デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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普通じゃない子供の親は、やはり普通じゃないということで。

あとスマヌ。予約失敗で妙な時間に投稿してしまった。意図せず本日は二回更新だ。


29.橘一家

 ヒカリちゃんを慰め、部屋で着替えたあと。帰ってきた太一さんから詳しい話を聞いた。なんでもヴァンデモンの部下だったテイルモンというデジモンがヒカリちゃんのパートナーデジモンだったらしい。

 テイルモン個人の仲間のウィザーモンと共にヒカリちゃんの紋章をヴァンデモンから奪いに行ったらしいのだが……ウィザーモンは海に沈み、テイルモンもヴァンデモンにつかまってしまったそうだ。

 結局、ヴァンデモンはいずこかに去って行き、そのまま太一さんも帰ってきたという。

 事態は予想以上に速く進んだらしい。もっと時間がかかるものと思っていたが……ヴァンデモンの行動が性急に過ぎる。こちらでやることをさっさと済ませようとしているような……デジタルワールドの時間の流れの方が速いのが原因か?

 

「うぅ……考え過ぎたかな…………なんか気持ち悪い」

「大丈夫か? カノン」

「太一さん、すいません……もう寝ます」

「ああ……また明日な」

「はい。明日は忙しくなりそうですし、速く寝ましょう」

 

 もうすぐ10時をとっくに過ぎているし……なんか調子が悪い。それに、外には霧が立ち込めていて嫌な感じだ。

 すぐに部屋に戻り布団をかぶる。パンプモンとゴツモンは最初のうちは部屋の中のものが珍しいのか遊んでいたが――母さんに何かされたのか、今はものすごく静かだ。結局、彼らも寝ているし。

 ドルモンは別段平気そうで普通にテレビもみていたのだが……布団に入ると疲れもあったのかすぐに眠ってしまった。頭痛薬でも飲もうか考えるぐらいには頭もガンガンするし――結局、すぐに寝てしまったが。

 

 

 ――この時の僕は知らなかったが、お台場周辺にヴァンデモンが霧の結界を張っていたんだ。その影響で僕の体調にも影響したらしい。それに、霧が立ち込めている間……僕の使っていた予知は一切使えなくなってしまう。

 そのことを知るのは結構後になるんだけど……まあ、それは追々語るとしよう――

 

 ◇◇◇◇◇

 

 日が昇る――しかし、お台場は霧に包まれ薄暗い夜明けとなった。そして、日の光が届かぬことによりヴァンデモンたちも存分に活動を行うことが出来る。

 6時になると同時にヴァンデモンの部下たちは活動を開始した。電車の運行が止まっているため、大勢の人が駅にいたが――そこに、ファントモンと部下のバケモンたちが現れる。

 

「ヴァンデモン様の命令だ。貴様たちを連行する」

 

 何人かは彼らに立ち向かったが、普通の大人では成熟期以上のデジモンには歯が立たない。これが、ゲコモンなどの小さなデジモンならいざ知らず、特異な力を持つバケモンたちにはあっけなくとらえられてしまった。

 そして、彼らは次々に人間たちを捕えていく。お台場各所で人々を捕え、一か所に集めているのだ――場所はビッグサイト。

 えらばれし子供たちと、そのパートナーデジモンも異変に気付き、交戦しているものもいる。しかし、塾に行っていた丈と元々お台場の外に住んでいるタケルは霧の中に入っていなかった。

 そして、カノンはというと……

 

「うっぷ……やべ、吐きそう」

「しっかりしてよー……なんでこんな肝心なときに吐き気?」

「知らない……この霧のせいじゃないのか?」

「これ、ヴァンデモンの霧だ!」

「…………ああチクショウ、魔力が含まれているじゃないかこの霧! 微量でわからなかったけど、これに含まれている魔力と僕の魔力が不和を起こしているのか…………いや、それだけじゃないっぽいけど――さっさと探し出して何とかしないと」

 

 と、その時インターホンの音が響く。カノンは宅急便かな? と思ったが、なぜかカノンの母の橘四音がいつものほんわかした雰囲気と異なり、歴戦の覇者のような雰囲気を纏っていた。

