世にリリウムのあらん事を   作:木曾のポン酢

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友人がACfaで初期機体でカラード制覇してて「これがドミナントか」と震えた。
いまは居合ブレを中心にした高速軽量機体使っているらしい。オルレアやスプリットムーンもそうだが、あぁいう機体ほんと好き。
なんとかACfa編までやって、そんな彼女らの活躍を書きたい




隻腕の少女は木の上にて女王を待ち、傷付いた烏はただ羽撃く時を待つ

というわけでプランDは、「リリウムの目に入りそうなところで不思議ちゃんな感じ出しつつ片手でオカリナを演奏し、リリウムが出てきたら微笑みかけて恋に落とす」という作戦でした〜!いえーい!!

 

 

不確定要素が多すぎるわ

 

 

まぁ、何日か滞在すりゃ一度くらいチャンスはあるだろ、などと考えていたのだが……。まさか1日目から釣れるとは。チョロインか?チョロインなのか?

 

ちなみに、演奏していた曲はエポナの歌である。64のゼルダの伝説やってオカリナ買っちゃうのは多くのプレイヤーが通る道だと思う。片手オカリナにしたのはただの趣味である。まさかこんなるとところで役に立つとは思ってもみなかったが

どうでもいいけど、椅子の上でスタルキッドステップかましながら迷いの森のテーマ吹いてたらすっ転んで頭強打した人間って自分だけなのかしら。大変気になる

 

木の上で物憂げな表情でもってウォルコット家を観察する。うーん、絵になる。

とりあえず、第一目標は達成できた。よし、メシ食べに行こう

 

 

手を油でデロデロにしながら、フィッシュ&チップスを頬張る。高そうな店で買った甲斐もあり、そこそこのものが手に入った。指をしゃぶりつつ、コーラを口に含む。

あぁ〜いい。いいよ。いい。毛細血管の末端まで害悪な物質が廻る感覚だ。

あ、場所はさっきの木の上です。いえーいリリウムちゃん見てるー?白身魚のフライ投げ込むぜー。

 

……さっきから、カーテンの隙間から人影が見えるような感じがするのだが、本当に見てるのか?

 

まぁでも、さっき見たリリウムちゃんは想像以上に可愛かった。強く触れてしまったら折れてしまいそうな儚さが良い。そそる。食べちゃいたい。

それに透き通る肌の白さとか凄い良かった。すべすべしてそう。膝枕で寝たい。うつ伏せに寝たい。

っと、気がついたら揚げ物が消えてしまってた。指を綺麗にしゃぶり、コーラで油の後味を消す

ゲフゥと口と鼻からげっぷをだす。

なかなかに美味かった。余は満足じゃ。

 

さて、では腹も膨れてきたのでお昼寝でもするか。

どうせ本作戦は700パーセント受動的に進行するのだ、向こうの防備が固い以上こっちからは何もできない。全ては天の采配次第だ。

というわけでおやすみ〜

 

 

起きたら夜でした。時間は午前一時。ワァオ。

光合成しながら寝たからだいぶ身体がじっとりしてる。シャワー入りたい。

 

……虐待を受けて親元から逃げてきた子供を装ってウォルコット家に潜入するという案はどうだろうか。

……いや、やめとくか。こちとら誇るべき所は能天気さと無鉄砲さである。電気マッサージ器のように震え続ける演技など到底できるとは思えない。自分みたいな体力の無い役者は、一時間しか舞台に立つことは出来ないのだ。

さて、シャワーに入りたい。リリウムの事を諦めてシャワーの為に帰ることも選択肢に入るくらいだ。

 

…………電車で一時間とか割りかし近いから家に帰っても良かったのでは?

あーーしゃった!!帰れば良かったんだ!!なんでこんなところに宿無しでずっと滞在しようなんて無茶苦茶な計画立ててるんだ俺!!

