あと、作者も忘れがちですが今回の話でカノンもまだ小学生ということを再確認していただきたい。
11月になった。
あれからもちょくちょくデジタルワールドへ行っては各地を見て回っていたのだが、いまだにパンプモンたちは発見できていない。バステモン達とは連絡を取り合い、色々と復興作業を行っている。
チューモンについてはファイル島に帰ってきたのを見つけた。ただ、なんかメタリックな汚物に乗っていたが。彼の相棒であるスカモンの生まれ変わりというわけではないのだが、亜種のプラチナスカモンと知り合ったそうな。無口な奴で趣味は各地の風景を描くことらしい……見た目に反して雅な。
彼に乗って各地を回りつつスカモンやレオモンの生まれ変わりを探しているらしい。パートナーデジモンたちとも連絡を取り合っており、ゲンナイさんらとも何度か交信しているとか。プラチナスカモンは互いの目的の都合がいいから一緒に行動しているってところか。
「へぇ……でも、まだそう時間は経ってないからなぁ」
「そうなんだ。今はデジタルワールドの再生を進めているって」
「何とかゲンナイさんと通信したいところだけど……ゲートが完全に復旧したら光子郎さんから通信してもらった方が早いか?」
「それなら、もうすぐ回復するって聞いたよ。アグモンたちも、メッセージを届けるのにサッカーをやるって」
「それでこの前練習していたのか……よし、そろそろ顔を出してみるか」
というわけで、アグモンたちのところへ。
全員でサッカーをやっているが……微妙に間違っているような? まあ、それでもいいのか。どうも太一さんの家にメッセージを届けるようだ。はじまりは太一さんの家にデジタマがやってきたことだからな……ここから再スタートってことか。まあ、太一さんも気落ちしてサッカーから離れちゃっているし、これがいいきっかけになると思う。
と、そんなことを考えているとボールがすっ飛んできた。胸で受け止めて、アグモンたちに返したが……やべぇ、顔出しするつもりはなかったんだが。
「か、カノン!? ドルモンたちも……どうしてここに!?」
「いやぁ……僕たちは自由にこっちに来れるから」
「みんな、久しぶりー」
「アンタたち、相変わらず無茶苦茶なのね」
テイルモン、それはどういう意味だ。というかドルモンたちも無茶苦茶認定されているし。爆笑していると、いきなりドルモンが殴りかかってきた。
「おま、なにすんじゃ!?」
「こっちまで規格外認定だよ! どうしてくれる!」
「今更だろうが!!」
というわけで、殴り合いの喧嘩に発展していったのだが……みんなは止めることもなく、サッカーへ戻っていってしまった。ちなみに、プロットモンはそっちに行ってしまい僕たちはそのまま泥沼の戦いへと陥ってしまう。
「大体、外面ばかり良く見せようとし過ぎなんだよカノンは! 素は荒っぽい癖に!」
「なんだと!? お前だって特撮見た後は暴れまわって大変なんだぞ!」
「カノンだって同じようなものだろうが! ライダー派がッ」
「なんだとこの戦隊派がッ」
「みんなに趣味隠しているとか恥ずかしいわー。マジ恥ずかしいわー」
「テメェ……いい加減にしろよ」
結局、互いに殴り合い罵り合い、日常生活の小さなストレスが一気に噴き出しただけだった。そして最終的に、映画館へ行こうという話で落ち着いたわけである。
いやもう、喧嘩の理由なんて忘れていたわ。ダブルノックダウンで頭が冷えたともいう。
◇◇◇◇◇
「というわけで、向こうに行っていました」
「何がというわけだよこの野郎!」
後日というかその日の夕方、アグモンたちがサッカーしている様子を自宅のパソコンから見ていた太一さんに僕たちがあの場にいたことを問い詰められました。あと、後ろでヒカリちゃんが終始笑顔なのが怖いです。無言はやめてほしい。
「お前、向こうに行けたなら教えろよ!」
「でも他のみんなを連れて行けるわけでもなかったですし、ヒカリちゃん以外落ち込んでいたので……なんか、すいません」
「ハア……まったく、ゲートがまた開いたからいいけど…………あんまり秘密にしすぎるのもどうかと思うぞ」
「というか太一さんたちだって僕たちを避けていたでしょうに」
「それは、まあ……」
ゲートが開いたおかげで、そこらへんのわだかまりは解けたのだが、やはり変なしこりは残ったままで太一さんも言いよどむ。
よし、今のうちに脱出を……しかし、ヒカリちゃんが回り込んだ。
「どこに行くのかなー?」
「……」
「あ、カノン。おれたち晩御飯の時間だから帰るね」
「がんばってです……」
「う、裏切り者!?」
「ほら、早く全部白状した方が身のためだよ?」
「あー……ヒカリは怒ると長いぞ。頑張れ」
