直死の眼を持つ優しき少女   作:黄金馬鹿

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電さんが降臨しましたが、まぁ数の差で劣勢です

ちなみに、電は輸送機で直上から飛び降りて途中まではパラシュート使ってました。途中までは


開眼、直死の魔眼 其の二

 青い眼の少女が二人、横に並ぶ。其の手には刀。日本刀を構え敵を見据えるその姿は正しく戦士と言えた。

 雷はボロボロの体に鞭を打って刀を構え、電は両手の刀を構える。しかし、その額には玉のような脂汗が浮かんでいる。

 電が装備している試作改零式艤装。それは、妖精さんの力を余す事なく使った、オーバースペックな艤装であった。

 全身の刀剣。艦娘の本領である砲雷撃戦を捨て、代わりに得たそれは、従来の艤装であればスピードを落とすだけ。そのため、島風の艤装を改修し、無理矢理電の艤装と組み込んだ。そして、全身の刀剣のロックを神経接続にした事で脳への負担が高くなり、眼には敵の砲弾や魚雷の予測線を直接表示する網膜投射。電への体の負担を完全に度外視した短期決戦装備。それが試作改零式。

 そんな装備のためか、電が十全に戦える時間は三十分もない。文字通りのキチガイ装備を身に着けた電は装備からくる頭痛と魔眼の頭痛とで今すぐ寝たい気分だった。

 

「……雷ちゃん、直死の魔眼、復活したみたいですね」

「援護に来るのが遅れたお陰でね。誰が、とは言わないけど」

「そんな大戦犯は斬り捨ててあげるのです」

「じゃあ、代わりにこの戦況を変えてくれたら許してあげる」

「じゃあ、とっとと敵を斬り捨ててくるのです」

「了解。梅雨払いは任せて」

 

 拳をコツンと合わせ、電が走る。そして、雷もその後に続く。すぐにル級の主砲が来るが、電はそれを、新たに支給された迅雷で斬り捨てる。雷も自分の元へ飛んでくる弾は全て自分で斬り捨てる。

 次に空から艦載機が襲ってくる。

 

「雷ちゃん、突っ込むのです!」

「分かったわ!」

 

 しかし、二人はそれに構わず突っ込む。が、電は迅雷を納刀し背中に手を回し、錨を手にするとその先を空へと向け、あからさまに引いてみろと付いているトリガーを引く。

 それと連動し、錨からは弾がばら撒かれ、空の艦載機を撃ち落としていく。

 電専用対空機銃兼突撃銃内蔵式試作錨型刀剣『紫電』。それが電の手にした錨の正体だった。

 名前の通り、対空気銃を内蔵したその錨は半円の内側に刃がついており、剣としても扱えない事がない錨だった。そして、唯一の飛び道具でもある。が、それでも撃ちもらした艦載機はいる。電はすぐに錨を戻し、雷を手で制し止めると、背中の艤装の大剣を目の前までマニピュレータで持ってきて柄を掴み、ロックを解除。それぞれ、バスターソードのようになっているそれを掴み、刃のついていない部分をくっつけると、それは一つの巨大な大剣となり、盾となる。

 対姫戦闘用電専用超弩級試作対深海棲艦両刃刀『迅雷・改』。本来の使い方は柄頭をくっつけ両刃刀とするのだが、今は大剣として両手で前面に押し出し、盾とする。次の瞬間には凄まじい衝撃と爆発が起こり、熱が大剣越しに伝わってくる。

 

「凄い盾ね、それ」

「剣なのです」

 

 爆撃が止んだところで再び迅雷・改を分割。マニピュレータに掴ませて定位置に戻す。

 

「忌々シイ艦娘メ……『凶レ』……!!」

「曲がれ?一体何を……ッ!?」

 

 響いてきた離島悽姫の声。曲がれという言葉の意味が分からなかったが、すぐに電は袖から短剣を取り出し、その目に見えた空間の歪みを殺す。

 偶々取り出せた電専用試作対深海棲艦短刀型暗器『電光』だが、もう少し遅かったら危なかっただろう。

 

「あれ、何なのです?」

「なんかねじ切れるわ」

「なにそれ怖い」

 

 だが、種さえ割れれば怖いものではない。電は電光を再び袖の中にしまい、突撃する。が、離島悽姫の元には行かせないと思っているのか、ル級、ヲ級、レ級が壁となる。が、そんなもの、電にとっては軟すぎる。

 迅雷・改を両刃刀に変え、ぶん回す。

 

「邪魔ァァァァァァ!!」

 

