直死の眼を持つ優しき少女   作:黄金馬鹿

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いよいよ決戦。ゲームでこんな艦隊組んで行ったら確実に勝てるであろう艦隊で突っ込んでいった結果は……?


開眼、直死の魔眼

 何が起きた?雷は地獄絵図の中、右手の刀を取り落としそうになった。

 初めは優勢だった。横須賀、呉の第一艦隊と長門、陸奥、熊野、鈴谷は次々と敵を落とし、優勢に立っていた、筈だった。

 だが、異変は突如起きた。大和の足が突如ねじ切られたかのように千切れ飛んだのだ。その瞬間を全艦娘は時が止まったかのように見えた。雷を除いて。

 倒れこんだ大和に待っていたのは、新種の深海凄艦からの雷撃。大和はその攻撃で大破。完全に動けなくなり、そんな大和を庇いながら戦った武蔵も大破。空母部隊を守る戦艦がいなくなった事で空母部隊も次々とやられていった。

 しかし、呉の艦隊は諦めなかった。高速艦という利点を使って敵を翻弄した金剛達だが、その前には新種の深海凄艦、急遽付けられた名前はレ級、が襲いかかった。

 戦艦並みの装甲と主砲に艦載機、さらには雷撃と、文字通り滅茶苦茶な性能のレ級を金剛達は止めることが出来ず、順に無力化されていった。

 そして、五航戦も、急に片腕ずつが千切れ飛び、無力化させられ、最後の希望の長門達も大破。膝をついた。

 

「な、何なんだ……何で大和の足が千切れんだよ……」

「……理不尽にも程があるわね」

「まさか、サイコキネシスとか?」

「有り得ねぇ。そんなの、有り得てたまるか」

「でも、あの現象は説明できないよ……」

 

 その全てを見ていた天龍達は絶望の淵に立たされ、思わず愚痴ってしまう。が、雷だけは違った。

 

「サイコキネシスが一番近いわよ、あんなの……だって、大和さんの足が千切れる寸前、『空間が曲った』もの……」

「……どういう事だ?」

「文字通りよ!いきなり、大和さんの足周辺がグニャって曲がって……そしたら大和さんの足が千切れてたの!」

 

 そう、雷は見ていた。見えていた。大和の足が、五航戦の腕が千切れ飛んだ原因を。

 綺麗な色が急に大和の足に現れ、それが曲がった瞬間、大和の足は千切れた。文字通り、空間が曲ったとしか言いようがなかった。

 

「……ナルホド、浄眼持チガイタカ」

 

 ふと、頭の中に響くような声が聞こえてきた。その声の主は艦娘達ではない。深海凄艦である、離島悽姫から聞こえてきた。その言葉は、雷へと向けられたものだった。

 離島悽姫の目は赤く染まり、どこか不気味だった。

 

「ソノ眼、開眼シテタナラバ天敵トナッテイタカモシレナイナ」

「……な、何の事よ」

「今カラ死ヌ貴様二教エル価値ハナイ。『凶レ』……」

 

 離島悽姫が呟いた。その瞬間、雷の右手がその綺麗な色をした何かに包まれた。

 ヤバイ。すぐに判断し、大袈裟に雷が飛び退く。次の瞬間にはその空間を中心に、ナニかが曲がり、元に戻った。

 

「な、何が起きた……?」

「分からないけど……アレは危険ね」

「ヤハリ浄眼持チハ面倒ダ」

 

 避けれる。つまり、当たらなければどうという事はない。しかし、それは雷だけの事。他の艦娘は避けられない。

 そして、今も倒れる戦艦と空母達は今でもピンチなのは変わらない。どうする。どうやって戦う。今戦えるのは駆逐軽巡だけ。それで姫にどうやって戦う。

 

「雷、前!!」

「え?」

 

 しかし、考え過ぎていた。考えすぎてしまっていた。暁の声に反応して戻った意識が最初に見たのは、目の前に迫ったル級の砲弾だった。

 あっ。声を漏らすことすら出来ず、砲弾が炸裂。一瞬にして雷の視界を奪い、聴覚も奪った。次に確認出来たのは、空を飛ぶ自分の体と海面に叩きつけられ、そのまま海底へと沈んでいく体。

