デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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意外と長くなってしまった。あと、今回のカノン君はいつもより会話相手が多くてテンションが上がっています。


21.えらばれし子供たちとの出会い

 さて、ステルスの術式を試すのもかねて迎えに来たのはいいけど……みなさん開いた口が塞がっていないようで。うん、やり過ぎたかな。

 

「かなじゃねぇよ、やり過ぎだよ確実に!」

「……すんません」

「って言うか目立つ行動をして大丈夫なんですか?」

「ステルスは問題なく機能しているみたいなんで大丈夫ですよ……ただ関係者には丸見えみたいですが」

 

 色々と準備をしてからサンダーバーモンに進化してもらって、文字通り飛んできたのだが……僕が到着したのはちょうど戦っている最中。いや、決着がつく時だった。

 それで急いで現場から離れるみんなが見えたわけだが……着陸ポイントを探さないといけなかったし。

 

「どうやったんだよそれ……」

「ほら、あの歪みで出てきたデジモンですよ。アレを参考に表面のテクスチャにノイズを発生させているんです。なんで、一般の人には認識できないんです……欠点は電子機器が使えなくなることですが」

 

 おかげで連絡をとる時はいちいち降りる必要があるんだけど。いや、上空じゃどのみち電波の類は届かないか。

 

「本当に無茶苦茶な子ね」

「そうなのよ。昔っから子供らしくないというか」

「そこの女子二人ー、聞こえてますよー」

 

 自覚はあるが、人に言われると少々傷つく。とりあえずゆっくり話がしたいし、どこかにいい場所が無いものか……

 

「とりあえずファーストフードあたりで何か買って食べましょうか。幼年期のままってことはこっちに戻って来てから何も食べてないんじゃないですか?」

「実を言うと腹ペコで今すぐハンバーガー食べに行こうかと思っていたんだよ」

「太一、君ねぇ……電車賃のこと忘れているだろ」

「あ、あはは……」

 

 眼鏡の先輩が太一さんに呆れた顔を向けている……そういえば僕が知っているのは太一さんと光子郎さんと空さんの三人。残りの4人は名前がわからない。僕より年下の子が別の学校だってのは分かるんだけど……僕と同じく、日本人ではありえない髪の色だし。金に近い茶色といったところか?

 僕の赤毛もそうなのだが、ほぼ黒髪、たまに茶色の中ではかなり目立つのだ。おそらく、ハーフ……にしては顔立ちが日本人だからクォーターってところか。

 

「じゃあ、太一さんと……そこの眼鏡の人。買い出しに付き合ってください。他の皆さんは公園内で待っていてくださいね」

「眼鏡の人って……僕の名前は城戸丈だよ」

「りょーかいです。城戸先輩」

「…………城戸って呼ばれるのもなんだか久々だな」

「先生だって呼んでたぜ?」

「まあそれはそうなんだけど……」

 

 何カ月もデジタルワールドを旅していたと言っていたし、その感覚は分からないでもないが……まあとにかく、急いで買い出しに行こう。とりあえずドルモンは退化して僕の頭に乗ってもらった。

 

「って、自分で退化したッ!?」

「おおいいリアクション……そういえば自己退化って普通はできないんだっけ?」

「お前やっぱ無茶苦茶だよなぁ」

 

 遺憾である。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 まあ適当にハンバーガーを買い込む。子供だけでいぶかしげに見られるだろうが、僕が適当にぬいぐるみ同好会の買い出しとか色々言っていたら気にされなくなった。まあ、デジモンもおとなしくしていたらぬいぐるみにしか見えないし。

 こんな奇怪な生物がいるとは誰も思うまい。

 

「慣れているね、君」

「そりゃ4年も一緒に暮らしてますからねー。あ、待ってください。ちょっとそこの電話で父と連絡をとりますから」

「そういえば、お前んちの両親はデジモンのこと知っているんだっけか」

「ええ。そろそろ父の講義も終わって大学から出られる時間なので迎えを頼みます。流石にこの人数じゃ帰るのも一苦労でしょうし……電車なんて使ったら寝過ごすでしょうからねー」