 叫びながら電が両刃刀を回転させながら深海凄艦の群れの中に突っ込んでいく。血と肉が飛び散り、電がその中を突き進む。雷はその後ろをついていく。

 そして、電はその勢いでそのまま離島へと上陸。雷はその前で足を止め、振り返り迅雷を構える。

 

「さて、ここから先は通さないわよ?」

 

 やられる前に殺ってくれ。雷は冷や汗を流しながら迅雷を構える。頭痛を堪え、吐き気を抑え、殺人衝動を全開にし、深海凄艦の群れへと切っ先を突きつける。

 電は離島へと上陸。川も木もない小さな島の中を走っていけば、離島悽姫は艤装の上に座って優雅に待っていた。

 

「……ヨク来タワネ。忌々シイ艦娘」

「来てやったのです。忌々しい深海凄艦」

 

 迅雷を突きつけるが、離島悽姫は不敵な笑みを浮かべたままだ。

 

「……私ノ目ハ『歪曲ノ魔眼』。全テヲ凶ル最強ノ眼ダ」

「……この眼は直死の魔眼。お前を殺す眼なのです」

「クククク……死ヌノハ貴様等ダ!艦娘!!」

 

 不意打ち気味に放たれた離島悽姫の主砲。それを迅雷で斬り捨てる。が、その間に離島悽姫は球体の艦載機を射出。すぐに電は片手で紫電を持ち、乱射。艦載機の爆発で煙が舞った所に潜り込み、紫電を振るって全ての艦載機を撃ち落とす。

 

「凶レ」

 

 が、その瞬間に紫電が空間の歪みに捕まる。それを迅雷で殺し、離島悽姫へ向けて紫電の弾丸を放つ。

 しかし、離島悽姫にとってそんな物は豆鉄砲。副砲を電へと放ちながら高笑いする。

 電はそれをマニピュレータで動かした迅雷・改で防ぎながら、迅雷と紫電をしまい、もう一つの迅雷・改を掴んで抜刀、盾に使った迅雷・改をマニピュレータで前に出しながら走って、腰の短い迅雷を抜いて一つを投げつける。

 が、飛んでいった迅雷は凶レの一言で曲がり、ひしゃげ、千切れる。なるほど、厄介な能力だ。

 前面に迅雷・改を展開したまま電は離島悽姫へと突っ込む。このまま零距離戦闘で斬り捨てる。しかし、迅雷・改に強烈な衝撃を感じ、吹き飛ばされる。主砲だ。

 距離を離され、艦載機が出てくる。それを紫電で撃ち落としていく。

 

「凶レ」

 

 また紫電を狙っているのか、と思い紫電を引くが、目の前には空間の歪みが無い。まさか、と思ったその時には自分の左手から金属がひしゃげる音が聞こえてくる。

 しまった、迅雷・改を狙われた。すぐに左手の迅雷・改を投げ捨てる。

 

「クククク……コノママ嬲リ殺シテクレル!」

「これは少し……勝てないかも」

 

 迅雷と紫電を構えながら電は呟いた。これは存外、厳しい戦闘になりそうだ。

 

 

****

 

 

 戦艦の主砲、副砲を斬り捨て避け防ぎながら、雷は隙を見て近づき、死の線を迅雷で斬り裂き、確実に敵を殺していく。しかし、敵は減らない。当たり前だ。周りの深海凄艦が次々と集まってくるのだから。

 時に転がり、殺し、飛び、敵の攻撃を躱す。今の状態は轟沈に近い大破。提督が念の為にと前衛部隊全員に積んであった応急修理要員のおかげで一命こそ取り留めたものの、次に副砲でも当たれば確実に轟沈する。正真正銘の、二度目の死が訪れる。足も足首まで既に海の中へと沈んでいる。艤装も限界に近い。

 だが、電の元へは行かせるわけにはいかない。懸命に刀を振るうが、真横から尋常ではない殺気を感じた。本能に従いしゃがめば、首のあった場所を青白い手刀が凄い速さで通って行った。

 

「レ級……!?電の攻撃に巻き込まれたんじゃなかったの!?」

 

 ついさっきまで姿を見なかったため、電に殺されていたかと思っていた。が、レ級は気味の悪い笑顔を浮かべながら雷を敵視している。

 レ級一体ならまだ戦える。が、周りにル級やヲ級がいたら話しは別だ。倒せる敵も倒せない。

 迅雷を手に迷う。どうする、ここでレ級を一撃で殺せるか賭けるか?それとも逃げるか?平晴眼の構えを取り迷う。が、その時雷の足元から白と黒の何かが飛び出した。

 

