デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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シリアス続きだったのがイカンかったんや。いや、最近もギャグ挟んでいたけど今回は終始軽いノリです。
分かる人にはわかるネタが多いというか……ドラマCDネタ多しですのでご注意。


71.日帰りデジタルワールド

 さて、現実世界に帰還してもう結構たつ。すでに葉っぱの色も変わり、すっかり秋だ。おでんのおいしい季節になってきた。破壊されたお台場も立て直されて以前の生活に戻ることが出来た……夏をクーラー無しで過ごすことになって、かなり大変だったな。

 僕たちはというと、地道に色々とやっている。魔法の開発や特訓にデジヴァイスXでどこまで出来るのか試したり。あと、忘れないうちに今までの冒険のことを纏めたりなど。

 

「なあドルモン、バステモンと出会った島ってどこだっけか?」

「ハワイのどこかしかわかんないよ」

「そうなんだよなぁ……いいや、ハワイってだけ書いておこう」

 

 細かいところは色々と忘れているんだよな。マキナとのことはハッキリと覚えているんだけど。

 あと、流石にショッキングな部分とかは覚えている。グロイこととか痛いことって記憶に残るんだよね。

 話は変わるんだが、ショッキングと言えば話はこの前、丈さんの家族と遭遇したんだが……全員同じ声だった。母親も含めて。あまりのショックに丈さんを身体強化して全力で殴りそうになってしまった。

 いかんいかん……根を詰め過ぎたのか思考が逸れている。

 

「……んー、気晴らしに行ってみるか」

 

 こっちではすでに9月。向こうでは季節はどうなっているんだろうか? 何も日本と同じとは限らないが……そもそも季節があるのかが怪しいが。エリアごとに気候はあるだろうけど。

 太一さんたちの様子を見に行ってもいいが、相も変わらずヒカリちゃん以外は燃え尽き症候群みたいになっている。言葉としては正しい使い方と言っていいか微妙だけど、やっぱり一番しっくりくる言い方だな。

 とまあ、そういうことでいまだにみんなとはちゃんと会話することが出来てい。こういう状況だからこそ、向こう側の様子も見ておきたい。

 

「ドルモン、プロットモン。デジタルワールドへ行ってみるか」

「? 行ってもいいのかな。一応、僕たちが悪影響を与えないようにってことでこっちにいるのに」

「それはそうなんだけど……復旧はほとんど終わっているみたいで、数日前からゲートは開けるようになっていたんだよ。すぐにいく必要もなかったから言わなかったけど」

 

 というわけで、行ってみるかどうか二人に尋ねたが……どうやら乗り気なようで体をほぐしていた。

 さてと、それなら行ってみるか。トラブルがあるかもしれないから一応準備はしてみた。すぐに帰ってくる予定だから水筒とちょっとおにぎりとかを入れておく。あとは絆創膏とか。

 

「さて、ゲート展開」

 

 僕がそう言うと、床にX抗体を図式化したような見た目の魔法陣が展開される。

 

「……え、パソコンを使うんじゃないの!?」

「このままいけるです!?」

「そうだけど……やり過ぎたかな?」

 

 直後に、二人からやり過ぎだよと怒られた。だって、パソコンを介したとしてもゲートサイズは変わらないんだからいいじゃないか。え、そういう問題じゃない?

 少々呆れられたが、今はデジタルワールドへ行くことが先だと言わんばかりに魔法陣の上に乗る。僕もゲートに乗って――僕らは再びデジタルワールドへ飛び立った。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 奇妙な浮遊感が起こる。グルグルと体が回転して、気分が悪い。しかも体中にビリビリと電流が走るような……これ、僕たち以外は使えないな。X抗体の力や魔力などの防壁がないときつすぎる。ちなみに、デジヴァイスXにはX抗体の抵抗力を組み込んだ障壁プログラムが備わっており、所有者を守るシールド機能が備わっている。まあ、そこまで強くないからデジモンの攻撃から守れるわけじゃないけど。