「そんなご無体な!?」
流石に時間移動に関しては言えなかったが、デジヴァイスXのこととかは色々と言わなくてはいけませんでした。太一さんもデジヴァイスの改造についてはあきれ顔を通り越して、無表情になるレベルだったことだけは伝えておく。
◇◇◇◇◇
「とまあ、そんなことがありました」
「太一さんからゲートが開いた連絡を貰った時より驚いていますよ……デジヴァイスの改造なんてそんなことが出来るんですか?」
「まあ、僕のは色々と例外だったので」
後日、光子郎さんの家でゲンナイさんと連絡が取れないか聞いてみたついでにデジヴァイスの話に。
子供たち全員にゲートの話は行っているみたいだ。光子郎さんもここ数カ月よりは落ち着いていた。
「カード型にしたんですね」
「ええ。機能は基本的に同じですけど、他のデジヴァイスと違って聖なる力はないですけど」
「聖なるデバイスのはずだったんですが……」
「目的の違いですかねぇ……僕ら、戦う相手が暗黒系とは限らないので」
むしろ利用する時さえもあるし。というか今後もまだ戦いは続くことが確定しちゃっている身だし。
「ハァ……数年後にまた厄介ごと確定してるんですよ僕ら」
「な、なんというか……頑張ってください」
「がんばりますけどねぇ……それで、ゲンナイさんは?」
「まだ連絡はつきません。カノン君たちはデジタルワールドへ行けるんですよね?」
「はい。こうなったら直接ゲンナイさんの家に赴いた方がよさそうだなと」
「その方が早いでしょう。デジタルワールドの地図を出してもらえますか?」
持ってきたパソコンでデジタルワールドの地図を表示し、サーバ大陸を拡大する。光子郎さんがあの時はこう進んだから……と冒険のことを思い出しつつ大体の位置を教えてくれる。
「たぶん、この湖がゲンナイさんの家があった場所です」
「湖の中か……ありがとうございます」
「いえ。でも以前とは少々地形が異なっているようにも思えますから今もそこにあるかは……それにしても、他の大陸などもあったんですね」
「まあ僕もほとんど回ってませんが。フォルダ大陸にバステモンが行っていたのでそっちに行ったぐらいですね。目的地無しだとキツイですし」
「確かにそうかもしれませんね。そういえば、テントモンは元気でしたか?」
「元気でしたよ。パートナーデジモン全員、ファイル島で仲良くやってました。他のみんなも探しましたけど、オーガモンは放浪の旅に出ているのでどこにいるのかわかりませんけど、そのうちパンプモンたちの顔を見に行く予定です」
「そうですか……あの二人は何をしているんですか?」
「なんか、デジタマモンに弟子入りしておでんの屋台を引っ張っているらしいです」
「……なぜ?」
「さぁ……」
一定の場所にいないから噂話などから場所を推察するしかない。ただ、元気にやってはいるみたいだ。
ちなみに、彼らの屋台ではドルではなく円を使用する。
◇◇◇◇◇
ゲンナイさんの家に押しかけました。
「おぬし、無茶苦茶すぎやせんか?」
「そうですかね?」
「カノン、水中にそのまま歩いていくのは色々と怖いよ」
「です」
まあ自分でも水中にあるゲンナイさんの家に入るために湖の中を歩いていくのはどうかとも思ったが……ここにあるかもわからなかったし、とりあえず中を調べるしかなかったから。
バリアーを張りつつ歩いていくと、すぐに見つかったけど。
「でも日本庭園とか良いところに住んでいますねー」
「まったくいきなり押しかけてきおって……じゃが、ちょうどよい。ワシもおぬしとは一度ちゃんと話をしたかったんじゃ」
「それはまたどうして……」
「ワシに埋め込まれた暗黒の力、おぬしなら取り出せるんじゃないかとおもっての」
「あー」
そう言えばそんな話もありましたね。
というわけで、ゲンナイさんの体を調べてみたのだが……ダメだ。時間が立ちすぎていて僕じゃ無理だわ。
「すいません、長いことこの状態だからか僕の魔法だと無理です」
「いや、ダメ元で言っただけじゃから気に負わんでもいい。それに別の対処法もある。ピエモンの力を入れられても無事だったおぬしならもしやとも思ったんじゃが……」
「埋め込まれた直後なら外せたかもしれませんけどね。まあ、精神データとも結びついているから、当人が本気ではずしたいと思わないとダメですけど」
「そこまでわかるのは予想以上じゃったが……」
バグラモンやリリスモンとの特訓でスキルアップしまくったから。
あと、色々と見せてもらったりゲートを開く際には一応注意してほしいなどと言われたりなどした。イリアスやウィッチェルニーのような別次元のデジタルワールドと接続されてしまう可能性もなくはないらしい。
