ドルモン結局新色が必要だったので予約開始と同時に注文しました。ええ、もちろんアルファモンカラーですよ。他のはさすがに余裕がなかった……
そして何なんだよグレイスノヴァモンって…………一番有力なのはアポロモンとディアナモンのジョグレスっぽい。
ジエスモンとデュランダモン、ダブルオメガモン、ウォーグレイモンとブリッツグレイモンなど他にも可能性がありそうな組み合わせを思いつくあたり謎が謎を呼ぶ……
僕自身マキナについて知っていることは実のところ、それほど多くはない。彼女がウィッチェルニーに渡った後調べたこともあるのだが、それにしたって彼女自身についてというより親族がどうなったのか調べたに過ぎず、彼女自身の人間性はむしろこの旅の中で知ったことがほとんどだろう。
幼いころの思い出もあるにはあるが、その当時のことは今現在においての参考になるかは疑問が残るところである。僕自身、あれから色々な経験をしてきて色々と考え方も変わっているところはあるはずだ。
久末蒔苗という少女に身よりはすでにない。すでに天涯孤独となった身。その胸中は僕にはわからないことだろう。家族が生きている、僕には口を出せないし想像も及ばない部分だ。軽々しく口に出してはいけないことだし、彼女自身の口からハッキリ聞くことがあるとしたら、もっと未来でのことだと思う。
色々と後回しにしている部分があるし、お互いにあまり向き合っていないのかもしれない……でも、僕は彼女を信じている。必ず、マキナは風の試練を突破すると。それが、この数か月一緒に旅をした彼女への言葉だ。
それが、仲間ってものだろうから。
◇◇◇◇◇
魔力はまだ残っている。銃弾よりもエンシェントイリスモンの方が速く動くため、当てるのは至難の業だけど眼は慣れてきた。
デジモン化したことで身体能力が全体的に上がっていることもあるし、この程度の逆境は修行していたころに何度もあったんだ……
「問題は、ウチのスタミナが持つかどうかってことかな」
「状況と自身のリソースの判断こそ優秀ですが、決め手に欠けるのはいけませんよ」
エンシェントイリスモンのサーベルが迫る。痛いところを突かれる。二重の意味で。
肉体へのダメージは大きく、告げられたことも図星だ。
ウチは決定力に欠けている。色々と思考錯誤はしてきたが、どうあっても成熟期相当の力しか出せないのだ。アーマー体という力を手に入れたプロットモンも下回る能力しかないのだ今のウチには。
銃に力を籠める。内部で術式によって弾丸の性質を決定し、魔力弾を製造する。ウチ自身は銃というよりは魔法の杖のような感覚で用いているが、そのあたりは傍目には関係ないだろう。
重要なのは、この攻撃が通用するかどうか。
「ホーミング弾ならどうかな!」
「遅ければ意味はありません」
あっけなく、華麗にかわされる。織り込み済みとはいえ、全部避けられたら自信を無くす――でも、狙い通りだ。そう、かわされるのは分かっていた。
静止した弾丸が光り輝き、爆発する。
「ッ――これは!?」
「プラス爆発、動き回る地雷原って感じでいかが?」
「なかなか凝った趣向です。ですが、力でねじ伏せられれば意味がない!」
サーベルが振るわれる。同時に吹き荒れた突風がウチの放った弾丸を消し去っていく。やっぱり、究極体相手にはほとんど通用しない。せめて完全体レベルの出力があればいいのだが、バーストモードぐらいしかウチには思いつかない。
(考えろ。
今までカノン君が使うところを何度も見てきた。
魔法剣もどきを銃口から発生させ、近接戦闘――はダメだ。相手が速すぎて慣れていない戦い方は帰って身を亡ぼす。そもそもウチの戦闘スタイルは援護型なんだけど……多少は訓練しているとはいえ、辛いものがある。
