メテオリウム─翠晶眼の傭兵─   作:影迷彩

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 初投稿です。まず力試しです。
 文章など粗い部分が多々あります。至らない点等がありましたら、ご指摘お願いします。
 投稿は遅く、オリジナルなので受け入れにくそうな内容ですが、作者と作品共々文章力が
ついてくればいいなと思います。



──第一話 月夜の出会い──
──月夜の輸送船──


 翠色の地表より遥か上空、月光が照らす雲の上を、小型輸送船が飛んでいる。 

 鳥のように鋭利なウィングにジャイロを展開し、飛行しながら態勢を整えている。

 周りの景色は、黒い夜空と白い雲が対比的な色彩となり、 巨大な三日月が明るくそれらを照らしていた。

 

 『ハッチ、オープン!』

 

 輸送船の後部ハッチが開く。ハッチに風音が鳴り響く。

 開いたハッチの上を、風を受けながら立ち構える少年がいた。

 やや高めの身長、細身の体型は俊敏さと鋭さを漂わせており、羽織った紺色のジャケットを風になびかせ、納めた鞘を腰に二振り携えている。

 

 『やっこさんは見えたか~』

 

 少年の耳元の通信機に無線が入る。

 月光が少年の顔を照らす。透き通った肌、鋭く端正な顔立ち、眠気が残っている眼を細め雲を見下げる。髪の前半分は翠色であり、後ろ半分の黒い髪が縛った状態で風になびかせている。

 

「ああ見えた、いつでも乗り込める」

 

 月光下の雲には影が写り、この輸送船とは別の影がうっすらと写る。

 少年は身を沈める。その様はまるで獲物を定めた肉食獣のようであった。

 

 『さて、今回の任務は簡単、中にいる密輸業者さんたちの制圧、そして"密輸品"の押収だ』

 

 輸送船二隻の影が重なる。

 

 『それなりに兵士はいそうだが、後方支援はいるかい?』

 

 「簡単なんだろ、だったら俺一人で十分だ、ローガン達はいらない。そのぐらい分かるだろ?」

 『ハーハッハ、言うねぇ!』

 

 輸送船の影が重なった瞬間、少年は首筋に注射をうちこんだ。

 

 「こちらツキカゲ、任務開始」

 

 少年──ツキカゲはハッチを蹴って跳んだ。 

 

 『行ってらっしゃいな、ウチの看板傭兵さんの、ツキカゲよぉ!!』

 

 金色に輝く月を背に、ツキカゲは雲に沈む。 

 その眼は、鮮やかな翠色に灯されて光っていた──

 

 

 

──「ふぅーっ……」

 

 輸送船内、一人の少女が倉庫の奥で一息ついた。

 

 「……本当に抜け出してしまいました」

 

 何処からか、月明かりが差し込んだ。

 長く淑やかな黒髪に、幼さの残る顔立ち。 

 

 「外の世界、どういったものでしょうか」

 

 その表情は、不安げながらも何か求めているようであった。

 

 「私が知らない土地……私はそこで──自由になりたい」──

 

 

 

──近未来、資源が枯渇し、戦乱にまみれ、文明が衰退寸前となった時代。

 突如として世界中の地表に、多数の隕石が飛来し直撃した。

 

 降り注いだ隕石を採掘すると、中から枯渇した資源とは比べ物にならないほどのエネルギーを秘めた結晶が発見された。

 あらゆる技術や発明に転用可能な結晶は、周囲の環境にも似た結晶を作り上げ、人類の資源危機を大いに助けた。

 

 

 "メテオリウム"、人類は結晶をそう名付けた。

 

 

 メテオリウム採掘から数十年が経ち、地表の半分ほどが結晶に覆われた時代。

 

 メテオリウムは食物にまで影響を及ぼし、周囲の生態環境すら突然変異させた。

 突然変異した生物と地表を捨てた一部の人間は、影響を抑えたメテオリウムによって空を浮遊する国"スカイカントリー"を建造、地表から離れたその中で昔と変わらない生活を過ごした。

 地表に残されたのは、メテオリウムを基盤として最低限の生活を建てた人間と、メテオリウムによって進化した"翠晶眼"しかいなかった。

 それらは戦乱悪逆に荒れる世界で、単純明解な目的の為に、どんな仕事もする傭兵稼業"エニマリー"となって、己が"自由"に"生きる為"に戦う──

 

