デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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今回、アドベンチャー28話とそう大きな違いはありません。流石にそのままはまずいので微妙に変えてありますが。


19.日本へのゲート

 ここまで起こったことをまとめよう。

 

 デジタルワールドに太一が戻り、少しばかりの時が過ぎた。結論から言えば子供たちは全員合流を果たしたのだが、新たな敵ヴァンデモンとの戦いが幕を開けたのである。

 ヴァンデモンは強く、子供たちを追い詰める。仲間たちの絆を引き離し、バラバラにすることで倒そうとしていたが、子供たちは苦難を乗り越えてさらなる成長を遂げた。

 そして、ガブモン、テントモン、ピヨモンは完全体への進化を可能としたのだ。また、紋章にはそれぞれ意味があり、その意味を正しく理解する必要があるという情報を手に入れ、子供たちも自身の紋章の意味を知る。

 

 

 それでもヴァンデモンは強く、完全体に進化できるようになってから日が浅いアグモンたちでは歯が立たずに敗北してしまう。

 それでも何とか戦ってきたが――ヴァンデモンは8人目のえらばれし子供を抹殺するために人間界へと向かう。もちろん食い止めようとした子供たちだが、ヴァンデモンを取り逃がしてしまう。

 

 ゲンナイから、8人目の存在を告げられていたため、カノンが危ないと判断していた太一だったが……話はそう簡単に済む問題でもなかった。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ヴァンデモンの城から脱出し、ゲンナイの家にたどり着いた子供たち。

 

「やいジジイ! いいから早く人間界への生き方を教えやがれ! 流石にヴァンデモン相手に一人だとカノンが危ないんだよ!」

「まあまちんしゃい。ワシの話を聞いてからでも遅くはないじゃろ」

 

 ゲンナイの家にあるプロジェクターに投影される日本地図。それが拡大していき、練馬区のとある場所を示す。その地図に対し、太一とヤマトが反応を示した。

 互いに顔を見合わせ、どういうことかと尋ねる。

 

「いや、大したことじゃないんだが……」

「俺も……光が丘だなぁって」

「うむ、ここがヴァンデモンが向かった地じゃ」

「でもカノンはお台場に住んでいるんだぜ?」

「確かに……デジヴァイスを持っているのなら彼が8人目のはずですし、何故光が丘に?」

「太一はそのカノンの紋章を見たようじゃが……どのような図形かわかるか?」

「あ、ああ……Sを横倒ししたような感じだった。こういうかんじで」

 

 太一が指で紋章を描くと、ゲンナイはやはりかとつぶやいて顎を撫でる。その様子に、子供たちも疑問符が浮かぶ。ただ一人、光子郎が何かを思案してはいたが。

 

「どうしたんだよジジイ」

「ゲンナイさん、どうかしたの?」

「うーむ……また妙なことになっておると思っての。そいつは8人目ではない」

「――――は? ど、どういうことだよ!?」

「そうか、すでにデジヴァイスを持っていたのなら僕らと一緒に来るはずなんです。でもそうじゃないということは……」

「光子郎の言う通り、彼に関しては少々事情が違う。言うなれば9人目……いや、0人目と言った方が正しいじゃろう」

 

 0人目? 妙な言葉に頭が混乱するのも無理はない。1人目という言い方ならわかるが、0人目と言うのはどういう事だろうか。

 

「もちろんえらばれし子供であることに変わりはないのじゃが、特殊な事情が絡んでいての。これがまた複雑かつ厄介な事情でワシもおいそれと話すことはできん」

「じゃあ、カノンは大丈夫なのか?」

「いんや、もちろんヴァンデモンは0人目も狙っておるじゃろう。その運命の紋章の持ち主を」

 

 じゃあ結局変わりないじゃないかよと太一が突っ込む。それどころか、8人目も含めて狙われている人物が二人になっただけではないかと憤慨しそうである。

 他の子供たちもやるせない表情になっていた。

 

「でも運命の紋章ですか……なんだか僕らのとは異質と言うか」

「じゃから事情が違うといったじゃろ。まあ後々わかることじゃ」

「後々って……」

「でもあの子は確かに普通の子とは違うわよね」

「頭もいいですしね」

 

 この中でカノンと交流のある光子郎と空を中心に他の子供たちが彼について尋ねるが――それよりもやることがあると太一が話を切り替える。

 

「とにかく、人間界へのゲートの開き方を教えろよ」

「それもそうじゃな――たしかこっちじゃったかな」

 

 ゲンナイはたくさんの棚の中から一つを選び、中に入っている物を取り出す。それは10枚のカードで、表にはデジモンのイラストが描かれていた。

 それを机の上にならべていく。

 