さてどうしよう、どう考えても終電は消えているだろう。……うん、この夜の間はこの木の上で巡回する警官等に怯えながら過ごすしか無いな。

しゃーない、もう一眠りするかー。それじゃーおやす…………

「あの……」

ざんねん‼︎ じゃんぬの ぼうけんは ここで 終わってしまった‼︎

と、一緒思ったが、そんな雰囲気を感じさせないほどに声がか細く小さい。

声の方向をちらりと右眼で見る

 

 

たおやかな少女がこちらを見上げていた。

 

 

さて、展開が唐突すぎる。エロゲで、前日まで明らかに敵対感情を示していたヒロインと、次の日お互いを求めあってる級に急だ。

 

「どうしたんだいお嬢さん?こんな夜中になんで出歩いているんだい?」

 

CVの○まみを意識しながら、心のカンテレをポロロンと鳴らす。

 

「貴女は、ここで何故ここにいるのですか?」

 

おっと会話が成り立たないアホがひとり登場〜!質問文に対し質問文で答えるとテスト0点なの知ってたか?マヌケェ〜〜!!

とは言わない

君を攫う算段をたててたんだよ(ポロロン)

とも言わない

 

「さぁね、風に流されて気がついたらここにいたんだ」

 

大変な不思議ちゃんである。

 

「そうなんですか……」

 

「それで、君はどうしてこんなところにいるんだい?こんな遅い時間に外をうろついていると怖い狼が君を攫っちゃうかもしれないよ?」

 

私とかな

 

「私の名前はリリウム・ウォルコットです」

 

知ってる、ちらりと見ただけであるが眼が昇天しそうなほどの美貌と、脳がシェイクになりそうな落ち着いた声で判断できる。

 

「実は……貴女の演奏を近くで聴いてみたくて」

 

「おやおや、こんな遅い時間に、こんなにも可愛らしいお客様が来てくれるとは。」

 

クスクスと笑う。

 

「やめておくよ、聞きたいならまた明日来て欲しい。音を出して、怖い怖い人に見つかりたくないからね」

 

夜間に演奏し、苦情によって警官に捕まるなんて御免被る

 

「な、なら……私の部屋で演奏してもらえませんか?」

 

……は?

 

「え?」

 

「この時間なら、家のものは皆寝ていますので入って来ても大丈夫です。それに私の部屋の近くで寝ている人はいないので、バレることもありません」

 

おいおいちょいとガード甘すぎるんちゃうかこの少女。それともマジに惚れたんか此奴。APPスペシャルしたのか?

 

「そうか、なら折角のお誘いだ。君の部屋にお邪魔させてもらうよ」

 

ストン、と木の上から飛び降りる。リリウムの綺麗な銀髪が、自分の胸のあたりで輝いている

そんな彼女の紅い眼は、驚愕で見開かれていた。おおかた、自分の左腕や眼を見て驚いたのだろう

 

「え、あ……」

 

月明かりがリリウムを照らす。なるほど彼女は妖精である、動揺する姿だってこんなにも美しいんだ。その表情が、顔に出来た小さな皺の1つ1つまで、美しく、愛おしい。そんなことを思える人間に、私はただ一人として出会った事は無い。

瞳の中に嫌悪が含まれていない事を確認すると、なんとも無いように左肩を振る。

 

「あぁ、これかい?……まぁ、聞かないで貰えると嬉しい……かな?」

 

欠損フェチだから消してもらいましただなんて理由がサイコすぎるから言いたく無い。ギャルゲとかなら好感度が上がれば理由を話すかもしれないが、無いものは話せないのだ!!

