折角監督役まで抱え込んだのだ。次はしくじらないでくれ。ではまた、然る時に」

 

人好きのする笑みを浮かべたまま、男が闇へと溶け込む。全くもって不気味なものだ。一体何処まで監視し、何処まで掌握しているものか。

 

「ランサー」

 

「はい、我が主」

 

「貴様も分かっている通り、次はない」

 

背筋を凍えさせるような声色でケイネスが言う。純然たる魔術師である彼はプライドが高い。己の矜持を汚されることは、さぞ腹に据えかねているだろう。

 

「はっ…時に主、あのお方を信用されて居られるので?」

 

「貴様には私がそこまで愚昧に見えるかね?一時的に利用しているまでだ。引き続きあの小娘の身辺を洗え。礼装を失ってなお遠坂時臣が執着する理由が必ずあるはずだ」

 

槍兵は静かに頭を垂れ、了解の意を伝える。その姿が光の粒となって消え失せるのを見送ってから、ケイネスは婚約者を携え、新たな根城へと向かった。




※次回はまた週末に

すまない、本当にすまない

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