それと20周年記念の新デジモン。まさかの武器デジモンかよ。
armsと武器デジモンは元は同じである的な設定で進めようとしていたら……え、マジで同じなの? とりあえずプロットを書き直さなくて良かった。
ネオデビモンの攻撃を受け流し、奴の腕を捕まえて投げ飛ばす。全力で麻痺データを送り込むがそう長くは効かないだろう。それでも、少しでも状況を把握しなければいけない。
空を覆いつくすのは悪魔系デジモンの大群だった。
わかる範囲でイビルモンにピコデビモンと思しき姿。他はよくわからないのもいるが、成長期や成熟期のデジモンが大半を占めているらしい。それに、アーマー体もちらほらと見える。
ネオデビモンが彼らを連れてきたのであろうが、流石に数が多すぎる。それに、遠くの方に見える巨大な影は……
「ゴーレモン、だよなぁ」
「だがデカさがケタ違いだぜ!? あんなデジモン見たことねぇぞ!」
「ストライクドラモンの言う通り、あんな異常な個体みたことない」
「おそらくは暗黒の力の影響だな」
前に光子郎さんから聞いたことがある。
最初の戦い、ファイル島で戦ったというデビモンの話だ。奴は最後に暗黒の力で巨大化したらしい。
それにデジモンはデジタルデータで構成された生き物だ。体のデータを巨大にできるように書き換えられるとしたら、このようなことも可能なのだろう。もっとも、まともな方法ではないからか体にノイズが走っているようだが。
「とにかく迎撃するしかない!」
「だけどライラモンは動けねぇし、俺だってこの熱気で満足に動けねぇぞ」
「ウチも大分キツイ。それに、プロットモンとクダモンだって……」
みれば、プロットモンは大分体力を消耗しているしクダモンも薬莢から出てこない。もしかしたら、体が弱っていたのだろうか? 最近寝た状態が続いているだけに心配だが……
どうする? この状況を切り抜ける方法は……クソッ。いざとなったらドルモンがいるからと見通しが甘くなっていた。こうなったら僕がやるしかない。
「――超進化」
僕の体を青い色のオーラが包み込み、体の構成情報が変化していく。
上半身は青い色の鎧に包まれ、下半身の体毛も薄い青へと変色した。
「アイギオテゥースモン・ブルー!」
すぐさま左腕にエネルギーをチャージし、上空へと発射する。
敵を捕捉し、最善の答えを導き出せ。
「神殿を守り抜く――今はドルモンを信じて待つしかないッ!」
「結局そうなるよなぁ……」
「カノン君、心配なのはわかるけど焦りは禁物だよ」
「分かってる。でもやっぱり、一手足りないんだよな」
ネオデビモンは何としてでも僕が止めなくてはならない。幸い、奴以外は強力な個体はいないみたいだ。もっとも、巨大ゴーレモンを除けばだが。
奴は動きがのろいようなので、奴が来るまでがタイムリミット――ドルモン、頼むぞ。
「ガアアアア!!」
「麻痺が解けたかッ――迎え撃つ!!」
◇◇◇◇◇
どさりと崩れ落ちる。
これで何度倒されただろう。
「ッ――」
「力を示せ。自身を見つめ直すのだ」
「そればっかりかよ……」
痛む体をむち打ち、立ち上がる。
ドルモンだってここで負けるつもりはない。前に進まなくてはいけないのだ。自分には帰るべき場所があって、戦うべき時がある。
ここで倒れたらダメだ。
その思いがぼろぼろの体に力を与えてくれる。
「これでどんだけ時間が経っているのか……」
「案ずるな。この空間は外とは時間の流れが違う。そう長い時は流れていない」
「そりゃどうもッ!!」
デジコアの限界を超え、さらに加速する。バーストモードの感覚は残っている。それを頼りにバーストモードほどではないが自身の限界を超えた力を発揮した。
だが、それすらもエンシェントグレイモンは歯牙にもかけない。
「否。そうではないぞ祖なる者よ!」
「ガアアアア!?」
紅蓮の炎に焼かれ、体から煙が上がる。同時にノイズが体中に走っていき、一瞬意識が飛んだ。
「この、体が……」
力が入らずにガクりと倒れてしまう。
究極体相手に成長期の自分では歯が立たない。カノンがいないため、デジヴァイスのサポートが無いのが致命的だった。
「進化できなくちゃ、こいつには……」
いや――まだ可能性はある。
自身のうちに入り込んだデジメンタルに意識を集中させる。
