直死の眼を持つ優しき少女   作:黄金馬鹿

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後編です。死の眼を得てしまった雷はどうなってしまうのか。今回で決まります


新たな死の眼 後編

 妖精さんの話によれば、雷の目は数時間で何の後遺症も無く見えるようになるという。これも、高速修復材のおかげだった。

 だが、雷が再びあんな行動に出ないため、両手両足をベッドの足と繋いで拘束し、提督、暁、響、電が交代で監視をすることにした。これしか、出来なかった。

 提督には仕事があったが、仲間の命には変えられないと、二十四時間の内、夜の十一時から八時までを提督が、八時から一時までを暁が、一時から六時までを響が、六時から十一時までを電が見る事となった。

 提督は朝は寝て夜に起きる。そんな生活を強いられたが、笑顔で受け入れた。

 ここ、ブイン基地は名ばかりで、日本の内陸に存在している。だから、あと一週間とちょっとで給糧艦『間宮』と工作艦『明石』がやってくる。明石が来たら、雷の事を任せれる。だから、どうせ数日の間だと割り切っての提案だった。

 そして、初日の夜。電は医務室を訪れた。この日、初めての当番だからだ。

 

「今度は誰?」

 

 目に包帯を巻いて、視界が奪われている雷は、誰が来たのか分からず、不安そうに声を出した。

 

「電なのです」

 

 電はそう言うと、杖で椅子を探し当て、座った。

 

「電、杖ついてるの?」

「目、見えてないのです」

 

 雷の言葉に淡白に答えると、電は持ってきたタブレットを起動して、朗読アプリを手探りで起動。適当な本の朗読をさせると、イヤホンを片耳にだけ着けた。

 

「何で、目が見えないの?」

「雷ちゃんと同じだからなのです」

「同じ……?じゃあ、電も線が……」

「見えるのです。一年前、目覚めてからずっと」

 

 だから、現代の機械の操作も手慣れてしまった。その証拠に、今、電の耳には誰かわからない人が何かの本を朗読している。

 

「……電、辛くないの?あんなの見えて……」

「辛いのです。頭痛くて吐き気がして……最悪なのです」

「じゃあ、何で、その……目を潰そうとか思わないの?」

「無駄だからなのです。死を見る機能は視力を失っただけじゃ無くならないのです。だから、目を潰しても無駄なのです」

 

 忘れもしない、あの気持ち悪い風景。真っ黒な視界の中で、ただただ死の線だけが視界を埋め尽くす。普通に見るよりもさらに恐怖と吐き気と頭痛が酷くなったあの瞬間を。

 きっと、雷はそれを見ていない。なら、事前に注意しておくのが先にこの眼を持った者としての義務だろう。

 

「……こんな眼、無かったらよかった」

「私も常々そう思うのです」

 

 そして、静寂が部屋を包む。唯一の音は、電のイヤホンから漏れる朗読の声だけ。

 それが何分、いや、何時間続いただろうか。既に、電のイヤホンから流れる声は数回変わっている。

 

「……電は、強いわね」

「……急にどうしたのですか?」

「こんな眼を持って、ちゃんと生きてるんだもの」

「何度も逃げた後に逃げられないと悟っただけなのです。薬でも刃物でも自殺できないこの体じゃ、生きるしかないのです」

「……人よりも強度は数倍なのよね、私達」

「おまけに直しやすいのです。バケツの中の液体を頭から被れば元通り……難儀なのか便利なのか、よく分からないのです」

 

 壊れにくく、直しやすい。まさに兵器その物だ。欠点があるとしたら、感情がある事だろう。

 一時期はその感情を消す薬や装置も作られようとしていたらしいが、マスコミにバレ、責任者追放で軍は体裁を保った。最初は対深海棲艦用兵器の開発に成功やら何やらで騒ぎ立てたくせに、兵器としての性能を高めるためにいらない感情を消そうとした結果がこれだ。感情を消されかけた当の本人達からしたらたまったものではないが、今となっては消された方がマシだったと思えてしまう。

 

「……そろそろ時間なのです」

「もう行っちゃうの?」

「もう眠いのです」

 

 そう言うと、電はイヤホンを耳から外し、杖を手に持った。

 

「雷ちゃん。死にたくなったら、私に言うのです。痛いと思う間もなく……殺してあげるのです」

 