 それに床にゲートを展開したのは失敗だった。出口へ出るときに体勢が変わるから錐もみ回転してしまう。しかもデジタルワールドへ来ると自動的にマフラーが具現化するから更に遠心力が……

 そしてゲートを出た直後――うっぷ。

 

「おぇ……」

「気持ちわりぃ」

「うぅ……です」

 

 スマナイ。もうちょっと出口の計算をしておくべきだった。

 とりあえず座標は分かっているはじまりの町へ来たが……相変わらずデジタマが多いな。

 右を向けばデジタマ。左を向いてもデジタマ。そして正面を向けば目を見開いているエレキモン。

 

「さて、僕は何も見なかった」

「いや誤魔化されねぇからな!?」

 

 スルーして逃げようと思ったけどダメだった。

 結局エレキモンに捕まってしまい、なんでここにいるのか吐かされてしまう。さっき吐いたけど。

 

「カノン、うまくないからね」

「しかも汚いです」

「なんか、すまん」

「で、結局なんでここにいるんだ? お前たち帰ったんだろう……ってそう言えばお前は最後は別行動だったな。帰ってなかったのか?」

「いや、帰ったんだけどちょっと様子を見に来てみた。僕だけだったら自由に来れるし」

「……お前、結構無茶苦茶な奴なんだな」

 

 自覚はしている。

 

「それで……なんでここに?」

「いや、僕ってデジタルワールドの座標ここしか知らないし」

「そういえば再構築はファイル島からだったし、お前はスパイラルマウンテンに統合される前のデジタルワールドには来ていなかったんだよな……なあ、タケル元気か?」

「離れたところに住んでいるから最近会っていないけど……元気ではあると思う」

 

 ヒカリちゃんの次には。

 希望の紋章の持ち主だからか、他のみんなよりも前向きに再会を信じているし。もっとも、ヒカリちゃんは確信しているから落ち込んですらいないんだが。

 

「そのうち会えると思うよ。世界のつながりが完全に閉じていたら僕もこっちに来れないし」

「そうか……ありがとうな」

「ううん、どういたしまして……それで、他のみんなってどこにいるか知ってる?」

「あの後それぞれ好きに移動したからな。えらばれし子供たちのデジモンはたぶんファイル島の中にいると思うが、他はよくわからないな……いや、チューモンはファイル島のデジモンだし、ここにいるはずだぜ」

「そうか。パンプモンとゴツモンがどこに行ったか知りたかったんだけど……」

「うーん……しばらくは俺を手伝ってくれていたんだけど、ある日突然――」

 

『俺たちは食の明日を作るぜ!』

『デジタルワールドの料理チャンピオンを目指すんだ!』

 

「――とか言って旅立った」

「なんでだよ!?」

「わけがわからないです」

 

 いやもうホント、わけがわからない。ヤマトさんたちと出会った時も渋谷系デジモンとか言っていたし。今度は何に影響されたんだろうか?

 とりあえずアイツらはよほどのことが無ければたくましく生きていけそうだし、とりあえず放置で。

 あと知っておきたいのは……バステモンたちはどこにいるんだろうか?

 

「バステモンなら、モニタモンの隠れ里に一緒に行ったぜ。どこにあるかは知らないが……たぶんフォルダ大陸だな」

「サーバ大陸じゃなくて?」

「ああ。フォルダ大陸だ」

 

 ちょっとまって……持ってきたノートPCにデジヴァイスを接続して地図データを表示する。えっと……結構でかいな。WWW大陸じゃなくて助かったが。そっちだったら探しきれないぞデカすぎて。

 えっと……どうする? ゲンナイさんを探した方がはやいかもしれない……いや、あの人の家はサーバ大陸か。となるとアグモンたちを探した方がいいか。

 

「……面倒になった。帰るか」

「諦めるのが早いよ」

 

 そうは言ってもこのまま探しても疲れるだけだし。

 というわけで、いったん帰ろうかとも思ったが……そう言えば僕たちってデジタルワールドをまともに見て回っていないよな。

 

