相変わらず文章力が粗雑な出来ですが、読んでもらって「描写が足りないじゃないか」みたいな評価を貰えれば、次から文章力が上がるかもしれません。そうなるよう精進します。
明朝、森に流れる湖に墜落した輸送船に、二隻の空中船や人が集まる。
「おいおいツキカゲ、ま~た派手にぶっ壊しやがって──」
湖に浮かぶ輸送船の羽の上に立つ男がぼやく。
眼鏡をかけ整った顔立ちとサラサラな髪質、一見すると礼節ある教養人に見える容姿。
「──そんなテメぇは、ホンットに最っ高だぁ!!」
だが、着崩したコート乱雑に縛ったオールバックの髪形、そして他人を小馬鹿にするような口調のせいでインテリな悪党にしか見えない。
「そんなテメぇは今、俺に処理を任せてどこ行ってんだかな~……なぁ?」
輸送船の中から少女が出てくる。
細身の体系に灰色の上着を着ており、その奥にはコンバットベルトを携行している。
ショートヘアの顔にはバンダナと牙を描いたマスクを着け、唯一見える瞳は獣を思わせる鋭さであった。
「ツキカゲ、輸送船内部、未発見」
少女は抑揚のない声で報告する。
「あらら~、ホントにどこ行ったんですかぁアイツは!?」
「不明、ツキカゲ、あのバカ、知らない」
抑揚なく、それでいて毒のある口調で、少女は返答する。
「ドア壊れてた、輸送船落ちる直前、脱出した可能性、ある」
「それしかないか~……んん~、ここいら一帯はよぉ、突然変異生物の巣窟じゃねーか?」
徐々に空が明るくなったが、輸送船が墜落したのは夜中である。
夜中になれば、様々な生物が夜闇を動くのは必然である。
「……ご愁傷さま」
「ま、そりゃ落ちたのはアイツの責任だけどさぁ、しゃーないね」
「生物の栄養、なってしまった」
「おいおーい、勝手にウチの稼ぎ代表を殺すなよ……ここにいないとなったら、一体何処での垂れてるんだ……」
墜落した輸送船内部はあらかた調べ尽くしていた。今はライフル等で武装した警察に連れ出され、奴隷や密輸業者、多数の負傷者が「痛いよお……」「早く直してくれえええ」「あのガキ……」「俺の腕……あのガキと女」と言いながら担架に運ばれる。
「密輸入された奴隷、
「お勤めご苦労様~、警察部隊の皆さ~ん!」
カーチスが軍服姿の警察に寄る。
「さてさて~、報酬の件ですが──」
「貴様らが、我々の上司が秘密裏に雇ったエニマリー共か」
上で飛んでいる、こちらの輸送船より設備が整っていそうな輸送船から、女性が一人降り立つ。
白い軍服めいたコートには華美な装飾、年はまだ若い方でありながら厳しい表情である。
「私はエイリーン・ソウマ、スカライズ警察3番隊の隊長だ」
女性──エイリーンは厳格な口調で名乗る。
「エニマリーパーティー"クランチェイン"責任者のカーチス・ハーディーです、以後お見知りおきを」
男──カーチスは礼儀正しく、イイ顔で挨拶した。
だが、あまりにも礼儀正しすぎて、胡散臭ささえあって不気味である。
「フン、貴様らと会うことはもう無いであろう」
「それはぁそれは残念です、せっかく姿勢のイイ美人に会えましたのに……」
「ウッ、貴様──フンッ、密輸品は、確かに確保した。謝礼はあとで送る、さよならだ」
カーチスの言動に蔑んだ表情を向けたあと、エイリーンは密輸品を回収する部下たちへ向かう。
「……破廉恥」
「そんなこと言うなってローちゃん、あれは社交辞令ってモンなんだ、大事な挨拶なんだぜ」
カーチスは己のナンパ行為に弁明しながら、警察部隊に眼を向ける。
エイリーンと警察部隊は、今回の件とは別らしい内容について話している。
「……"あの方"は……なに、ここにはいないと!?」
「密輸品はコレで全部です……ここには紛れ込んではいなかったようです……」
「どうしたんだぁい、エイリーンさん?」
カーチスはエイリーンの隣に、怪しさ溢れる笑顔で立つ。