「これは?」

「カードじゃ」

「それだけじゃないだろうが」

「うむ。ヴァンデモンの城にあるゲート前の石板を覚えておるか?」

「たしか九つの穴が開いているものですよね」

「そうじゃ。そこにこのカードの内9枚を正しい場所にはめ込むことでゲートが開く」

 

 しかし、カードは10枚。

 

「1枚よくわからんのが混じっているがの」

「それじゃあ適当にはめてみようぜ」

「イカンイカン! そんなことをすればどんな世界にたどりつくかわかったものではない! 正しいやり方でゲートを開かねばどんなところへたどりつくのか見当もつかんし、正しい形で復元される保証もない」

 

 例えば、ミミとパルモンの体がミックスされた状態で復元されてしまったり。そんな状況になってしまいかねないのだ。

 

「い、いやぁ!!」

「まあそれもマシなほうじゃが。デジタルワールドに合わせて構成されているおぬしらの体をあちらの世界に合わせて再度変換する工程が必要じゃしな……太一もちゃんと帰ってきてくれてほっとしておるぞ」

「…………え、俺って危なかったの」

「まあ言うほどではない。しばらくすればあちらに馴染んで元に戻っておったが……万が一と言うこともある。現にそのカノンという少年はこちらへは来られなかったのじゃろう?」

「ああ、なんか拒絶されていたっていうか……」

「アヤツの報告通りならば今いてくれると助かったんじゃがのう……」

「どういうことですか、ゲンナイさん」

 

 光子郎がすかさずゲンナイへと尋ねる。彼の紋章は知識。こういう場面ですぐさま聞きにくるのは彼だ。それにゲンナイも知っていることを伝えてくれた。

 

「太一はその子が以前デジモンと戦ったことは知っておると思うが、その時に共闘したデジモンと知り合いでな。まあいろいろあってデジモンの魔法を使えるようになったと聞いておる」

「そんなことできるのか!? そうか、ヴァンデモンがやったみたいにゲートを開けるんだな!」

「あらゆる要素が絡み合った結果、使えるようになったんじゃよ。おぬしらにはどうやっても無理じゃ」

 

 なんだ、と子供たちが落胆する。ゲンナイ曰く、ヴァンデモンが魔法でやったことを子供たちは自分の力でやらなくてはいけないのだ。

 カードと石板のルールを解き明かし、正しくゲートを開く必要があると。

 

 その日はゆっくりと休み、翌日はヴァンデモンの城へと向かう。幸い、デジタルワールドでの1日は人間界の1分ほどの時間となる。

 そのため、彼らは休むことができたのだ。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ヴァンデモンの城の中には、ヴァンデモンの手下のデジモンが多数おり、アトラーカブテリモンが蹴散らしていた。中の空間が歪んでおり、アトラーカブテリモンの力によって空間のねじれが解かれる。

 

「はやくゲートへ向かいましょう!」

 

 子供たちはゲートへたどりついたものの、やはりゲートを開く必要がある。

 ゲートの前には石版がおいてあり、窪みが9つあった。

 石版の窪みにはそれぞれ上の列から一つ星、二つ星、三つ星が書いてあり、右の列の上にライオン、真ん中の列の上にケンタウロス、左の列の上にサルの絵が描いてある。

 

「どれをはめればいいんだ?」

「いい奴、悪い奴、汚い奴」

「大きいの小さいの中くらいのかしら?」

「強い、弱い、まあままとかか?」

「それ微妙過ぎー」

 

 お互いが意見を出し合っていくが、なかなか話が進まない。

 カードのイラストにあるデジモンは誰かしら遭遇したことのあるデジモンで、その時の話を交えながら会議が続く。

 

「って、脱線しすぎだろ! ヤマト、何かいい意見ないのかよ」

「…………もっと明確な基準じゃないか?」

「デジモンの明確な基準って……何よ」

「完全体とか成熟期とかかな?」

「それだタケル!」

「それじゃあこの星のマークがレベルって事ね」

「横の列の意味は分かりましたが……ほかが分かりませんね?」

「なあ、光子朗。ゲンナイのジジイからなんか聞いていないのか?」

「いえ……とくには……あ!」

「なんか思い出したのか!?」

「はい! デジモンにはそれぞれ属性があって、それが3つだそうなんです。それで、もしかしたら」

 

 光子朗はパソコンを起動し、デジモンの情報を見るためのツール。デジモンアナライザーを呼び出した。昨夜ゲンナイが改造を済ませており、デジヴァイスを挿す端子がついていた。

 

