メテオリウム─翠晶眼の傭兵─   作:影迷彩

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 私こと影迷彩は影響を受けやすい人です。 今回もやたら色んな作品から影響を受けています。
 何かそれっぽい作品だなと思ったら感想で言ってみてください、もしかしたら喜んで反応するかもしれません。(なお、ゲーム作品に関しては実況ぐらいでしか知りません……)



──暴れるバケモノ──

 "クランチェイン"、カヨウが成り行きで居候させてもらうことになった旅団。

 

 やや個性的(・・・・・)であるが、全く何もわからないカヨウを泊めてくれた人たち。

 

 皆イイ人なんだ──カヨウはそう思っていた。

 

 

 

 「ハーハッハッハッハッッハ!!」

 

 輸送船内に笑い声が響き渡る。

  外では銃撃に砲撃や爆発等がけたましく鳴り響く。

 

 『掴まっとけーー!』

 

 アナウンスと共にいきなり輸送船が傾く。

 各自手近にある所に掴まったが、カヨウだけが輸送船の壁に身体をぶつけた。

 ぶつけた壁とは反対方向の窓に、翠色の炎で噴射されたミサイルが通り過ぎる。

 

 「う、うう……」

 

 泣きっぱなしな表情のカヨウは窓を眺めた。

 輸送船の前面にライフルが展開し、こちらに突撃する飛行物を撃ち落とす。

 

 「ハウッ!?」

 

 「うーい、全弾命中ぅ~!」

 

 カーチスも窓の外を眺め、祭り囃子に手を叩く。

 

 「攻撃が激しくなってきたねぇ~、そろそろかなぁ?」

 

 カーチスはコクピットから持ってきた通信機を耳にかけ、通信機から伸びたマイクを頬につける。

 

 「そ、外は一体……」

 

 「紛争」

 

 震えるカヨウに、隣にいたローが答える。

 

 「生存区域存続派、メテオリウム採掘派、衝突」

 

 弾丸をカートリッジに込めながらローはカヨウに説明してくれた。

 

 「生ぞ……採く……?」

 

 「メテオリウムの作り方は知ってないかな~? 燃料などに使える純正のメテオリウムは、何年もかけた地表採掘でしか手に入らない。そして、それを掘る為の採掘場が必要なんです。今、採掘場にするのに町を力ずくで潰すか、町人が生き残るかの対決なの~」

 

 グレイの説明で、カヨウは慣れない単語に戸惑った。

 まだ地表に降りて一日も経っていないのに、立て続けに見知らぬ世界でトラブルに見舞われたカヨウは泣くだけじゃ治まらないほど疲弊していた。

 

 「アケヨさん、大丈夫ですか~?」

 

 アケヨ──カヨウに向けて、グレイは心配そうな顔をする。

 

 「グレイさん……」

 

 カヨウはグレイに顔を向け、グレイの優しい顔と言葉に少し安堵する。

 

 (だけど……グレイさんの表情も……)

 

 その心配そうな顔はカヨウにのみ向けられたもの。 この戦闘に対してグレイは心配など一つも向けていない。

 

 (皆さん……強いのですね……)

 

 弾丸を装填し終えたらしく、臨戦体勢を整えるロー。

 

 旅団に信頼を寄せ、外を涼しげに眺めるグレイ。

 

 猛攻を避け応戦し、輸送船“アームドレイヴン”を戦闘の中心まで突入させるサバイバ・キャリー。

 

 何やら一人言で話している、この戦闘の中で笑顔を崩さないカーチス。

 

 そして奥の部屋で待機している──

 

 「ツキカゲさん……」

 

 『降下ポイントまであと3分!』

 

 アナウンスが鳴り響く。 こころなしか、楽しんでいるような調子の声である。

 

 「行ってこぉい、ツキカゲ」

 

 カーチスが静かに、冷淡に言葉を発した。

 カヨウは後部の扉に顔を向けた。

 

 (あの向こう……ツキカゲさんが立って──)

 

 『ポイント到着!ハッチ、オープン!』

 

 サバイバのアナウンスが響き、後部でデカイ音がした。

 カヨウは思わず窓に駆け寄った。

 窓の外、後部の空中にツキカゲは飛んでいる。

 腰に装備した太刀のごとく、落ち行くツキカゲの風貌は鋭く端整な刃物のよう。

 そしてその眼は、結晶のように輝く翠色であった。

 

 「ツキカゲさん……!」

 

 カヨウは名前を呼んだ。

 戦場に落ち行く、己が雇った"エニマリー"を──

 

