てかソ連軍強すぎるだろ、土地を核爆弾で耕しながら1000個師団で前進するだけで大体の国が消滅するぞ
バタフライ・エフェクトという言葉がある。
『ブラジルでの蝶の羽ばたきは、テキサスでトルネードを起こす可能性はあるのか?』
どんな小さなきっかけだろうと、その結果として大きな災厄を呼び寄せる可能性がある。そのような例えのことだ
そう、世界とは不確定の連続である。ほんの少しの行動の違いで、例えば、スパゲティを箸で食べるかフォークで食べるか……これだけの違いで、世界は驚くほど姿を変える。
では、そんな不安定な世界に、巨大なイレギュラーが現れた場合はどうなるだろうか?
そう、例えば羽ばたきで竜巻を起こすような蝶のような、そんな存在が
結局の所、彼女がこの世界に存在するだけで、何も成さなくても世界はその姿を変えていくのである。
本来この世界に存在しない者とは、そこまでの影響力を持っているのである
彼女は災厄の蝶、ただいるだけで世界にトルネードは起こる。
「そうか、用意ができたか」
窓の外に見える数多のネオンに目を向けながら、男は低い声で語りかける
「あぁ、そうだ。こちらも問題はない。上の人間も全て認めてくれた。……なに、遅かれ早かれ必要なことだ。それに、ネクスト相手のテストこそが必要な筈だ。」
短く刈りそろえられた金色の髪、鋭く理性的に光る瞳。鍛え抜かれた肉体は均等で美しく、その造形はまるでギリシア彫刻のような完成された気品ある美しさがある。
「では、頼んだ」
そう言い、男はゆっくりと電話を切った。
そのままソファに深く腰掛ける。一度、大きく息を吐く。
こんなにも次の日が楽しみなのは久しぶりだ。
傍に置かれたミネラルウォーターの蓋を開け、喉を潤す。
彼と会う事が出来る。あの戦争では、ついに縁の無かった彼。ネクストという圧倒的な戦力の前に、なす術もなく消えていった数多の国家の唯一の希望。伝説の鴉。そんな、彼と。
この感覚は何なのだろうか、あの男を知った時から仄かに心に芽生えたこの感覚は、そしてこの電話によって、大きく燃え始めたこの感覚は。
考えたが、結論は出ない。
まぁ、兎も角明日だ。会社には無理を言ったが、技術者達はデータを欲していた。自分と鴉のデータだ、満足できるだろう。アレの製造・強化は、こちらの陣営においての死活問題だ。来るべき企業間戦争。それに、ネクストを倒し得る可能性を持つアレはジョーカーになり得る。
向こうには偽の依頼という形になる。それを察知し、断られるかもしれない。そして、もしかしたらこの戦いで彼は果てるかもしれない。
だが、不思議とそうはならないと心が確信している。なぜ、会ってもいない人をここまで信用できるのだろうか。わからない。わからないが、そうなのだ。
「これは我々の理想の為にも必要な事だ。世界の為に、罪の清算の為に……」
男はそう呟くと、ソファから立ち上がり、そのまま寝室へと向かっていく。
男は知らない。隣にいる自分は、あの戦いで鴉に討たれた自分はこのような行為はしなかったという事を。
蝶の存在が気流を変える。降る筈の雨が降らず、見えなかった筈の空が見える。
「レイレナード社から依頼が……?」
「はい」
自分もよくわかっていない。といった表情でフィオナが頷く。
「依頼は、レヴァンティーン基地を強襲してきた謎の武装組織の撃退です」
オペレーターの言葉を聞きながら、コーヒーを喉に流し込む。何故だろう、いつもより苦く感じる。
「敵集団に対しての情報は一切不明です。その為、レイレナード社は僚機としてベルリオーズをつけると言っています」
「ベルリオーズを!?」
流石の男も、これには思わず大きな声をあげた。ベルリオーズ、レイレナード社……いや、現世界における最精鋭の戦士。オリジナルのNo.1。最強の山猫。黒の処刑人。国家の断頭台。
そんな男を、なんの実績も無い自分とペアに?
