しょうがないので近くの町を自転車で走って、「ここを破壊すればイイ背景になるかな」
と考えたり、帰りにガンプラや特撮をレンタルしたり……
ネタ集めと仕事に没頭する毎日で執筆を疎かにしてしまうという本末転倒ぶり。
他の作者様との交流も疎かになりがちで申し訳ございません。
投稿期間に空白が空いてしまったことの謝罪しつつ最新話を投稿です。
今回はクランチェインの日常回です。 ではどうぞです。
──交流する世間知らず──
──貴方はアケミジン家の名字を持ってるのです。 アケミジン家たる者、周りの人よりも上に立てる存在でなければいけません──
──何故その程度しかできないのですか! アケミジン家の者として、この程度はできるようになりなさい!──
──母上に顔向けできる程、立派な女性になりなさい。 アケミジン家を背負う者として──
──そのぐらい分かりますよね、アケミジン・──
「カヨウ……」
カヨウは起きた。 肌は汗で濡れていた。
周りはロッカー等で散らかっており、カヨウはケースの上で座るように先程まで寝ていた。
「アケミジン……家……」
勿論ここはカヨウの寝室ではない。 カヨウの寝室は、アケミジン家は今も何処かで飛んでいる。
こことは全然違う、奥ゆかしく散らかってない寝室。
散らかっている部屋を見回してカヨウは懐かしく思う。
「寝ることすら、楽じゃないのですね……」
そう呟いてカヨウは頭を上げた。
固定されているロッカーからロッカーにロープが繋がれ、ロープに支えられるようにネットが敷かれている。
「スゥー……スゥー……」
その上で、ツキカゲが仰向けになって寝ていた。 顔は見えず、頭を両手につけている。
(……あれで寝てみたいです)
カヨウはふとそう思い、そしてコレを付けているときのツキカゲの忠告を思い出す。
──このハンモックは俺のだ、誰にも寝かせないぞ──
ハンモックと呼ばれる布団めいたモノに興味を抱きつつ、カヨウは我慢することにした。
そうしながら落ち着かずウロウロしていると、ふと体に不思議な感覚が走った。
「この感じ、何でしょうか……?」
「スゥー……………」
ツキカゲの呟きに、カヨウは反応し振り向いた。
ツキカゲの顔は高い位置にあって見えない。
「ししょー……?」
カヨウは数秒ツキカゲを見つめた。
ツキカゲは吐息を立てたまま寝たままだった。
ハンモック上で寝ているツキカゲを見つめた後、カヨウは部屋を出た。
ロッカーから出ると待機室に入った。
両側の椅子には、一人と二人が寝ていた。
片側には銃器を抱いて眠る少女。
片側に腕を組んで眠るオールバックの男性と、彼に寄り添う白衣の女性がいた。
「えと……名前は……」
ローガン・シモン
カーチス・ハーディー
ニレイナ・グレイ
以上がここで眠る人物の名前であった。
彼女らを起こさないように、カヨウはゆっくり窓に進んだ。
外はやや明るく、夜明けは近かった。 それを見てカヨウは気づいた。
降りてます……?