 

 

  ──数分前──

 

 「ツ、ツキカゲさん!?」

 

 カヨウはツキカゲについて行く。

 入った部屋はロッカールーム、壁に縛り付けたロッカーにツキカゲは近づく。

 

 「い、一体これから何が……」

 

 「任務だ」 

 

 ツキカゲがロッカーを開けた。

 内部のウェポンラックが展開し、立て掛けられた武装がツキカゲに選ばれるべく前に出た。

 

 「言っておく、これから向かうのは俺達の日常だ」

 

 カヨウはそれを見て圧巻した。

 ロッカーから現れたのは、何本もの太刀であった。

 大中小……様々な太刀が納刀状態で、無造作にウェポンラックに掛けられていた。

 

 「しっかり見ておけ、この地表の状態を知りたければな」

 

 「…………」

 

 カヨウは聞き、そしてウェポンラックを眺める。 ただただ、その光景に圧倒されていた。

   

 (あの日本刀……)

 

 カヨウはロッカー内の上部ラックにある日本刀に気づく。

 その一本だけ他と違ってしっかり立て掛けられており、装飾もとてつもなく昔からあったかのように古さ、そして歴戦をくぐった強物の雰囲気を感じさせる。

 

 「……あぁ、おい」

 

 ツキカゲは太刀を見比べながらカヨウに眼を向けた。瞳の色は無色であり、死人のようである。

 

 「あ、はい!しっかりツキカゲさんを見てます!」

 

 そう言ってカヨウは顔を赤くした。 そして彼女は、改めて自分の発言に恥ずかしくなった。

 

 「……とりあえずだ、お前はあっちに行ってろ。 ここにいられると邪魔だ」

 

 「な、なにかお手伝いできることは!?」

 

 「何もない、ただ見とけ」

 

 「あ……わ、わかりました……!」

 

 カヨウは焦りながら部屋を出ようとする。

 

 「あ、ツキカゲさん!」

 

 しかしカヨウは、ドアに手をかける直前に振り返った。

 

 「こ、これ……ありがとうございました!」

 

 カヨウは着ている上着──紺色のジャケット──を脱ごうとする。

 

 「あぁいい、着とけ」

 

 ツキカゲは片手を出してカヨウを静止させる。

 カヨウはツキカゲの戦闘服──肉体のラインがそのまま出ている、ボディスーツのような軽装──を見て、本当に返さなくていいのか心配した。

 

 「アンタの服装は目立つ。それ着とけば地味でいいだろ。俺の装備なんて構うな」

 

 「う……は、はい……」

 

 ツキカゲはカヨウから眼を離す。

 

 「今はとりあえずアイツらの側にいろ。アンタは俺の為の資金源だ、自分の安全を先に考えておけ」

 

 「……は、はい、その……傷を負いませんように!」

 

 カヨウはうつむき、ドアを開いて移動した。

 そんなカヨウを見ずに言葉だけを受け取り、ツキカゲはロッカーから通信機を取り出した。 昨夜の任務で装備した通信機と似たようなモノだ。

 ツキカゲはそれを耳元に着け調節する。

 電源をオンにし、輸送船内部にある同じ波長の通信機とリンクさせる。

 

 「こちらツキカゲ、応答を願う」

 

 ツキカゲは声を出した。これは一人言ではなく、通信機から頬にセットされたマイクに音声が入力されるのだ。

 

 『あっあ~、こちらぁカーチス・ハーディ、通信リンク問題なぁし』

 

 耳元に快活な声が聞こえる。

 

 「任務内容は?」

 

 『依頼者は第89区の生存区域存続派、メテオリウム採掘派の攻撃を止めてほしいとよ』

 

 ツキカゲは太刀一本に手をかざす。

 

 「ソイツらの情報は?」

 

 『武装集団が約30人、中型Mt・Aが2機、そしてランク“5”エニマリーの翠晶眼が1人、まぁこんなところだな』

 

 「了解、ソイツら倒せばいいんだな」

 

 『そういうこったぁ』

 

 ツキカゲは手をかざし、太刀の柄を掴んで抜く。

 そうしてツキカゲは腰に二尺ほどの太刀を一本、背中に三尺ほどの大太刀を二本で装備し、ロッカー内から注射器型の潤滑剤を3本取り出す。

 

 『行ってこぉい、ツキカゲ』

 

 静かに、冷淡なカーチスの言葉が耳を通る。ツキカゲはより奥の部屋へと進んだ。

 

 『ポイント到着!ハッチ、オープン!』

 

