直死の眼を持つ優しき少女   作:黄金馬鹿

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一ヶ月近く更新が無くなってしまい、申し訳ない限りです。リアルの方と他の小説が忙しく、更新ができませんでした

今回から、かなりのオリ設定というか二次設定が入ってきます。主に、殺人貴関連です


殺人鬼 前編

 また夢を見た。自分の事を後ろから見ている夢だ。

 そこに居るのは艦娘としての電ではなく、人としての電だ。艤装も装着せず、制服のまま歩く電。革靴が床を鳴らす音だけが反響する。

 場所は市街地。だと言うのに人っ子一人存在せず、居るのは電だけ。その手に刀を持ってフラフラと歩く自分を見ているのに、違和感がわかない。まるで、あれが自分なのだと示唆しているかのようだ。

 顔も見ることが出来ず、ただ自分の歩く姿だけを見ている。気味が悪い夢だ。だが、その時、第三者が現れる。

 手に銃を持った男たち。軍人、陸軍の歩兵だ。それが、己に向けて銃を向けている。夢の中の電は艤装を着けていない。銃で撃たれたら勿論死んでしまう。

 が、そ の銃口からはマズルフラッシュが何度も瞬く。しかし、夢の中の電は避けようとしない。それどころか、刀を構えている。

 

「直死――」

 

 小さく、そう言った。その瞬間、電の体がまるで幻のように消え去った。そして、遅れて聞こえてくる金属と金属がぶつかり合う音。そして、何かが地面に落ちる。

 切った。一瞬で、銃弾を、刀で。そして、次の瞬間には歩兵の男たちが全身から血を噴き出して倒れた。

 死んだ。一目で分かる。何故なら、さっきまで自分が見ていた死の線がなくなっていたから。全て、綺麗になぞられていたから。

 そして、夢の中の自分がこっちを向く。

 その眼は青ではなく、赤。真っ赤に染まり、血の色をした魔眼でこちらを見てくる。そして、呟いた。

 

「これがお前だ」

 

 次の瞬間、電は目を覚ました。

 

「……どんな夢、見てたんだっけ」

 

 一人でつぶやく。さっきまで見ていた夢の内容を覚えていない。

 視界の中には死の線が走っている。だが、何故だろうか。今はこの線を無性になぞりたい。

 死が、死が、死が満ちている。世の中死だらけだ。殺したい、殺したい。殺してみたい。心の中で何か、どす黒い物が渦巻く。殺せ、殺せと言い聞かせてくる。

 だが、それを理性で押しとどめる。それはいけない。殺すのは深海凄艦だけだと決めている。すぐに起き上がって洗面場に行こうとしたが、何時の間にか自分が立ち上がっているのに気が付く。

 その手にはナイフ。何時の間にか電は食堂でナイフを一本、手にとっていた。思わずナイフを放り投げて距離を取る。

 今、自分は何をしていた?ナイフを持ち出して何をしようとしていた?自分の手を見て息を呑む。自分は、一体どうしてしまった。何がしたかった。

 訳も分からず、顔に手を当てる。心臓の鼓動が早くなり、息がしづらくなる。

 もう訳が分からない。体を動かす気にもなれない。

 フラフラと食堂を出る。途中、誰かに声をかけられた気がするが、気にせずに自分の部屋に戻って着替える。もう訳が分からない。もやもやして、赤色が見たくて、死の線が美しくてはかないもののように思えてしまう。

 なんなんだ、この衝動は。考える間もなく、電は部屋から出る。もうすぐ、朝食の時間だ。今日は朝食の調理当番だから、早く食堂に戻らなくてはならない。

 ヤケにふらふらする。しかし、熱も無く風邪っぽくもない謎の体調を引きずりながらも電は歩き、理性を留めて朝食を作る。

 そういえば、まだ間宮がいない。可笑しいなと思いながら野菜を切りつつ食堂内の時計を見てみれば、まだ五時前だった。明らかに何時もより早すぎる。

 本当に今日は何もかもがおかしい。直死の魔眼の副作用もそれほど酷い事にはなっておらず、かといって魔眼自体も何も変わってはいない。本当に今日の体調はよく分からない。これは、有給でも貰うべきかと思ってしまう。艦娘に有給が存在するのかは分からないが。

 だが、体調が不気味なのには変わりない。電は斬っていた野菜にラップをかける。が、ここで電は野菜を見て違和感を感じる。よく見たら切り口がバラバラ。しかも、その切り口は魔眼の力を使ったようで。

 

「……無意識に殺してるとか勘弁なのです……」

 