 

 

 

──「目標捕捉」 

 

 雲を突き抜けるツキカゲは太刀を一振り抜いた。

 メテオリウム製である翠色の刀身を下に向け、ツキカゲは密輸船の後部、平らな屋根に着地する。

 ツキカゲは素早く太刀を屋根に突き刺し、丸形に切り取った。メテオリウム製の太刀──Mt・TB"武蔵"と、ツキカゲの"身体能力"さえあれば十分な芸当である。

 丸形の穴を通って侵入した瞬間、銃弾が顔を掠める。ツキカゲは身を屈め銃弾の発射された方向に走り、サブマシンガンを持った兵士を"武蔵"で斬り倒す。

 

 「ツキカゲ、制圧開始」

 

 室内はほぼ一方通行、コクピットを目指してツキカゲは廊下を走る。

 何回か兵士に遭遇し、走るツキカゲに向けてサブマシンガンを乱射した。

 だが、壁を走ってたりして避け、銃弾を腕部のガントレットで防御するツキカゲには一切傷を負わせられない。

 

 「何なんだ、このガキ!?」

 

 何も傷を負わせられない兵士達は、接近したツキカゲに素手で突かれるか、ガントレットから取り出されたクナイに刺され失神させられた。

 ツキカゲの通った廊下は、血溜まりとクナイと呻き声で覆われた。

 

 「船内に侵入しグハッ!!」

 

 騒ぎは大きくなり、廊下に兵士が群がる。

 

 「全員押し寄せろ、その方がまとめて倒しやすい」

 

 ツキカゲは呟く。その眼は翠色の光を灯していた。その様子は、明らかに普通の人間ではなかった。

 

 「あのガキ、"翠晶眼"だぞ!!」

 

 「これだけ大勢なんだ、それでもガキ一人──」

 

 素早く動き、速い連撃を繰り出すツキカゲは、話させるヒマすら与えず兵士達を斬り倒す。

 

 「くそ……バケモノが……グハッ」

 

 兵士の声に反応せず、ツキカゲは新たな獲物を求めて走り出す──

 

 

 

──「な、何ですの……!?」

 少女は倉庫から、廊下に響く銃撃音と呻き声に恐怖した。

 

 「い、一体何が起きているのですか──」

 

 「侵入者だ、撃て!!」

 

倉庫の外で走る音が通りすぎた。

 

 「侵入者──!?」

 

少女は逡巡し、そして倉庫内から走って逃げた。

 留まっては、捕まるからだ──

 

 

──死屍累々のごとく声も途絶えた輸送船、兵士もあらかた片付けられた。

 一つ一つの部屋を調べ品を探すも、目的の品は見つからなかった。

 

 『ソイツは違うねぇ、ただのやっこさんの趣味だ』

 

 「コイツがか……そうだろうと思ったが」

 

 扉を閉め、次の部屋に向かおうとするツキカゲ。

 繋がれた無線から、男の声がうるさく聞こえる。

 

 『これでほぼ全て制圧完了したなぁ、あとはお目当ての品々だけ』

 

 「お目当ての品が何なのか、俺は聞いてないからわからない」

 

 『それはねぇ、見てからのお楽しみっっつーことで♪』

 

 「探しにくい、さっさと説明してくれカーチス──いや待て、少し静かにしろ」

 

 廊下辺りから足音が聞こえる。

 ツキカゲは廊下の角に身を潜め──素早く飛び出し"武蔵"を振るおうとした。

 

 「キャッ!」

 

 歩いていた人物は尻餅をついた。武装はしていない。

 

 「……女?」

 

 ツキカゲは思わず驚く。

 その人物は可憐な少女であった。儚く弱々しげな身体、長く淑やかな黒髪、今にも泣き出しそうな幼げの顔。

 服は白いワンピースであったが少し汚れており、首筋には銀のペンダントを着けていた。

 

 「えっと、アンタは……?」

 

 「えと……降伏します」

 

 少女は尻餅をついたまま手を上げる。

 その手首には、縄で縛られた跡はあった。

 

