デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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今回、少々カノンとドルモンの秘密に触れます。

あと本編であまり語らないのでカノンの容姿について。
母方の血で赤毛。ヤマトやタケルと同じくクォーター。
服装などもちょいちょい描写していますが、現在はダウンベストに赤マフラーとゴーグル(飛行帽のものなのでゴツイ)。基本長袖長ズボン着用。


41.ホメオスタシス

「光あるところに闇がある。光と闇はちょうどコインの表と裏のような関係なのです」

 

 ヒカリちゃんはまるで別人のように言葉を発していく――いや実際別人が入っているのか。おそらく、今ヒカリちゃんに入っている存在こそがホメオスタシス。

 

「しかし闇の力が増大すると――」

 

 周囲が暗くなっていき、黒く塗りつぶされていく。闇の力の増大――しかしその逆もまた危険なり。

 僕の思考にノイズが混じりだす。危険と言う感じはしないが、なにか外部から知識が入り込んできている感覚がする。

 

「これって異次元空間なのか!?」

「ここは……あのビル、光が丘か?」

 

 少し明るい場所がみえる。宙に浮かぶ二体のデジモン。グレイモンともう一体は、かつて見た怪鳥――名前はパロットモン。完全体らしい。

 

「パロットモン……完全体のデジモンだったのか」

「やっぱりアナライザーの方が詳細データ多いですね。完全体でもかなり強力なデジモンですよ。ホーリーリング二つって……」

 

 今見ると、悪いデジモンと言うわけではなさそうだ。

 

「4年前、あなたたちの世界に誤って一つのデジタマが流れ着いてしまいました。彼は、そのデジタマを回収するために遣わされたデジモンです」

「ヒカリ、何を言っているんだ?」

「いいや違う。ヒカリの体を通して誰かが語り掛けているんだ」

「はい、今ヒカリさんの体の中には別の存在が憑依しているんです」

 

 テイルモンと光子郎さんが補足し、ヒカリちゃんの中に入っている者が語り掛ける。

 

「私は、デジタルワールドの安定を望むものです。ホメオスタシスとも呼ばれております――カノンさんは名前だけは聞いたことがあるはずですが」

「さっき思い出したよ。本当に詳しいことは何も知らなかったから忘れてたけど」

「もしかして、デジタルワールドの神様?」

「いえ私もデジモンと同じくネット上のデータから出来ています。ただ、デジモンとは違って自分の肉体を持ちません。私たちは物質化できないのです。ですから、こうしてヒカリさんの体を通して語り掛けています」

「どうして、ヒカリなんだ?」

「私の言葉を中継できるのはこの方だけです。カノンさんも近い性質を持ちますが、本質的には異なるため中継はできません」

 

 メッセージを届けることはできますが、と続けるが……だったら届けてほしかったよメッセージ。

 その後、体が浮き上がり戦っている現場へと近づいていく。空からスポットライトのような光が下に照らされ、子供たちの姿がはっきりと映し出された。

 

「これは?」

「あなたたちをスキャニングしているところです」

 

 あれ? 僕がいない……たしかこの時はおばあちゃんの家に遊びに行っていて……で、夜に抜け出したんだよな。それでデジモンたちの戦いを目撃したわけだけど、どこかの歩道橋にいたはずだが――いた、暗くて見えにくいが確かに僕もいる。ってスキャニングはしていないの?

 

「順を追って説明しますが、ちょうどこの時カノンさんが別件でドルモンが生まれるデジタマと出会います。我々がデジモンたちを回収した後、路地裏へ転送されたドルモンのデジタマとカノンさんが引き合いました」

「まってくれ、グレイモンは誤って流れ着いたんだよな? だったらドルモンはどうなんだ?」

「……彼は通常のデジモンとは異なります。プロトタイプデジモンであることは既に承知だと思いますが、この時我々の世界で数年前にとある事件が起きました」

「とある事件?」

「はい。事情があって詳細は語ることが出来ませんが、その時のデジモンの生き残りがドルモンであり、彼の内部に眠るX抗体がそのままデジタルワールドに残り続けていると危険でしたので、適格者であったカノンさんへ預けられたのです」

「つまり危ないから俺たちの世界に捨てたってことなのか?」

「いいえ違います。カノンさんを信じて、デジタマを託したのです。彼ならば間違った進化を遂げないだろうと信じて」

「でも、この時の僕は全然小さかったのになんで……」

「あなたを良く知る人物が託した、とだけしか言えません」

 

 それだけ言うと彼女は悲しそうに目を伏せた。つまり、ドルモンとは意図的に出会うことになったわけか……誰かは知らないけど、0人目だとか事情が違うってのはそこに起因するようだ。

 

「その後、カノンさんに合わせたデジヴァイスと紋章が送られました。他の方とは少々ことなる物になりますが」

「そういえばデジヴァイスが壊れたんだけどこれって……」

「……それについては後でお答えいたします。先に説明しなければならないことがありますので」

 