死神部隊のリーダーにやられました〜それでACからも降りました〜ここたま〜

……これが理由でも良いかもしれない。ACには乗れてるが

 

「……はい、わかりました」

 

動揺をおさめ、リリウムが頷く。

 

「ありがとう。優しいんだね」

 

自分だったら好奇心のままになんでなんでと聞いていた。

 

「じゃあ、君の部屋に案内してもらおうか。」

 

 

というわけで場面の転換です。暗転からの場転です。inウォルコット家です。

巡回するガードロボの横をすり抜け(リリウム曰く、登録されていない人間でもウォルコット家の人間と一緒にいるなら攻撃はしないらしい)リリウムの部屋に辿り着く

女の子の部屋に入るなんて小学校ぶりである。少しばかり緊張しながら、彼女の部屋に入った。

ふわぁ〜濃厚な女の子の匂いがしゅりゅぅ〜‼︎‼︎

 

「じゃ、演奏させてもらうよ」

 

そんな雰囲気は一切出さずに、窓に腰掛ける。

リリウムはこんな不思議ちゃんな自分にツッコミもせずに、椅子に座り期待を込めた眼差しをこちらに向ける

そろそろ心配になってきたぞこの子。社会常識が大いに欠損してるんちゃうんか?なんや、全世界の箱入り娘はみんなこんな感じなのか?マジかよ前の人生の勝利条件は木の上でオカリナを奏でる事だったのか。

と、さて。曲はどうしようか。深夜に妖精のような少女と同じ部屋である。どうせだからスーパーにウルトラでハイパーな上にミラクルでロマンティックな曲を一発かましたい。どうしよう。浪花節かな?

 

「じゃあ、聴いてください」

 

無難にゼルダの子守唄にした

 

 

演奏し終えると、リリウムがパチパチと拍手をしてくれた。

 

「はじめて聴いた曲ですが、とても、心に響きました」

 

そりゃそうだ、フロムソフトウェアの世界に任天堂の曲があってたまるかって話である。

しかし、学校や友人との集まりにおいて鉄板芸と化していた一人ゼルダの伝説小芝居をやるために練習したこの曲で、こんな感動を呼び覚ませるとは……

それともあれか、大任天堂の威光は別会社のゲームにも届くのか?うん、そっちの方が納得できるわ

 

「気に入ってくれたようで嬉しいよ、この曲はね、ある遠い遠い国のお姫様の子守唄なんだ」

 

「お姫様……ですか?」

 

「そう、お姫様だ。私が吹くのは、その国に様々な形で伝わる曲なんだ」

 

あと抜刀隊とか雪の進軍とかできるけど、現状況に全くそぐわないので止めとく

 

「じゃあ、次の曲といこうか。一度入ったら二度と戻れぬ深き森。そこに伝わる曲を」

 

スタルキッドステップは勘弁な!!

 

 

 

『システム、戦闘モード起動』

無機質な女の声が、脳に響く。

ネクストACに乗る感覚には、いつまで経っても慣れることが出来ない。

結局は、そういう事なのであろう。烏はいつまでも烏のままで、どうあがいても山猫になる事はない。恐らく、死ぬまで。

だが、それで構わない。

『状況設定終了。これより、状況を開始します』

OBを起動し、一気に作戦エリアへと侵入する。

目標は、ビル街に展開するノーマルAC部隊の排除。リンクスにとって、苦戦すらも許されない仕事だ。

定められた目標たちが、各々の得物をこちらに向けてくる。

銃口から光が放たれる。考えるより先に身体が動く。

瞬間、身体に大きな負荷がかかり、機体が右に大きく吹っ飛んだ。

QB、機体についた高出力の小型ブースターを使った瞬間的な加速により迫り来る砲弾を回避する。

エネルギーが切れ、OBが停止する。距離は充分。

接地する、エネルギーが回復する、大きく息を吸い込み、全神経を戦場に集中させる。

 

前方、ノーマル二機。

QBにより接近。左側のノーマルにすれ違い様にマシンガンを叩き込む。

コアを貫く。ひとつ

そのまま速度を利用し、右足を支点にターンする。

再び加速。こちらの動きについてこれないノーマルを、後ろから袈裟斬りにする。ふたつ

後方より発砲音。左に回避。爆発の規模が大きい……グレネードか?