 アナウンスと共に、アームドレイヴン最後尾のハッチが開かれ、明け方の光と旋風が差し込んだ。

 ツキカゲはハッチから飛び降りた。強い旋風を全身に受けながら落下し、若き傭兵は戦場へと向かう……

 

 「こちらツキカゲ、任務開始」

 

 

 

 

 

──あたり一面の建物が崩れ、あちこちに兵器や車両の残骸が散らばる、廃墟と化した町並み。

 崩れ落ちた町の残骸には、翠色の結晶が付着していた。

 

 瓦礫と結晶とかした町の中心の廃れた教会、その中にはライフルなどを武装し、メテオリウムで加工された装甲を着こんだ兵士が集合していた。

 

 「敵勢力は沈黙状態した!」

 

 兵士の一人が大声で報告する。

 

 「現在、敵勢力に残存する戦力はおらぬかと!」

 

 「ふん、弱小エニマリーしか集められないノーナシ共が」

 

 奥にいるリーダー格の老人が鼻を鳴らす。

 

 「奴等、これだけしか雇えないとなると、どれだけ困窮しているのだか」

 

 メテオリウム採掘派リーダーである老人は、ライフルを杖代わりにして立ち上がった。 

 

 「もはやこの土地は採掘地にする他に無価値! 採掘地にすることこそが我々の生き延びる道! 繁栄への道! この土地を与えてくださった土地神への、せめてものの献上である!」

 

 杖をついていない方の手を握りしめ、リーダーは声高く張り上げた。

 周りの傭兵達は、怒声を上げ演説を始めたリーダーに驚く。

 

 「繁栄、ですかね……」

 

 ただ一人、牧師風のコートに身を包む大柄な男性だけは腕を組んだまま動かない。

 隣に座る牧師風の男の横で、リーダーはかつて布教者であったノウハウを活かして熱弁する。

 

 「この戦いに勝ったあかつきには、そなた達へは多大な報酬を、愚か者達へは報復を与えてやろう!」

 

 兵士たちは喜び勇んで武器を掲げる。 たとえクライアントがなんであろうと、報酬さえあればそれでいい。

 

 「まぁいい、敵が弱いおかげで仕事が楽だ、さっさと報酬貰って下がるぞ」

 

 既に兵隊長は勝ち誇っている。

 そこに息を切らした部下が駆けつける。

 

 「兵隊長! 新たな輸送船を確認! 現在撃墜を心がけています!」

 

 「心がけています?」

 

 兵隊長はライフルを抱えた。

 

 「まだミサイルは残ってるだろ、撃ち落とせないのか!?」

 

 「撃ち続けてはいるのですが、敵輸送船の動きが思った以上に俊敏で、中々攻撃を食らわせることができません!」

 

 「チッ、どこの輸送船だ!」

 

 「遠目でマークは……機首にドクロが描かれていたような気が……」

 

 「兵隊長! 敵輸送船から何か投入されました!」

 

 部下から新たな報告が入る。驚いた兵隊長は外に出た。

 

 「おい……アレはまさか……!?」

 

 兵隊長が見上げる上空、漆黒の輸送船がこちらの攻撃に全て応戦し向かっていた。

 そしてその後部から、一人の人間が落ちていく。

 

 「兵隊長! アレは明らかに人間じゃねぇー!」 

 

 兵士の一人が腰を抜かし、弱気な声をあげる。

 

 「あんな細身のヤツがか! とにかく撃ち落とせ!」

 

 

 

 落ち行く人間──否、翠晶眼と呼ばれるバケモノ──ツキカゲは首筋に潤滑剤を打ち込んだ。

 脳がクリアに、感覚が研ぎ澄まされ、全身に力がみなぎり、視界が翠色のフィルターを通したように見える。

 その視界に、こちらへと向かうミサイルが見えた。

 

 「……俺(バケモノ)一匹に、わざわざミサイルを使うか」

 

 ミサイルがすぐ目の前に迫った瞬間、ツキカゲは体勢を素早く変えてミサイルの上に立った。

 

 「アクセル」

 

 一声発し、ツキカゲの全身の神経に粒子が走り、彼の動きを加速させた。常人ならば目線すら追いつけないほどの速さで、ツキカゲはミサイルの上を走り抜ける。

 ミサイルの後部に足を着いた瞬間、ツキカゲはミサイルを蹴りあげ地表へと弾丸のように跳ぶ。

 

 「制圧開始」

 

