改めて時系列を見てみると、ちょっと面白いことが分かりますね。
謎のデジモンらしき存在と戦った翌日。流石に疲れがでて遅くに起きたのだが、改めてアレが何を狙っていたのか考える余裕が出てきた。
普通に考えればドルモン。もしくは僕自身。母さんを狙ったという可能性は低いだろう。いや、元軍人らしいし誰かに恨みを買っていてというのもあり得なくはないが……
「ドルちゃん、体は大丈夫ー?」
「うん。でも昨日よりは元気じゃない感じかな」
「そういえば、昨日はどうしてあんなに元気だったんだ?」
「なんか、ヒカリちゃんに撫でられた後から凄く体の調子が良かったんだよ。それで、その時の元気が体の中で暴れまわっているみたいだった」
「……そうか」
まさかとは思うのだが……ヒカリちゃんを狙っていた? かつて怪鳥が現れたときも誰かを狙っていた可能性もあるけど……
「いや、アレはどうもそんな感じはしなかったんだよなぁ」
「どうしたのー?」
「最初にデジモンを見た日を思い出して……そういえば、なんであの時大人は誰も目撃していなかったんだろう」
「そういえば不思議ねー。その日は電波障害とか電子機器が誤作動を起こしていたらしいけどー」
デジモンが電子機器に対して悪影響を与える可能性があるって父さんが言っていたけど、それだろうか? でもドルモンは別段そういう事を起こしていないんだよな。むしろ安定し過ぎているというか、馴染み過ぎている。
なんかあるんだとは思うけど。
「そういえば、その頭のソレは何だ?」
「頭の?」
鏡の前に連れていき、ドルモンの頭についている水晶体のようなものを見せる。おでこのあたりについており、形は逆三角。先は丸まっている。
色は赤色で少し透き通っている。黒い淵がついていて、機械を埋め込まれているようにも見えるけど……
「ああ、これ……これって、なんだろう?」
「知らないのかよ!?」
「あ、思い出した。コレはインターフェースだ」
インターフェースって……パソコン用語とかの二つの間に立って情報のやりとりを仲介するものの事だったっけ?
「なんでそんなものが頭にくっついているんだよ」
「えっと……たぶん僕がプロトタイプデジモンだからだと思う」
「プロトタイプ?」
「うん、最初期のデジモンってことかな」
つまり、色んなデジモンの原型って事なのだろうか。どうやら成長期に進化したことでドルモンの知識は以前よりも大分増えたらしい。ハッキリと意味をわかった上でしゃべっている。
「情報のやりとりを仲介するってぐらいなんだからデジコアにアクセスしてデジモンのこと調べられたりして」
「まさかー」
「だよなー」
ドルモンも流石にそこまでできないとは思っているみたいだ。でも、ものは試しだからとりあえず行動してみようと思います。
「とりあえず触ってみるぞー」
左手にデジヴァイスをもち、右手でインターフェースを触ってみる。
「「!?」」
途端に、頭の中に直接、情報が入ってきた。一瞬頭痛が走ったかと思ったら、明確なイメージと共に頭の中に様々なデータが表示されていく。
デジモンの基本情報や、デジモンの生態系。
デジタルワールドがデータで成り立っている世界であり、現実世界とは違う異空間であるということ。
単純な電脳空間ではないこと。
データから成り立っている以上、こちらの世界の文化もある程度知られていること。
そして、いままでであったデジモンたちの詳細が流れ込んできた。
『ドドモン
幼年期Ⅰ
スライム型
口から小さな鉄粒を吐いて攻撃する』
『ドリモン
幼年期Ⅱ
レッサー型
ドドモンが進化した姿
突進しながら鉄球をはいて攻撃する「メタルドロップ」という技を持つ』
『ドルモン
成長期
獣型
データ種
ドリモンが進化した姿
額にあるのは旧式のインターフェースであり、プロトタイプデジモンの情報の書き換えなどに用いられたものの名残
ドルシリーズと呼ばれるプロトタイプデジモンの一体
必殺技は「メタルキャノン」』
『デジコア・インターフェース
最初期のデジモン プロトタイプデジモンの持つ情報の書き換えを行うインターフェース
コレを用いることで様々な姿になることが出来るが、最悪の場合デジコアが機能停止するため、現存するプロトタイプデジモンはほとんどいない
書き換えを行う手段は現在残されていないため、デジモンとの情報の共有等にしか使えない
デジヴァイスを解することでデジヴァイスに記録されたデジモンの情報を閲覧可能』
『
成熟期相当
ウィルス種
プロトタイプデジモン以前の試作データの一つ』
