デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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ついに登場ダークマスターズ。そして、明かされる謎が一つ。

あとすいません、また予約失敗して速攻公開です。


35.ダークマスターズ

 ゲートを通ると、長い長い浮遊感が襲ってきた。体がむずかゆくなる感覚が駆け巡り、一度分解されるような奇妙な感覚に陥る。しかし、すぐに元の状態で復元され、ゲートを通過していく。

 考察できるが、これは……光子郎さんの話からするに、デジタルワールドでは自分たちもデジタル体として存在しているとは思っていた。だからこそ気になっていたのだが、自分の情報がそぎ落とされてしまうのではないかと。とんでもなかった。アナログ情報と寸分たがわないデジタル情報として再構成されるなど、予想できようか。

 いや、デジモンたちが僕たちの世界で潜在できている以上、その可能性は考えてしかるべきだったのだが……だとすると、これだけのことが出来るデジタルワールドのサーバーとはいったい何なのだろうか?

 

 ◇◇◇◇◇

 

 どさりと、投げ出されるように到着した。うーんとうなりながらもみんなは起き上がっていく。

 

「戻ってこられたのか?」

「おそらくは……でもあたりが暗いですね」

「夜、なのか?」

 

 たぶんそうなのだろうと上を見上げたとき、全員は唖然とした。

 

「あ、あれ!」

「北海道!?」

「そうか。向こうからこちらが見えたように、デジタルワールドから人間界が見えるのか」

 

 デジタルワールドに来たからだろうか? 次元の壁の状態が見てわかる。これはかなりマズいな……ほころびどころではない。壊れかかっているんだ。

 冷汗が出てくるのを感じ、首元に風を送ろうとすると何か違和感を感じた。

 

「あれ……マフラーが出っ放しだ」

 

 服装はダウンベストに長袖長ズボンのこちらに来るときの格好だったが、マフラーは魔力で編まなかったはず……消せる感じがしないし、デジタルワールドでは常に出っ放しになるみたいだ。

 体にデジタル情報を取り込んだ影響だろうか?

 

「まあ、不都合にはならないか……ん?」

 

 何かの気配を感じた。がさりという音も聞こえ、丈さんが見にいっている。

 

「ゴマモン? そんなところで何をしているんだ」

「丈、オイラはカバンの中だぜ」

「え――じゃあ、うわあ!?」

 

 突如、草むらの中からピンク色の何かが飛び出してきた。すぐに別の草むらに入っていったため、何だったかはわからないが悪意は感じないし、危険な気配もない。

 しかし、何かが飛び出してきた場所が崩れ落ちてしまい、丈さんが落ちかけている。

 

「丈さん!」

「う、うわぁ!?」

 

 デジモンたちは何かが危険な生き物ではないかと向かって行った――その際に幼年期だった者は進化した――が、ヒカリちゃんも危険ではないと思ったのか、近づいている。そちらは彼女に任せた方がよさそうだ。

 

「丈さん、しっかりつかまっていてくださいよ!」

「あ、ああ――って」

「どりゃぁ!!」

「うわあああ!?」

 

 一本背負いのように、投げ飛ばす形で引っ張り上げる。ゆっくり上げるよりも身体強化して投げ飛ばした方が速かったし、そのまま崩れ落ちたら洒落にならなかったので。

 しかし……地面が端から崩れ落ちている。徐々にだが……崩壊が進んでいるのか。しかし、崩れた断面が見えているあたり、地面にテクスチャを張っているのではなく、土や砂の一粒一粒が構成されているのか……

 

「なんつー世界だよここ」

「カノン君、もうちょっと穏便にいかないのかい?」

「いえ、徐々に崩れていたので早い方がいいかと」

「無事みたいだな……しかし、こりゃヒデェ」

 

 太一さんたちも来てくれて、崩れている場所から離れる。そして、先ほどの生き物だが、どうやらミミさんの知り合いらしい。

 チューモンというピンク色のネズミ型のデジモンで、ミミさんの姿を確認して安心したのか気絶してしまった。

 

「とりあえずは目を覚ましてもらってから話を聞くしかできないですね……ロクに食べずにこっちに来ましたから、とりあえず食事にしませんか?」

「それもそうだな」

 

 いやな気配を感じはするが、まだ余裕はありそうだ。まずは回復することになる。

 とりあえず受け取った食料を分けていくが……今後はこっちでの調達も考えないといけないな。

 

「みなさんは、旅をしていた時は食料をどうしていました?」

「デジモンたちに教えてもらいながら、調達したりしてたな。あと、ヤマトたちはレストランで食べたこともあったっけ?」

「ああ……もっとも、酷い目にあったけどな。お金もドルしか使えなかったし」

 

 ……現実世界のアドレスに合わせると、アメリカかどこかだったんだろうか?

