デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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50話までにアドベンチャー終わらせられるかどうか悩んでいたが、無理ですね。

リアルの8月1日が近づいてきました。今年は何やるんだろうか。


44.目覚め

 目の前に現れたライオンのようなデジモン……僕はそのデジモンの名前とレベルをすぐに知ることが出来るため、彼が誰なのかおおよそのあたりはついたのだが、話に聞く彼とは面識がないから判別がつかない。

 

「こんどはなんなんだ!?」

「もう嫌!」

「ここはオイラが――」

「ゴマモン、まってくれ……彼は」

 

 僕が彼の名前を言おうとしたとき、アーアアーと雄たけびが聞こえてきた。

 あと、待ってなさいよーとか絶対見つけるわよーとか。

 

「……うわぁ」

「時間もない様だ。君たち、私の背中に乗りなさい」

「って、その声ってもしかして!?」

「れ、レオ――」

「話はあとで。人数が多いし、ケンキモンなら追走できるか?」

 

 アーマー進化はまだ使えたのが幸いだった。すぐにドルモンに進化してもらい、パンプモンとゴツモン、オーガモンを乗せて彼に追走する。

 彼には丈さんたちと、チューモンがしがみついている。

 メタルエテモンはどうやらまだ離れたところにいるらしく、近づいた気配はない。

 

「……くそっ」

「オーガモン、話は後にした方がいいよ」

「分かってるよ。あと、こいつらどうにかしてくれ」

「こっちもデジタマ持っているから無理」

 

 ミミさんたちはしがみつかないといけないから、腰かけられるこっちで預かっているんだよ。

 ちなみに、オーガモンはパンプ&ゴツに絡まれている。危ないから静かにしていてほしいが……落ちないようにしてくれればいいか。

 景色が流れていき、やがて森のエリアを脱した。廃墟のような場所にたどり着き、あたり一面灰色の世界だ。生気を感じない無機質なエリア。ムゲンドラモンか、ピエモンか……無機的ってことはムゲンドラモンかな?

 歩みがゆっくりになり、ケンキモンもドルモンに戻る。キャタピラの跡も気になるからね。

 

「丈、あそこ!」

「あれは――!?」

 

 とそんな時にいきなり声が上がり、ゴマモンが指さした場所。何かの建物みたいだが……デジ文字で看板が出ている。えっと…………レストラン?

 

「ここって僕とヤマトが働かされていたデジタマモンのレストランじゃないか!?」

「それってドルしか使えなかったって話の?」

「ああそうだよ。でもあそこは湖のそばだったはずなのに」

「スパイラルマウンテンに統合されてしまい、いまやどこもかしこもおかしくなっている。とりあえず、あそこに身を隠そう」

 

 彼がそう言い、僕たちも後に続く。

 レストランの中は随分とボロボロで、色彩のデータも消えていた。ほとんど灰色……気が滅入るねコレ。

 と、その時。デジモンが退化する時の音が聞こえてきた。彼の姿が変わっていき、人型へと変化する。

 

「やはり、すぐに戻ってしまうか」

 

 彼――レオモンが苦い表情をしながら僕たちを見回していた。

 ミミさんは驚きと、喜びが入り混じった表情になり、彼に抱き着く。

 

「レオモン……よかった、生きていたのね!」

「君たちも、無事でよかったよ。それに、同郷の者に会うのも久しぶりだな」

「進化できるようになっていたんだね」

「以前、デジヴァイスの光を浴びたことで備わった能力だ。しかし、すぐに戻ってしまう。まだコントロールが出来ていないらしい。それで、そちらの子供は……」

「ああ、彼は橘カノン君。それとそのパートナーのドルモンだよ」

「どうも。話には聞いています」

「――――おいオーガモン、どういうことだ?」

「俺が知るかよ。それより、おれと勝負しろ!」

 

 ? 彼らは何かを知っているのか、少しだけ言葉を交わしたがすぐにオーガモンがレオモンに勝負を挑むことで聞きだせる感じじゃなくなった。

 