何も音を立てず一瞬で近づいたカーチスに、エイリーンは身震いして離れる。
「ヒャッ!?……フ、フンッ、貴様らにもう用はない、これは我々スカライズ警察部隊の話だ」
「いやね~何かお手伝いでもしようかと~我々、エニマリーですし?」
「用はないといったら用はない!」
エイリーンは手ではらう仕草をして追っ払う。
「残念だな~」等と愚痴をこぼし、カーチスはその場を離れた。
「……変態」
「さっきより酷い言われようだな…… よし、ではツキカゲを探しに行きますか!」
そう言ってカーチスは、ローと呼ばれた少女と共に自分達の輸送船に戻る。
警察部隊が慌ただしく動く様子を背に、カーチスはせせら笑う。
「さてさて、皆さんも
──数時間前──
「確か向こうか、輸送船が落ちた場所は……」
夜の森林を、ツキカゲとカヨウは歩く。
ツキカゲは身なりはそれなりに汚れてるものの全く無傷、一方のカヨウは、ただでさえ最初から幾らか汚れていたワンピースがより一層汚れていた。
「夜明けまでまだ時間はかかあるか……」
ツキカゲは上を見上げる。
生い茂った木々が周りに立っており、葉の隙間から夜空が見える。
ツキカゲ達は落ちる時にそれらを通り、着地時の衝撃を和らげたのだ。
「フフっ、アハッ!」
後ろを見ると、カヨウは地面をスキップしながら歩いていた。
時折辺りの、月光に照らされた翠色の葉をもつ林を眺めながら、カヨウは嬉しげにスキップする。
その表情は、初めて美味しいモノを食べた赤子のように無邪気であった。
だが、ツキカゲがその様子を見てることに気づくと、途端に顔を赤らめおとなしくなる。
「アッ、その……うるさくてすみません……」
「いや別にいいが……怖くねぇのか?」
ツキカゲは、カヨウという人物が掴めないでいる。
「はい、少しこの世界が恐ろしいです……ですけど、貴方がいてくださるおかげで、心が安らげます」
奴隷にしては明るく、それでいて何かを隠しているような……カヨウという人物から感じることはそれしかない。
ツキカゲはそんなことを考えながら、眼の色を隠すサングラスがないのを悔やみつつ、自分の表情を手で隠した。
「あの……先程おっしゃった、私を回収するというのは……?」
カヨウが訪ねてくる。
コイツ、逃げてぇのか──ツキカゲはそう考えた。
「あぁ、それが今回の任務だからな、処遇が何であれ、アンタを回収する」
「それは……あの場所に戻すということですか……」
「あぁ、アンタには苦しいだろうが、俺は与えられた任務を遂行する。ただ、それだけだ」
悲しい表情をしたカヨウに背を向け、ツキカゲは歩く。
「よし、これから輸送船に──」
一瞬、ツキカゲはふらついた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「潤滑剤が切れただけだ……問題ない」
潤滑剤、ツキカゲのような翠晶眼の能力を飛躍的に上げる錠剤。
その反動でフラフラしながらも、ツキカゲはなんとか立つ。
「今から輸送船に向かう。 俺のパーティーがそこへ来るハズだ」
「パーティー……合流?」
「そこで合流してアンタを引き渡せば──」
突然、後ろから獣の咆哮が鳴り響く。
「キャアアアア!!」
暗がりに、狼のような獣の影がチラつく。
影には、翠色の光が灯っていた。
「クチッ、群れで来やがった!」
「た、助けてください!」
「こっちだ、ついてこい!」
頭を抱え、うずくまるカヨウの手を引き、ツキカゲは走り出す。
森の中を、二人の男女が手を繋ぎ走り、翠の光が多数で追いかける。
「大丈夫ですか!?」
「あぁ、問題ない!」
「眼がフラフラしています!」
「走れてるから問題ない! 潤滑剤は切れかかってるだけだ!!」
ツキカゲは横を見る。
林の隙間から、小川が見えた。
(よし、あそこなら戦いやすい!)
