世にリリウムのあらん事を   作:木曾のポン酢

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なんか朝起きたらお気に入りやらUAやら倍増しててなんじゃあこりゃあ……

すごいありがたいです。やる気出ました。頑張ります。

あとメノ・ルーかわいいね


アグヌス・デイ 前編

『状況設定終了、これより状況を開始します』

 

目を開く。無機質なビルが並ぶ中に。私と、〝あいつ〟だけがいる。

 

あいつが動き出す。一切止まる気配は見せない。ビルとビルの間を高速で駆け回りながら、ハイレーザーライフルと巨大グレネードを撃ってくる。

 

ハイレーザーを小さくかわし、巨大グレネードを大きくかわす。

グレネードの威力は凄まじい。当たった場所は大きく抉れ、ビルはまるで紙風船のようにあっけなく吹き飛ぶ。

 

直撃しなくても爆風と破片が無視できないダメージを機体に与える。

 

だが、なんとか、直撃を、避ける。

 

敵がグレネードをパージする。

 

「クソッ……!?」

 

スピードが格段に上がる、機体を目で追えない。

だが、なんとか、カノープスの発射音に集中して、かわ、す

 

「チィッ…………」

 

左腕に直撃、感覚が切れる。バランスが取れない、が、動ける。

 

かわしながら無理矢理使い物にならなくなった左腕を引きちぎる。これで身体が軽くなる。かわす、なんとしても、かわす、かわ、す、か、わ、す……!

 

青い猛攻が止む。カノープスが宙を舞う。

 

 

 

ギアが一段階上がる

 

 

 

死角から、致命傷が、飛んで、くる。

肉を斬らせて骨を断つだなんて甘ったれたことは言えない。この刃には、肉も、骨も、鋼も、コジマも、万物を斬り裂く力がある。

 

 

 

全神経を集中してブレードを弾きかえす。散弾兵器で削ろうとするも、敵はすぐに射程外に逃げる。分裂ミサイルは弾切れ。マシンガンは左腕と共に地面に横たわる。

頼りになるのは、このオーメル製の長刀だけだ。

 

しかし、この剣戟も直ぐに終焉する。ブレードが大きく弾かれた。胴がガラ空きになる。

反射的にもう1つの背中武器を選択する。BVS–50、テクノクラート製の大型ロケット。

 

が、遅い。男が発射しようとした時には、既に敵は懐に入っていた。

 

瞬間、目の前が真っ暗になる。1万強残っていたAPも今はゼロ、これが実戦なら今頃地獄の業火で日焼け中というところだろう。

 

 

「はぁ……」

 

シミュレーターの接続を切り、出る。

外ではフィオナが心配そうな顔で待っていた。

 

「大丈夫だ、シミュレーションで精神磨り減らすような馬鹿なことはしていない」

 

顔を覆う汗をシャツで拭い。近くにあった椅子に座り込む。

 

「やはり……ダメそうですか?」

 

「あぁ、まだ捉えられん」

 

レイレナード社から提供されたクレピュスキュールの仮データとの対戦は、レイヴンの日課になっていた。

 

今の所、勝利した事はない。いくらAIの動きは単調といえど、あのランダムに飛行する機体をブレードで捉えるのは至難の技だ。

 

 

新たなイレギュラーの登場から、既に三ヶ月は経っていた。

その間、頭を失ったマグリブ解放戦線はあっけなく崩壊した。

アマジーグの仇が不明なこともあり、纏まりに欠けたテロリスト達は、ゆっくりと、丁寧に企業にすり潰された。

奴らが保有するもう1人のイレギュラーは自分が倒した。

ネクストによるアナトリアへの強襲作戦。だがそれは、企業への恭順を誓った裏切り者によりこちら側に判明。アシュートミニアとその同志はいま地中海の海底にいる。

 

あっけない最後であった。当然と言えばそうなのだろう。企業に対抗する力が無かった、ただそれだけだ。

 

クレピュスキュールはあれ以来一度も姿を現していない。イクバールなどはあの機体に懸賞金を出していた。魔術師を中心に、多くの兵隊が奴を追っている。やはり、奴らとマグリブ解放戦線は繋がっていたのだろう。