 そう言うと、上空にあいたゲートへ入っていく。次の場所に移動するってことか――ゲートを通過するとどこかの城に出てきた。色々な機械が置いてあって、研究所とか工場にも見えるな。

 

「ここは……見覚えがあるような気がします」

「オレたちもなんだか懐かしいような気がする」

「そうだな、見たことあるぞここ」

「パンプモンたちも? チューモンは?」

「知らない……オイラは初めてだよ」

 

 パンプモンたちは知っていてチューモンは知らない……光子郎さんたちも見覚えがあるってことは…………なんとなく読めたが、僕じゃ判断はつかないな。

 少し歩くと、何かのケースが見えてきた。近づいてみるとデジタマが8個入っている。その中の一つと、僕が回収したデジタマの柄が似ているな……

 

「うわ!? すいません、お邪魔しています……あれ?」

 

 丈さんが何かに驚いたので振り向くと、半透明の人たちがたくさんいた。フードを被っていて顔は見えないが……気配を感じない。ホログラムかなんかだろうか?

 

「なんだよこら! 返事ぐらいしろよ!」

「いいえ、この方たちは立体映像。遠い過去の出来事をあなたたちの頭の中に送信しているのです」

 

 となると、ここで何をしても意味がないというか……互いに干渉はないわけか。

 パンプモンとゴツモンが面白そうに立体映像に突っ込んでみたり、チューモンが恐る恐る触っている。君ら、結構自由だね。

 こういう時は光子郎さんがいち早く何か見つけるだろうと彼についていくと、何かの石板が見えてきた。

 

「これ、ヴァンデモンの城にあった石板です!」

「それってこのカードを使ったってやつですか?」

 

 アグモンのカードを取り出し、石板と見比べる……だめだ、立体映像だからか情報が読み取れない。

 ピヨモンがみんなが使ったゲートを見つけたと言い、見に行ってみるが……デカいなぁ。

 

「でもここの人たちは何をしているんだ?」

「この世界が暗黒の力に覆われたときの準備をしているのです。みなさんをスキャンして得たデータから紋章とデジヴァイスを作成したりなど、色々な準備をしていました」

「ってことは、俺たちを選んだのはあんたたちなのか?」

「はい、その通りです」

 

 ……なんだろう、少し違和感を感じる。ホメオスタシスたちが選んだというのはいいとして、それって僕に当てはまるのか? なんだかデジヴァイスが作られた経緯が違うような……なんだこの違和感。時期の違い? なんというか根本的に何かが違うような気がする。

 僕がうなっていると、話が進みだした。

 

「どうして俺たちを選んだんだ?」

「あなたたちは人間界に迷い込んだデジモンをグレイモンにまで進化させましたね」

「進化させたんじゃない。勝手に進化したんだ」

「勝手に進化することはありません。あなたたちがいたからこそ、グレイモンに進化したのです」

「でも、あの時は何もしてなかったぜ? デジヴァイスもなかったし」

「デジヴァイスをただの進化の道具とお考えならそれは違います」

 

 え、そうなの?

 

「デジヴァイスはデジモンをあなたたちの特質に合わせて正しく進化させるための物。紋章も同じです。カノンさんの物も多少違いはあれど、基本的に同じです。みなさん、紋章の意味はご存知ですよね?」

「ああ。俺は勇気だ」

 

 それを皮切りに各々の意味を口に出していく。愛情、純真、知識、誠実、希望。ただヤマトさんだけは自ら口には出さずに丈さんが友情だよなと補足したが。

 

「で、僕のが運命……」

「ヒカリさんとカノンさんのは特殊ですので異なりますが、みなさんの紋章は4年前、みなさんがもっていた最も素晴らしい個性なのです。しかし、それが失われていたら? もしかしたらデジモンを悪用するかもしれない。

 また、もしその意味をはき違えていたとしたら」

 

 その時、前に太一さんから聞いた話が脳裏によぎった。太一さんも思い出したのか、少し苦い顔をしている。

 

「そうか、前に俺がスカルグレイモンに進化させたとき……俺は敵の前に飛び出していた。アレは、間違った勇気」

「そうです。やっと、気が付いてくださいましたね」

「それじゃあ僕らは元々持っていた自分らしさを再発見するためにさんざん苦労していたってことか」

「まさに試練ですね」

「笑い事じゃないよ……でも、二人の紋章が特殊ってどういう事? 確かに心の特質と言うには違うけど」

「希望の紋章も少し特殊なのですが、お二人の紋章はそれに輪をかけて異なります。光は我々の世界では進化などと言った意味を持ち、それ自体が進化の力を持ちます」

 

 そういえばヴァンデモンとの戦いの時、みんなの力が一気に回復していたっけ……エンジェウーモンに進化したとき。となると運命ってのは……?