『アイギ――――ユピ――――――イグドラシルの実験データ――秘匿レベ――――エラー
エラーコードXXXX
情報に対する干渉を確認 排除行動開始――エラー
プログラムコードX ナンバー0を登録
マテリアルコードの解凍を行います』
バチリと嫌な音と共に、互いの体がはじかれる。その瞬間、体の中に電流が走ったかと思うと何かが書き換わったかのような感触が体を駆け巡る。
「うぐっ!?」
「気持ち悪いー」
「だ、大丈夫!?」
「うん……あれ? 何ともない」
「こっちも大丈夫だよ。別に変な感じはしなかったけど……」
なんだか、つながってはいけない場所までつながってしまったかのような感覚だ。干渉を受けたような気もするが、悪影響を受けたというよりは歯車の間に入っていた異物が取り除かれて正しい場所に戻されたという方があっている。元々悪かった部分を直されたと言うべきか。
「なんか、前よりも体の調子がいいよ」
「こっちもそんな感じだな」
「二人とも大丈夫ならいいけどー。心配させないでねー」
「分かったよ……」
その後、母さんがご飯の支度をしている間に僕とドルモンは先ほどの出来事を話し合うことにした。
インターフェースを介することで情報を閲覧出来たことは大方の推察ができている。デジコアの中に蓄積されている情報を閲覧したのだろう。
閲覧した情報の中に、デジモンは死ぬとデジタマに還元され、再び幼年期から生まれ変わるのは分かった。その際、死ぬ前の情報も引き継がれるものがあるらしく、デジモンの基本情報は常に引き継がれ続けているのだろう。だからこそ、生まれたときから言語を理解できるし会話も成り立つ。
「名称不明ってなってたのはワイヤーフレームのアイツだよな」
「うん。でもわからないのは最後のだね。なんか見たことも無いようなデジモンが見えたような気がするんだけど」
「どっかで見たことがあるような気もするんだけどなぁ……どこだっけ?」
怪鳥やコロモンについては分からなかったし……ドルモンが記録している情報というより、デジヴァイスの方が出会ったデジモンを記録していて、ドルモンのデジコアから該当するデータを検索しているのかな?
まあ気にしても仕方がないが……イグドラシルがここでも出てきたか。
「イグドラシルについては何か思い出したか?」
「大事なことだったと思うんだけど――ごめん。思い出せないや」
まるで、そこだけは思い出せないかのようにうんうん唸るドルモン。プロテクトでもかかっているのだろうか。
まあ、思い出せないのなら仕方がないか。
「でも、なんでドルモンがこの世界に来たとか、デジタルワールドへの行き方とかは分からなかったな……肝心な部分は分からずじまいかよ」
「そうだね……」
「はぁー、行ってみたかったんだけどなあ、デジタルワールド」
「僕も見たことないけどねー」
そういえば、ドルモンはこっちで生まれたのか。普通に育っているけどデジモンってこっちでも普通に生きていけるのだろうか? それともドルモンが特殊なのか。プロトタイプデジモンってのが他のデジモンと比べなくてはいけない要因になっているのもあって答えが出せません。
その後は再びインターフェースに触れてみて何か起こらないか試してみたが、さっきとほぼ同じ情報しか閲覧できなかった。ただ、最後のノイズのような断片だけは見ることができなかったけど。
◇◇◇◇◇
食後、更に色々試してみたけど進展はない。とりあえずドルモンの姿をスケッチしながら情報を纏めていくが……そういえば、閲覧した基本情報に面白いのがあった。
「なあ、ドルモン」
「どうかしたのカノン」
「昨日見た情報の中に、デジモンは進化だけじゃなくて退化も出来るってあったんだけど」
「あああったねそういえば」
ちなみに、あの情報は現実世界ではほぼ一瞬の出来事であり、ドルモンとボクは同じ情報を同時に見ている。
それと、疲れるからできる限りやりたくない。
「ドリモンになら退化できるんじゃないか?」
「うーん、よくわかんない。っていうかそんなことする必要あるの?」
「食費が助かる」
ドルモンに進化してから結構な量を食べてますよ。
「……」
「あと、デジモンは現実世界に居続けると負担があるんじゃ無いか?」
「ああ、それなんだけど……」
「ん?」
「さっきのアレで、現実世界に完全に対応できるようになったみたいなんだよね。それで調子が良くなった感じ」
ああ、情報の書き換えが出来るってやつか。
さすがにそこまでは行かなくても、ある程度の修正や、バージョンアップみたいなことは出来ると。
