デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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遅ればせながら投稿させていただきます。
ちょくちょく書いてはいたのですが、流れに納得がいかなかったりプロットを少々書き直したりなどで時間がかかりましたが、その割にはアレかも……


107.Xのデジモンたち

 戦闘は激化しようとしていた。

 突如として飛来したサイボーグ型デジモンたち。その危険度は元の時代においてカノンも見てきたことだ。

 実際に目にしたのはメタルグレイモン程度だが、そのほかのデジモンも話に聞いていたりしている。

 

「みんなまとめて吹き飛ばしナ!」

 

 キングエテモンの号令に合わせ、砲口が開く。

 周囲の空気を振るわせる音と共にあたりのデータがまるでノイズに侵されるようにぶれ始めた。

 

「なにコレ!?」

「一気にチャージをすることで周囲の環境データまで狂わせているのかよ……そこらへん、リソースが足りないみたいだな」

「冷静に分析している場合でもないよ!」

 

 マキナがカノンにそう言うが、カノンは慌てることなくあるものを取り出した。

 チビマメモンがそれを見て、驚いた顔をするが気にすることなくドルモンの額に触れる。

 

「――――カノン、行けるの?」

「ああ。ちょっと調整はいるかと思ったが。どうやら思った以上の完成度だったらしい。やっぱスゴイな。まさかX抗体を起動させたまま使えるデジメンタルがあっただなんて」

「それって……どういう事?」

「つまりだ――行くぞドルモン。全部、防ぎきってくれ!」

「まったく無茶ぶり過ぎるよ。でも、やって見せる!」

 

 デジメンタルを手に持ち、起動させる。

 デジヴァイスを介することでドルモンとのリンクが起動し、彼の体に変質をもたらす。

 通常ならば一度進化してしまうと解除できるかわからなかったが、デジヴァイスの機能によりそれもクリアされた。

 

「デジメンタルアップ!」

「ドルモン、アーマー進化!!」

 

 直後に、サイボーグデジモンたちの攻撃が発射される。

 住人達もこれでおしまいかとおびえ、逃げまどう。しかし――いつまでたっても爆発が襲ってくることはない。

 強烈な光があたりを照らしてはいたが、それは爆発によるものではなかったのだ。

 

「――――お前たち、それは一体……!?」

「どんな逆境でも、逆転の道筋は存在する。大切なのは、信じることだ」

 

 一歩を踏み出すことが出来なければ、どんなチャンスも無駄になる。

 

「だからこそ、小さなことでもちゃんと向き合わなくちゃいけない。視点を変えてみれば、あたらしい何かが見えてくることもある」

 

 腕を組み、カノンはどっしりと構えていた。

 自分の相棒を信じているからこその行動だ。

 そしてその相棒は――今までにない姿に進化している。

 黄金の鎧を身にまとい、頭部にには巨大な剣を生やした騎士の様な出で立ちの獣へと。

 

「いくぞライノモン、X抗体を発動したままのアーマー体だ! 調子はどうだ?」

「問題なくいける。全部防ぎきって見せる!」

 

 ライノモン、そのX抗体の姿。通常であればドルモンのインターフェースが作用しアーマー体に進化した場合はX抗体が起動していない姿となっていたであろう。カノンの手による改造により進化したラプタードラモンを例外としても、今までではありえなかった姿だ。

 それが規格外の強度をもつデジメンタルによってドルモンの力を色濃く残したままアーマー進化を可能としたのだ。

 

「うおおおおおお!!」

 

 ライノモンの体から放射される光がサイボーグデジモンたちの攻撃を防ぐ。

 一撃たりとも通さない。そんな思いに応えるように、光の盾は機械都市を守り切った。

 

「メタルのアーマー体、それも特異な姿――ハハハ、まったくやってくれるネ」

 

 キングエテモンとしても予想外ではあった。

 サイボーグデジモンたちの攻撃力があれば街を守るためにカノンたちの行動を阻害できるかと思ったのだが――結果は、一体のデジモンに阻まれる始末。

 

「ライノモンはそのまま防御、マキナ達はあのデカブツを頼む!」

「分かった。それじゃウチはメタルグレイモンを!」

「なら俺はメガドラモンを止める」

「私はメタルティラノモンね」

 

 そして、カノンがキングエテモンの眼前に飛び出た。

 

「さあタイマンといこうぜ、このペテン師野郎が」

「まったく――究極体、舐めないでもらいたいネ」

 

 直後に、激突が起こる。

 周りには住人達もおり、立ち回りが危ういものとなれば被害が大きくなるだろう。それでも、前に進むしかない。少ない活路でも飛び込んでいかねばならない。

 カノンとキングエテモンの拳が交差した。

 活路が少ないのはキングエテモンも同じこと。

 

