デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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ようやく時系列が原作に近づいてきた。
改定前をみていると、色々未熟だったなぁと……


14.1999年の始まり

 1999年、5月のことだ。

 世界中に異常気象が発生し始めていて、3年前に感じた予感が本物だというのがわかり、これからどうするかなと考え始めた今日この頃。色々と母さんにお小言というか話し込まれていた朝のことである。

 一応、やることは決まったけどすぐには動けないから家でニュースを見ていたのだが……

 

「なあドルモン……あれ、どう見えるよ」

「デジモンだと思うけど……なんかノイズが走っているね」

「お母さんには良く見えないー」

 

 異常気象が起きているポイントで、デジモンのような影が見えている。ただ、ハッキリとその影が見えているのは僕とドルモン。あと、ヒカリちゃんも見えているって言っていた。

 父さんと母さんはデジモンの存在を認識しているからか、なんとなく何かがいるような感じはするらしいけど。

 父さんの見解では妖精を見ることができるのは子供だけという言い伝えのように、感受性の高い子供だからこそ見えるのではないかと言っていたが……別の条件があるようにも思える。太一さんや他の子供は見えていないみたいだし。

 

「カノンー、そろそろ迎えが来るわよー」

「分かってる。ドルモン、移動するから退化しておいてくれ」

「オッケー」

 

 今はゴールデンウィーク。この期間を利用して異常気象の現場に行くつもりだ。まあ、流石に一人じゃいけないから父さんと一緒にだけど。

 というわけで、父さんが車を用意してきたみたいなので駐車場まで来た――のはいいんだけど、なにこれ?

 

「父さん、このゴツイ車は何?」

「装甲車みたいなものだ。法律もあるから、一応一般の車の範疇だがな」

「……どこで調達したんだよこんなもの」

「なに。色々なコネがあるだけさ」

 

 そのコネを一度詳しく聞いてみたいものである。

 っていうかそういうコネは母さんの領分だとおもうんだけど、そこのところどうなの?

 

「母さんのコネを使うと――本物の戦車が来るが、それでもいいのか?」

「だからあの人何者だよ」

 

 そこのところ一度詳しく――いや、やっぱりいいや。世の中には知らない方が幸せなこともあるのだから。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 異常気象自体は世界各地で起きており、季節感がおかしなことになっている。農作物とかの被害とか大丈夫かな……早いところ何とかしないといけないかもしれない。

 とりあえず近場のポイントに向かう間に、ノートパソコンを開いて今まで集めたデータを整理する。なにかわかるかもしれないし……

 

「万里の長城に、イースター島……こっちはモンサンミシェルかな」

「やはり、名所や史跡はすぐに画像が集まるみたいだね。しかし……デジモンたちはいったい何の目的でこの世界に現れているのか……」

「うーん……」

「どうかしたのかい?」

「いや、異常気象のあるところに現れるデジモンって、本当にデジモンなのかなって」

 

 なんというか、意識が無いように見えるというか……デジモンの形をしているだけで、まったくの別物というか。

 たとえば、砂漠に雪が降っている画像があるが、その中に雪だるまのような姿のデジモンが見える。ノイズが走っているというか、妙に現実感のない姿だが。

 他には赤い恐竜のような姿のデジモンや、炎で出来た体を持つ人型のデジモンなども確認した。それぞれの場所の異常気象と同じような属性を持っているようにも見えるし……

 

「やっぱり、何かの歪みがデジモンの形になっているだけでデジモンそのものには思えないんだよね」

 

 なんというか、現実味がない。それにすぐに消えているし……

 実体が存在しない虚像なんじゃないか?

 

「考えるのは良いが、ついたぞ」

「意外と近かったね……ここは、紅葉か」

 

 葉っぱがすっかり赤くなって……ちょと肌寒い。

 基本的には季節通りの気候なんだけど、世界各地でものすごい異常が起きるのだ。

 車から降り、紅葉の木々の中を歩いていく。人はいないみたいだし、ドリモンもドルモンに戻ってもらった。

 父さんのついてきているけど……危なくなったら大丈夫だろうか。

 

「別に心配しなくても平気だ。危険だと判断したらすぐに下がる」

「息子を守る、ぐらいのことは言ってほしかったんだけど」

「お前が守られるようなタマか。それに、邪魔しない方が安全だろう」

 