 

男は溜息を吐く。出会って以来奴の事しか考えていない。頭を振り、目の前の少女を見る。そうだ、奴がフィオナと同じ声だってのも、頭から離れない理由だ。

 

「で、仕事か?」

 

「はい、GAからです」

 

GAね。最近、奴らのノーマルとばかり戦っている気がする。どれもこれもGAEからの依頼だったなと思い出し、何となく口にする

 

「GAEへの襲撃任務か?」

 

「…………当たりです。やはり、気づいていたんですね?」

 

なるほど、ビンゴか。

 

「ついに、本格的に内部粛清をやろうってか。何したんだ奴ら。」

 

「どうやらGAEはアクアビットと内密に取引を行っていたようです」

 

「浮気現場に踏み込め……と、なるほど。」

 

GAEもアクアビットも、会社というよりも研究機関と言う方が相応しい集団だ。技術屋同士惹かれる所があったのだろう。

 

「少し夫の邪魔をしすぎたかな……。で、場所は?」

 

「ハイダ工廠です。ここで建造されている巨大兵器を破壊して欲しいと」

 

「昨日は防衛明日は襲撃。なんとも傭兵らしいな」

 

歌うように男が言う。さてさて、確かGAEには子飼いのネクストがいた筈だ。もしかしたらそいつが相手になるかもしれない。奇人と有名な女だ、はてさてどうなるか……

 

「任務を受けてくれ。すぐに用意する」

 

「わかりました。休憩は……」

 

「移動時間の間に寝るからいいさ。……あぁいや、シャワーだけは浴びてくる」

 

「わかりました、では私はワルキューレのチェックをしてきます。」

 

そう言ってフィオナは出て行く。

 

その後ろ姿を見て、男はクレピュスキュールのことを完全に頭から締め出した。これからは、仕事の時間だ。

 

 

 

「こんなものか……」

 

ハイダ工廠内部。逃げ惑う作業員や研究者に気を留めず、ガードメカやノーマルACを1つ1つ潰していく。

 

対象の大型兵器は合計で3機いた。四つ脚の巨兵は、クワルキューレの装備するロケットでもってどれもあっさりと崩れ落ちた。

 

既に完成しており、それでもって抵抗されることも想定していたが……まぁ、楽なのは良いことだ。

 

狭い通路内に立つ有澤製のノーマルは確かに少しは苦戦したが、結局はノーマルだ。すぐに鉄屑になった。

 

「あとは1機だけです。起動する様子もありません。……撃破して、早く帰りましょう」

 

フィオナの声が聞こえる。

アクアビットからの援軍も、GAEのネクストも来ない。

杞憂だったか……。そんなふうに思いながら、最後の巨大兵器を破壊する。

 

これで終わり、だ。

 

「お疲れ様です。さぁ、迎えのトレーラーに……」

 

「どうした?敵か?」

 

フィオナの声が途切れる。増援が来たか?

 

「いえ、違います……これは……レイレナード社から緊急の依頼です」

 

「レイレナードから……」

 

クレピュスキュールか!すぐに結論に達する。

 

「イレギュラーACが再び現れたそうです。同社は既にオルレアを高速輸送機に搭載、現場に向かっています。貴方にもすぐに来て欲しいと……」

 

「こっちは問題ない、マシンガンもミサイルも残弾は多い。ロケットはパージする。回収しておいてくれ」

 

「わかりました、受注します。……座標が来ました。…………これは?」

 

「どうした?」

 

「……イレギュラーネクストは、ハイダ工廠の付近にいます!」

 

「……了解した。レイレナードにメールを送っておいてくれ。こちらは対象に近い。そちらのネクストが到着するまで足止めを請け負うと」

 

OBを起動、亡骸しか残っていないハイダ工廠に背を向け、男は出口を求めて進み始めた。

 

 

 

「こちらプリミティブ・ライト。もうすぐ作戦地域に入ります」

 

GA製の重量機体が地面を疾駆する。

メノ・ルー、GAの最高戦力である彼女は子会社であるGAEからの依頼により、ハイダ工廠を襲撃した不明ACを撃破すべく飛んでいた。

 