肉体が変化し、黄金の鎧をまとう。
体が覚えている――そのデータを基に、自身の体を構築し直す。
「アーマー進化、ラプタードラモンッ!!」
「ほう――だが、甘い。そうではないのだ祖なる者よ。いまだ自身の力を見誤っているッ!」
「うおおおお!!」
一気に加速し、エンシェントグレイモンへと迫る。炎をかいくぐり、その喉元へと食らいついた。
ガキンッと金属同士がぶつかる音がする。あまりにも硬いその皮膚に、ラプタードラモンの牙が通らないのだ。
「どんな硬さしてんだよっ」
「その思い切りの良さは認めよう――ハアアア!!」
体を回転させ、エンシェントグレイモンは巨大な竜巻を起こす。
飛行能力にすぐれたラプタードラモンといえどもその竜巻には逆らうことが出来ずに、上空へと巻き上げられてしまう。
とっさに防御行動に移すが、間に合わない。
「思い出すのだ。自身が何者なのか! その生まれをッ!!」
「――――ッ」
その言葉と共に再び尻尾の一撃が叩き込まれた。今度はより強烈な一撃だ。
鎧はくだけ、もとのドルモンの姿へと戻っていく。その中で思い出すのは、以前過去へとジャンプしたときのこと――Xプログラムの塊が自分となるデジタマへとなったこと。
(おれはXプログラムそのものだった。でも、それと何の関係が――いや、そこじゃない。もっと単純に、あの凶悪なデジモンからおれという存在に直接デジタマになったことが重要なのか?)
と、そこに思考がいたり何かが頭によぎる。しかし、同時に地面へと激突し痛みと共にその思考も中断されてしまった。
なにかがつかめたような気がした。だが、それが何なのかがよくわからない。
「さあ、目覚めさせてみせよ――すでに汝はとどいているのだ。後は自らが踏み出すのみだ!」
そして、エンシェントグレイモンの口から炎が噴き出す。今度は今までの比ではない。これをまともに食らえば、無事では済まない。
その命の危機の中、今までの思い出がよぎる。
(走馬灯とか笑えないなぁ……でも本当に色々なことがあったっけ)
カノンとの出会いから、自分というデジモンが究極体に進化するまで本当に様々な戦いがあった。二人で試行錯誤して、色々と試していたのが懐かしい。
そういえば自由に退化できるように訓練したことも――まて、自分はなぜ退化できるように訓練したのだ?
(もともと強くなろうと色々やっていたし、マキナとの出会いとかデジタルワールドでの冒険とか、他にも色々強くなるための努力はしていた。でも、なんで意図的に弱くなろうと――そうだ。進化したままだと色々と不都合があったからで――)
と、そこでドルモンは思い出した。
ドルモンは自分のデータを少々いじってはいるものの、他のパートナーデジモンたちとは違い進化したらしたままであるべきデジモンなのだ。産まれる前からパートナーとして調整されたパートナーデジモンではなく、カノンの力でデジタマとなったことでつながりができ、イグドラシルの補助やプロトタイプデジモンとしての書き換え機能でカノンのパートナーとしてのデータが付与されているだけで自分の力だけで進化が可能な普通のデジモンでもあるのだ。
(つまりこの試練の意味はッ)
ドルモンから力があふれだす。
今まで無意識のうちにせき止めてしまっていたものがあふれていき、その体を変質させていく。
内部のデジコアが急速に活動を行い、彼のデータを変化――いや、進化させた。
「ドルモン、ワープ進化ァアアアアアア!!」
銀色の巨体、鋼の翼。そして、炎を纏った拳でエンシェントグレイモンの炎を切り裂いていく。
「ほう――炎で我が炎を。まことに面白い!」
「そうだ。俺はどこかカノンに甘えていた。それに、焦っていた――この時代にきてカノンはどんどん強くなっていった。それなのに俺は強くなっていないって、未熟だって思っていた」
それでも、それを受け入れる。
「未熟でもいい。だって未熟だからこそ成長する。未熟だからこそ進化できる――そうやって、俺たちは前に進み続けるんだ!!」
ドルモン――いや、ドルゴラモンの体が深紅に染まり、放たれている力の波動が数倍に膨れ上がっていく。
今、彼は自らの力でバーストモードへとたどり着いた。