外の光景がどんどん上がり、反対に陸が近くなる。
先程の不思議な感覚も、着陸時に来る感じだったんだとカヨウはわかった。
陸にはライトを着けた滑走路が見える。
この機体──アームドレイヴンは空中で旋回したあと、少しホバリングした後にゆっくりと着陸した。
「ここは……」
「おう起きてたのか! えぇと名前はアケヨだな」
目の前の扉が開き、褐色肌の女性が待機室に入った。
「サバイバさん……あ、アケヨです、はい」
「じゃあ"アケっち"と呼んでいいか?」
女性──サバイバ・キャリーはゴーグルを外しながら気さくに話す。
「あ、アケっち!?」
「嫌なら"アッキー"でいいかな?」
アケヨ──カヨウの戸惑いを気にしない様子でサバイバは再度聞く。
「あまり固くなんなって、お前も俺のこと呼び捨てでいいからさ」
髪を後ろに束ねながら、サバイバは気さくに話しかける。
「しばらく一緒になるんだ、少しでも楽な関係の方がいいだろ?」
カヨウは陽気に笑うサバイバを見て思った。
普段軽くて男っぽくて、戦闘では派手に武装を飛ばしてても──根は仲間思いのイイ人なんだと。
「で、ではアッキーで……」
照れながら答えるカヨウに、サバイバは小声で「よっしゃああああ」と叫ぶ。
「んじゃヨロシクな、アッキー♪」
満面の笑みを浮かべながら、サバイバは近くにあった帽子を被る。
「さてと……おいカーチス」
サバイバはカーチスに近づき、彼の足を踏んづけた。
「あぁ痛ぁ~!……たくっ、着いたのかい」
小さく悲鳴を上げたあと、カーチスは足を押さえて聞く。
「あぁ、これから受付に行くぞ」
先程とは違い無愛想にサバイバは答える。
「ほなじゃあ行こうかぁ~……コイツどうにかしたらね~」
そう言ってカーチスは、己の腕に巻きつくグレイの頭を小突く。
「ふぅう~ん……カーチスぅ……」
それでもグレイは離れず、カーチスの腕に頬と胸を擦り付ける。
「ローちゃん、あるいはツキカゲに代わりを任せ……」
困ったように笑うカーチスと、その二人を見て顔を赤くするカヨウの顔が合った。
「あーアケヨちゃん、ちっと頼まれてよ」
カーチスは抱きつかれている腕を振る。
「この甘えん坊を、俺の代わりに支えてくれねーかな?」
カーチスは空いてる手でグレイの灰色髪を撫でながら頼み込んだ。
「え、あぁ、ハイです……」
カーチスが手を大きく動かし、グレイを振り払う。
そしてカヨウの手を掴んで振り回し、立つと同時にカヨウを椅子に座らせた。
「キャウッ!?」
椅子にしりもちをついたカヨウの腕にグレイが寄り添う。
「んじゃぁヨロシクねぇ~」
カヨウにウィンクし、カーチスはサバイバと一緒に外へ出た。
「う、うぅん……」
あとに残されたのは抱きつくグレイと、狼狽えと恥ずかしさで真っ赤になるカヨウ、そしてスヤスヤと銃器に頬擦りして眠るローのみであった。
カヨウは腕に抱きつくグレイの顔を眺めた。
長くサラサラした髪、優しげで繊細な顔立ちは正に美女であった。
だが色を完全に失ったかのような灰色の髪はグレイを弱々しく見せ、更に顔や首筋に薄く残る傷跡が彼女の脆さを表していた。
(地表って、これほどまでに辛い場所なんですか……)
カヨウはグレイに寄り添い、夜明け前の空を眺めながら考える──
──朝日が昇り、カヨウはうたた寝から起きた。 カヨウの前にツキカゲが、光のない眼で除き込んでいた。
「ウゥッ、ハワアアア!? お、おはようございますです!!」
カヨウは驚いて変な声を上げてしまった。 隣で寝ていたグレイと、向かい合って寝ていたローが起きる。
「カーチス……じゃない……けどおはよ~」
「起床、ローガン・シモン、体調不良ナシ」
「あぁ、おはよーだなぁ……」
ツキカゲはカヨウを見ながらムスッとした顔で挨拶する。
「おぉう皆さん活きてきましたねぇ~♪」
待機室にカーチス(あとサバイバ)が入る。
カーチスが入った途端、ツキカゲの顔が険しくなる。
「カーチぃぃス!」
ツキカゲはカーチスに近づき、彼の目の前に指を突きつけた。
「アケヨを勝手にグレイさんの抱き枕として使うんじゃねぇよ」
そんなツキカゲを、カーチスは笑い飛ばすように反論する。