「うーん、せっかくだし少しだけ見て回るか」

「そうだよ!」

「まあなんにせよ気をつけろよ。お前らなら大丈夫だと思うが、クワガーモンとかいきなり襲ってくるぞ」

「分かった。ありがとうなー!」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 はじまりの町を出て、とりあえず適当に見て回る。

 ファイル島も結構広いし、ラプタードラモンに進化してもらって……いや速すぎるか。

 

「プロちゃんも進化したいです」

「と言ってもなぁ……普通に経験値を積むしかないんだろうけど…………かといって進化しちゃうと家に置くのも難しくなるジレンマ」

「うーん、今の姿気に入ってるです……戻れないのは嫌、です」

 

 普通は戻るわけじゃないからなぁ。アーマー進化ならいけるかもしれないが……アレって暴走の危険性もあるんだよな。ドルモンは自己改造で調整出来たから何とかなっていたが、プロットモンにはそういう事はできないし。

 

「まあそれは追々考えればいいか」

「です」

 

 確かに進化すれば強くなるが、データ量が大きくなると弊害が生まれるかもしれないし。それに、何も進化するだけがすべてではない。

 究極体にまで進化すると、存在自体が空間に作用するようになってしまうみたいだし。場合によってはひどいことにもなる。完全体や成熟期であってもデジタルワールドを壊せるようなデジモンはいるんだし……スカルグレイモンやクロックモンとか。前者は物理的にで後者は特殊能力って違いはあるけど。

 

「今は研究してシミュレートするしかないか」

「それはいいんだけど、次はどこに向かうの?」

「そうだなぁ……適当に歩いているけど森ばっかりだな」

 

 ムゲンマウンテンに登ろうか? いや、疲れそうだし……飛んでいけばいいんだろうけど、今日はとりあえずデジタルワールドを見て回るだけだしそこまでガチにならなくてもいいか。

 しばらく歩いていると草原地帯に出てきたが、聞きなれた声が聞こえてきた。

 

「あれって……アグモンたちみたいだな」

「本当だ。声かける?」

「うーん……太一さんたちよりも先に会うのもなぁ」

 

 集音魔法で聞き取ってみる……気がつかれないようにステルス魔法も。

 盗み聞きだけどね。

 

『サッカーってどうやるんだろうね』

『えっと、確かボールを蹴ってゴールに入れ合うんだよ』

 

 ……なぜサッカー? とりあえず邪魔しちゃ悪いしここは離れておくか。

 チューモンはファイル島にいるらしいし、彼を探す方がいいかもしれない。

 あと確認しておきたいのはオーガモンなんだけど……たぶん見つからないな。放浪の旅に出ているし。

 

「というわけで次はどこへ行ってみようか?」

「うーん……海岸は?」

「それもいいかもね」

 

 まあ移動手段は欲しいのでラプタードラモンへ。海岸までひとっとびである。ちなみにアーマー進化。エネルギー効率と加速力が通常よりも良いのだ。

 しかし海岸にやってきたのはいいが何もない。電話ボックスが並んでいる以外に見るところもない。壊されていたはずの電話ボックスはデジタルワールドの再生と共に復活したらしいが……至極どうでもいい。

 

「……あ、わかった。これチューモン見つからないパターンだ」

「簡単にあきらめないでよカノン」

「そうです」

「でもなぁ……」

 

 というか目的のない旅ってどこへ行けばいいかわからないから。

 唯一目的地というか居場所が判明しているのはモニタモンの隠れ里なんだけど……隠れ里って言うぐらいだし、見つけ出すのは――いや待てよ?

 僕のより能力はいわばイグドラシルの未来予測演算をわかりやすい形で見ていただけだ。つまり、イグドラシルへの接続能力による副産物。

 ならば……イグドラシルに接続して隠れ里の座標を知ることが出来るんじゃないか?

