デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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ver.20が届いたテンションで書きたかったけど、昨日はPCの更新が長くて断念していました。
というわけでテンション一日持ち越しで更新。


115.善なる闇と悪なる光

 その力は絶大だった。

 カノンの放った力の波動は周囲のデジモンの動きを止め、その隙に彼はストライクドラモンの元へと駆けつけた。

 暴走しているとはいえウィルスバスターの性質は存在している。

 

「ガアアアア!!」

「無駄だ。闇の力とは言っても、ワクチン種であることには変わりない。その炎の強制デリートの効果は脅威じゃない!」

 

 ウィルス種であったのならば不利であっただろう。炎という性質上、ライラモンから受け取った力を使っても不利だったかもしれない。だが、ある意味では今のこの姿は彼を止めるためにはうってつけの姿なのだ。

 闇でありながら自身の心によって暴走を引き起こしていない。以前にピエモンの闇の力を体内に宿したことがこの場において糧となっている。

 心を飲み込む闇の力。それをコントロールすることで暴走するストライクドラモンの浄化の力を中和しているのだ。今この時、彼らは奇しくも正反対の性質となって対峙していた。

 

「ストライクドラモン、気持ちはわかるし無理に落ち着けなんて言わない――でも、その力に呑まれたら駄目だ! だから、殴ってでも止めてやる」

「ガアアアアア!!」

「全部受け止めてやる。だから、こいッ!」

「ガアアアアアアアアアアアア!!」

 

 咆哮をあげて迫る爪。いや、炎で出来た拳というべきだろう。それをカノンは自分から噴き出す闇で受け止める。黒い雲のクッションで包み込み、浄化の力を打ち消している。

 本来であれば闇の力で浸食するそれを、彼を救うために用いている。ストライクドラモンにしても本来であれば邪悪なものに侵された者を救うために振るう炎をただ破壊することのみに使っている。

 両者は対極の力を随分とちぐはぐな使い方をしていた。

 

「――力そのものに善も悪もない。光も闇もただの属性だ。その性質を決めるのは使う者の心だ」

 

 ストライクドラモンの手首をつかみ、彼の懐へと飛び込んでいく。

 彼も尻尾を地面に突き立てて抵抗しお互いがはじかれる。

 

「このままじゃ千日手――いや、千日手でいいんだ」

 

 必要なのはストライクドラモンの力の発散。今のカノンが相手ならば、中和により彼の体のダメージを最小限に抑えられる。

 

「だったら後の問題は僕が持つかどうか――いや、持たせて見せる!」

 

 ストライクドラモンの体から炎が吹き荒れる。

 まるで、泣き叫ぶかのような咆哮と共に繰り出されるラッシュ。その全てを包み込むように受け続けているカノン。ストライクドラモンが攻撃し、カノンがそれを受け止める。幾たびも繰り返し、やがて襲って来た敵をすべて退けたドルモンたちがやってきた。

 空からはぽつぽつと雨が降り出している。まるで、涙のように。彼の嘆きを表すかのように雨は降り続ける。

 闘いは激化し、爆風と闇の力による浸食によりあたりのデータが削られ飛び散っていく。

 不毛なだけの戦いは同じリズムで続いていく。ストライクドラモンが拳を振るい、カノンが受け止める。キャッチボールの様なリズムで紡がれる、彼の八つ当たりをカノンはただただ受け止めていた。

 

 

 

 

 

 

「二人とも……」

「カノン、ストライクドラモン…………もう何時間も経っているのに」

 

 雨も強くなり、それでもなお二人の戦いは終わらない。ストライクドラモンは息も絶え絶えに拳を振るい続ける。もう炎も噴き出していない。カノンにしても、進化は解けてアイギオモンの姿に戻っていた。

 あるのは自分へのふがいなさと後悔の念。どこへぶつけていいのかわからない怒りだ。

 

「畜生……なんで、なんでなんだよライラモン…………」

 

 やがて、ストライクドラモンは膝をつきうわ言のようにライラモンの名前を呟き続ける。

 起きてしまったことは変えられない。もう、彼女は帰ってこない。デジモンが死んでも再び生まれ変わる存在だとしても、それは以前までのライラモンではないのだ。

 以前の記憶のままに生まれ直すことができるのは、もっと未来になってから。この時代においてはそれも無い。未来においてもそれこそパートナーデジモンにしか見られなかった現象だ。