「いやぁねぇ~近くにたまたまアケヨちゃんがいたからねぇ~」
「嘘つけ、アケヨがここまで──」
そこまで言ってツキカゲはカヨウに振り返った。
「──本当か、カーチスの言ってること?」
カヨウはこくんと小さく頷いた。
「ハーハッハ! 本当だよぉ~アケヨちゃんが自分から頼み込んだのさぁ~」
後者は嘘なのだが、カーチスは勝ち誇るように笑って言った。
「ま、そんなことはどうでもいい。 んなことぉより飯だ飯だ!」
カーチスは近くでしょげてるグレイの頬に手を添えた。
「グレイちゃんは悪くないからねぇ~、むしろその癖こそグレイちゃんの好きなところさ」
カーチス手を上に登らせ、頭を撫でる。
「グレイちゃんは料理と看護と包容と見た目がイイ所だからねぇ~。 つーことで早く朝飯を頼むぜ」
カーチスが手を離すと、グレイは顔を真っ赤にして嬉しそうに待機室を出た。
「何人の女に、今の台詞を言ったんだかなー……」
一緒に帰ってきたサバイバが横目で呆れるように言った。
「アイツにしか言ってないぜ、なにせアイツにしかない長所だからねぇ~。 さぁてと──」
カーチスは懐から封筒を取り出した。
「近隣で出されてる依頼だ、目を通しておきなぁ。 あとは──」
そしてカーチスは別の封筒も取り出した。
「テメーらへ、今回の報酬だ。 ツキカゲは一個前の任務分と合わせてな」
カーチスは一枚の封筒をローに手渡した。 受け取ったローは中身の札束を数える。
次にカーチスは先程より厚めの封筒をツキカゲの手渡さ──ず、封筒を上に上げた。
「いやぁさっきお前に疑わられたのは悲しいなぁ~俺しょげちゃったぜ」
カーチスはオーバーに泣くようなジェスチャーをした。
「……何が言いたいんだ」
ツキカゲはカーチスの笑みする目を睨んで返す。
「いやぁねぇ~そういうこともあるし補給もあるし……つーことで、これから買い物行ってきてほしいんだわ」
カーチスはまた別の封筒、そしてメモをツキカゲに手渡す。
「サバイバとグレイちゃんから頼まれてる補給分。 ローちゃんからは問題なしだよな?」
カーチスはローに振り向いて聞いた。
「問題なし」
札束を吟味しながらローは頷いた。
「よし、あとはお前の武装だな。 まさか三本も壊すなんてなぁ……」
頭を抱えながらカーチスは封筒を振り回す。
「つーことでまずは買い物、報酬はそのあと渡すぜ。 ネコババされたら嫌だからねぇ~」
不機嫌そうに顔を歪ませるツキカゲに、カーチスはメモと封筒を渡した。
「あぁちなみに俺は会計だから同行できないぜぇ~残念!」
「ハッ、そりゃ嬉しいぜ」
ツキカゲは無愛想に答える。
「ハーハッハ……テメーらはどうだぁ~?」
「俺は
「銃器整備必要、無理」
サバイバとローが同時に答える。
「おう、ツキカゲぼっちだなぁ~♪」
「同行なんていらない」
「ぼっちなぁツキカゲぇ~♪」
カーチスはツキカゲを無視して嘆く動作を笑いながらする。
「カーチぃス、テメー──」
ふとツキカゲとカヨウの目が合った。
カヨウは先程から話についてこれず、目をクルクルさせて会話を聞いていた。
カーチスはその瞬間を見逃さなかった。
「アケヨちゃん、ツキカゲとデートしに行かねぇか?」
ツキカゲは眼を丸くし、カヨウは顔を真っ赤にした。 側でサバイバが吹き出し、ローが眼を細くした。
「カーチぃぃぃス!!」
「痛い痛ぁい! どうするアケヨちゃん?」
ツキカゲに首根っこ掴まれても、カーチスは笑いながらカヨウに顔を向けている。
「わ、私は大丈夫……です……」
カヨウは恥ずかしさを抑えて答えた。
「よぉっし決まりだなぁ~♪」
「お、お願いします……」
「カーチス! オイ! チッ……」
ツキカゲが悪態をつき、カヨウが頭を下げると同時に、部屋に朝食の匂いが入り込んだ。
「朝ごはんですよ~」
朝飯はスープとレーションであった。
「よっしゃ、いただきまぁ~す!」
──数分後
アームドレイヴンを着陸させた空港から離れた街にて。
基本的に足りなくなった物資の確保、そしてカヨウに地表の街を見せるために、買い物袋を持ったツキカゲがカヨウを連れて街を歩いていた。
──アケヨちゃんへのデート込みなら報酬出すぜ。 どうするよ?──
