デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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色々と独自設定マシマシ。


66.ステップアップ

 リリスモンに連れられてやってきたのは、草原のような場所。なんだか見覚えがあるような気もするが……

 

「さて、どうしたものかしらねー」

「それよりも頭を放してください! 死んじゃう、僕死んじゃう!」

「ちゃんと魔力コーティングして腐敗しないようにしているわよ。流石に何でもかんでも腐敗させたら不便だもの」

 

 それでも精神衛生上悪いです!

 ほいっと無造作に投げ捨てられ解放されたが……怖かった。かつてないほどに。

 

「まったく情けないわね」

「いや、貴女のことを知っていたら誰だってそうなりますって」

 

 リリスモンの右手は触れたものすべてを腐敗させるという強力な力を持つ。七大魔王に恥じぬ力の持ち主だ。触れられたらアウトとかすさまじいにもほどがある。

 

「……で、それはどうやって知ったの?」

「――――あれ?」

 

 言われて疑問が浮かんできた。いや、イグドラシルから引き出しているのは分かっているのだがあまりにもスムーズに情報を引き出していやしないかと。

 

「アンタのその力は、陛下と同種……いえ、根っこは違うわね。やっていることは非常によく似ているけど」

「……七大魔王なのにバグラモンの下についている?」

「そこはどうでもよろしい。まあ、昔色々とあったのよ。こんどあの男に会ったときにでも聞きなさい」

 

 あの男って……マサキさんのことかな? まあ、事情は知っていそうだし会えればその時でいいか。リリスモンは教える気ないみたいだし。

 リリスモンは顎に手を当てて何かを考えると、それしかないかとつぶやいて手のひらに魔法陣を展開した。

 

「コレがどういう魔法かわかる?」

「……闇属性、下位砲撃。魔力弾を打ち出す魔法」

「素質は十分みたいね。魔法の知識はどうやって手に入れたの?」

「ほとんどは独学だけど、ウィザーモンのデータを貰って彼の知識を譲り受けた」

「見たところそのようね。でも、まだ器が完成していない……」

 

 器? 体がまだ子供と言う事だろうか。いや、そんな感じじゃないみたいだが……どういうことなのかさっぱりわからない。

 

「言葉で説明するのは難しいのよねぇ……アタシ、基本人に教えるタイプじゃないし」

「というかさっきから何の話なのかがさっぱり何ですが」

「簡単に言えば、アタシが教えてやるって言っているのよ。魔法をね」

 

 ……え゛?

 

 ◇◇◇◇◇

 

 一方その頃、ドルモンたちはというと……

 

「カノンがー!?」

「お、おいかけるです?」

「まあ待ちたまえ。君たちにも話がある」

 

 バグラモンがそう語りかけ、この場に留めていた。

 ドルモンたちとしては早いところカノンを追いかけたいのだが、この魔王の力はとてつもない。下手をしたらアポカリモンに匹敵するほどだ。

 だからこそ、ドルモンはそれが疑問となった。

 

「そんなに強いのに、マサキたちに負けたのか?」

「ああ。力の強さだけがすべてではない。君たちもそれは知っているのではないかな」

「……」

「沈黙は是。昔、彼らと戦争の様な事をしてね……私、リリスモン。それにタクティモンとブラストモン。それから配下のデジモンたち……イグドラシルからホメオスタシスへ管理者が移行し、様々なことが起きた。私は私の理想に従い戦った。破棄されたはずのイグドラシルシステムを発見し、それを用いていたためイグドラシルとホメオスタシスの対立と当初は思われていたがね」

「……それって、バステモンが言っていた?」

「デジタルワールドと人間界では色々なズレがあるから何とも言えないが……君の言うバステモンはホメオスタシスに仕えているバステモンか?」

「うん。魔法の使えるバステモン」

「ああ、彼女か……少しだけ知っているよ。なるほど、今は人間界にいるはずだが……いや、君たちには時間軸は関係のない話だったな。今も、昔も。未来でも」

 

 バグラモンが何か意味深な言葉を言っているが、ドルモンたちにはそれが何を意味しているか知りようもない。カノンならば何か思い至った可能性もあるが。

 

「それで、なんでカノンを?」

「彼はまだ自分が何者なのかをまったく理解していない。器も未完成、それに魔法の使い方も甘すぎる。ようやく入り口に立ったレベルだ」

「でも、究極体にも効くんだよ?」

「一時的に麻痺させたりが限度だろう? 彼が自分のうちに眠る力を理解したのならば、今の状態でもダメージを与えることすら可能になる」

 