まあ、出来るに越したことは無いんじゃいの? ということで、ドルモンからドリモンに退化できないかやってみることにした。
といってもすぐにどうこうなる問題ではなく、逆に進化を試してみたりと色々やっていたのだが……結果はお察しの通り進展はない。
◇◇◇◇◇
その後、いろいろと試しているうちに出来るようになるまで半年ほどたってしまった。
あと退化した後は、成長期になら自由に進化できることが分かった。どうやらドルモンは環境に対する適応能力がとても高いらしく、少しずつではあるが現実世界に対してより馴染んでいるらしく、毛並みの質感が増している。
それとやはりドリモンに退化可能にしたのは正解であった。家の中からあまり出せなかったドルモンの姿と違って、ぬいぐるみで通せるから割と自由に連れ出せる。
「いやぁ、便利だなこの姿」
「だねー」
デパートの屋上。ヒーローショーを見ながらの会話である。こいつの特撮好きも慣れてきたなぁ……
「そういえばもうすぐお前の誕生日だっけか」
「デジモン的には祝う風習ないけどねー」
「生きていることよりも互いに戦う方を主としているみたいだしな」
どうもデジモンってのは戦闘種族としての面が強いらしく、好戦的な連中が多いみたいだ。中には例外もいるそうだけど。
しかし、母さんも遅いな……もうヒーローショーも終わる時間だっていうのに。
「探しに行くべきか、否か」
「どうしたの?」
「母さんが買い物終わったらこっちにくるって言っていたのに遅いなと思って」
探しに行こうかと思って立ち上がった、その瞬間だった。
(――――ッ)
声を出せない。体を動かせないほどに、嫌な視線を感じる。
ドリモンも同じようで、体がこわばってしまっていた。
「カノン……なんかヤバいのがいるよ」
「分かってる。だけど、動いたらマズそうな気もするんだよ……」
カツン、カツンと足音が響いてくる。それ以外の音が耳に入らず、静寂があたりを支配していた。
カツンという音が真後ろにまで届いて――そのまま、僕の横を通り過ぎていく。視界に入ったその後ろ姿は、黒だった。黒いジャケットに金属製のブーツ。着こんでいるのはおそらくライダースーツ。髪の色は金髪なのはわかったが……そこで、そいつが僕たちの方を向いた。
赤い瞳がまるで、こちらを射抜くように――――
「――――ま、俺には関係ねぇか」
――一気に、緊張が解けた。
彼はそのまま階段の方へ向かい、この場所から出ていく。何事もなく平然と。
「…………ぷはぁっ。生きた心地がしなかった……なんなんだアイツ」
「分からないけど、デジモンのにおいがしたよ」
「だったとしても関わらない方がよさそうだな。戦ったら絶対に勝てないぞアレ」
それほどのプレッシャーが出ていたのだ。いや、プレッシャーというより存在感と言った方が正しいか。
彼がデジモンだったのか、僕みたいにデジモンを連れた人間なのかはわからないが……もう二度と出会わないことを祈ろう。デジモンについて調べるときはもう少し慎重にしよう。海外で目撃情報があったらしいけど、日本で地道に調べた方が良さそうだ。
その後、母さんは普通にやってきた。なんでも旧友に出会って話し込んでしまっていたらしい。
結局その日のことはその後特に問題を残すこともなく、釈然としないながらも一つの経験として僕たちの糧となった。あと、インターフェースに触れても存在感の主は分からなかった。レベルが足りないのか、デジモンじゃなかったのか……
そうして、僕がデジモンと出会ってから一年の月日が流れた。
ヒカリちゃんもドルモンと遊びにきたり、父さんが相変わらず民芸品を持って来たり、太一さんが卵料理は作れることに驚いたりと色々なことがあったが、それなりに楽しい時間が過ぎていく。
まあ情報的にはなかなか進展しない日々だと思っていたが、思わぬところから事態が動きだすこととなる。
そう、あれはヒカリちゃんが風邪をこじらせて入院した日の出来事だ。
真の意味でデジモン同士の戦いを体感する話――
彼はデジモン界でもトップクラスの人気キャラだと思う。さすがにそのままの姿では出しませんが、特徴がわかりやすすぎるか。
02で及川の過去やダゴモンの海に封印されちゃったアイツのことを考えると、本編に出ていないけど色々なデジモンが過去からいたことになります。
イグドラシルからホメオスタシスに管理者が変わっているってことは、アドベンチャーの世界って、ロイヤルナイツや七大魔王など他勢力の戦いは全て終わった世界なんじゃないかと思っています。