 しかも服装も主婦な感じのエプロンではなく、茶色いジャケットを羽織った出で立ちだ。どこか頑丈そうにみえる……というか、なぜか銃痕のようなものも見える。

 

「――母さん、それ……なに?」

「ちょっと片づけてくるわね。流石に一人じゃ限界があるけど――八神さんちの奥さんがつかまっているわね。なんとかできないか行ってみるわ――とりあえず、あなたはやることがあるんでしょう。母さんは大丈夫だから、頑張ってらっしゃい」

「か、母さん!?」

 

 玄関を開けて入ってきた謎の男――バケモンが化けていただけだが――を一撃でのして、四音は突き進んでいく。元軍人だとは聞いていたが、てっきり自衛隊か何かだとカノンは思っていたのだが……

 

「そういえば、母さんってハーフだから……まさか海外でって話なの?」

「だとしてもなんであんなに強いの? デジモン以上じゃないかな」

 

 流石に真正面から殴っているわけではなく、長物ではじきながら突き進みつつ、攻撃されにくいポイントをとって移動しているだけだが――それでも一般人の動きではなかった。

 カノンの想像通り、彼の母親は海外で軍人として活動していた。

 

「父さんが母さんと出会ったころは、それはそれは荒れていてね……スケバンなんか目じゃないほどに恐れられていた人だ」

「ゴメン、比較対象がよくわからないんだ父さん。そしていたんだね父さん……って、父さん、なんでいるの!?」

「……流石に、私も傷つくぞ」

「オレたち昨日はショーギってのやってたんだぞ!」

「楽しかったよな」

「私も他人と打つのは久々でね、少々盛り上がったよ」

「あ、そうですか……仕方がない。みんなで安全な場所を探すしかないか」

 

 カノンたちはすぐさま外に出る。すでにたくさんの人々がつかまっており――太一たちがバケモンと交戦していた。幸い、アナライズ能力は使えた。魔法自体は問題なく使えるようだけど……やっぱり違和感が存在していて、十全とはいかない。

 太一たちの母を助けようと、四音がなんとかしようとしているのが見えるが――やはり数が多いようだ。

 

「仕方がない――離脱するしかないな。ここはサンダーバーモンあたりで蹴散らした方がいいな」

 

 そして、デジメンタルをとりだして掲げる。青色の光を灯し、デジメンタルは起動した。

 

「デジメンタルアップ!」

「ドルモン、アーマー……あれ?」

「――ドルモン?」

「あ、アーマー進化できない!?」

「なんだって!?」

 

 その叫びを聞きつけたのか、バケモンたちが迫ってくる。その一瞬、茫然としてしまいカノンは動けずにいた。パンプモンとゴツモンも技を撃てる体勢に入っていたが、数秒のラグが存在してしまっている。

 そして、バケモンの魔の手が迫った瞬間だった。あたりに閃光がまき散らされ、バケモンたちが目を覆う。

 

「そないあれば憂いなし……友人に聞いていた閃光弾モドキが役に立つとは」

「と、父さん……」

「まだまだ子供だな。慌てていると、取り返しのつかないことになるぞ」

「…………ハァ。やっぱりウチは普通じゃないよな――仕方がない、ドルモン。アーマー進化が使えないなら通常進化だ!」

 

 デジヴァイスが輝きだし、ドルガモンへと進化させる。カノンも援護を行いつつ、ファントモンと交戦しているグレイモンの隣に並び出た。

 パンプモンとゴツモンは周囲のバケモンの気をそらすことでカノンたちの退路を作ってくれている。

 

「太一さん! 大丈夫ですか!?」

「カノンか――母さんがまだあそこにいるんだ!」

「……流石に、物量が多すぎる」

 

 遠くから、更にバケモンや他のデジモンたちの大群が押し寄せてきている。見立て以上にデジモンがやってきていたようだ。

 唇を少し噛み、血をにじませながらカノンは言葉をひねり出す。それを言うのはためらわれるが――

 

「ここは撤退しましょう。流石に数が多すぎるし、ここじゃ怪我人がでます」

「――くそっ!」

 