「こんなところで、負けるわけにはいかないんだヨ!」

 

 拳と拳がぶつかり合い、衝撃であたりのものが吹き飛んでいく。

 究極体のキングエテモンと、十闘士のエレメントでブーストされたカノンの力のぶつかり合い。そのすさまじさは一瞬だが空間を歪めるほどであった。

 お互いが距離をとるように離れ、次の攻撃を練り始める。

 

「魔法剣、グレイダルファー……バージョン2!」

 

 鋼と雷。さらに闇の力を混ぜ込んだことでエネルギー状の剣ではなく実態を持った剣として現出する。高密度のエネルギーを圧縮した影響でもあるのだが、それでも漏れ出る力がラップ音となってあたりに響き渡っていた。

 

「――ダークスピリッツ」

 

 対して、キングエテモンは右手に黒い球体を出現させた。

 本来であればエテモンの技であるのだが、彼はそれを引き続き使用できるらしい。

 お互いが同時に飛び出し、互いの技をぶつけ合う。

 

「ッ――、ウオオオオオ!」

 

 カノンが更に前へと踏み出し、剣がさらに増える。両手に魔法剣を握りしめ、上空へと黒い球体を打ち上げた。その一瞬、さらにもう一発カノンへと攻撃を仕掛けようとしたキングエテモンであるが、その首筋に小さなナイフが迫る。

 

「――!」

 

 歯でそのナイフを噛み止め、体を回転させて攻撃をいなした。

 カノンもそのまま突撃しては危険だと、バク転して距離をとる。

 両者ともに一瞬の判断で動いている。一度でも判断を誤れば、そこから一気に崩されてしまうだろう。

 

「まったく嫌になるネ。本気で挑まなくちゃならないなんて――!」

 

 カノンの拳とキングエテモンの拳が再びぶつかり合った。

 背後では巨大なサイボーグデジモンと仲間たちが戦っている。その余波から住人達を守るためにライノモンが奮闘しているが、それもどれほど持つかわからない。

 

(誤算だった――キングエテモンの能力が思った以上に高い。メタルエテモン程度なら今の僕でも勝てると踏んでいたけど、こいつ……智謀タイプのくせして身体能力も群を抜いているッ)

 

 おそらくは最初の一体(オリジン)だ。

 通常のキングエテモンとは比べ物にならない力を持っているのだろう。本来は頭脳や演算能力といった部分を極めた究極体であるはずなのだが、特出した力を持つがゆえに力も相応に高まっている。

 

(なら――押し攻めるまでッ)

 

 雷撃を放射し、カノンが一気に攻める。

 両者の技がぶつかり合い、振動となってあたりに伝わるその一瞬――キングエテモンがマントを投げ捨ててさらに踏み込んだ。

 

「まったく嫌になるネ! もっと優雅に決めるのが信条だってのにサ」

「――この距離なら、放電して」

 

 体から雷撃を放射していくカノン。背後ではサイボーグデジモンたちが倒れていき、仲間たちが勝利していた。その光景を見たからこそキングエテモンは最後のカードを切ったのだ。

 カノンが体から電撃を放射し、キングエテモンに反撃をしかけようと――そこで、キングエテモンはバックステップをした。

 

「なっ――!?」

「これこそさるしばい、ってネ!」

 

 騙すことこそ我が究極にいたりし力、なんてネ。と言いながらキングエテモンは指を鳴らす。

 その瞬間、彼の投げ捨てたマントの中から一筋の()()軌跡がカノンを襲う。

 その一瞬で危険を察知して――いや、どこか既視感にも似た感覚でカノンは全力で防壁を展開する。

 

「なっ!? 防いじまったよオイ!」

「ブレイドクワガーモンだって!?」

 

 しかしその危険性は既にカノンも知っている。なにせ、全身がクロンデジゾイドで出来たデジモンだ。高い硬度は究極体のデジモンでさえ容易に切り裂く力を持つ。

 ただのコーティングではなく、塊である以上格上の相手を打倒する力を持っているのは奇しくもメタルエテモンの体を破壊したズドモンのハンマーで証明済みだ。

 

「え――」

 

 だからこそ、招いた油断なのかもしれない。

 それがただのブレイドクワガーモンならカノンも防ぎきったはずだ。だが、ここにいるのは頭脳自体もさらに強化されたキングエテモン。カノンの奇策により戦いの場に引きずり出されはしたが、それでも高い知能を持つ存在なのだ。

 

「一つ言ってなかったが、そいつは特別製なのサ! コードをいじくって、体がブラックデジゾイドに変質しまった特異個体。その高度は通常の数十倍にもなるんだよネ!」

 