 

「みんな……どこ……?こえが、きこえないよ……」

 

 意識が無理矢理持って行かれる。最後に見た光景は、暁と響が海中に手を伸ばす光景だった。

 

 

****

 

 

 時刻は巻き戻り、ブイン基地。提督はとても暗い表情をしていた。

 横須賀、呉の第一艦隊が戦闘不能となった。全艦大破、もしくは中破で動く事は叶わず、長門、陸奥、熊野、鈴谷も動けなくなるのは時間の問題。司令部より入ってきた情報は正に悪夢と言えるものだった。

 

「……もう、打つ手はないか」

 

 それは、全提督の言葉でもあった。横須賀、呉の第一艦隊が負けた以上、もう打つ手はない。一つを除いて。

 しかし、それは余りにも身勝手な作戦とも言えない作戦だった。提督が悩んでいるその時、大本営から極秘の指令書が届いた。確認してみれば、提督の考えていた事をやれ、という命令書だった。もう、それしか打つ手がないから。

 上からの命令を逆らえばどうなるか分からない。この命令を聞かなければ明日すら危ういのだが。

 提督は鍵を持ち、とある部屋へと移動し、入り、その中の鍵をもう一つ開けた。

 中にいるのは、電。彼女は椅子を倒して寝ていた。提督は彼女の拘束を何も言わずに解いた。それに途中から気が付いていたのか、電は全ての拘束が外されると同時に自ら目隠しを取り去った。

 

「……何の用なのです」

「……すまない、ついてきてほしい」

「せめてシャワーくらい浴びたいのです」

「そんな時間はない。高速修復材なら後でかけてやる」

「出来れば今欲しいのです。立てないのです」

「……分かった」

 

 提督は近くの妖精さんに頼んで高速修復材を持ってきてもらい、電にかける。それだけで電は外見こそ変わらないものの、立てるようにまで回復する。

 回復した電を連れ、提督は工廠に向かった

 

「まさか敗戦濃厚だからここで一発お楽しみとか言わないですよね?やったら殺しますよ?」

「そこまで最低じゃない。いや、別の意味で最低かもな」

 

 提督は工廠の倉庫へと行き、その中で唯一ある厳重な箱の前に立つと、それのロックを外して中を電に見せる。

 

「……これは」

 

 電がそれを見て驚く。それは、艤装だった。しかし、艤装とも言えない艤装だった。

 

「……電には、これを着けて最前線へと出てほしい」

「……上は?」

「戦って死んでこいとの事だ」

「ついでに処刑もすると。了解なのです」

 

 電はその艤装の前に立ち、よく確認する。なるほど、これは確かに私専用の艤装だと納得する。

 

「それ専用の輸送機もある。電、行ってくれるか?」

「拒否権なんてないから、答えは一つなのです」

「そうか……頼む」

「了解なのです」

 

 電は艤装を一旦装着すると、箱の中から出る。じゃ、行ってくるのです。と電は軽く言うと、輸送機の止まっているヘリポートへと向かう。が、提督に呼び止められる。

 

「……どうやら、上の方々は犯罪者なら処刑するが、その犯罪者が救国の英雄になったら刑は軽くするつもりらしい。だから……生きて帰ってきてくれ」

「……それは命令なのです?」

「命令だ」

「……分かったのです。ちょっと戦争して帰ってくるのです」

 

 淡々としたやり取りの後、電は一人、戦場へと向かう。提督に出来ることは、これ以上何もなかった。

 

 

****

 

 

 雷は懐かしい空間で目を覚ました。何もなくて、空っぽな空間。かつて何十年もいた、あの一人ぼっちの空間。死が溢れる空間に。

 また死んだ。そう、本能が理解した。理解してしまった。

 死が視界の中を埋め尽くす。死が、死が、死が。

 だが、どこか心地良かった。もう、このままここでずっと、ずっと居てもいいや、と思えた。

 

『……ち…………づち………て、いか……ち!』

 

 声が聞こえた。誰の声だったっけ?思い出せない。

 

『………だ、目……けて………かづ……』

 

 そうだ。姉の声だ。子供っぽい暁と、大人びた響の声だ。でも、何で聞こえるのだろうか。

 