 そして、彼らは退避していく。遠くから太一たちの母親の声が聞こえてきた。悲痛な叫びに応えることが出来ずに悔しい思いしかできない。

 橘一家は全員集まっていた――四音も切り上げて、グレイモンに飛び乗っていた――が……母と離れてしまったヒカリは、涙を浮かべていた。

 そんなヒカリの頭を四音が撫でる。その顔はすでにいつも通りの母親の顔。優しげな表情だ。

 

「大丈夫。ヒカリちゃんのお母さんは絶対に助けるからねー。だからー、せっかくの可愛い顔が台無しよー」

「……うん」

「…………橘さんがいてくれて良かったかな」

「太一さん、とりあえずどこかに身を隠した方がいいですかね」

「だな……どこかにいい場所がないか…………」

「それなら、組み立て中のビルか何かがあったはずだ。そこならビニールシートで隠れている」

 

 その時だった――突如として、悪寒がカノンの体を駆け巡ったのは。同時に、ドルガモンにも同じ悪寒が駆け巡る。それは、何度も感じたモノ――殺気。

 ネオデビモンやダークリザモンと同じ、暗黒の気を孕む禍々しいエネルギー。ヒカリも何かを感じ取ったのか、身をすくませている。その様子を二人で確認したカノンとドルモンは、やるべきことが見つかったと頷きあう。

 この場に自分たちがいては皆が危険になる。そう思った次の瞬間には行動を開始していた。

 

「父さん、母さん……みんなのこと頼むね」

「パンプモンとゴツモン、あとよろしく!」

 

 それだけ言うと、カノンたちは一気にスピードを上げて飛び去って行く。太一は一瞬茫然としていたが――やがて意識が覚醒した。

 

「お、おい!? どうしたんだよ!」

「……何かを、見つけたということだな…………ふむ。どう思う?」

「やっぱりわたしたちのこどもねー。頭がいいくせにいきなり飛び出しちゃうのはー」

「そうだな。仕方がない。私たちだけで行くとしよう……それに、アイツの勘はよく当たる。おそらく、この場に自分たちがいない方がいいと判断したのだろう……どうせいつもの場所にいっただけだろうしな」

「いつもの場所?」

「カノンは周辺に被害を出さないように戦う癖があるからな……話に聞いたことが無いか?」

「――第六台場」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 謎の殺気が追いかけてきている。どうやら、姿を隠しているらしいが……第六台場まで律儀に追ってきてくれて助かった。

 もうここで戦うのは何度目になるか……霧の中なのは変らずだけど、ここなら周りに人も建物もないから思い切りやれる。

 

「ドルガモン! ぶっとばぜ!」

「ああ! においで場所は分かっている」

 

 ドルガモンの牙が、目に見えないデジモンに迫る。ステルス能力が高いし、霧のせいで場所がつかみにくい……いや、この霧を逆に利用できないか?

 どうやらドルガモンとは互角ぐらいみたいだし、成熟期ってところだろう。なら――

 

「そこッ!」

「ッ――なぜ、私の居場所が分かった」

 

 僕が指先から魔弾を撃ちこんだ先には、バケモンにそっくりのデジモンがいた。違いは、魔女の帽子をかぶっているだけ――しかし、このデジモンは他の奴らとはどこか違う雰囲気が漂っている。

 こちらをしっかりと見据え、一瞬一瞬を見逃さまいとしているのだ。あまり不用意な動きはできないか。

 

「……霧だよ。微弱な魔力の揺らぎを感じ取って、場所を割り出した」

「ふははは……まさかヴァンデモン様の術を逆手にとるとは…………やはり危険な存在だな、0人目」

「やっぱりそこまでわかっているか……お前、名前は」

「ソウルモン」

「僕は橘カノン――で、こっちがドルガモン」

「……お前、なんでヴァンデモンにしたがっている。相当強いデジモンだろ」

「さてね……だが、こんなところで戦うのも無粋だな」

 

 何? そう思った時だった。ズドンと、大きな揺れと共に津波が押し寄せてきた。すぐさまドルガモンの背に乗って飛び立ってもらう。

 なにか、巨大なデジモンが海の中にいたのか!?