「ライオンはレオモン。ケンタウロスはケンタルモン。サルはエテモン……やっぱり、それぞれ属性が違います」

 

 レオモンはワクチン。ケンタルモンはデータ。エテモンはウイルスである。石板の上部に描かれている三つのマーク。獅子、いて座、サルのマークはそれぞれこのデジモンを表しており、3つの属性のことではないかと光子郎は思い至ったのだ。

 

「そして、横にある星のマーク。これが星が増えるごとに進化段階が上がっていることを表しているんです。僕はここにあるデジモンすべてに出会ったわけではないので……たしか先ほどの話で丈さんが僕の見ていないデジモンと出会っていましたので、デジヴァイスを貸してください」

「わかった――どうだい?」

「ええ、やはり思った通りです。これで埋まります!」

「流石光子郎だぜ!」

「……ですが、最後に余ってしまいますね」

「1枚余計だって言っていたよなぁ……ジジイの奴」

 

 成長期ワクチンのカードが二枚。

 それは子供たちのパートナーデジモンでもあるアグモンのカードとゴマモンのカードだった。

 

「最後の最後で……どっちが正解なんだ?」

「……太一、お前が決めてくれ」

「お、俺!?」

「ああ、お前のおかげでここまでこれたんだ。オレはお前についていく」

「そうだね。僕も太一についていくよ……リーダーは太一だと思うからさ」

「丈さんまで……」

「ボク達みんな、太一さんを信じていますよ。だから、お願いします」

 

 みんなが太一の顔を見る。そこには信頼があった。先頭を歩き、どんな困難な状況でも彼がみんなを引っ張ってくれていた。バラバラになっても、彼が再びみんなを引き合わせた。

 だからこそ、子供たちは太一を信じるのだ。

 

「みんな……わかった……」

 

 

 そして、太一が選んだカードは――――

 

 

「ひらけ……ゴマモン!」

 

 

 ゲートが開き、子供達は飛び込む。

 浮遊感と共に体がグルグルとまわり奇妙な浮遊感と共に体にピリピリとした感覚が走り、やがて視界が光で染まっていく。

 時間の感覚がおかしくなるのではないかとさえ思ったが、やがてその感覚もなくなり――――

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「ここは……元のキャンプ場?」

 

 雪が積もったキャンプ場。真夏だと言うのにこの光景は奇妙に映るが、自分たちの感覚で何カ月も前に目にした場所だ。

 

「戻ってきた――俺たち、戻ってきたのか?」

「でもデジモンたちは?」

「まさか、夢だったなんて……」

 

 デジモンたちの姿が見えない。今までのことは全て夢だったのではないか。そう思った時だった。

 

「空ー! みてー! こんなにたくさん食べ物だよ!」

「ほらほらみんなの分もあるよ!」

「……お前たち、まったく何してんだよ!」

「ここじゃそんなことしなくてもいいのよ」

「いっぱい美味しいものあるんだから!」

 

 夢じゃなかった。大変なことも起こるだろうが、夢でなかったことに安堵し子供たちが笑い合う。デジモンたちは首をかしげるが、その中でコロモンだけは――あー、と太一と食べたオムライスの味を思い出していた。

 

「……まあいいか。そういえば太一、なんでアグモンのカードを選ばなかったの?」

「えっと、記念にとっておこうかと思って」

「ホントかなぁ」

「あ、あはは……でもこのカードどうしようか」

 

 結局手の中にはアグモンのカードが残っていた。無用の長物ではあるのだが、使い道があればいいとは思う。

 

「そういえば、カノンが魔法を使えるって言っていたよな……よし、とりあえずアイツにお土産ってことで」

「記念じゃないのー?」

「まあいいじゃないか。ヒカリの面倒を見てもらったお礼ってことで。それより、8人目のことだ」

 

 太一が子供たちに向き直る。顔には真剣さが戻り、みんなもそれに合わせて表情が引き締まった。

 

「カノンも狙われているだろうけど、幸いアイツのデジモンは完全体に進化できる。一応連絡は取ってみるが、まずは俺たちも光が丘へ向かおう。ヴァンデモンよりも先に8人目をみつけるんだ!」

 

 戦いの場は移る。すべての子供たちがそろう日まで、近い。

 

 

 




ところで、アドベンチャーシリーズの黒幕さん……ワンダースワンの方で倒されているって設定ですけど、もしかしてあれ自体が無かったことと言うかそういうパラレルワールドで、triでは倒されていないんじゃないかと思う、今日この頃。

第三章ではついにデジタルワールドにいくっぽいですし、楽しみですねぇ……ラストにデジタルゲートオープンして終わるってオチだろうけどなッ!



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