 カノンの体が光に包まれ、アイギオモンの姿へと戻る。そして、ドサリと音を立てながら彼の体が倒れた。

 直後に、赤い色の右腕がクルクルと回転しながら地面へと落下していった――データを血のように流しながら、カノンの右腕が地面に落ちたのだ。

 

「これでまずは一人! さあ次はどいつカナ」

 

 ニタリと笑いながら、キングエテモンは落ちたマントを拾って付け直す。

 黒いブレイドクワガーモンを握り、言葉を失うマキナ達の元へとゆっくりと歩んでいく。

 

「どうしたどうした。来ないのかイ?」

「ッ――アアアアア!!」

「ダメだ! 止まってマキナ!」

 

 黒いオーラを放出しながらマキナが飛び出す。ライノモンがそれを止めるが、耳に届いていない。

 銃弾を乱射しながらキングエテモンにとびかかっていくが――まったく歯が立たずに、涼しい顔をされてしまっている。

 

「まったく弱すぎるよネ!」

「――ゴフッ!?」

 

 ブレイドクワガーモンを握っていない方の拳で、腹に一撃叩き込まれた。それ一発でマキナは地面に倒れ伏し、反応がなくなる。

 仮にも自分の用意したサイボーグデジモンを倒したんだから期待したんだけどと愚痴りながら、キングエテモンは次の獲物を狙う。

 

「そこの君かな? それとも、そっちのストライクドラモン君なんて倒しがいがありそうじゃなーい」

「お前、だんだんと本性を抑えられなくなっているぞ。暗黒よりもどす黒い気が漏れてきやがる」

「ハハハ。まったく、抑えこむのも楽じゃないんだヨ。究極体ってのはそれだけ力が強いのサ。至ったら至ったで苦労も絶えない――まったく。楽じゃないよネ!」

 

 直後に、強大な力があふれだす。

 全員駆逐するだけだと言いながら、キングエテモンは突撃して――黄金のデジモンに阻まれた。

 巨大な剣とブレイドクワガーモンの刃がぶつかり合い、火花が散る。

 

「そういえば、君もいたネ。彼らの攻撃を防ぎきるとは、王国にスカウトしたいくらいサ」

「ふざけるな……それに、偽物の王様がよく言うよ」

「ハハハ! いい切り替えしだネ。イイネイイネ。最高だ君! その強力な才能。通常のデジモンをはるかに上回る潜在能力――改造してみたいナ!」

 

 ギラギラとした視線をキングエテモンに向けられるライノモン。

 その一瞬のひるみを見逃さずにキングエテモンはブレイドクワガーモンで斬りかかり――上空から現れた一体のデジモンがその手を弾く。

 

「なっ――」

「やらせはしない――今度は私も戦う。もう見ているだけは嫌なのよ!」

 

 白い身体にどこかスフィンクスのようにも見える姿、背中には純白の翼を広げて尻尾の先にホーリーリングをつけているデジモンが空より飛来したのだ。

 その身に着けているアーマーの先鋭された姿がX抗体を宿していることを如実に告げている。

 

「まさか――プロットモン!?」

「今の私はネフェルティモン。マメモンに案内してもらって、デジメンタルをとってきたの。上手くいってよかったわ」

「流石に饒舌になり過ぎだと思うけど……」

 

 ライノモンがげんなりしたように言うが、ネフェルティモンXはどこ吹く風とキングエテモンをにらみつけるだけだ。

 

「マメモンたちがカノンを安全な場所に連れて行ったわ。それに、何とか腕の治療もするそうよ」

「あら――ホントに連れていかれた見たいだネ。ちょっと油断したよ――でも、次はそうはいかないかナ!」

「それはどうかしらね――ライノモン、合わせなさい!」

「進化したとたん急にアグレッシブ――いや、それは割と元からか。でも、合わせてあげるよ。いくぞネフェルティモン!」

 

 二体のX抗体を持つデジモンが究極体と激突する。

 ライノモンの防壁とネフェルティモンの放つ光がキングエテモンの動きを止めた。

 

「この力は――ッ!?」

「ハアアアアア!!」

 

 ネフェルティモンがとびかかり、サーベルレオモンの爪のデータという究極体の構成情報がキングエテモンを捕えた。頬に少しのかすり傷を与えただけだが、それでも攻撃が通ったのだ。

 

「ッ――」

「まだ勝利の眼が潰えたわけじゃない。いくぞ!」

 

 戦いは続く。

 歯ぎしりをし、どこか狂気を孕んだキングエテモンの視線が二体を捉える。

 

 戦いは、続く。

 




というわけで、プロットモンはとりあえずネフェルティモンXにアーマー進化するということで。
色々と悩んではいたのですが、当初の予定だとケルベロモンXに……さすがにマッシブすぎるのでボツとなりました。
どちらにせよ今後の流れ自体は変わりません。

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