 

「――――」

 

 精神を集中してイグドラシルへ接続する。周囲の音が遠くなり、あの情報樹のイメージが脳裏に浮かび始めた。

 同時に、アレに接続している別の存在も検知。どうやらバグラモンはいまだ健在らしい。ただ、あの空間は位相が少々異なるからそれ以上は分からないが。

 とにかくデータベースへアクセス。えっと、検索ワードが必要なのか……モニタモンの隠れ里、位置。検索エンジンの画面が脳裏に浮かぶんだが。

 まあ、位置は分かったけど……ゲートを開いていくのは無理だな。直接飛んでいかないといけないみたいだ。僕のデジヴァイスでは一度行ったことのある場所じゃないとゲートを開けないかもしれない。

 

「主要なポイントをあらかじめ登録しておいてショートカットを作っておくか」

 

 とりあえずファイル島ははじまりの町に作っておいて、モニタモンの隠れ里にも作りに行こう。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「というわけでやってきました……高速で飛んだから寒い」

「いきなりやってきてそれなの?」

 

 唐突にやってきたからか、バステモンの眼が丸くなっている。流石に唐突過ぎただろうか。

 

「それはまあ、皆さま人間界に戻られてしまいましたし、カノン殿もあれからどうなったのかわかりませんでしたから」

「あーそう言えばそうか。心配かけたかな?」

「いえ、むしろまた何かとんでもないことをやらかしたのではないかと思っておりました」

 

 モニタモン、それはさすがにひどいと思うんだ。いや、イグドラシル破壊しちゃったけど。

 

「やはり案の定ではないですか!?」

「にゃぁ……相変わらず無茶するねぇ。そっか、その問題を解決したのカノンたちだったんだね」

「どうやらそうみたいで。でも、本来は安全に管理者が移行されるはずだったんだよね?」

「うん。そう聞いているよ。なんか深刻なバグか何かで外部から無理やり停止させて復旧やら移行処理に時間がかかったらしいけど」

 

 ……なんかすいません。あと、バステモンにデジメンタルの件を伝えると自分がデジメンタルの処理に回されたことに納得がいったらしい。どうも、いくらなんでも人間界へ派遣される理由には弱すぎるなと思っていたそうだが、エンシェントワイズモンの作ったものなら納得だそうだ。

 一体何者なんだよエンシェントワイズモン……

 

「デジタルワールド一の賢者だね。知らないことは何もないっていうぐらいスゴイデジモンだったんだって。まあ、今はもういないけどね」

「一説では、イグドラシルの持つ未来予測演算機能や一部のデジモンが持つ未来予知能力は彼がオリジナルだったとも言われております」

「そこまでなのか……イグドラシル以上って大丈夫なのか?」

「十闘士の時代のイグドラシルには大きな力はないと思うよ。むしろ、デジモンたちを観測して学習していた段階なんじゃないかなぁ? まあ、バステモン的にはどうでもいいかもー……みゅう」

 

 そのままバステモンは寝てしまい……だめだ。爆睡してやがる。

 

「これはしばらく起きませんな。まったく、その気になれば優秀な賢者になれるでしょうに」

「それはそれでバステモンらしくないけどな」

「だねぇ」

「むしろ寝てないバステモンなんてバステモンじゃないです」

「あなた方も結構言いますな……」

 

 とまあ、そんなこんなで近況報告と様子見も終わり、里の位置情報をデジヴァイスに登録しておく。

 変なところにゲートを開かないように細かい設定をしておかないと次が大変だし。

 

「ってわけで今日はもう帰るよ」

「またくるです」

「他の皆さまにもよろしくお伝えくだされ」

 

 それはゲートの問題が解決したらになるかなぁ……

 




あとはゲートが開くくだりとパンプモンたちかなぁ……あと現実世界で一本やってウォーゲームへ行く予定です。

02を見直してカノンの絡み方を考える日々。
とりあえずゲートに関しては使い勝手を調整した結果こうなりました。どんどん集団行動に不向きなっていく……ある意味一番の欠点ですね。

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