レディーデビモンを降した太一たちであったが、その直後に最後のダークマスターズ。ピエモンが姿を現した。
その顔には不敵な笑みを浮かべており、ゆっくりとした足取りで太一たちの元へ歩み寄ってきている。
「おやおや、まだ全員そろっておりませんでしたか。それに、厄介な0人目もいないようで……これはネオデビモンたちが上手くやってくれましたかね?」
「ピエモン……ついにここまで来たぞ」
まだ全員そろったわけではない。しかし、今この場で戦えるのは自分たちだけだ。
「いくぞ、アグモン!」
「アグモン、ワープ進化!」
太一のデジヴィスがオレンジ色に輝き、アグモンの姿を変化させる。
急速にデジコアの情報が更新されていき世代をとばして究極体、ウォーグレイモンへと進化させたのだ。
「……たしかに、あなた方で私と戦える可能性があるのはウォーグレイモンだけですが――ぬるい。ぬるすぎる。メタルシードラモンとムゲンドラモンがたまたま相性の上で有利だっただけのこと。この私も同じように見てもらっては困ります」
「そんなことは分かっている――でも、やるしかないだろ」
ウォーグレイモンとピエモンがにらみ合い、両者が相手の出方をうかがう。緊張感が増していき、そして――激突した。
「ドラモンキラー!」
「効かぬ! トランプソード!」
四本の剣がウォーグレイモンを狙い、飛び回る。何とか紙一重でかわしていくものの、スピードが速すぎてかわすのだけでもかなり危ない状況だ。
「――ハッ!」
その隙を突き、ピエモンがウォーグレイモンへ掌底をぶつける。
体が弾き飛ばされ、何度もバウンドするが受け身をとって再び立ち上がった……力の差は歴然。他のデジモンの援護があれば別かもしれないが……
「太一さん、僕たちも援護を!」
「ダメだ。光子郎はヒカリを守っていてくれ……それに、アイツまだ何か隠していやがる」
空と、兄を迎えに行くためついていったタケル以外、光子郎とヒカリがこの場に残っている。それにアンドロモンともんざえモンもいる。彼らもいる以上援護を頼んでもいいのだが、ピエモンの余裕そうな表情が気にかかるのだ。それに、奴が漏らした言葉。
「ネオデビモンたちって言っていたよな……お前、まだ手下が控えているんじゃないか? それとも、光子郎たちに聞いた他の究極体でもいたりしてな」
「――ふふふ、失言でしたね。制御できない代物ですので使わないつもりでしたが…………楽しい余興にはなってくれますかね」
そう言うと、ピエモンは飛び上がり指を鳴らす。それに合わせて上空にデータの粒子と何かのパーツらしきものが集まりだしてきた。
「ちょっと太一さん! 余計なことを言ったんじゃないですか!?」
「いいんだ……少しでも時間を稼がないとマズイ。それに、ピエモンを相手するよりかはマシだろうぜ」
「でも、あのパーツ……僕たちが見た三体のマシーン型のような」
「…………予想以上に、マズいか?」
「スカルグレイモンみたいにマズイ感じがしてきたんですが……」
バチバチと放電が始まり、パーツ同士が結びついていく。更に、破損したデータが絡み合い別の形へと変貌を遂げていく。その際にピエモンが懐から取り出したのは真っ黒い球体。
「これはシェイドモン。絶望や闇の力を吸収し、凶悪なデジモンへと進化しますが……このようにデータの残滓を利用し、核として使えばこの通り!」
球体にたくさんの眼が現れ、影のような形になったかと思うと次の瞬間にはその姿をより巨大なものへと変化させていた。緑色の体に巨大な両腕。右腕は銃の形をしている。
戦車か、戦闘機のようにも見えるデジモン。
「三体の究極体の力が一つとなることで生まれる、さらなる究極体。それがこのライデンモンです。もっとも、あの男によって倒された三体のデータの欠片とシェイドモンの特性を利用して誕生しているので本来のスペックよりは劣りますが……あなたたちに倒せますかな?」
「太一、コイツ……危険だ」
「ああ――アンドロモン、もんざえモン。援護を頼む!」
「了解しました」
「――!」
二体の完全体の援護を背後に、ウォーグレイモンが飛びつく。
しかしライデンモンはその腕を振り回し、彼を吹き飛ばしてしまう。
「――ガァ!?」
「ウォーグレイモン!?」
「――――ハイジョ。デリートシマス」
ライデンモンの合成音声が響く。その銃口をウォーグレイモンへと向け――腕の下からもんざえモンがアッパーを喰らわせてウォーグレイモンを助ける。
続いて、アンドロモンが左腕を殴り飛ばして顔の付近を無防備にした。
「いまだ!」
「ガイアフォース!」
濃縮されたエネルギーの塊がウォーグレイモンの両手に作られ、ライデンモンへと放たれた。そして、そのまま着弾し爆発が起きる。煙があたりにまき散らされ、視界が塞がるが……
「やったか?」
直後に、銃声が響き渡る。悲鳴と共に三体のデジモンが弾き飛ばされ、煙の中から飛び出してきた。