 

「しかしカノン……おまえ、そのお徳用の氷砂糖はなんなんだよ」

「? え、僕の好物ですけど」

「……」

 

 なぜ、皆絶句をするのだろうか。解せぬ。

 ドルモンまでまたかみたいな顔で見てくるのが納得いかない。

 

「ヒカリは知っていたのか?」

「うん……たまに見てたから」

 

 なんだか変な目で見られていたが、とりあえず食事は終わり、チューモンの目が覚めるのを待つことになった。やがて、彼も目を覚まし用意しておいた水とクッキーを与えて回復を促す。

 

「ありがとう……ミミちゃん、帰って来てくれたんだね」

「ねえチューモン、一緒にいたスカモンは?」

「……あいつは、死んだんだ」

 

 そこから語られたのは、太一さんたちが人間界へ帰還した後に起きたであろう出来事。チューモンとスカモンの二人は自由気ままに生活していたが、ある日突然世界を暗黒の力が覆ったらしい。

 そして、世界を自分たちの支配しやすい形に再構成していったそうなのだが――その際、崩れた地面の中にスカモンが呑みこまれ、彼は命を落としたそうだ。

 だけどその支配している奴らって一体何者なんだ?

 

「でも、ここまでする奴らの話なんて俺ら聞いたことないぜ」

「わたしも、ヴァンデモンの城ではそんな話は聞いたことなかった」

「パンプモンたちも知らない、か……」

 

 チューモンの案内で、再構成された世界を見に行くことになったのだが……大きな山が一つ見えてきた。グルグルと四本のラインが螺旋を描くように構成されている構造物。情報量が大きすぎて解析はできないが、物理演算がおかしなことになっているのは分かる。

 

「スパイラルマウンテンって、呼ばれているんだ」

「なあチューモン、こんなことをした奴らって一体何なんだ?」

「ダークマスターズっていう奴らで、逆らう奴は皆殺しみたいなことを言っていたよ」

「じゃあレオモンは? 他にも戦いそうなデジモンはいるんじゃないの?」

「わかんない……オイラはスパイラルマウンテンの外の崩れたエリアにいたから」

 

 となると、僕らのやるべきことは……この山を登っていくわけか。

 

「そのダークマスターズを倒すのが俺たちの使命ってわけか」

「ですね……先が長そうだ」

「そんなあいつらと戦うなんてとんでもない!」

「大丈夫だって、俺らはあのヴァンデモンだって倒したんだぜ!」

「そうよ。えらばれし子供が9人そろえば世界だって救えるんだから」

 

 正確には8人と1人なわけだが。それにタケル君が超進化出来ていない以上、紋章は未覚醒なわけだし……なんだかパズルのピースがまだ足りていないような気がする。

 と、そこで嫌な高笑いが聞こえてきた。

 

「なんだ!?」

「――待っていたぞ、えらばれし子供たちよ!」

 

 水しぶきと共に、巨大な蛇のようなデジモンが現れる。いや、龍と形容すべきか。全身を金属で覆っている姿は――あれは危険だ。データ質量が半端じゃない。

 デジヴァイスを握る手に汗が出る……光子郎さんがすぐに情報を引き出そうとしているが、僕には奴の情報がダイレクトに入ってくる。アイツは、究極体のデジモンだ。

 

「め、メタルシードラモンだ!」

 

 奴がそのまま突進してきて――巨体に似合わない猛スピード。これは、よけきれない。おそらくこのままでは激突する。

 なんとかよけようとしていき、全員弾かれつつもなんとか大きなダメージは避けていた。しかし……これはマズイ。

 全員が成熟期デジモンへと進化させるが、それではだめなのだ。

 