 

「今は吐き出せ。自分の思いを……じゃないと、つぶれるぞ」

「……俺は結局暴走して、さよならも言えなかった…………ライラモンをみすみす殺されて、暴走してそんな大事なことも出来なくて――ッアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 その叫び声は、やがて雨に融けて聞こえなくなった。

 ただ願うしかない。この雨が彼の後悔を洗い流してくれることを。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 各地ではルーチェモン軍に対して動き出していた者たちがいた。カノンたちが神殿を攻略し、その道中で彼の軍を撃破した話が広まり、デジモンたちは集い反乱軍を組織していっていた。

 ルーチェモン軍が目指す氷の神殿。そこを守護するように彼らは戦っている。

 そんな彼らを瓦解させるためにもメタリフェクワガーモンは動いていたわけだが――作戦は失敗。

 

「こうなれば禁書を用いるしかない……だが、まずは傷を癒さねばならないか」

 

 どうやら主であるルーチェモンも独自に動き出しているようだ。

 自身と同種の力を持つカノンと呼ばれていたデジモンに対して、何らかの手を打つつもりらしいがそれもメタリフェクワガーモンにはあずかり知らぬこと。ルーチェモンは彼の一手も二手も先を考えて動いている。ならば主のことを信頼し自分は自分にできることをするまでと、ルーチェモンの城……その宝物庫の奥に保管されている禁書と呼ばれる物を持ち出した。

 

「……我が身を犠牲にしてでも止めねばならない。危険な代物ではあるが、あのストライクドラモンは危険だ。いずれは我々の天敵になるやもしれん」

 

 主が神人型デジモン(カノン)に対して動いたというのならば自分はあちらを討とう。

 そのためにもまずはこの禁書を読み解かなければならないが。

 と、そこで部下のデジモンから通信が入った。

 

「何事だ?」

『サンゾモンに動きがありましたが、いかがなさいますか?』

「そうか……そういえばそちらもあったな。作戦に大きな支障はないとはいえ大局を見るならばあの者たちも危険か…………とりあえずはキンカクモンを焚きつけろ。それでひとまずの足止めはできるはずだ」

『かしこまりました』

 

 反乱軍だけではない。ルーチェモンに対抗する戦力は数多い。

 光の神殿を守護するナイトモンとメイルドラモン。

 先の話にもあったサンゾモンとそのお供である三体のデジモン。

 海ではキャプテンフックモンの率いる海賊団との戦闘になった話も聴く。それに、緑色の衣服をまとったデジモンによってルーチェモン軍のデジモンが事実上の全滅をしたという報告もあった。詳細は不明だが、各地に無視できない動きがみられている。

 

「それにいまだ確認は取れていないが、強大な力を持つデジモンが動いているという話もある。早急に対策をとる必要があるな……」

 

 各地の部下たちへ伝達する。状況はいまだ好転せず。我々が優位な状況は過ぎた。これからは死力を尽くした戦いが始まる。

 我々が――いや、ルーチェモン様が世界の覇権を握るためにはこれから先の戦いで決まる。

 

「氷の神殿だ。あの神殿を何としてでも手中に収めるのだ」

 

 巨大な氷の防壁に守られているあの神殿を攻略するのは困難である。ルーチェモンの軍においてもあの防壁を突破することは難しい。かといって、最大火力を持って破壊したところで目当てのモノは手に入らない。

 真正面から攻略するしか道はない。

 

「時間との勝負だ。この戦い、どの陣営にとっても時間との勝負になる」

 

 橘カノンの一行が神殿を攻略するのが先か。反乱軍がルーチェモン軍を打倒するか。ルーチェモン軍が氷の神殿を攻略し、目的を達成するか。はたまた、別の何者かが状況を一変させる一手を打つか。

 世界は刻一刻と状況を変化させている。いまだ未来は定まっていない。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 砂漠を歩く者たちがいる。白い法衣に身を包んだデジモンが三体のお供を連れて旅をしていた。

 どのデジモンも完全体であり、強い力を秘めている。

 そんな中、ピンク色の豚の様な着ぐるみに身を包んだ女性の姿をしたデジモンが愚痴をこぼすようにつぶやいた。

 

「こういつまでも砂漠だと気が滅入っちゃうよねぇ」

 