「今のうちに、GAの戦力を削ろうということか?」
レイレナード社は、オーメル陣営にいるGAとは敵対関係にある。もともとこの傭兵稼業は、自社のネクスト戦力が少ないというGAの弱みに付け込む形で始めたビジネスだ。フリーランスと言っても、必然的にGAなどを含めたオーメル側の依頼を受けることが多くなるだろう。
貴重なネクスト戦力、それを予め潰しておく……そういうことなのか?
思考が回る。受けるべきか、受けざるべきか。少なくとも、提示された金額は少ないものでは無い。それが更に男の疑念を加速させる。彼の経験から言って、依頼金の高いものと前金の払われる任務にロクなものは無い。
だが、実績の無い我々が仕事の選り好みをできる立場だろうか?
「やろう」
男が立ち上がった
「ですが……」
「折角の依頼だ。今は少しでも早く実績を作りたい。それに、あのNO.1を近くで見る事ができる機会だ。行って損は無い」
男はフィオナに有無を言わせない様にそう宣言する
「……わかりました。では承認のメールを送ります。すぐに出撃の準備をお願いします」
「頼む」
自分の言葉を聞くと同時に、フィオナが立ち上がり、格納庫の方向へ歩いて行った
それを確認し、自分も戦争の準備をしに行く。ネクストでの初めての戦いに、恐れは無い。どうせ、いつもやってきた事だ。持つ者が変わっただけでは何も変わらない。目の前に立ち塞がるものを、ただ撃ち、斬る。それだけだ。そこに何の感情も挟む余地は無い。ただただ心を氷の様に冷やし、金の為に殺す。
彼の顔に笑みは無い。男にとって、戦闘とはただの仕事である。スーツを着てクーラーの効いたオフィスでキーボードを叩くのと、鋼鉄の巨人を纏って砂漠で兵隊を撃つ。彼にとって、この2つの間に一切の違いはなかった。
「フィオナです、聞こえますか?現在状況の報告をお願いします」
「〝ワルキューレ〟よりフィオナへ。感度は良好、問題は無い。作戦地域には2分後に到着予定」
巡航速度で進みながら、フィオナにそう返信する。
ワルキューレというのは、彼の乗機の名だ。彼が鴉を始めた時から、機体名はそれで統一している。
「了解しました。シュープリスは既に到着しています。合流後、ミッションを開始してください。……どうか、ご無事で」
「あぁ、生きて帰るさ」
通信機の向こうのフィオナの笑いかける。
自分にとっては第二の家への帰還だが、彼女にとっては初めての戦いだ。やはり、緊張しているのだろう。
ただ、そんな彼女の気持ちを和らげようと先ほどまで努力していた為、落ち着いてはいる。致命的な失敗をしたりはしないだろう。
「……ワルキューレよりフィオナへ。シュープリスを肉眼で視認した。」
「こちらもレーダーで確認しました。あれが、No. 1……」
メインカメラを通し、シュープリスの姿が見える。黒く塗られたレイレナードの標準機、アリーヤが立っていた。両手にはライフル、肩には有澤製のグレネードとフレアが背負われている。
「本当に、友好企業以外の武装を使用してるんですね」
「エースの特権って奴か。……こちらワルキューレ、どうやら待たせてしまった様だな」
無線の周波数を、レイレナードと事前に決めておいたものにする。
フィオナもチャンネルを合わせたのか、声が聞こえてきた。
「こちら、オペレーターのフィオナ・イェルネフェルトです。今回はよろしくお願いします。
」
「こちらシュープリスだ、こちらはオペレーターを連れてきていない。こちらのオペレーションもよろしく頼む」
ベルリオーズの声が聞こえる。戦場の中にあるのに、平常そのものといった声だ。
「そして……初めましてレイヴン。」
「よろしく、こういう形で会えて幸運だ」
シュープリスの近くに機体を着地させる。AMS適性の劣悪な自分では、思い通りにネクストを動かすなんて夢のまた夢だが、シミュレータ漬けの生活のお陰でこれ位の操作は何とかできる。細部は違うが、大まかな使い方はネクストもノーマルも変わらない。
「優秀な戦士と聞いている。こちらも、こうやって会えて嬉しい」
ベルリオーズが言う。傭兵にとって、初めての対面が敵味方だというのは珍しいことではない。そして、それが最初で最後となることも良くある。
レイレナードのNo. 1。GA側の傭兵である自分にとって、そんな彼と会うのは戦場以外ではありえなかった筈だ。
「シュープリス、ミッションプランの打ち合わせを行いたいのですが」
「レヴァンティーン基地は狭い。最奥部なら兎も角、通路では連携した戦闘はむずかしい」
フィオナの言葉に、ベルリオーズは答える。
「見る限り、どちらも前衛型のアセンブルだ。二機で警戒をしつつ進み、それぞれで戦闘するというのはどうだ?」
「まぁ、それしかないだろうな」
男は頷いた。こちらは急造チームだ、連携した戦闘など出来るわけがない。
「なら決まりだ、私が先行する。レイヴンは付いてきてくれ」
そう言うとシュープリスのブースターに炎が入る。
「了解した、後方の警戒はこちらが行う。」
「では、ミッションを開始します。……お二人とも、幸運を」
「……敵、反応ありません。シュープリス、本当に武装組織というのはいるのですか?」
レーンを降り、警戒しながら前進する。だが、襲撃は無い。
「間違いないはずだ。本社はレヴァンティーン基地からのSOS信号も受信した。」
なら、どうして防衛部隊の痕跡が無いんだ?