「急いでください、既にハイダ工廠の損害は致命的なレベルに達しつつあります」

 

GAE社のオペレーターの声が、聞こえる。

 

 

GA社は、子会社の謀叛という屈辱的な事件を徹底的に隠し通そうとしていた。

GAE社への粛清作戦は、上層部の極限られた者にしか知らぬ事だった。襲撃を行った兵員たちも、将校を除いてはただ「GAE社に潜入したテロリストの排除」としか聞かされていなかった。

知る者が多ければ多い程、外部に情報が漏れる可能性は比例して高くなる。なるべく少ない人間のみで解決するというのが、GAの方針だった。

ネクストについてもそうだ。内部粛清なんて汚れ仕事を、自社のネクストにはやらせたくない。それくらいなら、今まで邪魔をしてきたあの傭兵を雇う方が良い。それに、仕事についての口の硬さには一定の信頼も置いている。

GA上層部は、すぐにアナトリアの傭兵に依頼を出した。

 

そして、それが今回裏目に出る。

傭兵によるハイダ工廠の襲撃を察知したGAE社は、自社のネクストではなく。GA社のネクストに連絡を取った。

 

「GAEのハイダ工廠が不明ACによる襲撃を受けている。我が社のネクストは現在別地域で作戦行動中につき迎撃ができない。なので、本社のオリジナルである貴方に頼みたい。既に、上に許可は取っている。」

 

丁度、欧州で訓練を行っていたメノはこのメールを見てすぐに行動に移る。

 

不幸な事に、彼女の周囲にGAEの裏切りを知る者はいなかった。

 

 

「ハイダ工廠を確認しました、ゲートは破壊されています。そこから侵入を……」

 

メノがそう言おうとした時、耳に何か違和感を感じる。

 

「音楽……?」

 

そう、何か、音楽が聞こえるのだ。

 

「どうしました?」

 

オペレーターが尋ねてくる。

 

「何か、音楽が聞こえてきます。これは…ヴァイオリン?」

 

「……こちらでも確認しました。いったい誰が……?」

 

音が段々と大きくなる。まるで、音源に近づくように。

 

「……プリミティブ・ライト。ハイダ工廠入り口付近にネクストの反応です。どうやら音楽はこのACから発信されているようです。」

 

「それが今回の目標ですか……?いったい、何故音楽など……」

 

「いま機体の照合を……」

 

「昔話をしてあげる」

 

「!?」

 

唐突に発せられる声。おそらく、少女の

 

「世界が破滅に向かっていた頃の話よ」

 

と、そこで唐突に言葉を切り、クスクス笑う。

 

「いや、違う。これは貴女達にとっては明日の出来事か……」

 

「あなたは……何を……?」

 

「神様は人間を救いたいと思っていた。だから、手を差し伸べた」

 

少女は語る。まるで、絵本を音読する子供のように

 

「……照合結果でました。例のイレギュラーです」

 

「これが……?」

 

声だけ聞くと、自分よりもずっと若く感じる。

 

ハイダ工廠前に、四脚の重ネクストが佇んでいる。

資料通りの外見。不気味な四つの目が、こちらをじっと見つめている。

 

「でもそのたびに、人間の中から邪魔者が現れた。神様の作ろうとする秩序を、壊してしまう者。」

 

メノ・ルーは根本主義者である。神を信じ、神からの恵みと救いを待っている。

神、という言葉を聞いて彼女は反応してしまった。

 

「神様は困惑した。人間は救われることを、望んでないのかって。」

 

まるで、こちらに問いかけるかのような口調だ。もしかしてこのイレギュラーは、私のことを知っているのだろうか?