 ミサイルの翠色の爆発を背に、とてつもない速さでツキカゲは地表に着陸し、大きく砂吹雪を上げ足が地を滑る。

 間違いなく骨が折れ足が壊れそうだが、ツキカゲの身体は常人とは全く比べものにならない程の力を持っている。

 足を踏ん張り地を滑るのを止まり、両手それぞれで腰の鞘と柄を構え、全身から翠色の蒸気のようなものを発しながら、ツキカゲは敵兵たちのいる正面を向いた。

 刀のように鋭い風貌、その眼は翠色に爛々と輝いていた。

 

 「う、撃てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 ツキカゲに向かってライフル弾が次々と発射される。

 ツキカゲはそれらを紙一重で避け、あるいは抜刀して弾丸を真っ二つに斬り捨て、目の前の敵兵達に突撃した。

 

 「群がってな、斬りやすい」

 

 群がった兵士達の中心に着いた瞬間、ツキカゲは大きく舞い回り、周辺の敵兵達を斬り捨てる。

 胸、肩、腕、足……的確に刀身を刻み、鎧の間の関節を斬り飛ばし、兵士たちを次々とを無力化させる。

 

 「グアアアアアアッ!!」

 

 「5人」

 

 「腕がアアアア!!」

 

 「6人」

 

 斬りあげる間も敵兵達からの攻撃は止まない。 次々と放たれる弾丸をツキカゲは背中の大太刀で遮斬り防御する。

その合間、ツキカゲは大太刀の鞘を腰に構えた。鞘は変形しライフル銃となって、敵兵に電磁ネットを射出した。

 

「ウ、ウワアアアアアア!!」

 

 電磁ネットに捕らわれ無力化した敵兵に振り向かず、ツキカゲはライフル弾を放った敵兵に向かい、盾として出したライフルごと兵士を斬る。

 冷淡に、的確に大太刀を食らわせ、周辺全てを無力化させたツキカゲは敵本拠地の教会へと向かう。

 

 「これで半分──」

 

 向かおうとした寸前、突然に建物の壁が崩れる。 走るツキカゲは立ち止まり、納刀した大太刀を構える。

 

 ガシャアアアアン……!

 

 音をたて、崩れた壁から現れたのは全長約6m、ずんぐりしたような胴体と太く長い手足というフォルムのロボット。 

 “Mt・A”。メテオリウム・アーマーという名称の、ツキカゲの身長の何倍も高いこの兵器に、しかしツキカゲは臆さない。

 

 『たとえ翠晶眼でも、これに敵うわけがないだろぉ!!』

 

 スピーカーから音声が放たれると共に、丸いドーム上の頭部に付いているモノアイが横に移動し、ツキカゲを向いた。 

 翠色の光をモノアイと背中のスラスターから放ち、Mt・Aはツキカゲに腕部ライフルを乱射する。 ツキカゲはそれらを先程と同じく全て大太刀で斬り落とす。 

 

 『テメェ、一発入りやがれ!!』

 

 Mt・Aは乱射しながら後退する。 まるでツキカゲの気迫に圧されているかのように。

 

 カチッカチッ

 

 Mt・Aが何歩か後ずさったとき、腕部ライフルのカートリッジは無くなった。

 無くなった隙を突き、ツキカゲは素早くMt・Aの懐へと入り込もうとした──

 

 『かかったなぁ!!』

 

 ライフルがパージされ、腕部のクローが内部炸裂を起こし飛ばされる。ワイヤーに繋がれた腕部クローはまるで大きな釘のごとく、ツキカゲに襲いかかる。

 

 「アクセル」

 

 飛ばされたクローは加速し被弾する刹那で回避したツキカゲには当たらず地面に突き刺さった。

 ツキカゲはそれに乗り、クローの接続部分、そして腕部を次々と加速による大太刀の入れ込みを強化しながら、装甲ごと内部の腕関節を目にも止まらぬ速さで斬りあげる。

 腕部を破壊しながら登るツキカゲに応戦が追いつけず、敵兵は片腕を全壊させられツキカゲの肩までの浸入も許してしまった。

 肩に着いた瞬間ツキカゲは大きく跳躍し、唖然としている様子のモノアイを飛び越し、背面スラスターに着地する。

 

 「背中に気をつけろ」

 

 着地した瞬間、翠色に激しく輝く大太刀を背部のメテオリウム燃料タンクに突き刺す。

 急激に力を無くすMt・A。 漏れだした所から次々と装甲が結晶化する。

 力を失い倒れるMt・Aは、ツキカゲを背中に乗せたままうつぶせに倒れた。

 

 「こちらツキカゲ、半分片付いた」

 

