改定に当たって、色々とネタを探しては盛り込む感じで。あと、マイナーデジモンも出せれば出していく予定です。
半ば予想はしていましたが、アプモンはこれまでのデジモンとは関係ない感じですね。従来のデジモンと関わる場合は、別次元のデジタルワールド設定を持ち出すのかどうかというところか。たぶん関わらないんでしょうけど。ハックモンがかぶってますし。
今までのデジモンだと、もう旧来ファンしか食いつかないんだろうか。
陽射しも強く、蒸し暑いこの国の嫌な季節。その名も夏。そんなある日の昼下がりの話だ。
「がぁ……」
「むぅ……」
互いに唸り合うこの二人――いや、一人と一匹。先ほどから膠着状態が続いているが、これは一体どういうことなのか。というか、なぜこんなことになったのだろうか。
バチバチと火花が散るとまではいかないが、なんでさっきから互いに視線を外さないのか問い詰めたい。
っていうかなんでドリモンとお隣のヒカリちゃんが遭遇しているのか疑問ザ疑問。
「――――やべえよエンカウントしてるじゃないか!?」
◇◇◇◇◇
なぜこんな状況に陥っているのか。少しばかり時計の針を巻き戻そう。
夏場でアイスが食べたくなったカノンとドリモンだったが、冷凍庫を除くとそこには大量の保冷材のみであったのがそもそもの原因。
流石にカノンも「バッカじゃなかろうか」とキレた。しかしその母もさることながら。元軍人の謎の気迫を出しながら迫る。
「ハイお金。初めてじゃないけど――お使いガンバってね」
いつもの伸びた口調ではない。マジの口調だった。「イエスアイマム」という事しかできないのは息子であるが故か。ちなみに、母の機嫌が悪かったのはそのマイスイートダーリンが再び学会で長期間帰ってこないからである。少しの間かと思いきや、3カ月と聞かされた時の彼女の心境やいかに。
「帰ってきたら覚えてなさいよー」
野性的な勘からか、ドリモンはそれとなく回避し続けていた。そのため、全ての被害がカノンに行っていたために彼は熱い中一人でコンビニまでアイスを買いに行く羽目になったのである。ついでに、他にも色々。
そんなわけで、カノンはこの場からいなくなったのだが……まさにそんなタイミングであった。
お隣の八神家で太一が虫歯になったから一緒に歯医者に行かなくてはならないためにヒカリを橘家に預けるため、件の一家がやって来てしまったのだ。
「あらー、困ったときはお互いさまよー」
その時、うっかりドリモンが部屋にいるのを忘れてヒカリを招き入れてしまうという事態が発生。当然、何の対策もしていなかったためにヒカリとドリモンは遭遇してしまう。
ちなみに、母である四音は先ほど息子に対して行った怒りの波動でいくらか溜飲が下がったのか「いい陽気ねー」と言いながら昼食の準備を始めだしてしまった。
そして、目的のブツを手に入れて帰宅したカノンが見てしまった
◇◇◇◇◇
サッ(捕まえようとする音)
ダッ(跳んで逃げる音)
「え、なにこれ」
なぜか両者が動き出したかと思うと、ヒカリはドリモンを捕まえようとし、ドリモンは逃げようとする。
両者互いに引かぬ攻防。果たしてどちらが勝つのか、目が離せぬ一戦である。
「って違うだろオイ」
そこまでにしようねと、お互いの間に入って攻防を止める。何がしたいんだ二人とも。
お互いにキョトンとした顔をするが、何をしているのか聞きたいのはこっちだ。
「ドリモン、何してんだよ」
「……なんとなく」
「ああそうかい。で、ヒカリちゃんはどうしたんだよ一体」
「……コロモンのお友達?」
「――――覚えているの?」
「カノン、さんも知っているの?」
前に太一さんにそれとなく聞いたとき、彼はデジモンのことを覚えていなかった。だからヒカリちゃんも覚えていないと思っていたんだけど……
「別にさん付けしなくていいんだけど……こいつはドリモン。コロモンと同じデジモンだよ」
「でじ、もん?」
「デジタルモンスターっていう生き物で……説明してもわかんないか」
「?」
さっきからずっとキョトンとした顔をしている。どうやら、コロモンのことは覚えているけど彼らが何者なのかというところまでは考えがいっていないらしい。まあ、それが普通か。
だから、かみ砕いていった方が良いだろうな。
「コロモンの仲間、かな」
「……うん」