(……まぁ元々そんな任務だしな)
サングラスを着けて太刀を二本納めているツキカゲは、護衛対象である隣のカヨウを見ていた。
白いワンピースの上に紺色のジャケットを羽織り、フードに隠れた目線は辺りをキョロキョロ見渡していた。
「あぁ…そんなに珍しいのか?」
「あ、すみません! どれも似たようで、それでいて初めて見る風景ですのでつい……」
こちらを向いたツキカゲに、カヨウは顔を赤くして驚いた。
「似たような?」
ツキカゲは何気ない世間話のつもりで尋ねた。
「はい、私の住んでた街の風景に似てます。 ただ……」
カヨウは住宅の壁を見つめ、哀しい顔になる。
「……ここは、とてもボロボロです」
カヨウの言う通り、街には綺麗さの欠片もなく、街は色褪せ汚れ、今にも崩れそうな住宅がほとんどだった。
「あぁボロボロだ。 それが地表の普通の街並みだからな」
ツキカゲは無感情に答える。
「す、すみません、気に触るような言い方で……」
ツキカゲの答を、カヨウはツキカゲが不機嫌になったかと勘違いした。
「別に気にしてない。 アンタらの暮らしと比べるとクソ汚いだろ」
ツキカゲ不機嫌ではなく、しかし無愛想に答えた。
「綺麗なのは結晶だけ。
カヨウは結晶のメカニズムを多少は知っていた。
結晶──メテオリウムは万能な反面、生命を侵食する恐れすらあると。
「生命は死んだあと、美しき結晶となり人々を支える……そう教わりました」
カヨウもフードを少しどかし、雲の上にあろう己がそれを教わった場所のある方向を向いた。 空は曇り、飛んでるものは見えない。
「それってもしかして、"棺桶落とし"と関係あるか?」
ツキカゲも上を向いた。
「あっはい、祈られながら地表へと落ちていった亡骸は、地表で結晶となってスカイカントリーへ運ばれ、それを浮かせる原料へなると……」
「へぇ、そう教わってるんだな……」
ツキカゲは上を向きながら口をへの字に結んだ。
「正直あれ、俺らにとっちゃぁ迷惑なんだよね」
変えた表情を、ツキカゲはカヨウに向けた。
「上からドガァンと落ちてきて……荒野ならまだしも、宿泊場や民家に落ちてきて惨事になること多いんだよなぁ。 瓦礫の中で、棺桶の中から死体がズリ落ちたときなんかもう吐き気しかしねぇよ……」
カヨウは驚き、そして泣き出しそうな表情へとなった。
「も、申し訳──」
「一々謝罪はいいから。 別にアンタ一人責めてない」
ツキカゲは無愛想に、頭を下げるカヨウを宥めた。
「は、はい……」
「……ったく」
気まずい雰囲気に二人は飲まれる。
「……そんな綺麗なのか、スカイカントリーの内部は?」
数秒、ツキカゲは頭をかいた後に質問した。
「はい、傷ひとつなく、街は清潔で乱れありませんでした。 ただ──」
「ただ?」
ツキカゲが尋ねると、フードを戻しカヨウは言葉を紡ぐ。
「ただ……あそこは綺麗で、そして窮屈でした」
そう言ってカヨウは俯き黙った。
「……あぁそうか」
ツキカゲは一瞬、カヨウがスカライズから離れた理由を考えた。
「窮屈だから、アンタは降りたのか」
「……」
カヨウは俯いたまま頭を上げない。
答えにくいのか……
「俺は報酬さえ貰えればそれでいい。 それ以外はどうだっていい、詮索はしない」
カヨウはツキカゲに顔を向けた。 淡々とした表情のツキカゲと顔が合う。
「この地表を見せながらアンタを護衛する。 アンタの出した任務はそれだけだろ?」
サングラスの奥の眼がカヨウを見つめる。
「は、はい……」
ツキカゲのサングラスに隠れた眼を見つめ、カヨウは答える。
数秒、ツキカゲとカヨウは互いに目を合わせる。
「……え、えと、その、すみません!」
先にカヨウが、慌ててツキカゲから目を外す。
「……いきなりどうした?」
一方のツキカゲは相変わらず淡々とした表情のまま前を向いて歩く。
(さっきから俺を見る度に顔を赤くしたり……わけ分からん)
そんな疑問を、しかしツキカゲは口にはできなかった。
「まぁなんだ、それまでの間が面倒見てやる。 なんか欲しいものないか?」
疑問を口にする代わりに、ツキカゲは封筒を振って見せる。
「あ、ありがとうございます。 だけど大丈夫です」