 電の最後に言った言葉は本心なのか冗談なのか。それを確認する前に電は医務室から去っていった。

 

「……おトイレ行きたい」

 

 ボソッと雷は呟いた。次に来るのは男である提督。せめて姉が来るまで耐えなければと思ってはいるが、残り八時間。我慢出来るかどうか、かなり心配な雷だった。

 

 

****

 

 

 翌日。電は定時通りに医務室へとやって来た。雷は何と変わらぬ様子で目に包帯を巻いて両手両足を拘束され寝ている。

 

「……そろそろ手足を動かしたいわ」

「一週間、椅子に拘束されるのよりはマシなのです」

「それもそうね……」

 

 ガチャガチャと音を立ててベルトが引っ張られる。が、動く訳もなく。

 流石にストレスやら何やらで体を思いっきり動かしたくなってくる雷だが、動かせるようになったらどうなるか、自分でも分かったことではない。

 今日も電は椅子に座って朗読を聞く。目の見えない彼女には唯一の娯楽とも言えた。

 

「……電、その、おトイレ行きたいんだけど……」

「尿瓶があらぬ場所に突っ込まれる可能性を考慮しないのなら喜んでやるのです」

「あはは……ちょっと暁か響呼んで。結構マジで」

 

 二日目は、これだけが二人の交わした言葉だった。

 そして三日目。

 

『……』

 

 何も話さず、ただただ無駄な時間だけが過ぎていった。

 そして、四日目。とうとう雷は拘束されている生活が耐えられなくなったのか、ひっきりなしに手足を動かそうとしている。

 

「うるさいのです」

「……ベルト外して」

「命令違反で罰則くらいたくないので、お断りするのです」

「外してよ!!もう嫌なの、こんな生活!!」

 

 雷が叫び、さらに強く手足を動かそうとする。だが、電は何食わぬ顔で両耳にイヤホンを着ける。

 雷の言っている事は痛いほど分かる。電も椅子に拘束されてる時は何度発狂しかけたか。四日でこれなら、持った方だろう。常に人がいる、というのもあるのだろうが。

 

「ワガママは駄目なのです」

「じゃあもう殺してよ!!このままずっと拘束されるのなら死んでるのと同じ!!どうせ開放されてもあの世界を見続けるくらいなら、死んだ方がマシよ!!」

 

 雷は強い。電の記憶では、ずっとそうだ。姉として誇りに思うし、どこに出しても恥ずかしくない姉だと思う。だが、その強さもこの眼の前では無意味だ。

 受け入れるか、死ぬか。その二択しかない。この眼は強大な力の代償に、色々な物を奪い取っていく。

 

「……『あの世界』にまた行きたいのなら、司令官に解体処分を申し出るのです」

 

 その言葉に、雷が止まる。

 『あの世界』。この眼を持っているのなら、きっとあの、何も無い世界を彷徨い続けたのだろうと思った電が適当に言った言葉だが、それは正解だった。

 電だって、あんな場所に戻るのはゴメンだ。だから、視界をこうして封じて、無様に生き続けている。

 

「せめて、解体は私がやってあげれるよう、司令官には言っておくのです」

 

 電はタブレットをスリープモードに変えると、杖を手に医務室を出た。

 そして、ドアを閉め、目隠しを取る。

 

「……この眼が、人を助けれるのなら」

 

 己が死にまみれた手を見て、電は再び目隠しを着ける。

 そして次の日。電は定時通りに雷の部屋を訪れ、椅子に腰掛けた。

 

「……電。私ね、もうどうしたいかわからないの」

 

 そう呟く雷の声には、記憶にある声とは違い、元気が無かった。

 それもそうだ。こんな生活を送り続けたら、誰だって元気が無くなる。あるとすれば、それはドMか訓練を受けた兵士だけだろう。

 

「……私も、悩んでるのです」

「電も?」

「完全な私用、なのです」

 

 今日は電はタブレットを持ってきていない。暇潰しの道具がないためか、電はひっきりなしに雷の髪の毛を弄っている。

 それがくすぐったかったが、止めさせる理由もないのでされるがままだ。

 シャワーも浴びれないため、大分傷んだ髪だが、電はお構いなしに弄り続ける。

 