 その顔はどこか緩んでおり、別段砂漠続きであることは気にしている様子はない。ただ単に、無言で歩き続けるのが嫌だっただけらしくその後もとりとめもない話を続けている。

 

「まったくチョ・ハッカイモンは陽気で呑気でお気楽だね」

「サゴモンには言われたくないけどね」

 

 河童のような姿をしたデジモンが彼女、チョ・ハッカイモンに対して反応を示したがそれは心外だと彼女も反論する。

 

「あんただってこの前の宿場町で酒場のデジモンたちと旅の話であることないこと言ってお調子もの、って感じで騒いでいたじゃないのよ」

「ハハハ。記憶に無いネ」

「アチキの眼にはあの時、酔いつぶれて迷惑かけまくっていたように見えたんだけどね……」

「……少しは静かにしろ。二人とも」

 

 流石にうるさくなってきたのか浅黒い肌の猿と人の中間のような見た目のデジモンが二人をたしなめる。

 頭を痛そうに抑え、溜息をついた。

 

「その時も私が頭を下げて回ったのではないか……まったく」

「まあそのぐらいでいいではありませんかゴクウモン」

「ですが、お師匠様」

 

 白い法衣に身を包んだデジモンが彼を止める。ゴクウモンとしてはいい加減に少しの礼節も覚えてもらいたいものだが、この二人は根が適当な部分があるためどうにも困っているのだ。

 

「あなたも昔はやんちゃをしていたではありませんか。果敢に火の神殿の主に挑んだり、他にも色々と」

「そんな昔の話を持ち出されても困ります。第一、火の神殿の主に挑んだのは私がまだハヌモンだったころの話です。お師匠様と出会ったのはその後ではありませんか」

「あら、そうでしたっけ?」

「……ハァ。まったくお師匠様は」

「そう言ってゴクウモンはお師匠様にあまあまなんだよー」

「そうだヨひいきだヨ」

「お前らうるさいぞ!」

 

 自分が生真面目になったのはこのふざけた二人と釣り合いをとるためだろうなと思わずにはいられないゴクウモンだった。

 この二人、天界のデジモンだったが追放された身で最初は同情したりもしたが今では違う。絶対に自業自得だ。軽い性格のせいだと半ば確信している。

 と、そんな和やかな雰囲気もそこまでだった。

 

「――――なにやら嫌な気配を感じますね……」

「ええ、強大な光と闇の波動を感じました。ですが、どこか違和感があります。サンゾモン様、これは一体?」

 

 ゴクウモンと彼らの師匠、サンゾモンは謎の力の波動を感じ取っていた。後の二体はそのような力を感じ取れはしなかったが、何やらよくないことが起こりつつあることだけは分かっている。

 このような時、決まって彼らは大きなトラブルに見舞われているのだ。

 

「ルーチェモン軍……ではなさそうです。それに、この感覚……決まりました。我々はこの力を放った者たちに会いに行きましょう」

「でも大丈夫なんですか? 強い闇の力なんて」

 

 チョ・ハッカイモンが心配しているのは自分の身ではなく、サンゾモンである。彼女を狙って様々なデジモンたちが今まで襲って来た。なのに強い闇の力を持つ者に会いに行こうというのだ。心配もするだろう。

 

「いえ、そちらは平気でしょう。闇の力ではありますが闇の十闘士のように穏やかなものを感じました……むしろ不安なのは光の方です」

「ええ……まるで悲鳴のようでした。一体この世界に何が起きているのか」

 

 機械都市の一件やザンバモンの部隊が全滅した話など、この世界の状況が一気に変化している。

 近々大きなことが起きつつあるのではないかと、彼らは思っていた。

 

(ですが、この闇の力…………もしかすると、もしかするかもしれませんね)

 

 そんな中、サンゾモンだけは何か思い当たることがあったのか一人納得していた。

 もし自分の想像が正しいのならば……時が来たのだ。

 いつの日か自分が送り届けねばならない、運命の子がやってきたのだと。

 




ver.20のほうは今、アグモンとパタモンを育てています。
当時のは持ってなかったけど、デジヴァイスicというものがあってだな……

とりあえずプロットモンらしきドットは見た。ドルモンが入っていることを願おう。
アルファモンは限定カラーがあるからいるのは確実なんだけど、限定カラーだけなのか全部でいけるのか、それとも条件付きで二台以上必要なのか……

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