「たとえ進化できるようになったからといっても俺が負けるとは思わねぇ、それと勝負だ!」

 

 そういってオーガモンがレオモンにとびかかるが、すぐに組み伏せられ、床に叩きつけられてしまう。

 

「まったく怪我を治してからにしろ。スカルグレイモンの骨で作られた棍棒が泣くぞ」

「……くそっ」

「それ、スカルグレイモンの骨で出来ているの!?」

「あー確かに構成情報がスカルグレイモンだ」

 

 この二体、僕たちが思った以上に強いデジモンらしい。オーガモンもここまで怪我しても生きていられるのがその証拠だ。

 

「そういえばさっきは何に驚いていたんですか?」

「いや、君自身からデジモンの気配を感じたのでね」

「ああ……以前、とあるデジモンからデータを受け取ったので、たぶんそれです」

 

 マフラーに手を当てて彼のことを思い出す……僕が彼と会話したのはほんの少しだけだが、おかげで色々と助かっている。マフラーの色がなぜか変わってしまったが、ちゃんと残り続けているものもある。

 

「……む、何者だ!」

「なんか手が出ていた!」

 

 レオモンが何かの気配に気づき、パルモンが”何か”の手を見てしまったらしく、驚いてミミさんに抱き着く。その拍子にチューモンがぐえっと声をだしたが……大丈夫か?

 

「ひぃ!? 命だけはお助けゲコ!」

「助けてタマ!」

「カエルとオタマジャクシ?」

 

 成熟期と成長期のデジモンではあるが……データ量が少ない。パンプモンたちといい、デジモンの成長進化はどういう基準でレベル分けされているのだろうか?

 

「って、あなたたちゲコモンにオタマモンじゃない!」

「本当だ、あなたたちも無事だったのね!」

「お、お姫様?」

「わーいお姫様タマ!」

 

 ……姫? なんだか不穏な単語が聞こえるが、ミミさんに抱き着いた彼らは再会を喜ぶのみ。丈さんが苦い顔をしていたが……これは何かあったな。

 しかし名前、そのままだな。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 落ち着いた後、彼らの話を聞くことに。

 丈さんに事のあらましを聞いたが……太一さんが戻った後、みんながバラバラになっていた時にミミさんは彼らの城の姫をやっていたらしい。なんだよまんまかよ。

 ゲコモンたちには慕われていたものの、その殿がアレな奴だったそうで大変だったとか。

 

「なんでここに隠れていたの? お城は?」

「お城はダークマスターズのせいで崩れてしまったゲコ」

「それで命からがらここまで逃げてきたタマ」

 

 涙ながらに語られる彼らの動向。ダークマスターズは自分たちの支配しやすいように世界を書き換えている。小さな島に城があったことから推察するに建物のデータはこの灰色のエリアに、その周りはメタルシードラモンのエリアに統合されたとみるべきか。

 

「アイツら、自分たちに従わないデジモンは片っ端から皆殺しだ……ふざけやがって」

 

 話に聞く限り、オーガモンは善の側のデジモンではない。しかし矜持は存在するのだろう。彼らのやり方は、オーガモンにとって許せるものではないのか。

 ダークマスターズ……やっていることが完全に恐怖による支配だ。それも、かなり古いタイプの。

 

「恐怖政治とか笑えないっての」

「それって昔のドイツみたいな?」

「うーん、国と言うより個人でのことですからね……議論したら長くなるんで帰ったら自分で調べてください」

 

 ちなみに、気が滅入るから僕はやめました。ただ一つ言えるのは、ロクなことじゃない。

 もしかしてダークマスターズを構成するデータって、そういった負の面の情報なのだろうか? それぞれが特質のある負の情報の塊だとするのならば……

 

「……確かめようがないか」

 

 僕の中に入ったピエモンのデータも、ダークマスターズのピエモンのデータではなく闇の属性を持っているだけのほんの一かけらなのだ。これから探ることはできない。

 

「ああ……彼らのすることはまさに恐怖を与え、力で抑え込む。そんなものだ。だからこそ、私はお前たちを探していた。ダークマスターズを倒し、闇を払うにはえらばれし子供たちの力が必要なのだ」