 『奴隷だよ』

 

 無線が入る。切ったわけではないので、こちらの声は男──カーチスに聞こえていた。

 

 『それが今回の密輸品だ。"スカライズ"は表向きで奴隷は禁止だからなぁ、この手の密輸はよくある』

 

 「これ……テメーがか」

 

 ツキカゲは納得した。こういうのは仕事は久しぶりとはいえ、何度か見てきたのだから。

 

 「あぁっと……俺は"エニマリー"。アンタを回収しに来た」 

 

 ツキカゲは職業を名乗った。

 "エニマリー"、何でも屋みたいな職業である。

 

 「……私はカヨウ。私を回収……?」

 

 「ああそうだ、俺と一緒に──」

 

 "行くぞ"と言おうとした瞬間、銃弾がまた襲いかかってきた。

 

 「伏せろ!」

 

 ツキカゲは少女──カヨウに言って"武蔵"を構えた。

 

 「は、ハイ!」

 

 頭を抱え伏せたカヨウの上を"武蔵"が振るわれた。

 ほぼ全ての銃弾は壁へとはらわれたが、一発だけ通信機に当たってしまった。

 

 「クソ、連絡が……」

 

 「キャアアア!!」

 

 ツキカゲは下を向いた。そこにはだれもいなかった。

 足音と悲鳴が廊下に鳴り響く。

 

 「チッ、段々鈍ってきやがった……」

 

 ツキカゲはカヨウを連れ去られた方向に走る──

 

 

 

──コクピット室、カヨウはここまで連れ去られた。

 ツキカゲはドアを蹴破る。

 銃弾が多数飛んできたが、"武蔵"で全て斬り落とす。

 

 「動くな、動いたらコイツの命は無いと思え!」

 

 姑息な発言がコクピット室に響く。

 眼の前でサングラスをかけたひょろ長い男がいた。

 サングラスの男のこれまたひょろ長い腕に、カヨウが首を掴まれ喘いでいた。

 

 「た、助けてください!」

 

 「黙れ! まさか翠晶眼を持つ"エニマリー"が乗り込むとは……」

 

 男はサブマシンガンをカヨウの顔に向ける。

 声を出さずにカヨウは泣きじゃくる。

 

 「その太刀を捨てな、さもなくば撃つぞ!」

 

 ツキカゲはうろたえない。

 

 「あれほどの動きだとランクは4か5程度か…… だけど"潤滑剤"の効果はモッテるかい?」

 

 ツキカゲは"武蔵"を構える。

 

 「先までの連戦で"潤滑剤"が切れかかっているお前…… 今はどちらが強いか、翠晶眼ならわかるだろ? 今は俺様ウィップクローが上手だ!」

 

 男──ウィップクローのサングラスの内側の眼がほくそ笑んだように感じる。外側からは眼の様子が見えなかった。

 

 「いや、銃を持ってるテメーに言われてもさっぱりだな」

 

 ツキカゲは体勢をとり続ける。

 

 「まあいい、その太刀を捨てなければ、仲間の命はないと思え!」

 

 (仲間……?)

 

 自分らが売り捌く奴隷の顔すらわからないとは──ツキカゲは呆れたような感情を抱く。

 

 「……わかった」

 

 ツキカゲは前に"武蔵"を投げ捨てる。

 投げ捨てた瞬間、カヨウはコクピット側面に投げ出された。 

 ウッとカヨウは呻き倒れる。

 

 「"ウィップクロー"!!」

 

 その時、カヨウを離した腕が前に降られ、2mほど伸びて振るった。

 

 「かかったな!」 

 

 叫んだウィップクローの手は鉤爪となっており、ツキカゲを襲おうとした。

 

 「初見じゃ誰もかわせたことがない! これで終わりだ」

 

 ツキカゲの眼が翠色に輝く。

 その瞬間ツキカゲの姿が消えた。

 

 「グハッ!?」

 

 ウィップクローは声を上げる。その身体には、投げ捨てられたハズの"武蔵"が刺されていた。

 

 「な、何だ今──」

 

 ウィップクローには何が起きたかさっぱりだった。

 "武蔵"が前に投げ出された瞬間、ツキカゲが"武蔵"を掴んで眼の前にいた。

 ある程度の動きは読んだハズだが、それでもあの速さ──

 