 まさか。そう思ったがドルモンだって何度も見たことがある。カノンが人間の範疇をはるかに超えた力を持つことを。魔法を使い、ブラスト進化を引き起こした。同年代の子供よりもはるかに高い知能。

 

「…………」

「おそらくは、彼が生まれる際に何らかのアプローチ――いや、そうじゃないな」

 

 バグラモンがその右目を光らせている。この目を使うことで彼は様々な事象を知ることが出来る。故に、カノンのことも見ただけで何者なのかを知ることが出来た。彼が持つ運命も含めて。

 

「器が完成してしまえばもう後戻りはできない。それでも彼は突き進むのだろう……その先に、彼が彼たる理由を知るはずだ」

「理由?」

「ああ。物事には必ず理由がある。君が生まれた理由は既に見てきたのだろう? Xプログラムの化身よ」

「――――」

 

 それは、ドルモンが見ないようにしていた事だった。

 プロットモンも不安そうにドルモンを見ている。デクスドルゴラモンはプロトタイプデジモンのデジコアとXプログラムを融合させることで誕生していた。その際に使われたXプログラムは、デジタルワールドに残されたXプログラムをすべて注ぎ込まれている。ならば、そのデクスドルゴラモンが転生したドルモンは一体どんな存在なのか。

 

「……そうだよ。おれは、この世界を滅ぼすために生まれたデジモンだ」

「私が言っておいてなんだが、そう悲観することはない。君の出生にも必ず理由がある。この時間退行は君が君である理由を見つけることが重要なのだ。いずれ、この旅が必要なものであったことを知る時が来るだろう」

「…………なあプロットモン、カノンには言わないでくれよ」

「はい、です」

 

 カノンもその点には気が付いているハズだ。それでも、何も言わない。

 いかなる理由があろうとも、直視することは困難な話だ。それに実際にXプログラムから生まれたX抗体の力が無ければ危ない場面だってあった。

 

「分かってはいるんだけどなぁ……」

「デジモンも、自身の存在を疑問に思い壁にぶつかる時がある」

「……バグラモンも、壁にぶつかったの?」

「ああ……大きな壁にな。もっとも、その壁を壊してしまった人間もいたのだが。人とデジモン、双方の力が合わさった時に生まれる可能性は無限だ。良い方向にも悪い方向にもいってしまうが……」

 

 バグラモンが空を見上げる。そこには様々な思いが込められているのだろう。

 もう終わった話であるし、語って聞かせることでもない。ただ、戦いがあった。それだけだ。

 

「…………いかんな。一つ失敗したことも思い出してしまった」

「失敗?」

「ズワルトのデジコアが無事にデジタマになっていることを祈るばかりだが……こればかりは私にもどうなるかわからない」

 

 詳しく聞かせてくれるつもりはないようだが、少し顔に苦さが浮かんでいる。

 大失敗というほどでもないようだが、何か心配事でもあるらしい。

 

「ズワルトってデジモン?」

「ああ。コードネームのようなものだがね。正式な名前は私も知らない。データベースも文字化けしていて読み取れないのだ……ブラックデジトロンという物質を取り込んだ聖騎士というのは分かるのだが…………タクティモンと共に討ち取ったのはいいのだが、力の調整がまだ完璧ではなかったために時空の歪にデジコアが落ちてしまってね。通常ならばデジタマへ転生するはずだったのだが……おそらく、別の時間に飛ばされたのだろうが」

 

 未来ならばまだいいが、過去だと少々マズイ。

 現代に影響が出ていないことを踏まえると未来に飛ばされたと思うべきなのだが……ちなみに、消滅はまず無いと考えている。アレはX抗体以上の力を持った存在だった。次に生まれ変わる時にどんなデジモンになっているかはわからないが。

 

「そこまでして倒すデジモンだったの?」

「ああ。イグドラシルが自ら封印したイレギュラーな個体だったようでね。そのままにしておくのも危険だったのだよ。デジタルハザードに匹敵する存在だったため、メギドラモンやミラージュガオガモンのように私自ら封印を行う必要があったのだが……想像以上の力を持っていたため、やむなくという形だ」

「あのミラージュガオガモンよりも強いデジモン……」

「それって、あの遺跡のです?」

「君たちはアレと戦ったのか」

「むしろ倒しちゃったけど――――バグラモン?」

 

 ドルモンがそう言うと、バグラモンは目を丸くしていた。いったいどうしたのだろうかと思うと、はははと彼が笑いだす。ツボにはまったという感じではないようだが、何が面白いのだろうかと首をかしげる二匹。