どこか嬉しそうにヒカリちゃんは笑、ドリモンを掴んで撫でだす。最初は嫌がっていた風なドリモンだったが、すぐに気持ちよさそうに目を細めて動きが止まった。
と、そこで母さんがこちらをほほえましそうに見ているのに気が付いたけど……
「母さん、もう少し気を付けてよ」
「ごめんー。でもドリちゃんも動かなければぬいぐるみでとおせるしー」
「そりゃそうかもだけど」
確かに変わったぬいぐるみにしか見えないか。
「でも、ヒカリちゃんすごいわねー。後光がさしてるわー」
「なんでだよ……」
思いっきり脱力してしまうが。それは窓から入った光がそういう風に見せているだけだと思うよ。
キラキラと、光の粒子が飛んでいるなんでないない。
「――あれ?」
一瞬、本当に光っているように見えたんだけど……目をこすって改めて見ると、普通に窓からの光が入っているだけだった。やはり、気のせいだったようだ。
「ほらご飯よー。手を洗ってらっしゃいなー」
「はーい」
「……はい」
何だか引っかかるものを残しながらその日は普通に終わった。ヒカリちゃんもドリモンのことは内緒にしてくれるようだし、見つかったのが彼女で良かったと思っておこう。
ただ、太一さんは忘れているのになぜヒカリちゃんは覚えているのか。それが妙に頭に残った。
◇◇◇◇◇
翌日、なぜかドリモンの体調がすごくよくなっている。体を動かしたいらしく、人目の付かない場所を探すことに。母さんに連れられて採掘場っぽい所に来たんだけど……なぜ今場所を知っている。
「まあいいや……ドリモン、どんな感じだ?」
「すっごく気分が良いよ。今ならもっと強い技も出せそう!」
「技? そういえば、デジモンはそれぞれ固有の技を持っているって言ってたっけ……使わないから忘れていたわ」
幼年期であっても戦うための技を持つあたり、デジモンは元来戦闘するというルーチンが備わっているのかもしれない。
ドリモンは口から鉄粒を吐き出して攻撃することができ、他の幼年期よりも強いと自称している。他の幼年期は酸の泡が基本攻撃だから比べるなよとも言いたいが。
「ブッブッブッブッ!」
「スイカの種みたいに吐くなー。汚いぞー」
「もっと強く、もっと早く!」
「聞いちゃいねぇし」
さて、どうしたものかと思ったら――何か悲鳴が聞こえてきた。いや、あの声はどう考えても……
「母さん!?」
「何かあったの!?」
「わかんないけど、行くぞ!」
ドリモンと二人で母さんのところまでいく。幸い、母さんは無事だったようで特に怪我もしていないようだけど……
「どうかしたの?」
「急に、車が向こうからきたのよー」
間延びした口調はそのまま。それほど危ないわけじゃないけど、驚いている。誰かがスピード違反していたのかとも思ったが――何か、嫌な予感がした。
一瞬、嫌な光景が浮かぶと同時に強烈な悪寒が体中に駆け巡る。母さんも青い顔をして僕と同じ方向へと顔を向けるが――そこには何もいない。だけど、確実に何かいる。
ドリモンも殺気ともいえるほどに強くそちらを睨んでいる。彼には何がいるのかわかるらしく体を小刻みに震わせながらも決して目を放そうとしていない。
「ドリモン、何かいるのか?」
「たぶんデジモン……だけど、この感じ、何かがおかしい」
彼がそう呟いたと同時に――道路の真ん中が歪む。まるでその部分だけ別の空間に置き換わったみたいに。電線から見えるほどに電気がほとばしり、そこへ集まって何かの形を作り出す。
バチリバチリと嫌な音があたりに響き、そこに難とも奇妙な存在が現れた。
緑色の線だけで構成された体。雪だるまのような体系で、ずんぐりとしている。線は骨子状に編まれていて、何もないはずなのに、そこにいるのがわかる。
「デジモンみたいだけど、コアが無い……なんなのあれ」
「僕に聞かれても困るなぁ……母さん、今すぐ逃げられる?」
「ちょっと難しいかなぁ…………お母さん、今まで色々な化け物みたいに強い人見てきたけど、こういう不気味なのは初めてよ」
口調が伸びてない。それほどまでにマズい相手ってことかな。
デジモンのような何かは、こちらの方へ歩んでくる。というか前はどちらなのかわからないんだが。
『――ハッケン。モクヒョウノハイジョ』
「ああもう、ドリモンとりあえず牽制!」
「うん――メタルドロップ!」
ドリモンの口から鉄の粒が大量に吐き出される。流石にこれは決まったかと思ったが――奴の体に当たった途端、鉄粒は細かい粒子になって消えた。