心の中で男が言う。それなら、ここまでのあいだに撃破された兵器の1つや2つあって然るべきだろう。
臭う、やはり罠か?しかし、シュープリスはこちらに背を預けている。ワルキューレは、マシンガンにブレードなどを装備した、近距離特化型の機体だ。後ろから襲撃をすれば、短期間で大きなダメージを与えることが出来る。確かに警戒はしているが、それは敵からの襲撃に対するもので、こちらに対するものではない。
罠にかけているのなら、もう少しは警戒が見えるはずだ。それとも、警戒しなくとも倒せるだけ腕の差があると?
「では……これはいったい……」
フィオナはこの状況のおかしさには気付いていない。なぜ敵がいないかについて考えているようだ。
自分は、一応の注意をシュープリスに向けながら周囲の警戒を行う。とりあえず、意図が見えるまでは攻撃はやめた方が良いだろう。襲撃が本当のものだとしたら、No. 1への攻撃はまずい。レイレナードからの報復もありえる。
あの〝鴉殺し〟を含め、レイレナードにはまだまだネクスト戦力が多い。いつか戦うかもしれないが、いま、まだネクストに慣れていないのに戦うわけにはいかない。
「ここを進むと基地の最奥部だ、普段は実験場として……」
「待って下さい!前方に反応……これは……まさか!?」
ベルリオーズの言葉を遮り、フィオナが叫ぶ
「落ち着けフィオナ。何があった」
興奮したフィオナに語りかける。
「ネクストが……六機?これは……なんでこんな数のネクストが……?」
少女はこちらの声が聞こえていないのか、ブツブツと一人呟いている。
ネクストが六機……どう考えても、ありえない状況だ。
「応答しろフィオナ!俺をほっといて殺すつもりか?」
「え……、あ、ごめんなさい……私、取り乱して……」
やっとこちらに戻ってきたのか、フィオナが謝罪をする
「オペレーター、状況の説明を」
ベルリオーズがフィオナに尋ねる。ネクストが六機と聞いたのに、一切焦りが見えない。やはり、何か知っているのか……?まぁ、この状況のおかしさに気づいているだけかもしれないが。
「……施設最奥部に、ネクストの反応が六機あります。全機、こちらを待ち構えているようです」
少女の不安がよくわかる声で説明がされる。
「シュープリス、こちらはミッションの放棄を提案します!ネクスト六機では此方に分が悪すぎます!」
「それは出来ない。現在、レイレナードにはこの基地の奪還に使える戦力は私しかいない。アナトリアの傭兵には付き合ってもらわねば困る」
「そんな……!彼に死ねと言うのですか!?」
フィオナの悲痛な声叫びが無線から聞こえる
「なに、こちらも全力でやる。ただでさえ不利な状況だ、これ以上味方の数が減るのはこちらとしても困る」
「ですが……!」
「フィオナ、仕事を受けたのはこちらだ。敵と戦ってもいないのに逃げ出したら、信用問題にかかわる」
フィオナの言葉を遮り、男がそう言う。それを聞いた少女は絶句する。
「信用なんて……貴方の生きていなければそんなもの何の意味も……!」
「こんな商売だ、信用が命よりも価値がある状況は多々ある。」
男が語りかける。そう、逃げるわけにはいかない。たとえ罠の可能性があってもだ。開業して間も無い、そして実力も無い傭兵にとって、依頼主からの信用は何にも代え難い。
「フィオナ、わかってくれ」
「……わかりました」
渋々、といったフィオナの肯定が聞こえた
「ありがとう、フィオナ。……さて、シュープリス、待たせてしまったな」
「問題は無い。良いオペレーターじゃないか、大切にしろよ、傭兵。」
「あぁ……。さて、どうする?」
男はベルリオーズに尋ねた。