「パンプモンたち、デジタマを頼む!」

「あ、カノン!?」

 

 ドルモンにはラプタードラモンに進化してもらい、背に乗る。スピードだけなら何とか追いつけそうなのがこれしかなかったが……

 

「行くぞ!」

「おう!」

「ええいちょこまかとッ」

 

 何度かのぶつかり合いののち、しびれを切らしたのか顔についているバカでかい砲口から光が漏れ始めていた。

 

「ってマズいだろそれ!?」

「トドメだ――アルティメットストリーム!」

 

 全力で防御しながらも、僕はダークマスターズについて考えていた。もしかして、ダークマスターズは……

 やがて、意識が遠のき――気がついたら別の場所へ飛ばされることとなった。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「パタモン、パタモンしっかりして!」

 

 そんな声で目が覚めると、今度はまた別のデジモンが現れていた。ムゲンドラモン、究極体……これは、予想が正しいかもしれない。

 パタモン以外のデジモンが超進化し、完全体へと進化していく。ラプタードラモンもグレイドモンへ進化し、ムゲンドラモンを睨みつけている。

 

「いくら究極体でも、完全体が8体もいれば」

「ダメ、敵わない」

「――ヒカリ?」

 

 ヒカリちゃんの言う通り、いくら完全体が8体いてもムゲンドラモンの火力は更に上を行く。奴の背中の砲台から砲撃が放たれていき、デジモンたちを襲う。

 グレイドモンは双剣を抜いており、砲撃を弾いているが――それもすぐに限界が来るだろう。ならば、出し惜しみは無しだ!

 

(ムゲン)キャノン!」

「グレイドモン究極進化――ドルゴラモン!」

 

 砲撃が放たれた直後、ドルゴラモンがその巨体を活かしてみんなを守ったが――地面の方が耐え切れなくなっていた。

 

「崩れるッ!?」

 

 地面が崩れていき、僕らは全員落ちてしまう。とても嫌な浮遊感があり、どこか途中で何かにぶら下がるように止まった。

 ふぅと一安心……出来ないんだろうな。うん……嫌な予感がビンビンである。

 と、そこで突然ワーガルルモンとガルダモンが殴り合いを始めてしまった。

 

「何やっているんだワーガルルモン!」

「やめてガルダモン!」

「違うんだヤマト、体が勝手に――」

 

 意識を集中させる……先ほどの感覚と、この体にまとわりつく嫌な感覚(データ)。上か。

 

「ドルゴラモン、上空に向かって砲撃!」

「ドルディーン!」

 

 ドルゴラモンから衝撃波が発せられ、上にいたらしきデジモンを吹き飛ばす。

 

「うわぁあああ!?」

「チューモン、あのデジモンは?」

「えっと……ピノッキモン」

「究極体ですね」

「となると、やっぱりダークマスターズは――」

 

 最後まで言うことはできなかった。下の方から爆発のようなものがあり、僕らも上に吹き飛ばされてしまったからだ。

 その衝撃でドルゴラモン以外のデジモンも退化してしまっている。

 

「今度はなにー!?」

「みんな、ドルゴラモンへつかまって!」

 

 全員でドルゴラモンにしがみつき、衝撃に備えると――どこかのコロッセオに投げ出された。

 まったく乱暴な……

 

「イテテ……なんなんだ一体」

 

 しかし、なんだかどこかで覚えのある感覚だったが……この殺意といい、肌にピリピリとくる暗黒の力といい、どこか懐かしい気さえしてくる。

 その時、愉快な音楽と共に誰かがやってきた。

 

「ピエロ?」

「なんでこんなところにピエロなんて――ってカノン!?」

 

 そのピエロを見た瞬間――いや、その気配を感じた瞬間に僕は飛び出していた。やっと思い出した。この肌にくる嫌な感じ。トラウマをほじくり返されそうになる悪寒。

 ネオデビモンの時に感じたものと同じだ。

 

「――ッ」

「おやおや……これはこれは0人目の子供、私がわかりますか」

「――ピエモン、究極体デジモン」

 

 ピエロのような見た目は変わらない。しかし、奴の姿はまるでトランプのジョーカーのような悪魔ともいえそうな風貌へと変化していく。

 そして……もしやとは思ったが、やっぱりなのか。

 