カヨウは笑顔で、日差しの入り込む空を眺めながら答えた。
「地表を見て知る、それだけでもう十分ですから」
そう言ってツキカゲの方に笑顔を向けた。
可憐で純粋無垢、まだ優しさのある笑顔であった。
「初めてなんです、こういう景色も、誰かと一緒にこうやって歩くのも」
今日何度目かの、照れ臭さを隠そうとカヨウは顔を赤らめた。
「ツキカゲさん達は優しいです。 そんな人と買い物できて嬉しいです」
「……まだ買い物終わってないからな。 あとは俺の太刀を買わなきゃ」
ツキカゲは一瞬口を結んだあと、前を向いて歩く。 サングラスの奥の眼は見えない。
カヨウはその後ろ姿に追い付こうと早歩きした。
(優しい"人"ねぇ……)
そう考えながら、ツキカゲは路地裏の店の前に来た。
「あとは多分ここだ、買い物終了だ」
「は、はい!」
初めての路地裏に戸惑いながらも、カヨウはツキカゲになついた様子で頷いた。
「……数分とかからねぇハズだ、そこら辺り眺めてな」
ツキカゲはカヨウから離れたかった。初めて接するタイプの女に、胸がザワつき不快なような気持ちになっているからだ。
「え、いいのでしょうか?」
「危なくなったらここに入ればいい」
ツキカゲは店に指を指す。
「帰りはサバイバにまた運んでもらう。 それまで地表を見ておけ」
「あ、ありがとうございます!」
カヨウはお礼を言い、手を合わせて喜んだ。
「で、では荷物は一旦私が持ちますので、ツキカゲさんはゆっくり買い物してください!」
カヨウは合わせた手を前に出した。
「あ……じゃあ頼む」
ツキカゲはやや重ための荷物を手渡した。
断っても変な感じになりそうであった。
(グレイさんと同じ、俺の苦手な顔だ)
カヨウは重たそうに、それでも笑顔でいつづけた。
「ツキカゲ達おっせぇな~」
空港のレンタルカー置き場、旧型のスポーツカーのハンドルに足をのせながら、サバイバは新聞紙を眺めて愚痴をする。
「アケヨという女、イチャイチャ」
隣に乗っているローが推測を立てた。
「ブッハァーーー! 何だよロー、お前もあの二人気になんのかよ!」
サバイバは飲んでるビールを吹き、サバイバはローに絡んだ。
「アケヨ、経歴不明瞭、怪しい」
「ん、まぁそいつは誰もが思ってるさ」
サバイバは残りのビールをイッキ飲みした。
「だがクランチェインじゃなくツキカゲの依頼人だからな、アッキーに余計な詮索しないしない」
「サバイバ、また妙な渾名」
ローが呆れた顔をした。 その眼に光は見えない。
「いいじゃねぇか、面白いじゃん。 じゃあロッシーって渾名つけようか?」
「不必要、嫌だ」
「チェーッ……よし、ノンアルコールのビールは飲み終わったし、先に任務に行こうぜ!」
サバイバがハンドルに手をかけ、ローが手元を依頼表をチェックした。
「"近隣に勝手にのさばる人身売買グループの討伐"」
「おいおい物騒な依頼じゃねぇか……」
「高報酬、一番近い、簡単」
「まぁいっか、んじゃ行くぜ!」
二人を乗せた銀色のスポーツカーは空港の外を出た。
「これだけか……おいカ──アケヨ」
店にある太刀全て──二本しかなかったが──買い占めたツキカゲは外に出た。
外を少し眺めてたいというカヨウの要望を聞き、店の周りを彷徨かせていたのだが、カヨウの姿が見当たらない。
「何処行ったんだアイツ──」
ツキカゲは路地裏に顔を向け、そこに置いてあった物を発見した。
それは先程まで買った物の一部であった。
「……チッ」
ツキカゲは一瞬サングラス奥の眼を丸くし、そして潜めた。
感情は自分の見せてしまった甘さ、そしてカヨウをどうにかしたモノへの怒りに染まる。
鋭く刃物のような雰囲気となり、眼に翠の光が灯った。
「誰だか知らんが……砕き破壊してやる」
いかがだったでしょうか。
今回は戦闘なく、クランチェインらの日常に触れた回を書いてみました。
また実験的に書いてみた回です。 ストーリーそのものに絡まなそうな寄り道回です。
だけど書いてみるとけっこう楽しくて、数少ない執筆時間で微笑みながら書いてました。
そして最後……ミスをおかしたツキカゲは何をするか、書くのが楽しみです。