「レーダーを見る限り、向こうは動く気は無さそうだ。吶喊して撃破する。それで構わないだろう?」
「いまから六機のネクストを相手にしようって作戦では無いな」
「そうは言うが、そちらだってこの状況のおかしさには気づいているだろう?」
「おかしさ……ですか?」
フィオナの言葉が聞こえる。男は「まぁな」と言った後、少女に対し説明をはじめた
「そもそも、どこにネクストを基地の襲撃に六機も投入できる勢力がいるんだ」
「え、あ……」
「まず、六機ものネクストを保有する企業自体が少ない……それにだ。ベルリオーズ、レイレナード社とあろうものが他社のネクストの動きを把握できてないなんてことは無いはずだろう?」
「あぁ、本社からは他のネクストが動いたという情報は来ていない」
「なら、ありゃ何らかのペテンだ。ネクストの反応に偽装する他の兵器か、もしくは……無人化されたネクストかな?」
「自律ACですか……」
「だったら、恐れる事はない。いま現在、ネクストに勝る戦力は無い。自律ネクストだってシミュレータなら兎も角、現実でAIが動かすACには限界がある。ノーマルだってそうだったんだ、ネクストなんて単調にならざるを得ない。まぁ、それでも通常兵器なら脅威になり得るが……」
俺たちならやれる。彼はそう確信しているようだ。
フィオナは男がそう言うのならそうなのだろうと納得した。彼は、自分の実力を客観的に見る事が出来ていた。だからこそ、伝説などと呼ばれているのだ。
「さて、では行くかレイヴン。」
「了解だリンクス。まぁ、やってやるよ。」
そう言って男たちは部屋の中に入っていった。
コジマ粒子が雪のように降り注ぐ神秘的な光景。
その中に、奴らはいた。
レイレナードが自社の通常兵器不足を補うために作り上げた自律ネクストが。
【002-A】
高出力のエネルギーブレードを持ったその異形のACは、部屋の中に2つの異物が混ざったことをセンサーにて感知する
いま、彼らの頭にインプットされているのは単純明快な命令である。
排除、排除、排除、排除、排除、排除
次の瞬間、6つの自動人形は跳躍した。
が、右端の一機のメインカメラが吹き飛び、動きを一瞬止める
シュープリスの放った有澤製のグレネードが原因である。
自律ACはすぐにパニックから回復し、サブカメラによるセンサーによる感知のみで周囲を確認しようとする。
そして気付いた、自分の目の前にネクストがいることを
「破ッ!!」
ワルキューレの斬撃により、一撃でプライマルアーマーが削られる。
そしてコジマ粒子回復しきる前に、マシンガンを叩き込みながら機体を引く。
マガジンの4分の1を叩き込んだあたりで、漸く動きが止まる。
「ワルキューレ、六時方向より敵が!」
チェックシックス、チェックシックス。クイックブーストをふかし、振り向きながら斬撃を叩き込む。
敵もブレードを振りかぶっていた。
2つの濃縮されたエネルギー同士がぶつかり合い、双方の腕が弾かれた。その隙に、コアめがけて蹴りを放つ。
コジマ粒子のせいで殆ど傷は与えられないが、それでも少しは吹っ飛びはする。
そこへ向かってマシンガンを撃ちながら突っ込もうとし……
嫌な予感がした、反射的にクイックブーストで右に跳ぶ。
次の瞬間、先ほどまで自分がいる立っていた場所に緑色の爆発が起こった。
「コジマキャノンか!?」
一撃必殺の武器ばかり持つんじゃねぇ馬鹿がと罵声をぶつけたくなるのを我慢し、先ほど切り掛かってきたネクストに視点をあわす。
あのブレードはヤバイ、この機体では、掠っただけでも戦闘不能になりかねない。
できればそんな機体とは斬り合わずに、射撃にて仕留めたいのだが、このアセンブルは近距離での斬撃にこそ価値を発揮する機体だ。マシンガンとプラズマキャノンだけでは、ジリ貧になるのは目に見えている。