ならば状態異常を起こす弾丸は? それもやめた方がいい。究極体となるとウチの地力じゃうまくいかないかもしれない。味方の強化に使っている弾丸の応用でいけるかもしれないが、究極体だと動きを鈍らせた程度じゃ差は埋まるか疑問だった。
「思考するのは構いませんが、動きが鈍っていますよッ!」
「――ああ!?」
体がはじかれて風の壁へとぶつかる。体が弾き飛ばされて地面へと落下してしまった。
体中が痛い。カノン君たちはこんな試練に正面からぶつかろうとしていたのか……
(色々大変なことがあったはずなのに、何度も死にかけて実際に一度死んでもカノン君は前に進むことをやめていない……)
意識が朦朧としている。このまま終わり? ……そう思ったとき、悔しさが心の中に広がるのを感じた。
それは嫌だ。足手まといは嫌だ。がんばったのに、今までたくさん頑張ったのになんの力にもなれないなんて嫌だ。ウチは……あの日、助けてくれたカノン君の力になりたい。
だから、諦めるわけにはいかないんだ――ッ。
ドクンと心臓が大きく動いた気がした。ウチに心臓はないはずなのに。
(――鼓動が聞こえる)
ドクンドクンと体の奥底で何かが目覚めようとしている。
思えば、散々な人生だったかもしれない。でも、カノン君に救われた――仮初でも、新たな生を貰って今まで生きてこられた。大変なことだってあったし、辛いこともいっぱいあったけど……楽しかったんだ。
クダモンと一緒にウィッチェルニーで暮らしてすごく楽しかった。カノン君に再会してすぐに事件に巻き込まれたけど、この時代での冒険は楽しいことだってあった。
悲しいこともたくさんあった。後悔だってしている。ウチにもっと力があればライラモンを守れたかもしれない。だから……
「負けたくない」
脈動は強くなる。
「ウチは、負けない」
鼓動が早まる。
「絶対に――負けるもんかぁあああああああ!!」
直後に、体が爆ぜた。胸と手足のあたりから少しだけだがデータが吹きだし、体のテクスチャに変化が生じる。文字通り爆ぜたわけではなく、殻が弾けるように中身が飛び出すイメージ。
フードが顔を覆い、体に痛みと力が走る。
自分の体が変化していくのを自覚し、気が付けば微笑む様にエンシェントイリスモンがウチを見ていた。
「――――見事、至りましたね」
「……これは」
体に力がみなぎっている。スカートやフードの端が少々破れており、胸元があらわになった姿へと変貌していた。自分でもよくわからないが、完全体……もしかしたらそれ以上かもしれない力が自分に流れているのがわかる。
「すでに鍵は開きかけていました。私の試練は己の力を示すこと――すなわち己の可能性を示すという事です。それは自分を信じることでもあります。貴女は見事自分の殻を破りました。
本来であれば、試練をここで終えたいところですが――先人として、胸を貸しましょう」
「――――!」
どうやら、最初から最後まで見守られていたらしい。彼女は、ウチの中でくすぶっていたものを見抜いて力を引き出すために壁となってくれていた……追い込んで、覚醒を促したという事みたい。
そして覚醒した力を使いこなすために戦ってくれるということ……なら、全力で行く。
「手加減はできそうにありません――ミルキーバレット!!」
「迎え撃ちましょう――レインボーシンフォニー!」
直後に、爆発が巻き起こる。
こうして、風の試練を突破することが出来た。ここからは、ウチの修行の時間だ。
◇◇◇◇◇
どうやら試練を突破できたみたいだが、唐突に先ほどよりも激しい戦闘が始まった。というかマキナの顔がさっきよりも生き生きしているように見える。
「どうやらスイッチが入ったようだな」
「クダモン、スイッチってどういうことだ?」
「ウィッチェルニーでの修行中、辛いとこぼしていたマキナだが、内心その辛い修行を楽しんでいた節があってな……そういう状態になると、ああいう風になるのだ」
なんていえばいいのか……修行マニア?