「「ははは、まさかぁ」」

 

 ……知っているんだからな。二人とも、注文を待っている最中少しうとうとしていたのを知っているんだからな。まあ、追及する必要はないか。

 とりあえず父さんへ公衆電話から連絡をとる。数秒のコールののち、すぐに出てくれた。

 

『もしもし、どなたかな』

「カノンだよ。今大丈夫?」

『ああ、そろそろ帰るところだが……どうかしたのかい?』

「うーん説明すると長くなるんだけど、光が丘まで迎えに来てほしいんだ。大型の車で。子供は僕を入れて8人と……あと8匹かな」

『なるほど――――前に言っていた予感が見事的中したんだね』

「そういうことで。光が丘公園のあたりにいるから、迎えは……体育館あたりの駐車場でいいかな」

『わかった。できるだけ近場にいてくれ』

「わかってるよ。とりあえず、頼むね」

 

 まあ、食べ終わって話も片付くころにはつくか……通話を終了し、太一さんたちと共にみんなのところへ戻る。流石にもう驚く様子はないが……なんでいぶかしげな視線?

 

「なあ丈、小学校3年生のころってここまでしっかりと電話の受け答えできたっけか?」

「人によるんじゃないかな。ちなみに、僕は出来た」

「…………」

 

 訂正。太一さんだけがいぶかしげだった。

 まあそれはおいておいて、元の場所に戻るといきなり食べ物へ突撃された。それほどまでにおなかがすいていたのか。

 

「もうこんな食事久しぶりだもの!」

「懐かしいわこの味……」

「ハンバーガーなんて何カ月ぶりだろうな」

「空たちいつもこんなおいしいもの食べてたのー?」

「うめぇー」

「なかなかいけますなぁ」

 

 デジモンたちにも好評なようで、どんどん食べ進める。僕はおやつ程度だからナゲットとアップルパイだけなんだが……ちなみにドリモンだが、目を輝かせて周囲を見ている。そういえば、この公園特撮の撮影に使ってましたね。

 

「そういえばカノン君に自己紹介をまだしていませんでしたね。先ほど丈先輩はしたんですよね……あとは」

「まずは俺からだな。俺は石田ヤマト。お台場小学校の5年生だ」

「アタシは太刀川ミミ。4年生よ」

「ボクは高石タケル。みんなとは違う小学校の2年生だよ」

「それじゃあ僕も改めまして、3年生の橘カノンです。で、こっちが相棒のドリモン。さっきまでの姿はドルモンです」

「どうもー」

 

 それに続いてデジモンたちも自己紹介を始めていく。まあ、僕の場合は情報を読み取れば名前がわかるのだが……今言うと混乱するか。

 

「ヤマトのパートナーのツノモンです」

「モチモン。光子郎はんのパートナーや」

「アタシ、ピョコモン! 空のパートナーよ」

「パルモンよ。ミミのパートナーデジモンなの」

「オイラはゴマモン。丈のデジモンさ」

「ぼくはパタモン。タケルのパートナーだよ」

 

 コロモンも入れて7体……いや、ドリモンも入れて8体のデジモンか。

 

「半数以上は幼年期か……エネルギーの使い過ぎなら完全体に進化できるのは4体以上ですか?」

「鋭いですね。ちょうど4体のデジモンが完全体に進化できたんですが……先ほどのマンモンとの戦いでご覧のとおりに」

「完全体は強いですからねぇ……父さんが迎えに来るまで時間もありますし、どんなことがあったか聞かせてほしいんですけど」

「わかった。いいぜ」

 

 そうして語られるのは太一さんたちが歩んだ冒険譚。小学生7人がするような冒険じゃないよなと思いつつ、彼らの視点で語られる物語はそれはそれはトラブルの連続で満ちていた。