言葉も出ず、ただ見ていることしかできなかった。ウォーグレイモン達の攻撃にもびくともせず、感情の無い瞳でその銃口にエネルギーをチャージしていく。それは自身の限界すらも上回っており、今にも爆発しそうな勢いだ。
「やはり暴走しましたか――しかし、これでえらばれし子供たちもジ・エンドですね」
そして、その砲撃が放たれようとして――――銃口が巨大な爪に潰された。
「――――は?」
ピエモンも何が起きたのかわからない。ただ、見たこともないデジモンがライデンモンの右腕を破壊したのだ。すぐにライデンモンも反撃をしようと左腕で殴り飛ばそうとするが、デジモンから数人の人影が飛んだのと同時にデジモンの姿が変化する。
ウォーグレイモンにも似た姿だが、侍のような出で立ちをしている。二本の刀でライデンモンの腕を切り裂き、蹴り飛ばす。
「――――キケン。タダチニ、マッサツ………ツ、ツツ」
「無駄だ。お前の中にエネルギーを送り込んだ……消えろ。ガイアリアクター」
直後に、ライデンモンの体が爆発する。内側からガイアフォースのようなエネルギーの渦が巻き起こり、彼の体を粉々に粉砕した。後に残ったのはデータの塵のみで……もう再生もできないだろう。
「つ、つえぇ……なんだあのデジモン」
「ガイオウモン。究極体……グレイモン系の亜種です。先ほどのはディノタイガモン、究極体。でも、他の究極体に変化するなんて――」
「そんなことできるの、一人しかいねぇだろ……なあ、カノン」
そう、先ほどディノタイガモンから飛び降りたのは彼、橘カノンであった。頭に白い物体を乗せ、ネコ型の獣人デジモン、バステモンとテレビのような忍者っぽいデジモンのモニタモンを連れている。
「やっぱわかりますか」
「もん?」
「それに、そのトコモンはどうしたんだ……」
「デジタマから生まれました。ずっとくっ付いてきます」
「それにそっちのデジモンたちは……」
「バステモンはバステモンだよー。よろしくねえらばれし子供たちー」
「モニタモンと申します。どうぞよろしく」
とりあえず引っ付いていられてもなぁとカノンはトコモンを引きはがし、ヒカリに預ける。
「はいヒカリちゃん、こいつお願い」
「それはいいけど……あれがバステモン?」
「うん」
「やっぱり――なんかムカつく」
「ああ、私もだ。何か心の奥底で泣かせてやるって気持ちになる」
「お二人さん!?」
なぜと思うが、深く突っ込まない方がよさそうだと彼女から離れることにしたカノン。太一と光子郎は先ほどのキャットファイトを思い出し、顔を青くしていた。ちなみにバステモンはよくわかっておらず、首をかしげている。
「ははは、感動の再会といったところですね」
「まあそういう事で。だから邪魔すんなよピエモン」
「そういうわけにも参りません……しかし、予想外の展開で驚いていますよ。あの大部隊からよくぞ逃げてきましたね」
「大部隊? ああネオデビモンとか色々いたあれか……すぐに片付いたぞ、アレ」
「――――」
流石にピエモンもそれには予想外だったのか、目を丸くしている。
カノンはなんてことないように言っているが、実際にとんでもないことであるのだ。バステモンが数を減らしていたとはいえ、それでもまだ大勢のデジモンがいた。それでも障害にもなっていないというのだ。
「ガイオウモンだと相性が悪いか……暗黒属性も入っているし、同じ属性でぶつかっても仕方がないな」
「なら、スライド進化――ドルゴラモン!」
今度はドルゴラモンへと姿が変わる。これでえらばれし子供たちの側には究極体が二体――いや、三体だ。
後方から青色の影が見えてくる。すぐに到達し、ウォーグレイモンの横に並んだ。
「ガルルモン!? ってことは……ヤマト!」
「太一! みんな!」
「ヤマト君、連れてきたわよ――って、そのデジモンは!?」
ガルルモンはすぐにメタルガルルモンへ進化し、ピエモンをにらみつける。空たちもドルゴラモンの姿に驚くが、カノンが手を振り状況を把握した。彼も問題を解決し、ここまでたどり着いたのだ。
「……八神太一、君の目論見通り時間稼ぎは成功したようですね。まったく、ここまで誤算が続くとは思いもしませんでしたよ」
「へっ! そりゃよかったぜ。でもこれで形勢逆転だな」
「それはどうでしょうね……どうやら、本気を出さなくてはいけないようだ」
ピエモンが手を上に向けると、どこからともなく白い影が飛来した。剣のようにも見えるが、放電をしており、クワガタムシのような姿に見える。
「デジモン――?」
「ブレイドクワガーモン。成熟期のデジモンですが、全身がクロンデジゾイドで出来ている希少種です。このように、武器として使えば――!」
ピエモンがブレイドクワガーモンを揮うと、真空の刃が発生する。すぐさまドルゴラモンが防いだものの、体が下げられてしまっていたことから、とてつもない威力だというのがわかる。