 

「……光と闇、過酷な道のり、螺旋…………様々な意味がありますが、その紋章をその身に宿すということはあなたには他の誰よりも過酷な試練と長い道のりが待っています」

「おおう……いきなりそういう事言いますか」

「あなたも、その一端は目にしているハズです。かの情報樹とつながっているあなたなら」

「…………」

「情報樹?」

「いえ、知らない方が良いですよ。アレは」

 

 はっきりと言われてしまったが、なるほど。やはり僕はいずれあそこに行かなくてはいけないらしい。デジタルワールドの最深部、イグドラシルの眠る地へ……

 もっともそこへ行く前にまずはダークマスターズを何とかしなくてはいけないみたいだが。

 

「太一さんやヒカリさん、カノン君にも何かがあるのは分かりましたが……ボクらはなぜなのですか? ボクらはデジモンを進化させたわけではないのですが」

「あの時、みなさんをスキャンしたときヒカリさんと共通するデータがみなさんにもあったのです。それが何なのかは私たちにも謎ですが」

 

 結局、そこは謎のままなのか。

 そこでみんなの視線はケースの中へ行く。

 

「このデジタマは?」

「ふふ、わかりませんか?」

「もしかしてアタシたち!?」

 

 そうか、これはまだデジタマだったころのみんなか。コードでつながっている紋章をみればどれが誰なのかがわかるな……アグモンのは柄ですぐに分かった。グレイモン柄ってまたベタな。

 と、そこでいきなり爆発音が聞こえてきた。ガードロモンとメカノリモンが襲撃を仕掛けてきて、応戦する人々もろとも破壊していく。

 

「うわああ!?」

「立体映像、立体映像」

「カノン、お前なんでそんなに落ち着いていられるんだよ」

「立体映像って説明があったじゃないですか」

 

 すでに起きたことは変えようがないし、おとなしく見ていることしかできないのだ。歯がゆい思いをしたところで無駄なのだからちゃんと見て何が起きたのか把握した方がいい。

 しかし、そこでピエモンの野郎が出来たのはアレだが。

 

「……立体映像ってわかっていても一発殴りたいですね」

「それでも逃げないのがお前らしいよ」

 

 と、そこでフードを被った誰かがピエモンに斬りかかった。剣をもっているし……こっちは構成情報が何とか読み取れる。この世界なら魔法で作れるかもしれないな。

 

『ピエモン、覚悟!』

『ゲンナイか!』

 

 え、ゲンナイさん?

 

「ゲンナイさんっておじいさんですよね」

「そのはずですけど……」

 

 若かりし頃ってこと? 彼はピエモンと交戦するが、すぐに背後をとられ黒い球を体に埋め込まれてしまう。その時、左肩が焼けるように熱くなった。少し痛みも走るが……ちょっと顔を歪ませてしまったが誰にも気が付かれていないのが幸いか。

 と、その痛みが走るのと同時に感覚が上手く通るようになったらしい。左腕が問題なく動く。

 ゲンナイさんも倒れることはなく、メカノリモンの一体のコックピットからバケモンを放り出し、自分が乗り込んだ。そして、デジタマとデジヴァイスをすぐに回収していった。

 

『追え、奪うのだ!』

 

 すぐに逃げたゲンナイさんではあるが、ガードロモンの攻撃でデジタマが一つ落ちて行ってしまう。あれは……

 

「あれは私だ。だから私は一人離れて育ったのか」

「でも、今は一緒よ」

「そうだな」

 

 なるほど、だからテイルモンはヴァンデモンの城の近くにいたのか。しかし、となるとヴァンデモンとダークマスターズの関係性って……いや、もう確かめようがないか。

 この後はおそらく、ファイル島へ向かうのだろう。

 

「アレは、氷におおわれているけど――確かにファイル島だ!」

「……そして、みんながここへ導かれるか」

 

 そう、こうして今へつながっていく。ホメオスタシスに出来るのはデジタルワールドのバランスが崩れるときに事前に何とかするためのシステムを用意することだけ。彼女たちが干渉できない理由は分からないが、僕たちが選ばれたのはこの世界を何とかするため――人間界のと壁が壊れたところを見ると、他の世界も含めてか。

 

「デジヴァイスは進化させるための物じゃない……なら、進化できない理由は…………」

「光と闇、相反しているようで隣り合っている二つの力。片方だけが強くてはダメなのです。今のドルモンはバランスが崩れた状態。きっと、解決方法が見つかることでしょう」

 

 そして、世界が元に戻っていく。元の森へと帰り――彼女は去って行こうとする。

 

「結局、僕を選んだってのは誰なんだ? あなたたちじゃないんだろ!」

「……いずれ、わかります」

 

 そう言うと、彼女はにっこりと笑って去って行った。口元に人差し指を当てて内緒話をするかのように。とっておきの秘密を隠すみたいに。

 




触れるだけで解決するとは言っていないがな!
ただまあ、カノンを選んだのはホメオスタシスではないです。関わっていないわけではないですが、別の人が選びました。


さて、色々あって休み貰えたのでポケットなほうのモンスターの映画見てきます。
あとゴールデンなライダーのためにライターも集めないと……

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