「それに、中にはとても危険な世界もある。それこそ、暗黒の力に覆われた場所なども」
「世界ってどれくらいあるんですか?」
「そうじゃのう……わかっている範囲では7種類ほど。その7種類ではデジモンも人間も比較的安定して存在を保てる世界じゃ。人間界、デジタルワールド、ウイッチェルニー、イリアスの4種類は安全な方じゃが他の世界には気を付けた方がいい」
場合によっては入るだけで存在が希薄になる世界もあるとか。座標の打ち込みは慎重に行おう。
それと、今後の方針についても話すこととなった。
「今後また騒動が起こるやもしれんが、おぬしは極力手を出さんように」
「見てるだけで我慢しろと?」
「というより、おぬしたちの力は規格外すぎる。被害が大きくなりそうだったりすれば別にいいが、下手をしたら他のものの成長の機会を奪いかねん。まあ、状況を見て決めてくれ」
「アバウトな……」
「でも仕方がないんじゃないの?」
「それはそうかもしれないけどね」
もしかしたらパートナーデジモンを持つ子供も増えるかもしれないらしい。そうなった場合、僕たちがいちいち手を出すのも良くないだろう。
まあ、世界の危機とかだったら別段止めないらしいが。
「あと究極体に対処できるのは基本的におぬしたちだけになりそうじゃし、スマンが何かあったらよろしく頼む」
「太一さんとヤマトさんもいるけど……どういうこと?」
「まだ未定な部分もあるんじゃが、準備や調べ物もあるし詳しい話は来年になるじゃろうな。まあ、どうなるかはわからんから記憶の隅にでもとどめておいとくれ」
よくわからないが、究極体による問題が発生したら対処してほしいってことだろう。
今のデジタルワールドで自然発生的に究極体が現れることは少ないみたいだし、すぐに何かあるわけじゃないだろうけどね。
◇◇◇◇◇
現実世界では1月になり、寒い日が続く。
2000年問題なんて話もあったが何事もなく日々が過ぎていった。いや、正確にはデジタルワールドで何か騒動があったらしいんだけど、その件に関しては僕たちは全く関わっていない。
「炬燵でミカンもいいもんだ」
「です」
「だねぇ……」
なんか色々とあちらでも騒動は起きたりしたけど、基本的に僕らは人間界にいる。まあ、冬休みは冬休みで色々と忙しかったが。大晦日の騒動には関わっていないだけで、結構大変な目には遭っていたからなぁ……
究極体のゴクモンってデジモンがいるんだが、そいつがどこからか脱走して大変な被害を出しているから止めてくれって言われたり。結構素早かったので、ディノタイガモン・バーストモードを初使用したりした。
サーベルレオモンのデータが顕著になり、メタルボディも強化された姿でスピードもかなり速い。
「ただ、自分のスピードで目を回すってどうなのよ」
「面目ない……」
まあその騒動は割と楽に終わったし、特筆することもないんだけどね。
あとは……サッカー部で怪我人が続出して助っ人を頼まれたりとかあったな。身体強化をしてなかったから手を抜ていないかって太一さんに言われたけど、流石にそんな時にまで魔法は使いませんって。ドーピングみたいなものですよって言ったら納得したからいいが。
ただ、助っ人のあとで監督とかに勧誘されたのには困ったが。
「そう言えばカノン、光子郎の言っていたパソコン部には入るの?」
「一応ね。しかし光子郎さん小学校にパソコン部を立ち上げるとは……」
それもあってサッカー部のことは丁重にお断りさせていただいた。その時は他にやることもあったし。
パンプモンたちも発見できたし、あとやるべきことか済ませておくことはあっただろうか……あ、アレを忘れてた。いや、別にすぐにどうこうする問題でもないけど……
「どうしたの、難しい顔をして」
「いや、ベルゼブモンってどこに行ったんだろうって思って」
「あぁそう言えば」
「結局お台場にはもういなかったし……どこで何をしてるんだろうなって思ったんだけど…………居場所の心当たりもないし、探しようもないんだよな」
まあ、心配する必要もないし遭遇したらそれはそれで面倒なんだろうけど。
となるとやはり、数年後にくるであろう厄介ごとのために準備しておいた方がいいか。
だけど僕たちは知る由もなかった。2か月後、世界中を巻き込んだ大騒動が起こるだなんて。
というわけで、次回ついにウォーゲーム開幕。
他にも予定していた閑話はありますが、時期的にウォーゲームの後がいいと判断したので早々に次行きます。
triのハックモン、声優さん決まりましたねー……サイスルとは違って歴戦の戦士っぽい感じになりそうなんだが。
私的なことになりますが、エアコンが水漏れしてヤバい。