「……暁も、響も、司令官もね。私を元気付けようと、色々と話してくれるの。暁はその日の朝ご飯とか、たまたま見つけた猫とか。響はたまにボルシチで飯テロしてくるけど……司令官は一緒に戦おうって何度も言ってくれるの」

「私達のお姉ちゃんは大分シスコンなのです。仕方ないっちゃあ仕方ないのです。司令官も、軍人としては優しすぎます」

「そうよね……最初は嬉しかったけど、段々と憎たらしく思ってきたの。貴方達に私の何が分かるのって」

 

 雷の声には、怒りが感じられた。三人に対してではなく、自分に対しての。

 自己嫌悪だろうか。だが、そう思っても何ら不思議ではないし、当たり前だとすら電は思える。特に響。病室でボルシチで飯テロするなんて人としてどうかと。

 

「じゃあ、お返しに今度、響ちゃんの目の前でボルシチで飯テロするのです」

「マーマイト一瓶食べさせたい」

「響ちゃんに何の恨みがあるのですか」

「目の前でボルシチで飯テロされた恨みよ」

「対価が釣り合ってないのです……でも、面白そうなのです」

「あら、気が合うわね」

「姉妹だから、当然なのです」

 

 そして、同時に笑い合う二人。響がくしゃみをしたらしいが、そんな事を知る二人ではない。

 

「あと、暁も何だか子供っぽいわよね」

「この間、トイレについて来てと言われたのです」

「ホントに子供じゃない!」

「響ちゃん曰く、ばかつきなのです」

「ばかつき……なかなかどうして、スッと胸の中に吸い込まれる言葉ね」

「レディ(笑)なのです」

「暁にレディなんて似合わないわね」

「全くなのです。レディなら、朝のプチトマトとか、ピーマンとか、グリーンピースとか食べる所から始めるのです」

「長女の面目丸潰れじゃない!」

『あははははは!!』

 

 初めて、電と雷が一緒に笑った。その内容が姉妹の悪口と言うか、愚痴と言うか、そんな感じだが、それでも二人の話のネタにはなった。

 その後も暁がやらかした事や響が何故か鎮守府の屋根の上で荒ぶる鷹のポーズをしていたりとか、そんな事を話している内に、あっという間に交代の時間が近づいてきた。

 二人は息が切れ切れになりながらも、満足していた。久々の、姉妹での姉妹らしい会話が、思った以上に楽しかったからだ。

 

「あー……面白かった」

「久々にこんなに笑ったのです」

「そうね……これで、思い残す事も少なくなったわ」

「……じゃあ、つまり」

「司令官が来たら解体申請するわ」

 

 雷の言葉には、決意が宿っていた。

 こんな眼と付き合うくらいなら死んでやる。これ以上迷惑をかけるのなら死んでやると。

 提督は精一杯説得しようとするだろう。だが、決して雷は意見を曲げない。そして、明日には解体されるだろう。殺処分、という形で。

 

「電、ありがとね。最後に電とも話せて楽しかったわ」

 

 雷は笑っていた。悲しい笑顔を浮かべていた。そして、電はそれを『見た』。

 電はポケットからある物を取り出すと、雷の寝ているベッドの上に乗り、雷の腹の上に跨った。

 

「い、電?」

「雷ちゃん。私は悪い子なのです。暁ちゃんや響ちゃんの言う事を理解せずに一人で戦ったり、皆の前で非情なことを言ったり……」

「電、ど、どうしたの?」

 

 電は雷の目を隠している包帯を一気に取り去った。夜中、それも殆ど光が無いこの場所だったから、雷は包帯を取られてすぐに目を開けた。少しだけ慣れなかったが、徐々に慣れていくと同時に、視界には死の線が映り始める。

 そして、目の前には自分の腹の上に跨る電。青い眼をこの暗い部屋の中で妖しく光らせ、その右手にはナイフを持っている。

 

「い、いなづま……な、なに、するきなの?」

 

 その眼に見られた雷は全身に氷柱が刺さったかのような寒気に見舞われた。

 殺気。圧倒的な殺気。今すぐにでもお前を殺してやると言わんばかりの殺気が、電から当てられている。

 

「動かないで」

 

 左手で雷の顔を抑え、枕に押し付ける。動けない。ピクリとも顔を動かせない。

 まさか、殺される?電に。妹に。

 