そのままOBを起動し、壁を破壊してビルに突っ込み、天井を破りながら、屋上へと向かう。

先ほどこちらを攻撃したノーマルは、そんな自分を撃破すべくグレネードを放つが、ネクストの速度には追いつけない。

外へ出ると、別の狙撃型ノーマルがいた。これのコアをブレードで貫く。みっつ。そしてOBでもってグレネード機へと接近する。前方に大型のシールド、半固定型か。左には、護衛のためかガトリング砲を装備したノーマルがいる。

機関砲から飛来する砲弾をいなし、プラズマキャノンを叩き込む。よっつ。グレネード機はこちらの動きに対応できていない。

そのまま横をすり抜け、コアの部分をブレードで貫く。いつつ。

あと一機、レーダーを確認する。

と、ゆっくりと残りの目標がブースターで上がってきた。ブレード機らしい。

こちらを確認すると、ブレードを構え単調に突っ込んできた。

その腕を切り落とし、コアにマシンガンを突きつける。

乾いた音が数秒続く。その後、隻腕のノーマルは力なく地に伏した。

『全目標の撃破を確認。状況終了、状況終了』

むっつ。ここで、やっと息を吐いた。

 

一切の手応えも無い訓練を終え、シミュレーターから出る。

 

「お疲れ様です」

 

すっ……と横からタオルを差し出される

 

「ありがとう、フィオナ」

 

翼に傷のついた私を助けてくれた恩人、フィオナ・イェルネフェルトがそこに立っていた。

 

「見ていたのか?」

 

タオルで汗を拭いながら、横にいる少女に尋ねる。

 

「はい、いつ見ても素晴らしい動きです」

 

少し顔を青くしながら、少女がそう言葉を発する。

男はそんな彼女の様子には触れず、ゆっくりと歩き始める

 

「開業して一月。未だ仕事は1つも無し……か」

 

「どうしてでしょうか……」

 

「俺みたいな粗製の傭兵にまわすようなものが無いのだろう。GAだって数は少ないが自前の戦力は持っている。綺麗な仕事は、誰だって自分の手でやりたいに決まってる」

 

カツ、カツ、カツと、少女に合わせるように男は歩く。

 

「傭兵に来るのは汚い仕事か危険な仕事さ。敵対する企業を狙ったテロ行為かもしれない。強大な要塞やネクストに、単騎で突っ込めっていう無茶苦茶な命令かもしれない」

 

「そんな……」

 

フィオナの顔が更に深く沈む。

優しい娘だ。彼女は、本気で自分を心配してくれている。恐らく、ずっと自分に対して負い目を感じているのだろう。だからこそ、オペレーターへと志願してくれたのだ。せめて、男を一番側で支えるために。彼と、最期の時まで共にいるために。

 

「安心しろ、傭兵にだって仕事を選ぶ権利くらいはある。明らかに報酬と釣り合っていなければ、断ったって何の問題も無い」

 

そう、少女に言葉をかける。

 

「ですが……」

 

「それにな」

 

男は後ろを歩く少女の方を向き、品良く整えられた金髪を撫でる

 

「フィオナに助けられた命だ。自分だけのものじゃ無いものを、粗末に扱ったりはしないさ」

 

唐突な男の行動に、フィオナは虚を喰らったらしい。一瞬、呆けた顔をした後、ポンっと顔を赤くし、あたふたと慌て始めた。

その動作が余りに可愛らしく、思わず笑ってしまう。

フィオナはそれが気に障ったのか、ズンズンと肩を怒らせて歩いて行ってしまう。

これはマズイかも知れない。ランチを奢らなければ、許してくれないかもしれないな。

男は少女を追いかける。

いままで人生の多くを過ごしてきた戦場で学べなかった女性の扱い方に苦戦しつつ、烏は今日も生きる。

 

彼らの仮初めの平和の終わりは、すぐそこに迫っていた。

 

 




レイヴンはアリーヤに乗っています。
ジャンヌのクレピュスキュールの詳しい機体説明は、また後々やります。しっかし大口径砲しかないなこの機体(脳内で動かしながら)

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