 

「バリエーション豊富だなおい」

「貴様と直接の対決はマズそうだからな……そらそら!」

 

 炎が迫ってくる。ドルガモンが避けるように飛行をするが――第六台場に降りれない!

 どうやら最初は小手調べで泳がせてくれていただけみたいだったらしい。鉄球と、火球が交差する。奴も成熟期にしては異常なほどに強い。何度もぶつかり合うが、奴の方が小回りが利く関係上、こちらが押される場面もしばしばだ。一度バランスを崩して道路の上に落ちてしまうし……

 

「どうした、その程度か!」

「舐めるなよ! 喰らえ!」

 

 ドルガモンの鉄球と、火球がぶつかり合う。エネルギー量は互角――すぐに爆発が起きてあたりに煙がまき散らされた。

 あいつは強い……ならば、こっちも本気で行くしかない。紋章が輝きを増し、ドルガモンの姿が変わっていく。

 体毛は赤へ。体はより長く、巨大に。

 

「超進化、ドルグレモン!」

「いくぞ!」

 

 ドルグレモンが体を浮かせ、ソウルモンに向き直る。そして、奴も炎を放つがそれぐらいなら避けて――

 

「いいのか? 避けると後ろがどうなるか」

 

 後ろを向けば――橋の上に、大勢の人たちがいた。そうか、アイツは避けられないように位置取りをして……

 

「全力で防御する! だから、ドルグレモン!」

「ああ、わかっている」

 

 僕の全力のシールドと、ドルグレモンが翼で盾になるように防いでくれた。おかげで、後ろの人々には当たらずに済んだが――結構、衝撃がデカいな。

 一瞬、意識が飛ぶかと思ったその時だった。目の前に、ソウルモンが迫っていた。

 

「これで、トドメだ!」

「ッ――舐めるなよ、このぐらいでやられるかよ!!」

 

 ドルグレモンが体を前に一回転させる。僕もエネルギーをドルグレモンへ流し込み、その尻尾に集中させていく。ソウルモンは驚きの表情に包まれていたが、もう回避できない。

 

「流石に懐に飛び込んだのは失敗だったな!」

「しま――ッガアアアア!?」

「ブラッディタワー!」

 

 赤く輝く一撃が、ソウルモンを切り裂く。何とか勝てた――そう思って降り立とうと思った、一瞬の気のゆるみだった。

 ――X進化。そんな電子音のような声が聞こえてきたときには、もう遅かったのだろう。

 

「え――」

 

 一撃。目にも見えない一撃が、僕とドルグレモンの体を引き裂いたのは。身体に傷はない、だが別の部分に直接届くような攻撃。

 

「あがあああ!?」

「なんだ、これ――」

 

 地面に落ち、ドルモンへと退化していく。僕の方は紋章が強く輝いて、すぐに痛みが引いていった。

 再び何かが迫る。このままではいけない――ドルモンの姿が再び変わる。今度はより強靭な体を持つデジモン。

 

「ラプタードラモン!」

 

 しかし、ラプタードラモンも吹き飛ばされてしまい――膝をついてしまう。

 

「なっ――ラプタードラモン!?」

「コイツ、普通のデジモンじゃない」

 

 目の前には先ほどまでのソウルモンとは違うデジモンがいた。骸骨のような姿をしているが、その体は金属で出来ている。そして、エネルギー体で出来た鎌を持っていた。

 機械の死神が、僕らを見下ろしていたのだ。

 




カノンの両親はヴァンデモン編以外ではあまり出てきません。改定前だとバケモン倒しちゃっていたんだけど、流石にやめました。

そして最後に出てきたデジモンですが、わかるかな。
たぶんX抗体持ちでは最初にテレビアニメに出たデジモンです。


サイバースルゥース、エンディング見ましたー。いやぁ、ソフト更新してから挑んでいたから最終決戦はシャイングレイモンBMで蹴散らしてた。なぜか最初に貰ったハグルモンが紆余曲折を得てこうなってた。

さて、七大魔王とかアルフォースとかディアナモンゲットの旅とかまだ続くのかぁ……そういえば初代デジストもクリア後に七大魔王だったな。

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