デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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改定作業中、改めて選ばれし子供の設定を見ていたら……重大なミスをしていたことが判明。誰もつっこみが入らなかったし、そのままで流していたぞと反省。
あとはあとがきで語ろう。


2.知識との出会い

 ドドモンがドリモンに進化した次の日の出来事。最近、マンションの隣の部屋にこしてきた家族が挨拶に来ていた。例のガス爆発として処理された事件で多くの人が引っ越したわけだけど、どうやらその家族もその事件で引っ越してきた人たちらしい。

 まあ、初めてみた時はビックリした。遠くて顔をはっきり見たわけじゃないけど間違いないだろう。あの恐竜のような姿をしたデジモン、コロモンの傍にいた二人だ。後になって思えば、コロモンって名前の割に厳つすぎるけど。

 

「始めまして八神といいます」

 

 八神さんのお母さんがウチの母と挨拶している。見た目は普通のお母さんと言う感じ。

 

「どうもー、橘ですー」

 

 ウチの母さんはのほほんとした人で、なんか、こう……比喩表現抜きでフワフワした人。というイメージだ。

 大抵のことは笑って許すが、怒ると笑顔で迫ってくるからかなり怖い。ちなみに、元軍人らしい。あまりイメージにそぐわないが、昔の部下と街でばったり出くわしたりすると、相手が直立不動のびしっとした格好でものすごい綺麗な敬礼をするのだ。一体、昔の母さんは何者だったのだろうか。

 

「どうも、橘カノンです」

 

 僕もとりあえず挨拶しておく。父さんの書斎で見つけた正しいマナーとか書いてあった本を参考にしてみたのだがあっているだろうか? お辞儀の角度に気を使ってみたけど。

 

「あら、ウチのヒカリと同じくらいなのに礼儀正しい子ねー」

 

 まあ、好印象。というよりは、驚きの色が強い。

 のちに知ったことだが、僕は同年代と比べても異色過ぎるタイプであった。まあ、遊ぶ友達もいなかったから比べようがなかったのだけど。

 

「ほら、二人も挨拶しなさい」

 

 そう言って、八神さんが子供たちに挨拶を促す。兄の方はやんちゃそうな少年。僕よりもいくらか年上。女の子の方は、とてもおとなしそうで何だかはかなげな印象。僕と同じか少し年下ぐらい。

 

「八神太一です」

「……八神……ヒカリです」

「えっと、よろしくお願いします」

 

 その後、お母さん達は雑談をやめ、八神さんたちは家に帰っていった。

 ただ、ヒカリちゃんがその時、「コロモンみたいなにおいがする」って言っていたのには驚いた。同じデジモンであると言っても、大分異なる姿だし、においが同じなわけないんだけど……

 そんなちょっとヒヤッとした一幕もあったけど、とくにドリモンのことはばれずに済んだ。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 部屋に戻ると、ドリモンは鼻提灯(フーセン)を出しながら眠っていた。そういえば今日は結構陽気がいい。それに、ドリモンに進化してから足と尻尾が生えて動きやすくなったのがうれしかったのか、元気いっぱいに遊んでいたから疲れたんだろう。

 どうやらデジモンは進化することで大きく、強くなるようだ。体重も増えて、体も頑丈になっていた。

 頭も良くなっていくらしい。現に、ドリモンに進化してから知識が増えたみたい。

 

「ねえ、ドリモン。このペンダントが何か分かる?」

「うーん、よくわかんない」

 

 しかしながら、ペンダントのことは最初から知らないらしい。

 

 ただ、デジヴァイスについては色々分かった。

 どうも、聖なるデバイスと呼ばれるアイテムで、デジモンを進化させる以外の機能もあるらしい。

 時計機能など、デジモンに関係ない機能もあったけど。しかも時刻を合わせる必要がなく、普通に日本の標準時間が表示されている。設定とかしていないんだけど……自動的に合わせてくれるってハイテクすぎやしないだろうか。

 だけど決められた持ち主とそのパートナー以外には反応しないらしいので、ボクとドリモン用ってことになる。機能の全てを把握していないし、進化も自由ではない。使えるのは今のところ時計と歩数機能ぐらいだ。

 あと、出会ったデジモンを自動的に記録するみたいなんだけど……表示させる機械が無いのが悔しい。まあ、出会ったのはドリモンとこの前に二体だけだけどね。一応、ノートにドドモンとドリモンのスケッチを載せた手製の図鑑を作っている。コロモンと怪鳥も覚えている限り特徴を記載してあるけど、夜だったし記憶がおぼろげだ。色ぐらいは覚えているんだけど。

 

 