「斬り合うしか無いってかッ!!」
叫びながら急接近する。そうだ、さすがにブルーオンブルーをするわけにはいかないだろう。コジマを防ぐにはそれしかない。
加速して接近する。敵のブレードの振りは単調だが力強い。まともにぶつけあったら負けるのはこちらだ。
自律ACの一閃をかわす。
速い、速い、確かに速い。しかし、隙が無いわけでは無い。パターンも単調。なら、餌を撒けば……
ワルキューレのコアを狙った突きが放たれる。
安易な一撃だ、やはり中身はAIだろう。もう少し応用ができるプログラムでなきゃ、闘争には不向きだな。
その腕を狙ってブレードで斬りつける。腕部のPAはそこまで強力なものではないらしい。クルクルとブレードごと腕が舞う。
「シュープリス、敵ACを撃破。残り四機です」
速い、これがオリジナルの力か。
そんな思考と同時に、敵のコアに向けてブレードで突きを繰り出す。
龍殺しの名を与えられたブレードが、無理やりコジマの装甲を引き剥がし、黒い人形に突き刺さる。
そしてそのまま、腕を振り上げる。コアから上を真っ二つにされたACは、そのまま爆散した。
「ワルキューレ、シュープリスの救援を。残りのACに囲まれています」
いや、あれは恐らく援護はいらないだろう。
シュープリスは敵を圧倒している。法則性を感じないランダムな回避でもって照準を合わせることを許さず、腕部のライフルでもって確実にAPを削っている。
まぁ、見ているだけでは給料泥棒だ。折角こっちに無関心なのだから、楽にやらせて貰おう。
OBでもってシュープリスに合流する。その間に、一機を後ろから斬る。ブレードはメインブースターを貫き、その爆発によってACは吹き飛んだ。トドメにプラズマキャノンをその背中にぶち込むと、バラバラに落ちていった。
これで二対二だ、無傷の山猫とボロボロの人形。もはや決着はついていた。
ワルキューレとシュープリスがそれぞれ近くにいた一機をいとも簡単に屠り、戦いは終わった。
終わってみれば簡単な任務だった。おそらく、心の底から不安だったのはフィオナだけであろう。
少女はホッと一息を吐き、そのまま戦士たちに仕事の終了を伝えた。
レイレナード社の輸送機内、割り振られていた部屋の中で男が端末をいじっていると。ドアが突然ノックされた。
「どうぞ」
入ってきたのはベルリオーズだった、彼は部屋の中に入るとベッドに横になりながら端末を触る男に目をやった。
「あぁ、ちょうど話したいことがあったんだ、そこに座ってくれ」
男が起き上がり、椅子の1つを指差す。
ベルリオーズはそこに座ると、男に尋ねた
「何を書いてるんだ?」
「レイレナード社へ提出するレポートだ。あの自律AC、甘い部分が多すぎる」
男はなんでも無い風に言う
「あれはまだ試作品のようなものだからな。あれだけ揃えても、まだネクストの相手はキツイ」
「……少しも動揺しないんだな」
「そこに気付くかどうかも含めてもこの依頼だよ」
ベルリオーズの言葉を聞き、男はついため息を漏らす
「で、今回の依頼はどっちのテストだったんだ?あのACか、それとも俺か」
「どちらもだ」
その言葉を聞いて、男はベルリオーズの瞳を覗き込んだ。
理性を感じる目だ、だがその中に、違う光を感じる。情熱、そうだ、何かの理想の為に突き進むものが持つ、特有の光だ。
「近いうち、間違いなくこの世界では企業間での戦争が起こる」
「まぁ、だろうな」
ベルリオーズの答えに男が同意する。国家が解体されて数年。既に、企業間での軋轢は爆発寸前となっていた。兵器産業、コジマ技術、資源採掘権、食糧問題、歴史的な対立……、全ての企業が、他の企業に対して戦争をする理由を持っている。