「おい女、あそこに行くぞ!」
「あ、え、ハイ!」
ツキカゲはカヨウの手を引き、小川に向かって走る方向を変える。
「アンタは近くに隠れてろ」
「どういうことですっキャア!?」
ツキカゲは繋いだ手を振り、カヨウを振りほどく。
ツキカゲはそのまま小川に出る。
(クナイは無し。手でいくのも、メテオリウムの牙相手には効かねぇか)
携えた"武蔵"を振り、己の手の甲を斬った。
翠色の、そして煌めく血液は吹き出す。
「来いよ、俺が見えやすいだろ……」
林から、ツキカゲの流す血の匂いに釣られ、翠の眼の獣が多数跳んでくる。
「俺もテメーらが見えやすいぜ、全員かかってこい!!」
カヨウは林の影から、その光景をただ眺めていた。
「凄い……強い……」
ツキカゲは華麗な動きで翠の眼の獣の噛みつきや引っ掻きを避け、そして隙を生んだ獣から次々と"武蔵"で斬る。
ツキカゲの眼には疲労が映る。
だがその剣技は、全く落ちることなく獣を斬りつける。
「人間……なの」
ツキカゲの眼は、獣や辺りの林と同じく、綺麗な翠色で灯っていた。
「あの眼──キャ」
「キャアア!!」
カヨウの悲鳴が聞こえる。
あらかた斬り終えたツキカゲは、悲鳴の方向に顔を向けた。
「おい!?」
小川にカヨウが跳び出してきた。
川に倒れ、そのまま腰を抜かしてしまった。
「キャ──」
カヨウに獣が襲いかかる。
翠の獣の、爪が、牙がカヨウのか弱く綺麗な肌に突き刺さろうとする──
「──エニマリーさん!?」
カヨウが抱えた頭を起こすと、目の前にツキカゲが立っていた。
その手には、獣の爪と牙が突き刺さっていた。
「…………!」
ツキカゲは腕に付いた獣を小川に叩きつける。
獣が流れる小川の中でもがく。
「……!……!」
ツキカゲは噛まれたままの腕で押さえつける。
時折歪むその顔には、翠色の眼が爛々と輝いていた。
「……!……!……」
やがて獣はぐったりとし、ツキカゲは腕を放す。
血が吹き出す手をそのままに、ツキカゲは"武蔵"を納刀する。
「行くぞ、ヤツらが回復する」
「え……?」
カヨウは後ろを振り返る。
そこにはツキカゲに斬られた獣達がうずくまっていた。
その体から翠の光は消え、時折鳴き声を上げ痙攣している。
(一匹も殺してない……)
「このぐらいすれば、しばらくは立てないだろう。 逃げるなら今のうちだ」
後ろを向いたままツキカゲは腕に抑える。
ツキカゲは腕の傷以外には、どこにも怪我は負っていなかった。
両眼の光も消えていた。
「アンタが頼むなら殺す」
「え!?」
ツキカゲは"武蔵"の柄に、怪我をしていない手を置く。
両眼が光ろうとする。
「報酬さえ払えるというなら、奴隷でも言うことを聞こう」
カヨウは茫然とし、そして間を置いて答えた。
「……大丈夫です、あのままにしておいてください」
ツキカゲは太刀から手を放す。
「まぁ奴隷が払えるモノなんて──」
ツキカゲはカヨウの方を向いた。
小川にヘタれこんだカヨウは、泣きそうな顔でコチラを見上げていた。
服はびしょ濡れであり、乙女の肌と下着がペッタリと透けて見える。
「どうなさいましたか……?」
「あぁと……服」
カヨウはキョトンとし、そして己の身体を見て赤らめた顔をより一層赤らめた。
「~!」
今にも爆発しそうな顔をして、カヨウは胸を両腕で隠す。
「……見ました?」
「あぁ見たが……」
「~!!」
「いや少しだけだから! それよりも……」
ツキカゲはカヨウの全身を眺め、あることに気づく。
「アンタ、奴隷番号はどこに掘ってあるんだ?」
奴隷番号、奴隷の身体に掘られた商品目印である。
大体は背中に掘られているハズが、全身どこを見ても見当たらなかった。
(ていうかよく見りゃ、コイツの服と下着も上品……)
「あの……」
カヨウは、何一つわからないという表情をしている。
「奴隷番号というのは何でしょうか? 奴隷というのも一体──」
ツキカゲは一つの仮説に思考がたどり着いた。
「おいアンタ、まさかと思うが──」
それが当たる可能性は低い。何故ならそう行動する人など出るハズないのだから──
「
カヨウはうつむき口を紡ぐ。
「身なりも綺麗だ、アンタ上級階級に住人だろ。何で地上に──」
「……見たかったんです、私の知らない世界を」
カヨウはうつむいた顔をツキカゲに上げた。
「私の名前はアケミジン・カヨウ、スカライズ3番地の貴族"アケミジン家"の次女です」
改めてカヨウは名乗る。
その顔は、救いを求めるような悲痛な表情だった。
二話目の出来、いかがでしょうか?
今回も突然終わったようで申し訳ありません……次がいつ投稿できるかわからない状況なので、ここら辺かなと思うところで投稿しています。
そんな事情で、終わらせ方は毎回こうなりそうです。次話もまた楽しみにしてくれる読者がいてくれれば、できる限り早めに投稿するべく精進します。