どうやら、ピエモンの力でブレイドクワガーモンの技を増幅して使っているようだ。
「さて――楽しいバトルの始まりです」
「んー、クロンデジゾイドときたか……いきなりトップギアで行くのもまずいし、二人ともどうしますか?」
「カノン、まだ何かあるのか? 究極体三種類だけじゃなくて他にも?」
「いえ、進化できるのは三種類ですが……短時間だけならピエモン以上の出力が出せますよ。使ったらしばらく戦えない諸刃ですけど」
「だったらここぞって時まで温存しておけ、道は俺たちが作る!」
「ああ――頼むぞストライカー!」
「それ太一さんの役目じゃないかな!」
「生憎、俺はキャプテンだよ! ヤマトはリベロな!」
「何でもかんでもサッカーで例えるなよ! とにかく行くぞ!!」
そう言って、三体の究極体と共に三人が動く。ウォーグレイモンが最初に動き、ピエモンの攻撃をけん制し始める。単純に考えれば、手に持った武器の威力が増しているのだ。さらに、電撃の攻撃まで加わっている。
メタルガルルモンがコキュートスブレスで地面を凍らせてピエモンの動きを阻害する。そこに、ドルゴラモンが衝撃波で攻撃を仕掛けていった。
「なかなかの連携です――しかし、これならどうだ!」
ピエモンの背から剣が飛び出していく。彼の周りを回転し、近づいてくるウォーグレイモンを迎撃するのだ。しかしそれに合わせてメタルガルルモンからミサイルがいくつも飛び出していき、剣を打ち落としていく。ドルゴラモンが体を回転させ、尻尾を振り回し――そこにウォーグレイモンが飛び乗った。
「いっけぇ!!」
「――ブレイブトルネード!!」
ドルゴラモンの力で加速し、ピエモンの知覚を越えてウォーグレイモンが突撃する。流石に咄嗟の防御しかできずにピエモンは押され切って岩壁へと激突してしまった。
「――この、調子に乗らないで頂こう!」
「だったら、こいつはどうかな――ガイアフォース!」
「コキュートスブレス!」
ウォーグレイモンとメタルガルルモンの攻撃が混ざり合い、ピエモンへと迫る。しかし、それを見たピエモンはにやりと笑って――ブレイドクワガーモンへ闇の力を注ぎ込んでいった。
「デジモンの限界能力を突破した末に現れる姿、それこそが――」
「バーストモード!」
「――!?」
ドルゴラモンの姿が紅く染まっていく。バーストモード、それはデジモンの持つ限界能力の解放であり、デジコアの奥底に刻まれている情報が引き出されることで、その外見にも持つデータの特徴が現れる。
彼の場合は黙示録の赤き竜の姿に酷似したものへと変化する。さらに、
「ブレイブインパルス!」
「――ッ!」
ピエモンもブレイドクワガーモンを強制的にバーストモードにしたうえで、合体攻撃を切り裂いたままドルゴラモンの攻撃を迎え撃つが――押されていたのは、ピエモンの方だった。
「まさか、バーストモードまで会得していたとは……甘く見過ぎていましたね! だったら……ッ」
ピエモンが何かを呟いたのと同時に――彼の周囲にいくつもの魔法陣が出現する。そこからあらゆる魔法が放出され、ピエモンの体を拭き飛ばして攻撃を回避してしまったのだ。直後に、ドルゴラモンはすぐにドルモンの姿へと戻ってしまう。
「――カノン、ごめん」
「一歩届かなかった! でも、確実にダメージは入っている。それに、ブレイドクワガーモンはいない。手のうちも明かさせた!」
「いけ、ウォーグレイモン!」
「メタルガルルモン! 止めを!」
ドルモンが倒れるものの、いまだ二体は健在だ。すぐに追撃にうつるが……ピエモンは鋭い眼光で睨みつけ、ウォーグレイモンを殴り飛ばして二体を地面へと叩き落としてしまう。
「――なにッ」
「コイツ、まだこんなパワーが!?」
「こんなやり方、私の流儀に反するんですがね……そうも言っていられないようで――――」
ピエモンが白い布を取り出した。子供たちは手品デモするのかと思ったが、ただ一人。ずっとピエモンの行動から次の動きを予測しようと彼を見ていたカノンだけは、その危険性を見抜いた。しかし、止める間もなく太一とヤマトが飛び出す。ウォーグレイモンとメタルガルルモンに布が覆いかぶさろうとしていた時、何かの危険を感じたのかもしれない。
「ダメだ! その布から離れて――」
「もう遅いわ!」
ウォーグレイモンとメタルガルルモンだけではない。太一とヤマトにまで布は覆いかぶさり、そして――彼らの姿が消えてしまった。
改定前は諦めていたネタなどを盛り込みまくり。
あと、シェイドモンは前々から使おうと思っていたんだけど公式サイト覗いたら図鑑がシェイドモンで笑ったわ。
もしかしたら今後も出番あるかも。設定的に便利なシェイドモン。実は成熟期。
ちなみに、ドルゴラモンのバーストモードはねつ造ですのであしからず。技は通常とデクスのを合わせた。