いま、戦いが行われていないのが奇跡なのだ。おそらく、理由はマグリブ解放戦線などの反体制組織の存在だ。あの英雄アマジーグに、企業同士で戦争をしていて対抗できるわけが無い。
しかし、結局彼らは弱い存在だ。いつか、企業によって潰されてしまう。その時に、世界は戦争へ向けてカウントダウンを始めるだろう。
「我が社はネクスト技術に関しては、他の企業よりもリードしている。だが、反対に通常戦力に関しては……」
「BFF等に頼らざるを得ない……なるほど、その状態を改善するため、自分たちの会社だけになっても戦い続ける為のあの自律ACか」
「そうだ、我々は次の戦争に生き残る為に手段を選ばない覚悟だ。」
「傭兵を使う事もか?」
「あぁ」
なるほど、と口の中で呟き。男は頭を掻いた。
「レイレナード社の人間はみんなそんな目をしているのか?その、理想へと突き進む情熱を持った目を」
「……半々だな。この理想に、利益があるからついて行く者もいる。」
「理想に関して否定する者はいないのね、なら結局一枚岩ってことか。なるほど、若い企業ってのは強いね」
男は立ち上がり、ベルリオーズの前へと歩く
「その理想については聞かん。俺は傭兵だ。自由に戦場を飛ぶのが俺たちだ」
理想なんて重い物を背負ってしまっては、飛べなくなる。我々はただただ戦場を渡り、ただただ殺し続ける。意志がないからでは無い、そんな生き方が好きだからだ。
男の言葉を聞いて、ベルリオーズは笑った。
まるで、その言葉を待っていたかのように
「なるほど、それがレイヴンの誇りか」
「他の奴の事は知らない、これは俺の信念だ」
そう言って男も笑う。何故だかわからないが、ベルリオーズといると自分らしくある事ができた。
「なら傭兵、君に1つ頼みがある。」
「なんだ?癒着ならお断りだぞ。ただでさえGAという重りが有るんだ。」
「そうじゃない。……友に、なってくれないか?」
そう言うと男は一瞬目を大きく開け、次の瞬間大きく笑い始めた。
「友、友、そうか、友か。そういえば、子供の頃以来、戦友しか作ってなかったな。」
楽しそうに男が言う。
「戦場で対峙すれば殺し合うしかない我々だが、友にはなれるだろう?」
ベルリオーズも、男につられて楽しそうに言う。
「喜んで、ベルリオーズ、我が友よ」
そう言って男はベルリオーズへと手を差し出す
「よろしく頼むよ、傭兵。……そういえば、名前は?」
「あぁそうだな、友に向かって本名を名乗らないのは失礼だな」
そう言って、男は自らの名前を名乗る。
それを聞いたネクストは、その名でもってレイヴンを呼び、手を握る。
こうして、1つの友情が成立した。
隣り合う世界ではあり得なかった友情。二人の戦士が、別の出逢い方をしたから、起こった奇跡。
世界は多くの変革を遂げる。最早今の世では、オーメルやGAの勝利すら、確定された未来ではない。
あらゆる場所で、竜巻が起こる。
自覚なき蝶、その存在によって
「ッシャオラァァァァ!!!カーパルス占拠ハードを居合ブレオンでクリアしたぞオラァァァァァ!!!どうだフロム!!俺こそがイレギュラーだ!ドミナントだ!!ネクストだぁぁぁぁ!!!隻腕なめんなァォァァァァァ!!!!」
鴉は飛び立った
蝶も、ゆっくりと翅を広げている。
彼女が舞う日は、近い
先日、友人がノーマルですがカーパルス占拠をブレオンでクリアしてたので、ドミナントって本当にいるんだなぁと感心してた。
ちなみに私はレギュ1.0の分裂ミサイルでクリアしました。カッコいいよね分裂ミサイル。クレピュスキュールにも装備させたかったよ分裂ミサイル。