「見事だ。祖なる者よ! それこそ我が求めていた答えなり! 火とは力であり、光でもある。破壊と誕生、両極端の側面を持つ力だ。それゆえに、求められるのは己と真正面から向き合い、御する力だ」
「うおおおおお! ブレイブインパルス!!」
「ならば我も応えよう――オメガバースト!!」
二つの力がぶつかり合い、そして――――
◇◇◇◇◇
空中を飛びながら、デジモンたちを蹴散らす。地面からはマキナ達の援護射撃が飛んできているが焼け石に水だった。
単純に物量が多すぎる。それに、厄介なのがこのネオデビモンだ。
「がああああ!」
「この、テメェはゾンビかよ!?」
いきなり飛びついて噛みかかってくるのだ。かなりの奇襲として機能するので、全く気が抜けない。集中力がいつまでも続くはずがなく、少々厳しい状況だ。
バーストモードで一気に蹴散らしてもいいのだが、そうすると巨大ゴーレモンに対処できない。
「それでも、やるしか――――ッ!?」
その時、火の神殿の中から巨大な力を感じた。この感じは――――まったく、遅いんだよ。
「やっちまえ、ドルゴラモン!!」
「ああ!! 任せろ!」
深紅の竜が飛び上がり、強大な力の波動でデジモンたちを吹き飛ばす。
「ドルディーン!!」
残ったのは強力な闇のデータを持つネオデビモンと、今まさにマキナ達へと迫っていたゴーレモン。って、マズいッ、上空の奴らに手こずって接近を許してしまった。
「ドルゴラモン!!」
「分かっている。あのデカブツは俺が止める!」
ならば僕はネオデビモンだ。
飛来し、再び噛みかかってきたこいつの首を掴み、エネルギーを集中させる。
「ナニ!?」
「いい加減お前の動きも見飽きた! 単調すぎるんだよ!!」
それに厄介だったのは物量だ。それさえ解決すればあとは完全体同士。
「暴走させてブーストしていようが、コントロールできていなければ宝の持ち腐れだ。デジタマになって、やり直してこいッ!!」
「――――ガアアアアアア!?」
青色の光に包まれ、ネオデビモンは消えていく。後に残ったのは小さな暗黒のデータの欠片だけ。それも、すぐに消え去ったが。
下を見ると、ドルゴラモンがゴーレモンの腕をつかみ、ぶんぶんと振り回していた。というかジャイアントスイングみたいな……
「オラァ!!」
そんな叫びと共に、投げ飛ばされたゴーレモン。直後に、深紅の閃光が彼を貫き、消滅していってしまう。
どうやら、どうにかなったらしい。
◇◇◇◇◇
「ふぅ、お疲れ様ドルモン」
「へへへ……試練、突破したよ」
ドルモンの体からデジメンタルが飛び出て僕の前に現れる。内部が開き、中には火のエレメントが入っていた。これで、残るは風、水、氷、光の四つか。
「折り返しも過ぎたってところかな。とりあえず何とかなってよかった」
「まったくウチたちもひやひやしたよ。もうダメなんじゃないかって」
「ごめんね、待たせちゃって」
「時間はそれほどでもないけどね。でも、なんでいきなりあんな大群が……」
「いや、元々ルーチェモン軍も神殿は狙っているんだ。今までがたまたまかち合わなかっただけで、本来はどちらが先に神殿にたどり着けるかって話になるはずなんだよ」
たどるルートや道中僕らが奴らをつぶしたことで動きが変わってきているのか。
とにかくここから先は今まで以上に気を引き締めないといけない。
「次に近いのは土の神殿だけど……」
「すでにエレメントはもっているんだよね」
「となると、少しばかり離れているけど風の神殿が次に近いかな」
なかなか大変な道中になりそうだけど、とにかく進むしかない。
「さあ、先へ進もう――と思ったけど、みんなまだ動けそうにないか」
敵を退けたからか、緊張の糸が切れてみんな座り込んでいた。かくいう僕も、ちょっと動けそうにない。
「とりあえず休憩するか」
「賛成!」
「とにかく休みましょう……植物系にこの熱気は天敵よぉ」
ちょっと締まらないが、何はともあれ試練は突破した。
これから先も、まだまだ戦いは続く。
今はひとまずの休息が必要だが、それでも僕たちならやれる。そう、思っていたんだ――――
この先に待ち受けるさらに過酷な運命を僕たちはまだ、知る由もなかった。
ここらへんで大きな区切りを迎えて、先へと進みます。
不穏すぎるけど、とりあえず次回へ。