 まあ、自分の身を守る手段はあるからね。

 自分でもヒクぐらい色々と習得しちゃったし。

 と、無駄話もそこそこに目的というか探していたモノが見つかった。やはりノイズのような姿をしたデジモン、見た目は枯れた樹に手足が生えたような姿。その眼には意思が感じ取れず、ただじっとそこに立っている。

 

「ドルモン、このデジモン知っているか?」

「たしかウッドモン。成熟期だね」

 

 成熟期か……何もしてこないのなら観察だけにとどめようかと思っていた、次の瞬間だった。ウッドモンが突然、巨大な腕を振り上げてこちらに突進してきたのは。

 

「ッ!? いきなりかよ!」

「カノン!?」

 

 とっさに魔法陣を展開し、攻撃を受け止める。しかし衝撃はものすごく、吹き飛ばされそうになってしまう。だが、僕は一人ではない。ドルモンが奴の横っ腹に突撃して弾き飛ばしてくれた。

 すぐに体勢を立て直し、距離をとる。少し後ろを見ると――父さんは既に避難していた。

 

「早いよ!?」

「ふむ、奴が動くと同時に周囲の電柱がスパークしているな。電力を供給しているのか――電子機器がある場所に出現しているともとれるが、範囲などの条件も不明。こうなると地球上に安全地帯はないのかもしれない」

「冷静に分析していないでくれますかね」

 

 こうなると倒すしかないか……昔戦ったワイヤーフレームさん以上に意思を感じないし、やっぱり現象にしか思えない。なんといえばいいのだろうか、データのバグとかノイズがこの形に固まっているというかなんというか…………

 しかしそうなると、言うなれば悪性情報の塊だけでもダメージを与えられるということになるわけだが――――

 

「――――ん? 悪性情報の塊?」

 

 一瞬、思考がそれる。頭の中でジグソーパズルの最後のピースがそろったように、パズルが組みあがっていく。足りなかった情報が書き足され、ようやく完成形へと昇華する。

 しかし、ここは戦いの場。その隙を逃さずウッドモンが迫る。と、同時に首が引っ張られた。

 すぐにドルモンが僕の首根っこを捕まえて距離をとってくれたため、奴の攻撃は当たらなかったが……

 

「カノン、よそ見をしない!」

「悪い。助かった……」

 

 しかしおかげで距離が出来た。

 奴との相性的にはサラマンダモンが一番なのだろうが、周囲に燃え移りそうだしやめておくか。

 

「ドルモン、アイツはそこまで強くないとみた! ドルガモンで行くぞ!」

「ドルモン進化――

 

 ――ドルガモン!」

 

 進化が完了し、ドルガモンはウッドモンに突撃する。体格差もほとんどなく、パワーだけで見ればこちらが勝っている。

 しかしウッドモンの方は痛みを感じないようでドルガモンの爪で切り裂かれようとお構いなしで前に突っ込んでくる。さすがに、ドルガモンも奴が組み付いてくる状態では攻撃しにくいみたいだ。

 

「コイツ、不気味!」

「ドルガモン――下がれ」

 

 それだけ言うと、ドルガモンは尻尾を振り回してウッドモンにぶつけてその反動でこちらまで下がる。

 ウッドモンにも隙ができたが、すぐにこちらへと突っ込んでくる――と、それに合わせて指先にチャージしたものをウッドモンの目に照準を合わせる。

 

「か、カノン?」

「悪性情報の塊でダメージを与えられるってのを知れただけでも良かったよ。そうだよな、バグの塊を撃ちこまれたら痛いよな!」

 

 これまで、攻撃手段は物理的なダメージを考えていたけど――別にその必要はなかったのだ。例えば、病気のデータを撃ちこむだけで良いのだ。もっとおおざっぱに言えば、こういう適当に作ったバグの塊を撃ちだすだけでも良かった。

 必要なのは射出の式だけ。別に形をとどめる必要はない。それをウッドモンの眼球めがけて打ち出す。

 

「SHOT!」

 

 掛け声と共に、チャージされていたデータの塊が撃ち込まれる。綺麗に奴の目に着弾し、奴の体に走っていたノイズが更に大きくなる。

 まるで処理落ちのように一時的に動きが止まり、大きな隙が出来た。

 

「ドルガモン!」

「分かった――パワーメタル!」

 