「不死鳥は海からも飛び出すんだよ」

「うぇっ!!?」

 

 飛び出してきたのはまさかのヴェールヌイと暁だった。何で水中から!?と驚いていると、水中に誰かが居るのが分かった。

 

「せ、潜水艦?」

「大本営から応援を頼まれたから来たんだよ〜」

「ゴーヤ達なら戦艦と空母相手でもほぼ無傷で戦えるでち」

「けど、魚雷にも限りがあるからトドメは任せるの〜」

「アハトアハトがあれば良かったんだけどね〜」

「そういう訳で、ろーちゃん達が囮をするって!」

「って多っ!?」

 

 伊168、伊58、伊19、伊8、呂500。日本の保有する全潜水艦の艦娘がここに集結している。ある意味では凄い光景だが、潜水艦がここまで自力で来たのも驚いた。

 

「流石に深海を泳いでくるのはしんどかったでち……」

「よく水圧で潰れなかったわね……」

 

 だが、潜水艦達がヘイトを集めてくれればある程度は楽になる。それに、レ級との戦いに専念できる。

 

「じゃあ、ろーちゃんとでっちで残りの三人も連れてくるから、後はよろしくって!」

「でっちじゃないでち!」

 

 でっちこと伊58とろーちゃんこと呂500が潜っていき、続いて他の潜水艦が潜り、魚雷を発射している。それに気が付いた他の深海凄艦は何とかして潜水艦を沈めようとするが、爆雷を持っていないため届かない。そして、ヴェールヌイと暁がトドメを刺す。

 

「雷、後でコッテリ話は聞くから、トコトンやっちゃいなさい!」

「梅雨払いならこっちでやるよ。だから、そこの鬱陶しいのをやっちゃってくれ。すぐに天龍と龍田が来るから気にしなくていいよ」

「暁、ヴェールヌイ……分かったわ」

 

 再び構え、雷はレ級と対峙する。死の線は見える。ならば、負けない。この程度の敵に負けやしない。

 

「……殺す!!」

 

 平晴眼で刀を構え、雷は走りだす。狙うはレ級の首。ただそれだけ。

 一歩、二歩、三歩。一足一刀の間合いに一瞬で踏み込み、雷は片手を刀から離して突き出し、狙いを定める。

 点や渦は見えない。だが、突き刺しそのまま斬り裂く。雷が海に踏み込み、飛沫を上げ、青い眼を煌めかせながら刀を突き出す。

 が、その一刀はレ級の艤装のような尻尾のような、気味が悪い形をした物に阻まれる。死の線を突けなかった。そして硬い。まさか迅雷が受け止められるとは思わなかった。だが、硬直しててはただの的だ。後ろへ向かって踏み込み飛んで距離を取る。それと同時に放たれた主砲を迅雷で斬り裂き、再び構える。後ろでは新たに潜ってやってきた天龍と龍田が敵を切り裂いている。

 迅雷を少し回してから再び構えながら息を吐く。やはり、強い。下手をしたら、姫並みに強い。大和や長門なら殴り合いも可能だとは思うが、今この場で殺すには、直死の魔眼しかない。

 正眼で構え、レ級を見据える。主砲は豆鉄砲。魚雷はまず当たらない。なら、小細工なしで斬るしかない。再び踏み込み、懐へ。上段で刀を振るえば避けられ、代わりに主砲が向けられる。それを見てから顔を逸らせば、髪の毛を巻き込みながら主砲が飛んでいく。そのまま全身を逸らして回転させ、そのまま腹を斬り裂く。しかし、それは死の線を切り裂けず、皮膚に阻まれるだけ。

 難しい。果てしなく難しい。死の線を切り裂くというのはかなり難しい事だ。さっきの無双も何回か力づくで切り裂いていた。それがレ級には通用しない。

 後ろに飛び退いて再び構える。そう簡単には倒せない相手はこれが初めてなような気がする。前あったのは絶望そのものだ。

 まさか、これが後々量産されないよね、と少し関係ない事を考えながらも雷は相手が攻撃に移らないように再び距離を詰める。ここで、コイツは殺す。再び心の中で決めてから。




本日のゲストは潜水艦の皆様。囮となってくれるそうです

そして電さんまさかのピンチ。まぁ、戦艦並の装甲と火力を持った相手に歪曲の魔眼まで加わった化け物にどう近付けと

式さん助けて(懇願)

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