 「今のがお前の変異能か!」

 

 サングラスが落ち、そしてウィップクローの胴体も崩れ倒れる。

 その眼は、やはり翠色であった。

 

 「それがテメーの変異した部分か、さっきカヨウって女を引っ張ったのもこれか」

 

 "武蔵"を引っこ抜き、ツキカゲは後ろから戻されてきた伸びた腕の鉤爪を受け止める。

 

 「こ……んのおおお!」

 

 ツキカゲは後ろに後退する。

 後退するツキカゲを追って、ウィップクローの鉤爪が振り回される。

 その腕にツキカゲは"武蔵"を刺す。

 

 「ウアウアアウウアア!!」

 

 刺したままツキカゲは前に突っ斬る。

 伸びた腕が筋に切られる。

 最早声にすら鳴らない悲鳴を上げるウィップクローに、ツキカゲの"武蔵"が迫る。

 

 「シ……死にたくなアアア!」

 

 "武蔵"が腕から抜かれる。

 自分の首が飛ばされる……そうウィップクローは確信した。

 

 「──ハッ」

 

 ツキカゲは止まり、"武蔵"を納刀した。

 

 「……ハう?」

 

 「それほど傷つければ、"変異能"は使えないだろ」

 

 ツキカゲはそう言ってノビた腕を踏んで、片隅でうずくまるカヨウに向かった。

 

 「イダッ!」

 

 「これだけのダメージだ、"潤滑剤"もすぐ切れ動けまい」

 

 いつの間にかウィップクローは気絶していた。

 ツキカゲは"武蔵"を捨てた。ツキカゲの手から離れた瞬間、"武蔵"の刀身は砕け散った。

 同じく気を失っているカヨウを担ぎ、ツキカゲはコクピット室を出る。

 

 「他愛ない雑魚……ん?」

 

 ツキカゲはミスしたことに気がついた。

 ウィップクローの肩を突き刺した"武蔵"は、輸送船のコントロールパネルも突き破っていた。

 

 ウウウウウウウウ!

 

 警報アラームが鳴り響き、[墜落まであと──]なんて警告も流れていく。

 

 

 「チッ、これだから輸送船は!」

 

 カヨウを担ぎ、ツキカゲは外に出る道を探す。

 途中で起き上がった兵士に銃撃されるも、それらを太刀で受け止め倒す。

 だが数発か、腕や足に銃弾を喰らってしまった。

 

 「やっぱり切れてきやがるか……」

 

 ツキカゲは首筋にまた注射──潤滑剤を打ち込む。

 光を失った眼に、翠色の輝きが戻る。

 ちょうど眼の前にドアがあった。

 

 「ウウ……ウン」 

 

 カヨウが眼を覚ます。

 

 「ここは……」

 

 「輸送船だ、これから墜落するところ」

 

 「墜ら……く!?」

 

 「俺から離されるなよ」

 

 そう言ってツキカゲはドアを蹴破る。

 ドアは外を飛んで消えていった。地表は翠色の森である。

 ツキカゲはカヨウを担ぎ、臆することなく飛び降りた。

 

 「!!!!!!!!!!!!!」

 

 「チッ、今日は面倒だ……」

 

 カヨウとツキカゲは地表へ落ちる。

 降り立つ地表には森林、月明かりに照らされ、翠色の輝きを放っていた。

 

 「地、地表……!」

 

 カヨウは地表の光景を──初めて見る(・・・・・)光景に不安と恐れ、それらと同等の好奇心を強く抱いた。

 

 儚げな容貌の少女──カヨウと、翠色の眼を持つ少年カヨウ──ツキカゲ

 両者は夜の闇へと消えていった。

 

 

 




 いかがでしたでしょうか?
 変な所で終わってしまい申し訳ございません。
 色々駆け足だろう描写、色んな作品で見たような内容だろうと思いますが、そんな内容でも評価を貰えれば嬉しいです。

 また、作者は仕事等で本作を書ける時間はあまりなく、いわゆる亀投稿となります。
 「ダメダメだけど続きを読んでみたい」という評価が貰えるぐらいには、また頑張って書いていこうと思います。

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