「嘘だろ!?」
「アイツ、成熟期以上みたいだ!」
「二段階上――母さん!」
「分かってる!!」
母さんが僕たちを抱きかかえて、走り出す。流石にあれには勝てないと思っての行動だが、僕らは見誤った。奴のずんぐりした見た目から、アイツは遅いものだと決めつけていたのだ。
母さんよりも早く動き、回り込んで掴まれる。気が付いたときには遅く、叩く投げ飛ばされてしまっていた。その際、母さんには強い衝撃が加わったらしく、嫌な音と共に僕たち以上に高く投げ飛ばされて――
まってくれ、あのまま落ちたらどうなる? 下はアスファルト。叩きつけられたら……
「母さん!?」
「――――ッオオオオオオオ!」
ドリモンが雄たけびを上げる中、僕は思った。僕の好奇心が嫌なものを呼び込んだのだろうか。頭に、いつか夢で見た嫌な光景が浮かび上がる。そして、先ほど一瞬だけ浮かんだ嫌な光景がはっきりと頭に浮かんだ。
それは見るも無残な母さんの――――
「そんな運命、受け入れられるかぁあああああああああああ!!」
僕の叫びと共に、デジヴァイスとドリモンの体が光り輝きだす。それは、かつて見た光だった。
「ドリモン、進化――――
――――ドルモン!!」
ドリモンの体はより大きく、獣とも恐竜ともつかない姿へと変化していく。色は前と変わらないが、四肢はがっしりとし、大きな尻尾が生えている。背中には小さな竜の翼が生えていた。
「しっかりつかまって!」
「わかった!」
ドルモンにつかまり、地面に降り立ってすぐに母さんのところまで跳ぶ。なんとかキャッチして再び着地して一息つくが、奴はまだいる。
「うう……油断した………私も鈍ったわね」
「母さん、大丈夫?」
「ええ。アイツはまだ……いるみたいね」
不気味な謎の存在は相変わらずこちらを狙っている。時折聞こえる合成音声がひどく不快に感じる。
「ドルモン、やれるか?」
「――大丈夫。あいつ、たぶん思ったよりも強くないよ」
「そうか……なら、いくぞ!」
ダンッ、と駆け出すドルモン。それに合わせて奴も動き出すが、素早く動くドルモンを捕えることができていない。何度もつかみかかってくるようだが、必ずかわしている。
「そうか……見た目と同じで行動パターンも単純なんだ」
近くにいるのなら掴みかかって投げ飛ばす。逃げようとすれば追い、離れていればまた別の何かがあるかもしれない。だが、それ以上はない。
故にドルモンはいともたやすく避け続けているのだ。
「少し距離をとってデカいのを撃て!」
「わかった――メタルシュート!」
口から鉄球が吐き出され、奴に直撃する。バチリと嫌な音が一瞬響いた後、断続的にバチバチと言うオトが響いてきた。今度は消されずに奴を貫通するかのように鉄球が押し続けている。
そして、すぐに均衡は終わった。
『――カツドウゲンカイ。ソンザイケイセイシュウリョウ』
そんな音声と共に、奴は消えてなくなっていく。もとの電気へと変換されたのか一瞬強く輝いて消えて終わったが……
「一体、なんだったんだろう」
「……ふぅ、もう安心みたいねー」
「二人とも、大丈夫?」
「おかげさまで。だけど凄いな、ドリモンの時と比べたらずいぶんと大きくなって」
母さんよりは小さいけど、僕が見上げる形になってるから……だいたい小学生半ばぐらいの大きさか。
「ドリちゃん、じゃなくてこんどはドルちゃんかしらー。ホント大きくなったわねーたくさん食べそう」
「おなかすいたなぁ……」
「ふふ、じゃあ帰ってご飯にしようかー」
「わーい!」
まったく、のんきなもので……まあわからないものはわからない。アレが何なのかはまた今度考えることにしよう。
いきなり進化できたり、デジモンともつかぬ何かが現れたり、大変な一日だった。
「だけど、アイツはいったい誰を狙っていたんだろう」
ふと、そんな疑問が浮かんだ。普通に考えればデジモンであるドルモンなんだが……どうにも納得のいかぬまま、最初の戦いは幕を閉じた。
今回の敵の元ネタは、僕は実際に見たことはないのよ。件のゲーム機持ってなかったし。
分かりにく過ぎるだろうか、昔のゴーレモン。流石にあの見た目でデジモンというのは無理があり過ぎると思い、ちょっと変更。それにゴーレモン(岩)は02で出てきていたしね。
改定前は進化するのに駆け足過ぎたから、ちゃんと段階踏んでいきます。それでも他の子どもたちより圧倒的に速くなるだろうけど。