 そういえば、このペンダントは一体なんなんだろう? 金属っぽいんだけど、なんだか妙な感触がある。

 中に白色のプレートが入っているんだけど…………はぁ、気になるけど保留にするしかないか。

 

「カノン、どうかした?」

「ううん、なんでもないよ」

 

 ドリモンも隠し続けるわけにはいかないし、どうやって親に言えばいいかが最近の悩みどころである。

 いや、あの二人なら普通に受け入れるとは思うんだけど。変人だ……変人だし。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 その日の夜、とりあえず父である橘業火(ごうか)と母、橘四音(しおん)にドリモンのことを話した。ある日拾ったタマゴから還ったこと、もとはスライムのような形で、進化をしてこの姿になったことも含めて。

 話せることもほとんどないんだけどね。しかし、僕じゃこれ以上考えても仕方がないし、父さんなら何かわかるかもと期待していたんだけど……

 

「ふむ、実に興味深いな。これは地球上ではありえない形の生物だ。いや、もしかしたらこの宇宙でさえも無理かもしれないな。生物学に詳しい知り合いに見せたら食いついてくるだろうが……」

「あらあら、よく食べるわねー」

「むしゃむしゃ」

 

 うん、ドリモンのこと自体はあっさり受け入れた。って、ドリモンもなじむの早いな。

 ちなみに、母は今では専業主婦である。昔のことはあまり教えてくれない。恥ずかしいわーってはぐらかす。

 

「しかし、カノン。まだほかの誰にもドリモンのことを話していないだろうね」

「それはもちろん」

「ならいいのだ。これほど珍しい生き物だ。どこかの馬鹿が実験と称して非道なことをしかねん」

 

 父は心理学などを教えているらしいが、それと同時に非道なことは許せないくちのため、何が正しく、何が悪いのかを説いている。むしろ、そっちのほうが人気が高く、大学生達も父の影響で更生した人物がたくさんいる。どちらかと言うとカウンセラーとかのほうがあっているかもしれない。

 ちなみに変人。

 

「きゅうり食べますかー?」

「もう、おなかいっぱい」

 

 

 いや、いつまでやってんだよ母さん。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ただまあ、親がすんなりドリモンのことを受け入れてくれたおかげで色々と調べやすくなった。

 ドリモンも進化したことで知識が増えたのか色々と教えてくれて、数日で一気に色々なことが分かった。

 

 彼らの総称デジモン——正式名称はデジタルモンスター。

 その名のとおり、デジタル体を持った生命体で、デジタルワールドと呼ばれる場所に住んでいる。

 心臓や脳といった器官に当たる電脳核デジコアを持っており、そこに様々なデータが蓄積されているらしい。

 データの集まりから生まれたのか、デジモンがすむ世界……デジタルワールドにながれたデータをもとに形作られたのか。真相は分からないけど、色々と分かってきたこともある。

 ドリモンの話からの推察と、父さんが大学の知り合いから借りてきた機材を使ってドリモンの体毛を調べた結果、色々と面白いことが分かった。

 

 彼らはデジタマと呼ばれるタマゴから生まれる。

 死んだ場合、デジタマに戻る……人間で言う、輪廻転生と同じようなものだと思う。

 記憶は基本的に引き継がないが、こうして知識があるということは、引き継がれるものもあるのだろう。

 

 デジモンにはいくつかの成長段階がある。

 現実世界の生き物みたいに徐々に変わるのではなく、一気に変わるようだ。

 たとえるなら、イモムシがいきなり蝶に変わるようなものだろう。

 

 成長段階は

 

 幼年期Ⅰ

 幼年期Ⅱ

 成長期

 成熟期

 完全体

 究極体

 

 の六つらしいが、一部例外もいるとのことだ。ちなみにドリモンは幼年期Ⅱである。進化するごとにデータ量が膨大になっていくらしく、究極体ともなるとどれほどの大きさのデータか予測もつかないらしい。

 ちなみに究極体は滅多にいないらしく、その名のとおり絶大な力を持つデジモンである。正直お目にかかりたくない。

 そういえば、コロモンは幼年期Ⅱらしい。恐竜の姿はおそらくコロモンが進化した姿だと、ドリモンが言っていた。コロモンという名前の知識はあったみたいだ。どうも幼年期はバリエーションが少ないらしくて、名前だけならドリモンも言えるほどだとか。あと、幼年期のデータ量は少ないのでバーコードリーダーを当ててみて表示される分のデータが幼年期のデータ量らしい。

 それほど多くなかった……の割に、こうやって自分で考えて動けるというのは現代の科学に照らし合わせてみてもあり得ぬことだと父さんが言っていた。

 更に知りたければデジタルワールドに行くべきなんだろうけど……

 