 Mt・Aを倒しながら、ツキカゲは何事もなかったかのように連絡する。

 

 『おぅおぅ、相変わらず仕事が早いね~』

 

 「他は任せた。 俺は本拠地に向かう」

 

 コクピットから脱出して逃げ出す敵兵を見逃し、ツキカゲは倒れたMt・Aから降りた。

 着地した瞬間、手に持っていた大太刀の刀身にヒビが入る。

 

 「……次の一振りで終わりか」

 

 ツキカゲは困った様子を見せず、大太刀の割れた翠色の刀身を翠色の眼で眺める。

 そんなツキカゲに銃弾の嵐が襲いかかる。

 

 「翠晶眼!? なぜ今更になって!? エクスはまだか!!」

 

 隊長は叫びながらガトリングを打ち込む。

 ツキカゲは大太刀を風車のように振り回し、全ての弾丸を防御した。

 

 「このぉバケモノがぁぁぁーーー!!」

 

 隊長が投げた手榴弾をツキカゲは大太刀で弾く。

 後ろで起きた爆発を無視し、逃げようとした隊長に向かってツキカゲは大太刀を投げつける。

 断末魔のような叫びが響く。ツキカゲは隊長の足に刺した大太刀を引き抜く。

 

 「クラップス」

 

 限界がきた大太刀の刀身がぱりんと砕けた。ツキカゲは刀身が無くなった柄を捨てた。

 

 「あとは向こうか……太刀も十分だ」

 

 腰の太刀を構え、ツキカゲは殺伐とした雰囲気を身にまとい、壊滅対象のいる本拠地へと向かう──

 

 

──漆黒の輸送船の窓から顔を覗かせるカヨウは、ロボットや倒れる光景に圧巻していた。

 

 「あぁ~今日も盛大に暴れてるねぇ」

 

 カーチスは当然という風に笑う。

 

 「けれど早速一本壊してやがるの、まだ半分いるってのになぁ」

 

 カーチスは望遠鏡でその様子を眺めていた。

 

 「ツキカゲ、速すぎ、突撃、消費」

 

 「ま、そこをローちゃんでカバーしてね~」

 

 ローは頷きもせず、ただロングバレルのライフルを構える。

 

 (ツキカゲさん……あの人が一番強いのかな……)

 

 窓の向こう、一人で敵と戦うツキカゲをカヨウは心配し想う。

 

 「さ~て、ということで俺達も本格的に働きますかぁ~」

 

 カーチスが手を鳴らし、周りに声をかけた。

 

 「は、働き?」

 

 カヨウは心配な予感をした。 ツキカゲよりも、最初に自分を心配しろという言葉を思い出す。

 

 「残り半分、俺達で片付けるのさ」

 

 カーチスは不敵に、残忍に笑う。 

 

 「アケヨちゃんは奥で隠れてな。 あの甘ちゃんと違って、俺達は容赦ないからね♪」

 

 

 

 

 

──同じ時刻、教会内にいる牧師風の男性は立ち上がった。

 

 「翠晶眼が一匹、ですか」

 

 「あぁあぁそうだ!」

 

 リーダーは震え声で答える。

 

 「ま、それなりのランカーではあるようか……」

 

 牧師風の男性は、近くに置いたソレを担ぐ。

 枠組みの中の上下に刃を装填したソレは、台座の無いギロチンのようであった。

 

 「報酬は増えますよ、最近潤滑剤が足りなくて動きにくいですし」

 

 そう言って牧師風の男性は、首にかけた十字架をつまみ、中から出た針を首筋に射し込む。

 

 「それでもまぁ戦えます、俺も中堅以上のランカーですから」

 

 ステンドグラスの下のドアに牧師風の男性は向かう。

 

 「だからここで震えながら、この土地の神に祈りを捧げて待っててください」 

 

 ギロチンめいたものを担ぎ、外の光に照らされる男性の眼は翠色に輝いていた。

 

 「神のご加護の元で、ソイツの断末魔を響かせてあげましょう。俺こと“エクスプリースト”がね」

 

 牧師風の男性──エクスプリーストは気だるげに、それでいて冷酷な表情で宣言をした──

 

 

 




 いかがでしょうか?

 一回休憩はさんで、今回は戦闘から回です。 今回も途中で切れたので次回も休む暇なく戦います。 
 まだまだ未熟故に、上手く戦闘シーンを表現しきれてないです……ですが、これからも戦闘シーンを書き続け、力をつけていきたいです。 
 ということで、ツキカゲにはまだ戦ってもらいます。無情。


 
 
 

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