『…て、いかづ………じゃだめ……』

『……頼む………てくれ……づち!』

 

 分かった。肉体はまだ生きているからだ。まだ、完全に死んじゃいないからだ。それを理解した瞬間、急速に体が下へ下へと落ちていく。

 

『雷、起きて、起きてよ!!死んじゃダメ!!』

『目を覚ましてくれ、雷!もう目の前で妹を失いたくないんだ!!』

 

 目を覚まさなきゃ。こんな空間には別れを告げなくちゃ。でも、一つだけ忘れ物がある。電に殺された、あの力を。

 

「行きがけ駄賃程度には、貰っていくわよ……直死の魔眼を!!」

 

 飛び回る光を掴みとる。死を見る力を。あの状況を打破出来る、最強の力を。

 そして、意識が落ちる。それと同時に浮上する。見えたのは、ひび割れた空。死の線が走る空。そして、自分の顔を覗き込む姉達の顔にもそれは走っている。

 戻ってきた。取ってきた。あの力を。忌々しい力を。

 

「……ありがと、暁、響」

「雷……!」

「よかった、よかった……!!」

 

 二人が抱きついてくる。傷に姉の手やら顔やら髪の毛やらが当たっていたい。

 二人を退かして立ち上がると、雷は響が持っていた迅雷を返してもらい、そのまま、砲弾を斬り落とすために構えている天龍と龍田と木曾の前に出る。

 

「なっ、雷!?」

「危険よ!!」

 

 天龍と龍田の声が聞こえる。が、知った事か。ここからは一人でやる。やって見せる。

 刀を構えた瞬間、右手が歪む。

 

「遅い」

 

 呟き、刀を振るう。それだけで歪みは断ち切られ、何も起こらない。

 

「目覚メタ、ダト……?」

「……アンタのカラクリはもうお見通し。私には効かないわよ」

 

 青く煌めく眼は妹の持っていた直死の魔眼そのもの。

 取り戻した。かつての力を。絶対無敵の直死の力を。負ける訳がない、この力を使って。あんな力に。

 

「クソッ!殺セ!殺セェ!!」

 

 離島悽姫が叫ぶ。それと同時に雷へと砲弾が降り注ぐ。流石に不味いかな。刀を構えながらそう思った時、後ろから何かが降ってきた。

 何事?そう思ったが、降ってきたそれはその手の盾を構え、全ての砲弾を防いでみせた。

 

「……ちょっとこの喧嘩、混ぜてもらうのです」

「え?……ま、まさか」

 

 降ってきた少女は盾を捨て、両腰の刀を引き抜き、構えた。

 その背には通常よりも大型化された艤装に加え、二本の盾のような大剣に加え、腰には二対の刀と忍刀。袖の内には二本の短剣と、太腿には二本のナイフを装備した、完全なる近距離特化型の艦娘。

 

「対近接戦闘兼対深海凄艦姫型特化型駆逐艦、電試作改零式。これより艦隊の指揮下に入ります」

 

 最愛の妹が、そこにはいた。




まさかの離島悽姫が歪曲の魔眼持ち。巫山戯んなっていう性能になっちゃってますw

けど、同時に雷の直死の魔眼が復活。しかも電さん戦線復帰。トンデモナイ近接装備ぶら下げて

ちなみに、電さんの試作改零式艤装ですが、まぁ、簡単に言えば普通の電の艤装にクラウドのバスターソードが二つ、マニピュレータでくっ付いてる物だと思ってください

では、あとは電試作改零式の装備を張っておきます

対近接戦闘兼対深海凄艦姫型特化型駆逐艦『電』試作改零式

装備
電専用対深海棲艦刀『迅雷』×4
電専用対空機銃兼突撃銃内蔵式試作錨型刀剣『紫電』
対『姫』戦闘用電専用超弩級試作対深海棲艦両刃刀『迅雷・改』
電専用試作対深海棲艦短刀型暗器『電光』×2
試作零式対水対空複合電探
試作敵攻撃予測線網膜投射装置
試作ロ号艦本式艦改
試作艦本式タービン改

はい、接近戦しか考えてないふざけた装備です。この電をイベント海域に突っ込ませてぇ……

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