「だったら……なんで最初からダークマスターズのところに行かなくてファイル島に私たちは呼ばれたのよ」

「ハッハッハ! 馬鹿か? いきなりダークマスターズの目の前に出たら、あっという間にお陀仏だったぜ」

 

 オーガモンの言う通り、いきなりダークマスターズと戦って勝てるわけはないのだ。それに8人そろっていない状況だったらなおさら。

 

「でも、その代わりにたくさんのデジモンたちが死ぬことはなかったわ」

「ミミ君……」

 

 いや、ミミさんには悪いがそれはないだろう。彼らのやり方をみるに、僕らがいなかったらもっとひどいことになっていた。それは間違いない。

 それどころか地球もどうなっていたか……ヴァンデモン一人でさえ、結構な被害が出ているのだ。

 もっとも、それを今のミミさんに伝えたところで話が平行線になるだけだが。

 

「よくは分からないが、お前たちがファイル島に現れたのには理由があるのかもしれない。一種の試練だったのではないだろうか?」

「試練?」

「ああ、お前たちが本当にこの世界の救世主になるのかどうか……様々な試練が降りかかり、そしてダークマスターズと戦えるまでに成長した」

 

 たしかに、途中合流の僕もここまで来るのに色々なことがあった。ネオデビモンの一件などはまさに試練とよべるのではないだろうか。未来を変える力があるのかどうか、その試練……

 ふと、ホメオスタシスの言葉がよぎる。僕の運命の紋章……他のみんなよりも過酷であるというのならば、このダークマスターズとの戦いは? 過酷な戦いではあるが、まさか僕にとっては通過点でしかないというのだろうか?

 

「…………まあ、この一件が終わってから考えればいいか」

「それで、他の子供たちはどこに? すぐに集めなければ」

「いや、今別行動中なんだ」

「別行動? なぜ」

「まさに試練の真っ最中ってところかな」

「こっちも試練の真っ最中ですよ」

 

 ホント、デジヴァイスどうするか……

 

「そうだ、レオモンはデジヴァイスを直せるようなところ知らないか?」

「なに? デジヴァイス――な!? 壊れているではないか!」

「うん……ちょっと色々あってね。幸い、僕は0人目で他の8人とは違うらしいから数には入らないっぽいけど」

「0人目……0人目、どこかで聞き覚えのある言い回しだが」

「え、本当に!?」

「そうだ、思い出した。情報屋に聞いたのか」

「情報屋?」

「近くにまだいたと思うが……彼ならデジヴァイスの修復方法を知っているかもしれない」

 

 そんな奴がいるのか。だったら、すぐにでも会いに行った方が良いかもしれない。

 

「ただひとつ気になるのは、君のデジヴァイスからは聖なる力をまったく感じないということだ」

「壊れているからじゃなくて?」

「ああ。なんといえばいいのか、光でも闇でもない異質な力だ。だが、悪いものではないな」

「……異質、ねぇ」

 

 と、その時――嫌な感じがした。外の方からねちっこいオーラと言うか……来たみたいだな。

 

「来たな。気をつけろ」

「後ろに下がってな……お前、前に出て大丈夫なのかよ」

「流石に逃げてばかりなのもまずいかなって」

 

 ウィザーモンの杖を出し、迎撃準備をしておく。正直アイツ苦手だけど、戦うしかないか。

 ドアをけ破り、メタルエテモンが入ってくる。にやりと笑って、なめまわすように見てきやがって……

 

「うふふ、ついに見つけたわよえらばれし子供たち!」

「ここは私が相手をしよう――レオモン、ワープ進化!」

 

 レオモンが究極体、サーベルレオモンに進化し、外へ躍り出る。それに追従してメタルエテモンも飛び出した。どうやら、挑戦は受けるタイプのようだ。

 

「みんなは逃げろ――ネイルクラッシャー!」

「ナンバーワンパンチ!」

 

 互いの技がぶつかり合い、爆発を起こす。究極体同士の激突だ。技ひとつをとってもとてつもないエネルギーを秘めている。

 