「や、やめ……」

「もう、決めた。大事な仲間を傷付けるのなら、例えそれが深海棲艦だろうと、神様だろうと、この世に存在しない概念だろうと、全部全部!!」

 

 電は逆手に持ったナイフを振り上げる。キラリと月明かりを反射し、ナイフが銀色に煌めく。

 その時、閉められていた医務室のドアが開かれる。

 

「電、交代のじか……」

 

 入ってきた提督が、目の前の光景を見て固まる。電が、雷の上に跨がり、ナイフを振り上げ、今にも振り下ろさんとしている。

 言葉を発する間もなく提督が走る。止めなくては。電の狂行を。手を伸ばし、走る。だが、それでも電の方が、速かった。

 

「殺し尽くしてみせる!!」

 

 無情にもナイフは振り下ろされ、雷の頭に突き刺さる。ザクッ!!と音を立てて振り下ろされたナイフは、横に一気に引きぬかれた。

 死んだ。雷が死んだ。そう提督は認識する前に、ナイフを持った電の手を掴み、首根っこを掴んで引っ張って床に叩き落とし、腕を捻り上げてもう片方の手を膝で床に押し付ける。

 

「電、お前、何をしたか分かってるのか!!?」

「……雷ちゃんの頭にあった線をなぞっただけなのです」

「そ、それがどんな事になるのか分かっているだろう!!?雷を殺したんだぞ、お前は!!」

 

 提督が抑えつけている電に向けて叫ぶ。仲間を殺す。それは、人としても軍人としても兵器としても許されるものではない。だが、提督は人として、人としての電へ叫ぶ。

 姉を、たった一人の姉を殺した。それが、どれほど愚かで罪深い行為なのか分からせるように。

 

「それは雷ちゃんを見てから……」

「ちょっ、待って司令官!生きてる!何でか生きてるからぁ!!だから電に乱暴はやめてぇ!!」

「……へ?」

 

 提督が、何故か聞こえてきた雷の声に間抜けな声をあげる。電をその間抜けな声を聞いてから、溜め息をつくと、パッと提督の拘束から抜け出し、自分の上に乗ってる提督ごと立ち上がり、雷の横に行く。

 

「雷ちゃん、この指、何本に見えますか?」

「二本?」

「死の線は何本ですか?」

「えっと、無いわ……え、無い?」

 

 電の指。死の線があった筈の指には、死の線が見えない。驚き、電の顔を見ると、電の顔は死の線が一つも無い、綺麗な顔だった。

 自分の拘束されている手を見ても、死の線は見えない。

 

「ど、どういう事?」

「脳の、死を知覚するという機能を『殺した』……ただ、それだけなのです」

 

 同じ死の眼を持ち、何度も何度も死の眼で己を見てきたからこそ、見つけた一筋の線。今日、ここに来た時から、雷をずっと、死の眼で見続け、無機物にすら、空気にすら死の線が見えかけるほど脳を酷使し雷の死の線を見て、発見したその線。脳が焼き切れそうな頭痛に苛まれながらも、電はそれを見つけ、ナイフでそれだけを『殺した』。雷を傷つける事なく、その機能だけを、殺した。

 

「直接、死を見れるこんな悪魔みたいな眼を持つのは、私だけでいいのです」

「電……」

「あぁ……頭が痛い」

 

 今にも倒れそうなほど、電を襲う頭痛は酷い。顔色も若干青く、今すぐにでも倒れそうだ。

 

「電……その、すまなかった。早とちりしたみたいだ」

 

 部屋を出ようとした電に、提督は謝る。電は怠そうに提督に振り返る。

 

「あんなの見たら誰だって猟奇殺人としか思わないのです。あと、本当に悪いと思うのなら、マーマイト買ってきて欲しいのです。響ちゃんにテロするために欲しいのです」

 

 電は自分の言葉と要件だけを伝えると、何も聞かずに頭を抑えながら医務室を出て行った。マーマイトって何だ?と提督は考え込んでいると、後ろからガチャガチャと音がする。

 

「しれいかーん、とって〜」

「あ、そうだな。もう拘束する意味もないもんな」

 

 提督は雷の手足を拘束するベルトを取る。すぐに雷は腕を動かしたり足を動かしたりして感触を確かめてから床に降りるが、倒れこんでしまう。

 何とか提督は受け止めたが、雷は不思議そうな顔をしている。

 