 いきなり飛ばされたファイル島と言う島では黒い歯車がデジモンたちを凶暴化させ、味方であるデジモンのレオモンやアンドロモンなどと戦うことになったり、黒幕であったデビモンとの決戦ではパタモンが進化したデビモンと相討ちになったりなども聞かされたが……そういえば太一さん言っていたなデビモンがどうとか。

 

「デジタマに戻っても記憶が引き継がれるんですか?」

「絶対というわけではないようですが、パタモンの時はちゃんと覚えていましたよね」

「うん。ファイル島のこともはっきりと覚えているよ」

「てっきりオールリセットかと思っていたんだけど……残るデータもあるのか」

 

 で、その後は海を渡って大陸へいったと。デビモンも先兵でしかなく、サーバ大陸に渡るまでも色々あった――とくに驚いたのは、紋章とタグのくだりだろうか。僕の場合普通にデジヴァイスと一緒に出てきたし。

 

「こう、パソコンからにゅっと」

「ゲンナイさんも事情が特殊と言っていましたね。運命の紋章がどうとか」

「……運命、ねぇ」

 

 紋章は完全体に進化させるアイテムであるらしいが、それぞれの心の特質に関わるのだとか。で、僕のは運命か……それ心の特質なの? いや、心当たりあるけど。

 話をもどすが子供たちは大陸でエテモンという敵と戦うことになったそうだ。黒いケーブルでデジモンたちを操るエテモンとの戦いは困難を極めた。エテモンはふざけたなりながら完全体で、正面から戦ってもダメだったそうである。

 

「で、完全体に進化したコロモンと太一さんがその時の戦いの余波でこっちにきたと」

「そういうわけだな……いやぁ、あの時はびっくりしたよ」

「こっちもですよ」

 

 その後は太一さんがデジタルワールドに戻るのだが――デジタルワールドでは更に2カ月以上の時間が経っており、仲間たちはばらばらになっていた。

 その過程で現れた新たな敵こそがヴァンデモンで、その手下の手により何度も仲間割れを起こさせようとしたり、色々と妨害を受けたりした――って、そのヴァンデモンを倒しきらずにこっちに来させてしまったと。

 

「倒しきるどころか歯が立ってないんだけどな。あはは」

「いや笑いごとじゃないって」

「完全体相手にいきなり立ち回っているお前と比べるなよ――っていうか普通立ち回れないだろ」

「今度はカノン君の話を聞かせてほしいなぁ……ほれ、うりうり」

「なんで頭をぐりぐりするんですかッ」

 

 すこし背が低いの気にしているのに――まあいいか。とりあえずどこから話したものやら…………

 

「4年前の事件についてですが……覚えている人は?」

「さっき全員思い出した。その事件を目撃した人物が、えらばれし子供になっているんだ――しかも、全員が引っ越している。それで、同じく光が丘に住んでいて引っ越した人物が8人目じゃないかと思っているんだが……」

「8人目?」

 

 詳しく聞くと、ヴァンデモンは8人目を抹殺するためにこちらの世界に来たらしい。僕は何人目だよと思うのだが0人目って……順番的には1じゃないの? とか0って番外ってこととか色々言いたいことはあるがそれは置いておく。

 

「ああ、だから早く見つけないと……」

「あのぉ……太一さん、一人その条件に当てはまる人がいるじゃないですか。光が丘に住んでいて、その後引っ越した子供。さらにデジモンの事件も目撃している…………」

「…………オイオイ、まさかとは思うけど」

「まあそのまさかってことで――――こうなるとあの術式はやっぱり正解だったか」

「術式?」

「まあ、それも含めて僕が戦った相手とかについても話しますよ。どのみち、父さんが来るまで動けませんし」

 

 光が丘での事件の時にデジタマを拾ったこと。そこから生まれたのがドルモンで、4年間一緒に暮らしていた事。あとは、変なワイヤーフレームに始まり、第六台場では三度デジモンと戦ったこと。ハワイで出会ったバステモンや、マーメイモン。あとはデジメンタルと魔法についてなど。

 