 

「いやなに。バーストモードを習得していることからもしやと思ったが、そうかそうか……誇りたまえ。君の力はデジタルワールドでも最上位に近いものだろう。通常のデジモンならば歯が立たないほどに。立ち向かえば、ことごとぐが破壊される」

「破壊神か何かになったのかおれは」

「ドルゴラモンの力を考えれば、似たようなものだ。そういうデジモンだからな」

「そんなぁ……」

「もっとも。持続時間はいまだ短いようだが……そうだな、ブラストモンだと加減ができない。タクティモンと戦ってみればいいだろう。君の力を引き出してくれるはずだ。それに、デジヴァイスを最適化させる参考になる」

「……へ?」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 場所はカノンたちのところに戻る。

 カノンの周囲にはいくつものリングが展開されており、それぞれ違う属性の魔法だった。

 

「並列操作がこんなに難しいだなんて……」

「まだ計算に頼り過ぎているわよ。アタシたちの魔法は高級プログラム言語。もっと抽象的でも発動可能。それに、アンタのうちに眠る力を少しでも引き出せればもっと強力な魔法だって使えるのよ」

「そうは言われても、これ結構キツイ」

「文句を言う前に反復練習」

 

 スパルタだなぁと思いつつも、それを口に出したら何をされるのかわからない。

 カノンは今まで実戦の中で力を伸ばしていたが、実はこうした本格的な特訓は初めてだった。というのも、現実世界では特訓できる環境が無かったのだが。

 いつものように第六台場を使用してもいいのだが、流石に派手なことはできない。そのため、日ごろからちまちまとした作業で訓練していた。

 

「大規模な処理はあまりやったことなかったっけ……で、これでどうすればいいんですか?」

「まあまあね。ウィザーモンのデータに頼らずに、アンタのやり方を模索しなさい。魔法剣はいい線行っているわよ。元になったデータはあるようだけど、自分のオリジナルになっているようだしね」

「そういえば、アルファモンの聖剣グレイダルファーに似ているけど……なんか関係があるのかな」

 

 双剣グレイダルファーが元となっているが、見た目はアルファモンの聖剣に似ている。しかし、あの魔法剣を使いだしたのはアルファモンを見る前だった。

 偶然なのだろうかとも思うが……リリスモンは少し考えた後おそらくと前置きして話を続ける。

 

「偶然ね。蓄積したデータを光の剣として使うのに最も適していた形にたどり着いたのよ。込められた属性は違うみたいだけど」

「込められた属性?」

「そう。アルファモンについては一応知っているんだけど、あくまでデータ上ね。それを踏まえても聖属性の力しか使えない剣よ。でも、アンタのは違う。属性の部分は好きに変えられるハズ」

「それって……」

「ええ。炎の剣でも水の剣でも自由にね。言うなれば、”魔法剣グレイダルファー”ってところかしら。人間の身でデジモンの技を生み出すって時点ですさまじいのだけれど」

 

 もっとも、普通の人間じゃないからいいのか。最後にそう呟いたが、カノンの耳にはそれは届いていなかった。

 自分の力の新たな可能性を見出されて、頭の中に構想が編まれていく。今までの戦いと手に入れた力。苦い思いも含めて――両手に剣を生み出していた。

 

「――――、一言でここまで化けるだなんて。それに、その力は」

 

 カノンの右手には光で出来た剣。左手には闇で出来た剣が握られていた。

 

「まったく、ルーチェモンかアンタは」

「……前に、僕がブラスト進化させたエンジェウーモンがマスティモンってデジモンに進化していたのを思い出したんです。相反した力であっても両立できないわけじゃない、ってね」

「だとしても普通は実行しないわよ……それに、ブラスト進化か」

「知っているんですか?」

「ええ。陛下も調べていたけど……デジモンのリミッターを外部から解放することで行う進化よ。デジモンだけでは不可能だから陛下も詳しくは調べていなかったようだけど…………バーストモードの方に注目していったのよね」

「バーストモードは確か……内部から解放しているんだっけか」

「ええ。どっちもリミッター解除だから併用はできないけど」

 

 となると、アルファモンバーストモードは無理か。そう思うカノンであった。もっとも、負担が大きすぎるとは思うので出来ても使わなかっただろうが。

 




リミッターの解除云々は独自ですからねー。

というわけで、感想でも指摘がありましたがアルファモンはバーストモードになりません。


トライの特番、ニコ生やるみたいですね。タイムシフトは忘れずにね。

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