「ずっと寝たきりだったんだ。暫くは慣らさなきゃダメだ」

「うぅ……人の体って不便……」

「仕方ない。我慢してくれ」

 

 雷をベッドに座らせると、提督は一息ついた。まさか、こんな事になるなんて夢にも思わなかった。

 猟奇殺人を目にしたと思ったら、殺害された方が無傷で生きているなんて、最早ファンタジー以外の何物でもない。

 

「けど、雷がこうやって無事で俺は嬉しいよ。また一緒に戦える仲間が増えたんだからな」

「司令官……えぇ、これからはじゃんじゃん戦っちゃうわ」

 

 ベッドに座り、笑顔を浮かべながらそう言う雷は、どこか可愛らしさよりも美しさを感じた。

 

「そ、それにしても不思議だな、あの眼は」

 

 気が付いたら呟いていた。照れ隠しなのか何かは自分でも分からないが、それには雷も頷いている。

 

「あんな悪魔みたいな眼、もういらない……」

「そりゃそうだ。だが、悪魔みたいな眼、か……魔眼とでも名付けてみるか?」

「でも、それだけだと何か物足りないわね……直接死を見れるんだから……直死の魔眼なんてどうかしら!」

「直死の魔眼か……いいんじゃないか?」

 

 直接死を見る悪魔のような眼。縮めて直死の魔眼。それは、奇しくも並行世界で呼ばれている名称と同じだった。

 

「まぁ、直死の魔眼はいいとして……よかった。雷の眼が治って」

「それもこれも、電のおかげね。明日辺りにお礼言わなきゃ」

「そうだな。俺も、頼まれたマーマイトとやらを買ってこないとな。酷いことしちまったし」

「……マーマイト、ねぇ。その、司令官?絶対につまみ食いは駄目だからね?」

「お、おう?」

 

 これは近い内に響へのテロが決行されること間違いない。南無、響。

 

「じゃあ、俺は雷の書類書いてくるよ。ここへの配属手続きとか、色々とあるしな」

「直死の魔眼については?」

「書くわけ無いだろ。もしかしたら余計な事考えて雷をモルモットにしようとする馬鹿もいるかもしれないしな」

「そう……ありがと、司令官」

「おう。じゃあ、雷はあと一日だけここで寝ていてくれ。明日になったら妖精さんに体調のチェックとかしてもらって、リハビリが済んでから一緒に戦ってほしい。大丈夫か?」

「えぇ、じゃんじゃん私に頼ってね!」

 

 提督はいやー、よかったよかったと言いながら、医務室を出て行った。

 雷は足を持ち上げてベッドの上に横になり、一息ついた。まさか、直死の魔眼が消えるなんて思ってもいなかった。だが、今になって思う。電は、どうやって直死の魔眼を受け入れたのだろうと。

 雷が死の線をみた時間は、計数分程度。だが、たったそれだけで発狂しかけて目まで潰したのに、電は最早、自分に元から備わっている機能のように扱っている。

 

「電は、強いなぁ……」

 

 雷の言葉は、自分の弱さを責めているようでもあった。もし、一緒に直死の魔眼で戦えたら、少しは電も負担が少なくなったのではないかと。

 だが、今考えても、後悔しても変わらない。雷は、明日に希望を夢見ながら眠りについた。

 

 

****

 

 

「ちょ、ちょっと落ち着こう?確かにボルシチによる飯テロは悪ふざけが過ぎたと思う。だけど、それとマーマイトは別じゃないかな?待ってホント待って洒落になってない洒落で済まないから!パンに付けて吐きそうになるレベルのそれを直接一気はホント無理だからお願い助けて許してホント無理無理無理無理無理無理アアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!?」

 

 翌日、そんな響の悲鳴が鎮守府に響いたそうな。




最後にギャグぶん投げて雷の話は終了です。結局、直死の魔眼持ちは電だけになりました

次回からは再び海域へと、第六駆逐隊全員が乗り出します。果たして、電はちゃんと砲撃戦をするのか、それともまた近接仕掛けに行くのか……それはまた次回です

あと、直死の魔眼は缶ガン積みの島風にあった方がいいんじゃないかなと思いました

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