 

「私には……わかりません。」

 

 

メノには神からの救済を邪魔する者の気持ちはわからなかった。彼女は真摯に神を信仰し、その事による自らの罪からの解放を待っていた。

 

彼女は戦争屋である。

なりたくてなった訳ではない。

彼女は教会が運営する孤児院で育った。

貧しい所であったが、神父さまや血の繋がらないきょうだいたちはみんな温かく、とても幸せだった。

 

その暮らしが変わったのは、私が15になった時だった。

その時、まだただの企業だったGA社が行っていた健康診断によって、私に高いAMS適性があることがわかった。

突然教会に来たGAの人間は、私をネクストのパイロットとして迎えたいと言っていた。

その時に提示されたお金は、いままで見たことも無いような額であった。

私は、すぐに頷いた。新しい服を買えない孤児院のきょうだいたちの為に、この歳まで育ててくれた神父さまへの恩返しの為にも、お金は必要だった。

神父さまからは止められた。孤児院にお金を入れたいと何度説得しようとも、彼は頷こうとしなかった。結局、私は家出同然に孤児院から出た。

 

それは、大きな間違いだった。

 

そこからの私は、もう、今までの私では無かった

半年も経たない内に、私は人を殺した。

 

リンクスになる時に、覚悟していた事だった。

覚悟していたと思っていた。

それなのに、猛烈な何日も吐き気に苦しんだ。

 

我慢しながら、ネクストに乗り続けた、何人も、人を、殺した。国家解体戦争。GA本社唯一のリンクスである私に、休む事など許されていなかった。

 

お金は、その殆どを孤児院に送った。一枚だけ送った手紙には、元気にやっていると書いた。

孤児院からの返信は読まなかった。孤児院から逃げ出した私を非難していると思ってしまったからだ。

 

罪が身体を蝕む。寝床に幻覚が立つようになった。私が殺した、名も知らない、だけど良く覚えている、顔が、顔が、顔が。

 

この時に、やっと神父さまが私がリンクスになる事を拒んでいた理由がわかった。

彼は、小さな頃から私を見ていたのだ。

戦争なんて状況に、戦士として、私が耐えられないであろうという事を知っていたのだ。

 

国家解体戦争が終わった。

長い有給を使った私は、GAから割り振られた部屋に引きこもり。誰とも会わないように日常を送っていた。

 

突然、神父さまが私の部屋を訪ねてきた。

私は彼の姿を見て、思わずその胸に飛び込み、泣き出してしまった。

神父さまは優しく私を抱きしめてくれた。

 

彼は、手紙から私の異変を感じ取っていたらしい。

どんなに元気を装っても、やはり育ててくれた親にはわかるらしい。

私達は、夜までお話をした。久しぶりに、楽しい時間だった。

写真を見せてもらうと、きょうだいたちは皆新しい服に身を包み、幸せそうに笑っていた。

彼らは皆、私に会いたいと言ってくれているらしい。

とても、嬉しかった

 

夜、私は、神父さまに自分の罪を告白した。

彼は、それを非難する事もなく聴いていてくれた。

最後まで言い終えて、私はまた泣いた。

神父さまは、ただ一言だけ、私に声をかけてくれた。

 

「神は、メノを赦してくれるよ」

 

その一言でとても救われたような気がした

 

それ以来、私は教会にいた時よりも熱心に神を信じるようになった。暮らし方も、教義に則ったものに変わった。

 

リンクスである事を辞める事は出来ない。これからも、私は多くの十字架を背負う事になるだろう。

そうだ、あの時の私は、孤児院の為と責任を転嫁していたのだ。戦争だからと転嫁していたのだ。

私は罪と向き合う事にした。その時に初めて、私は神から許される。神父さまはそう言っていた。

 

メノ・ルーは戦場に立つ。彼女は逃げない。罪からも、自分からも。

 

 

「人間はね、あれこれ指図されたくなかったの。自由に生きたかった。でも神様は人間を救ってあげたかった。」

 

ヴァイオリンの音が、徐々に盛り上がってくる。それに合わせて、少女の声も心なしか大きくなっていた。

 

「だから先に邪魔者を見つけ出して、殺すことにした」

 

なぜ、こんなにも楽しそうなのだろう。メノ・ルーには理解出来なかった。こんな場所で、嬉々として語るこの少女は、彼女の心に大きな恐怖を植え付けた。

 

「私が……その邪魔者だと……?」

 

「言ったでしょ、これはただの昔話だって」

 

うふふ、と少女は楽しそうに笑う。

 