 流石に僕の攻撃じゃ威力はでない。しかし、この隙があればドルガモンが倒しきれる。

 ほどなくしてウッドモンは消滅し、あたりには静寂が戻った。

 と、肌寒いなと上着を着てきていたんだけど……ちょっと暑苦しく感じてきた。

 

「……気温が戻ったみたいだね」

「やっぱり原因はデジモン?」

「うーん、アレは歪みが可視化しているだけじゃないかな」

 

 原因はもっと別のところにあるんだと思う。そもそもの原因がどこにあるのかがわからないと対処のしようがない。まさか世界各地に行っていちいち潰して回るわけにもいかないし。

 

「終わったようだが、大丈夫か……大丈夫だな」

「ちょっと油断したけど、怪我ひとつないよ。ハァ……これからどうするかなぁ」

「カノン、母さんに出かける前に言われたことは覚えているか」

「……覚えているよ」

 

『命は平等、たとえそれが自分とは違う存在であってもね。だから、命を奪う覚悟をしなさい。その命を無駄にしないよう、奪った命の上で成り立つ運命を覚悟しなさい』

 

 いつもの間延びした口調とは違う。何かを思い出しながら、実感のこもった言葉だった。

 母さんの過去に何があったのかは知らないし、僕も詳しく聞こうとは思わない。きっと、母さんも話そうとはしないのだろう。

 

「それに――そこはとっくの昔に考えていたよ。一つ、苦い思い出もあるしね」

「そうか……だが、その割にはすっきりした顔だが?」

「まあ、苦いだけじゃないから」

 

 マキナ(あの子)のことはこれから先忘れることはないだろう。

 彼女のおかげで今の僕があるのだから。

 

「さてと、とりあえず近くの旅館に宿をとってある。一度荷物を置いたら近くを回ってみるか」

「それもそうだね」

 

 少しの間だけど、休日は続く。やれることはとりあえずやっておくには越したことはないけど……今は疲れたから、ちょっと休憩といこう。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ゴールデンウィークの間は虚像のようなデジモンを倒して回っていた。

 おかげで、僕たちは実戦経験を積むことができた。ドルモンの技のキレも上がっていくし、僕の方も術を実戦で使えるレベルまで調整完了した。総合的に見れば、良い成果だろう。

 僕自身も覚悟は出来てきたと思う。いや、本当はこの覚悟は人間が誰しも持たなくてはいけないものなのかもしれない。

 僕達は動植物を自分達が生きるために殺して食べている。直接的でなくても、そこに変わりはない。

 そう考えると、生き物の命を奪わない人間なんていないのだ。いや、生き物というべきか。

 ただ、自分の手で奪うか、人の手で奪ってもらっているかの違いなのだ。

 

 だったら、覚悟して自分で倒すほうがいい。

 あいての怨みも辛みも一身に受けるが、そのほうが相手を忘れない。

 そのほうが自分の運命を見つめることが出来る。

 

 

 そして、ゴールデンウィークが終わり、家に戻ってきた。

 流石に疲れたから、すぐに眠りに落ちたんだけど――久しく感じていなかった、僕の意識が遠く離れてどこかへ行く感覚。だけど、今度はハッキリと覚えている。

 

 僕とドルガモンが黒色と濁った白色の体を持つ手の長い悪魔のようなデジモンと対峙する夢だ。

 雨が降っていて、場所は森の中。時折、悪魔のつけた仮面が光を反射していて不気味に輝いている。

 悪魔のようなデジモンはとても強く、ドルガモンは圧倒されていた。

 僕はドルガモンに駆け寄った。そして――

 

 ――悪魔のようなデジモンが腕を振り上げ、長い爪で僕らを切り裂こうとしたところで目が覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

「――ッ、ゲホッ!?」

「ど、どうしたのカノン!?」

「な、なんでもない……大丈夫だ」

 

 

 今の夢は一体何だ……?

 光景そのものは黒い靄がかかっていたみたいで、ハッキリと見えるわけじゃなかったけど……夢とは思えないほどにリアルな光景であった。

 まるで、実際に起きた出来事であるかのように。

 




カノンは新技を習得。まあ、見た目はガンド撃ちです。
一応改定前のも一部そのままコピペしてたりしますが、ほとんど新しく書いているなぁ……

さて、改定前のを覚えている人は分かると思いますが――次は、アイツです。

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