「デジタルワールドってどうやったらいけるんだろう?」

「さあ?」

 

 どうやらドリモンもそれは知らないらしい。

 相変わらず、自身の知識は単語ばかりで意味までは分からないらしい。デジタルな存在ゆえか、単語自体がデジコアに刻み込まれていると父さんが推察していた。

 あと、イグドラシルという単語も度々でてくるんだけど……どうにも気にはなるが、他の言葉以上に何のことだかわからない。ただ、ドリモンはその単語についてどこか怖がっているように見える。

 イグドラシル……北欧神話に出てくる樹の名前らしいけど、それとは違うってのはなんとなくわかる。

 

「うーん……これ以上考えても仕方がないかぁ」

「カノン、おやつたべたい」

「そうだね。何か冷蔵庫にないか探してみるよ」

 

 冷蔵庫を開けてみると――なんとそこには大量のソーセージが。

 

「――――いや、多すぎでしょ母さん」

「わぁい、ソーセージ大好きー」

「確かに好きだけど……なんでこんなに大量に」

 

 少なく見積もっても百本はあるんじゃないだろうか。正直、食べきれないと思う。というかなんでこんな大量に……まあ、これだけあれば少し位貰っても大丈夫か。

 とりあえず二、三本とりだしてドリモンと二人で食べる。

 おいしいけど……やっぱり数が気になるな。

 

「……変人の嫁は変人か」

「なんのはなし?」

「いや、こっちのこと」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 流石に家の蔵書だけでは調べ物もはかどらない。図書館に出かけて、アレコレと本を読んでみるけど……

 

「うーん、どこから手を付けたものやら」

「カノンー苦しいよー」

「ちょっと我慢しててね。流石にみられるとマズいから」

 

 動かないでもらえればぬいぐるみとごまかせるんだけど、一度走り出したら止まらないドリモンは下手に外に出せないのである。それはこの数日で嫌と言うほど味わった。

 おかげで生傷が絶えない……一回、ちょっとやり過ぎた(ドリモンが)ことがあって母さんに怒られてからはおとなしくしてくれているけど。

 

「北欧神話……ダメだ。全然手掛かりにならない。むしろパソコンとかそっち系の本を読んだ方がよさそうだ」

 

 あと、漢字ばかりの本を僕が読むのはやはり目立つのか、さっきから兄弟と思しき二人に見られている。兄の方は眼鏡をかけていてツンツン頭。弟はサラサラか……当たり前だけど黒髪だな二人とも。

 ちなみに、僕は赤毛である。母方の祖母が外国の人でその血を受け継いでいるかららしい。そのため母の髪も同様です。

 

「場所変えるか」

「……そろそろ出してほしい」

「我慢してねー」

 

 とりあえずパソコン関係、パソコン関係……棚はすぐに見つけたけど、どうやら先客がいたらしい。年のころは僕よりも少し上の男の子だ。

 なんというか……本当に子供かと言いたいぐらいに、難しい本を読んでいる(人のことは言えない)。

 まあ、別段問題ないだろうということで、僕も適当に一冊とってみて読んでみる…………だめだ、とっかかりの知識がないと分からない。

 

「むぅ……」

「どうかしましたか?」

「あー、すいません。うるさかったですか?」

 

 先に本を読んでいた人に声をかけられてしまった。唸り声がうるさかったのかとも思ったが、どうも彼の顔を見ると違うらしい。

 

「いえ、ボクよりも小さい子がこんなところにいるのが珍しくて」

「あー……お互いさまなんじゃ」

「ふふ、そうですね。でもわかるんですか? 漢字も多いですし」

「とっかかりがわからないと……専門用語以外なら大丈夫なんですけど」

「へぇ…………それなら、この本がおすすめですよ。ボクも最初はここから始めました」

「ありがとうございます……えっと」

「ボクの名前は泉光子郎。君は?」

「橘、カノンです」

 

 この時は思ってもみなかっただろう。この人と、長い付き合いになるとは。この時の僕はただ、人のこと言えないのに子供らしくない感じの人だなぁと思っていたんだけどね。




色々と出会いの部分を変えていきます。あと、光子郎は無印開始時点ではサッカー部だってのを知らずににじファン時代で最初からパソコン部にしてしまっていたっぽい。
太一と知り合いっぽいのはなぜかと思ったら、そこのつながりだったのかと今更ながらに知る情けなさ。
パソコン部を立ち上げたのは無印での冒険後だったと。

にじファン時代では時間を飛ばしていましたが、色々と出会いの部分を考えて構築し直します。
あと、分かり難いけど他にも邂逅。

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