「お前がネオデビモンを差し向けた奴だな」

「やはりわかりますか――しかし、甘い!」

 

 どすんと、腹に衝撃が走る。そのまま殴り飛ばされて、後ろの方でみんなにキャッチされた。

 

「――ゲホッ」

「大丈夫カノン君!?」

「なんとか……でも、アレが出なかった?」

 

 ここぞという時にでる黄金のハンマーが使えなかった。あの男との問答の時からそんな予感はしていたのだが……やはり、意図的にアレを出すのはもう無理か。

 

「ふふふ、愚かな選択をしたものです……わざわざアレを手放すとは」

「手放したわけじゃないんだけど……似たようなものか。僕もアレが何かは知らないけど」

「知らなくていいこと――ここで死ぬのですから!」

 

 そう言うと、ピエモンは攻撃を仕掛けようとするが、ウォーグレイモンとメタルガルルモンが奴に攻撃をしていく。どうやら、太一さんたちがワープ進化させたみたいだな……

 

「究極体が三体もいるんだ! これなら押し込める!」

 

 しかし、その言葉とは裏腹にピエモンは究極体たちの攻撃をかわし続ける。唯一、ドルゴラモンの攻撃だけは何度かかすりはしているものの、それでも届かない。

 

「トランプソード!」

 

 ピエモンが攻撃を仕掛け、三体の究極体は成長期に戻されてしまう。

 

「なんで…………究極体が三体もいるのに……」

「あなた方は究極体に進化できるようになってまだ間がない。その不安定な状態では当然のことです。それに、0人目のパートナーと異なりそちらの二体はどうやら特殊な方法でも使ったようですしね。なおさら、慣れてはいないはず」

 

 ……なるほど、ウォーグレイモンたちの声にノイズが走っているような気がしていたのだが、それが原因か。それにドルゴラモンの場合はX抗体もある。その影響で慣れるスピードがずっと速いのだろう。

 

「ではここで我々のご紹介と参りましょう! メタルシードラモン!」

 

 再び、衝撃と共に巨体が地面から躍り出る。

 

「ムゲンドラモン! それにピノッキモン!」

 

 コロッセオの側面を破壊して、銀色の巨体が姿を現し――どこかイラついた表情の木で出来た人形のようなデジモンも現れた。

 

「ボクとしてはすぐにでもブッ飛ばしてやりたいんだけどね」

「まあ物事には段階と言うものがあるのですよピノッキモン――さて、皆さま。ここにわたし、ピエモンを含めた4体がダークマスターズでございます。さて、楽しい時間と言うのはあっという間に過ぎ去ってしまうものです……さて、どなたから殺して差し上げましょうか」

 

 ピエモンはそう言うと、舌なめずりするかのように僕らを見回す……冗談じゃない。こんなところで終ってたまるか。しかし、みんな恐怖におびえているのか、動けずにいた。

 

「いや……嫌ッ! わたしまだ死にたくない!」

 

 そんな中、ミミさんが声を荒げる。同時に、これはマズイとも思った。

 

「普通の小学生だったのに、なんでこんなところで死ななくちゃならないの! まだやりたいこととかいっぱいあるのに――」

「少々、耳障りですね。でしたら――貴女からと行きましょうか」

 

 ピエモンがナイフを取り出し、投げつける。その場の誰もが動けなかった――少しの例外を除いて。

 チューモンがミミさんの腕から飛び出している。ああ、彼女もデジモンたちに好かれる人なのだろう。ミミさんを守るため、チューモンは犠牲になろうとしていた。でも、それよりも僕の方が速く動けていた。

 ネオデビモンの時に味わったからか、僕はみんなよりもこの恐怖に耐性があったんだ。だからこそ、チューモンをかばい、背中で奴のナイフを受ける。

 

「うぐっ、あがああああああああああああああああああああああ!?」

 

 左肩にナイフが突き刺さり、激痛が走る。ヤバい、思考が途切れる。意識が消えていく。やがて、意識が遠のいていき――――世界が、暗転した。




と言うわけで、なぞ解明のその一。カノンが戦ったネオデビモンはピエモンの部下でした。
なのでそこから起こりうる悪夢が一つ。わかるかなー

チューモンは助かりましたが、代わりに負傷者がでました。

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