「レオモン一人に任せておけないよ!」

 

 ゴマモンが進化し、イッカクモンに進化するが……丈さんがそれを制した。

 

「やめるんだイッカクモン! レオモンの言う通り、ここは逃げた方がいい!」

「で、でも丈」

 

 たしかにここは逃げの一手が一番だろう。今の僕らじゃ勝ち目がない。

 サーベルレオモンでは相性が悪い。メタルエテモンの体はクロンデジゾイドでおおわれている。この世界ではデータそのものが物質化する。だから、現実世界ではありえない硬度を持つ、クロンデジゾイドという金属が存在しているのだ。

 全員がイッカクモンに乗り、脱出を図る。ただオーガモンとミミさんだけがまだ乗り込んでいなくて……

 

「ああもう!」

「ミミ君はやく――ってカノン君!?」

「引っ張ってでも連れて行くしかないでしょう!」

 

 だが、それよりも先にミミさんが戦っている彼らの前に躍り出ようとしていた。

 サーベルレオモンが膝をついており、その前にオーガモンが出ている。そうやら、ミミさんよりも先に飛び出していたらしい。

 

「待て! レオモンを倒すのは俺だぜ!」

「なによ。あんたなんてお呼びじゃないわ!」

「なにぃ!?」

「待って! その怪我じゃ無理よ!」

 

 ミミさんがオーガモンをかばうが、メタルエテモンはニヤリと笑うだけで――――唐突に、嫌な予感が駆け巡った。力の圧力が強まっていき、全身から冷汗が出る。

 すぐに僕も飛び出し、防御式を発動させるが……ダメだ。僕じゃこれを防ぐことはできない。

 

「心配しなくても、あんたたちまとめてあの世に送ってあげるわ――ダークスピリッツデラックス!」

 

 空から黒い雷が降り注ぎ、僕らに直撃しようとしたその時――僕らの上に一つの影が躍り出た。

 

「があああああああああああ!?」

「――え」

 

 レオモンが僕たちをかばい、メタルエテモンの攻撃を受けたのだ。

 そのまま彼は倒れていき――生命データが消えていくのを感じた。

 後ろではイッカクモンがズドモンに進化し、メタルエテモンと戦っている。そうか、ズドモンのトールハンマーはクロンデジゾイドの塊。だったらメタルエテモンにも効果があるだろうが――――

 

「――――だったらもっと早く気がつけよ」

「カノン、君?」

「そうやって情報の取得が速さで戦ってきたってのに肝心なところで失敗してんじゃねぇよ」

 

 頭の中に後悔が駆け巡っていく。もうレオモンは助からない。

 一概に僕のせいとは言い切れないだろうが、それでも油断があったのも事実だ。無茶をし過ぎたツケが回ってきたのかもしれない。だけど、頭の中がぐちゃぐちゃになっていって体の奥底から何かが爆発しそうになり――そして、抑えきれなくなった。

 

「うわああああああああああああああああああ!?」

 

 体から力の奔流が始まり、紋章が強く輝きだす。

 デジヴァイスがショートを起こし、ドルモンのインターフェースが呼応するように赤く輝いていた。

 僕の体から光が爆発的にあふれ出して――デジモンたちに降り注ぐ。

 

「なんだ――これは、力があふれて……!?」

「なんだか体があつくて――――あああ!」

 

 ズドモンとパルモンの体が輝きだし、姿を変質させていく。それだけでなく、メタルエテモンとサーベルレオモン以外のデジモンたちの体までもが変質を開始した。

 

「なんなんだ、これは!?」

 

 丈さんが叫んだと同時に、突風が吹き荒れる。

 

 

 

 

 

「――ブラスト進化」

 

 言葉の意味は分からなかったが、僕の口からその言葉が漏れた時……ついに、光が爆発をおこした。

 




ついにタイトル回収。改定前だとあまり活かせていなかったけど、今度は違うぞ。

BLASTはブラストエボリューションのブラスト。
アドベンチャーに合わせてブラスト進化と表記しています。

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