「……他にもこっちにデジモンがいたなんてな」

「というか、アーマー進化ってそんなのがあるの?」

「そんな便利なものがあるのなら俺たちだって使いたかったぜ」

「でも一応はリスクもありますし、単純な強さなら成熟期の方が上ですよ」

 

 それぞれ状況によっては有利になる場合にしか役立たないし。

 

「リスク?」

「ある意味強制的に進化させてますからね。使いすぎると危ないんですよ」

 

 まあ、そこまでの事態にはならないようにしているけどね。

 というわけで、大体の話もおわり、あとは迎えを待つのみかな。

 

「って、おいカノン……本当に、ヒカリがえらばれし子供なのか?」

「太一さんがデジタルワールドへ戻った後、デジヴァイスが出てきたんです。どこからかは分からないけど、あの場にいたのは僕とヒカリちゃんだけ。僕はもうもっているから、残るはただ一人――っていうかあの事件の当事者がそのあと何のかかわりもないわけなかろうに」

 

 太一さんも心配するから言わないが、何度も狙われているんだぞヒカリちゃん。

 

「…………まあ、積もる話はまたあとにしようぜ。とりあえず今日は休もう。疲れた頭じゃ考えもまとまらないさ」

「ああ……そうだな」

 

 数分後、父さんが到着した。先ほどの戦いのせいか、道が混んでいたらしく少し時間がかかったとのこと。父さんもドルモンで見慣れていたから他のデジモンをみても驚く様子はないが――パルモンに対しては非常に興味深そうな視線を向けていた。まあ、植物が動いてしゃべっているわけだからねぇ……

 その後、お台場まで帰ることになったわけだが……みんなは疲れて眠ってしまった。

 

「デジタルワールドか……子供たちだけで随分と大変な思いをしたみたいだな」

「みたいだねぇ……ねえ、父さん」

「言わなくていい。わかっているよ。カノンもそのうち行くことになるんだろう?」

「たぶん――っていうか絶対に行くんだろうな。結局、太一さんたちがデジタルワールドに行くことになった原因がまだ判明していない。それにこっちに8人目がいたってことは……8人目も一緒に行って解決しなきゃならないことがある。僕は特殊な立ち位置らしいけどね」

「そうか――絶対に帰って来いよ」

「まだ行くと決まったわけじゃないけど……ちょっと止まって」

 

 体にピリピリとした電気を感じた。膝の上にのっていたドリモンも目を開き、川の方を見つめている。

 

「――なるほど、分かり難いが嫌な感じがするな。それに、ラジオにノイズが走っている」

「ちょっと片づけてくるよ」

 

 ドリモンが一気にドルガモンにまで進化し、滞空を始める。すぐさま背中に飛び乗り、共に川まで降りていくと――川の中から、巨大なオオイカが現れた。

 展開していた術式により、デジモンの情報を見ていく。ゲソモン、成熟期か……

 

「組み付いて触手を切り裂け!」

「オーライ!」

 

 大きさだけなら、今まで戦ったデジモンで最大だろう。だが、強さなら別だ。まだダークリザモンやヨウコモンの方が強かった。

 ヴァンデモンの手下の中でこいつはどの程度の位置にいつのかはわからないが……

 

「これなら余裕しゃくしゃくかな! ドルガモン決めろ!」

「パワーメタル!」

 

 鉄球に打ち抜かれ、ゲソモンはデータの塵になっていった。願わくば、デジタマに還元されて欲しいものだ。

 すぐさま父さんのところにもどり、車に乗り込んで発進してもらう。

 

「早かったな」

「今まで戦った中じゃ大分下だよ。雑兵か水の中の偵察役だったのか…………案外ヴァンデモンだけがとびぬけたワンマンな組織なのかも」

 

 日は暮れ始めており、あたりを赤く照らしていた。大変になるのはこれから、か。




哀れゲソモン、速攻で消える。
ガンドってからの無双で倒すのとどっちがいいか悩んだ結果、長くなりすぎないようにしました。

改定前以上にカノンが好き勝手やっていますね。たぶん、そのうちしっぺ返し喰らいます。

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