「なぁんもかんけいのないはなし。ただのたのしいむかしばなし」

 

幼さを強調するように、イレギュラーは舌ったらずで話す。だが、次のセリフで、少女の雰囲気が変わる。

 

「私のやる事はただ一つ。何も知らずに騙された哀れな羊を、天へと返してあげることよ」

 

「…………どういう事?」

 

少女の言葉を聞き、オペレーターが絶句する。事態が把握できない私は、そう問い返した。

 

「そのまんまの意味よ、GAEは本社に反旗を翻していた。貴女は嘘の依頼を受けたのよ」

 

「嘘……?いったい、それは、どういう……」

 

「プリミティブ・ライト。イレギュラーの言葉に耳を傾けないで下さい。奴はこちらの信頼関係を…「騙して悪いが!!」

 

オペレーターの言葉を強引に切り、少女が叫ぶ。

 

「消えてもらうぞ、リンクス」

 

四脚機が武器を構える。来る。反射的にメノ・ルーは全神経を戦場に集中させる。

鼓膜を震わすヴァイオリンの盛り上がりが最高潮に達した、その瞬間。

 

「さぁ、始めましょう。殺すわ、あなたを」

 

イレギュラーが駆動する。

 

歌が聞こえる。

 

Don’t forget a hole in the wall.

 

次の瞬間…四脚機は既に私の目の前にいた。

 

I’m like ghost to turn in on the load.

 

イレギュラーはブレードを高く振り上げる。私に武器を構えようとする暇も与えずに。

 

「でぇい!あぁふたぁ!でぇい!」

 

楽しそうな、本当に楽しそうな歌声が、私を、

 

「あぁい!すてぇ!あらぁんふぁうぇい!!」

 

振り下ろされて

 

光が

 

消える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーめんあーめんごすぺるあーめんあーめんあーめんごすぺるあーめん……」

 

通信機からふざけた祈りの声が流れてくる。

 

目を開けると、なぜか空が見えた。

驚いて立ち上がる。場所はプリミティブ・ライトのコックピット、それはかわりない。

しかし、その装甲は剥がされ私は空気に晒されていた。

 

「あ、おきたぁ〜。ヘッドパーツ貫いただけで動かなくなったから心配したよー。まさか気絶してるとは思わなかったなぁー」

 

イレギュラー機は、私を見下ろすように佇んでいた。そしてそのコアは開き。そこに誰か立っている。距離が遠い、どんな姿か、よく、見えない。

 

「貴女は……いったい……なに……なんなの……?」

 

メノは恐怖していた。彼女は、人間とは思えない。

メノにはわかった。彼女には人を殺すことに一切の罪を感じていない。責任とかそういう問題ではない。これは、人を殺すということに罪などないと考えている。

 

「ただのなぁんの変哲もないリンクスです。種も仕掛けもありません!」

 

クルリと回ってそう宣言する。

 

「悪魔か何かに見えた?まぁ、真の悪魔は人間とはよう言ったもので、確かにそーいう意味では私は悪魔なのかもしれないデビねぇ〜」

 

イレギュラーはふざけた様に語り、コックピットへ戻って行く

 

「じゃ、起きた所でまた寝よっか!」

 

イレギュラー機が起動する。ブレードから、紫色の光が伸びる。

 

「いやさぁ!寝てる子殺しても面白くないじゃん?やっぱり絶望しながら死んでもらわないと!」

 

メノはある事に気づく。愛機、プリミティブ・ライトはコア以外の全てのパーツを引き裂かれていた。

そして悟った。あぁ、そうか、私はここで死ぬのかと。

 

死は、救いなのだろうか、私は、これまでの罪をゆるされるのだろうか。

 

だとしたら、よいのかもしれない。私は、この罪を背負う事を止められる。

 

だが、なぜだろう。

 

涙が、止まらない

 

 

 

「久しぶりだな、クレピュスキュール」

 

唐突に、男の声が響く

 

その瞬間、イレギュラー機は動きを止めてゆっくりと振り返る。

 

「遅かったじゃないかぁ……」

 

まるで、最初からその登場を知っていたかの様に

 




後編に続く

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