「近いかもしれん。時折、頭の中で何かが切り替わるかのようにああいう変化を起こすのだ。まあ、すぐに収まるだろう。今は発散させてやった方がよさそうだ」
「アハハ……後でぶっ倒れないといいけど」
それにしても、進化でもバーストモードのような解放ともまた異なる変化だ。あえて言うなら覚醒って感じだろう。なんというか眠っていたものが目覚めたって雰囲気の力である。
それに戦闘スタイルがまんま猫みたいな動きになっている。野生に目覚めたとも言っていい。
しかし……いつまで戦い続けるのだろうか。
唐突に風の結界が消え、マキナの姿が元のシスタモンへと戻った。エンシェントイリスモンが彼女を抱き留め、こちらへと歩み寄ってくる。
「お待たせしました。これにて試練は終了です」
「後半……っていうかほとんどマキナの特訓になっていけどね。3時間ぐらいぶっ通しで戦い続けるってスタミナ上がり過ぎだろう」
「元々、彼女は高いポテンシャルを持っていました。今まで力の使い方を理解していなかっただけなのです」
そういえば、片鱗は何度か見えていたような気もする。それが今回の試練で完全に使えるようになったわけか。
「……」
「ストライクドラモン?」
「いや、何でもねぇ」
ストライクドラモンがマキナのことをじっと見ていたが、すぐに顔をそらした。
彼にも色々と思うところがあるのだろうが……僕は彼にかける言葉が見つからず、それ以上は何も言えずに疲れて眠ったマキナを受け取るためエンシェントイリスモンの元へ向かう。
「まったく、色々と無茶をし過ぎだっての」
「カノンは人のこと言えないでしょうが」
「そうです」
「……それもそうだけど」
ドルモンとプロットモンにツッコまれるが、反論はできなかった。
うん、無茶の度合いは僕の方がひどいよね。
「それでは、風のエレメントを」
「……これで、残るは3つ」
水と氷と光。距離から考えて水と光の神殿のどちらかを目指すべきか。
「でしたら、水の神殿を目指してみるのはいかがでしょうか」
「水の神殿っていうと、海か」
「ええ。どうやら近くまでロコモンの線路が通ったようです。実際の距離よりも早くたどり着けるはずですよ」
「それはありがたいことだけど……なんで神殿にいるあなたがそのことを?」
「ふふ、風の噂です」
そう言って、エンシェントイリスモンは風に融けるように消えていった。なんというか少々お茶目なところもあるらしい。
とにかく、そういう事ならば水の神殿を目指す方がいいだろう。となると距離的にその後は光、氷の神殿という順番になるのか……
「……そして、氷の神殿からさらに先へ進んだところにルーチェモンの居城があるみたいだな」
氷の神殿があるのは凍土地帯。さらにその先にあるのが暗黒の平原。その一番奥、そこがルーチェモンの居城だ。いよいよ、旅も折り返しを過ぎた。
「うーん……ついやり過ぎちゃったか」
「マキナ、案外すぐに起きたな」
「いやぁ無茶しちゃうと寝ちゃって――って、なんでお姫様抱っこされているのウチ!?」
「ちょ、暴れんなッ!」
混乱したマキナが暴れるから、みんなが逃げまどう。銃弾をまき散らすなよッ!?
ちなみに、マップは魔法でデジヴァイスを浮かせて表示させていました。
◇◇◇◇◇
「……もう私の役目も終わりに近いかもしれないな」
そう言うクダモンの手足はノイズが走っているかのようにぶれ始めていた。感覚としては短い間だけだが、確かに異常となってそこに現れている。
すぐに収まっているため、今のところは誰にも見られていない。それでも、このところ寝る時間が増したことと闘いにおいても本調子でないことは見抜かれていた。
そんな中、クダモンにとってマキナの成長は喜ばしいことだった。
初めは監視から始まった関係だった。けれど、いつの間にか彼女と共に暮らすことの心地よさをクダモンも感じていたのだ。
「けれど、それももう時間がない」
今はまだスリープでどうにかなる。しかし、それでごまかし切れない時が必ずやってくる。
ロイヤルナイツとしての任も終えた。長い時の中色々なことがあったが、最後は実に楽しい日々だったのだ。だからこそ、自分に出来ることはやり切って終わりたい。
「…………まだ終わるわけにはいかないか」
せめて、この旅の終わりを見届けるまでは。
ここで一つの問題が出てくる。えらばれし子供たちも、デジモンたちもその話題については特に触れてこなかっただろう、一つの問題が。
はたして、デジモンに寿命はあるのか否か。
データで構成された存在であり、死したのちにはデジタマへ還る存在である――しかし、一個体の記憶をそう長い間保持し続けられるだろうか。そもそも、本来は記憶は引き継がれないため、死んだ時点で初期化が行われ不要なデータは消えることだろう。
核であるデジコアには限界はないのか。そういった疑問を上げて行けばキリはない。
そこで更に一つの疑問が出てくる。もしも限界があるとして、限界まで生きたデジモンはどうなるのか?
答えが出る日は、着々と迫っていた。