 野菜を退かしてみれば、その下のまな板まで、電は包丁で斬って……いや、殺していた。本当に今日はどうかしている。斬ってしまったまな板を溜め息を吐きながら捨てて新しいまな板を取り出し、適当な皿に斬った野菜を乗せる。

 このまままな板を斬るようだったら、いつか龍驤さんまで斬ってしまいそうなのですと、小声で龍驤をディスりながら電は食堂を離れる。

 目指すのはドック。入渠だ。体調が悪いなら入渠して治すに限る。例え入渠中に寝て窒息しかけたとしても、死ぬことはない。かなり苦しいが、死ぬことはない。電は昔やらかして死ぬかと思った経験がある。

 脱衣所で服を脱いでから籠の中に放り込んで緑色のお湯の中に浸かる。解いた髪がお湯に浮かび、意識が何となくフワフワする。先に体を洗うのを忘れていたが、もう遅い。ボーっとしていたという事で勘弁してもらいたい。

 お湯に浸かりながらただただ天井を見つめる事数分。体調は一向に元通りにならない。ボーっとして、頭が重くて。吐き気ややりようのないストレスみたいな物まで感じてきた。本当になんなんだ、これは。

 もう、体と髪の毛を洗って朝食を作ろうと、考えたら即行動。とっととお湯から上がって体と髪の毛を洗って髪の毛を拭きながら脱衣所に戻る。サッパリしたが、体調が変な事には変わりない。

 それなりに長い髪の毛の水気を丁寧に拭き取ってから備え付けの ドライヤーで髪の毛を乾かす。全裸だが、どうせ異性が入ってくる確率は限りなく低い。前みたいにバッタリとラッキースケベされたのなら別だが。

 

「さぁて、朝風呂に入って気を引き締め……おっふ」

「……」

 

 電の白い視線が提督に刺さる。提督の顔はにやけるのではなく、青ざめている。記憶は失っていたが、本能的にはこの現状はニヤニヤ出来る状況じゃないと分かっているらしい。電は取りあえず提督に指をさす。

 

「後ろを見るのです」

「アッハイ」

 

 提督が何も言わずに後ろを向く。電は無表情なまま提督の後ろに行き、頭と顎に手をかける。

 

「寝てろなのです」

「エ゛ン゛ッ」

 

 そのまま首をコキっとして提督を気絶させる。

 気絶した提督を適当な場所に放り投げ、頭を何度かぶん殴って記憶を前と同じ手順で飛ばす。この程度でいいかと思ったころには提督の頭はタンコブだらけ。美少女の裸を見たのだからこの程度は軽い物だろうと勝手に決めつけ、電はとっとと髪の毛を乾かして服を着る。

 幾分か人を殴ったら気が晴れた気がする。殺したらもっとスッキリしたのだろうか……と、考え始めた所で無理矢理思考を打ち切る。もう戦う事は無いのに、これは求めていた結果なのに、これでは戦いたいと考えているのと同じじゃないか。

 痛む頭。襲ってくる吐き気。視界に広がる死。殺したいと思い続ける、自分でも制御できない思考。髪の毛を纏めていつも通りになっても気分は全く晴れない。体はサッパリしたのに、中身はドロドロしたままだ。

  髪の毛がちゃんとまとまっているか確認するために、姿見にその身を映す。髪の毛は纏まっている。が、何処か可笑しい。

 服はちゃんとしている。靴下も間違っていない。制服も冬用と夏用を間違って着ているわけでもない。じゃあ、何が?

 視線が己の顔に行ったとき、それは分かった。それを見た瞬間、電は絶句して立ち尽くす。

 ――赤い。赤い。青ではなく、赤。まるで、夢で見たように、その眼は、直死の魔眼は、真っ赤に染まっていた。

 

「そ、んな……」

 

 昨日までは青だった。不気味な青だった。青の中に赤があるだけだった。青赤い眼は、今は真っ赤に染まっていた。

 思わず、己の眼を瞼の上から擦る。頼むから、幻覚であってくれ。あの夢は夢のままでいさせてくれ。 そう願いながら再びその瞼を持ち上げる。

 その瞳の色は――青だった。青赤い、何時もの直死の魔眼だった。

 疲れているのか。こんな若い肉体で幻覚とか笑えないのですと呟いてから電は最後に身だしなみを確認してから提督の頭を最後に蹴ってから脱衣所を出る。

 ――しかし、その体調に変化があったわけではなく。ひたすらに体が重く、だるく、吐き気がして、頭がいたくって、意識が飛びそうで。けれども堪えて、気が付いたら間宮が来るまでに人数分の味噌汁とサラダの分の野菜を切り終えていた。

 さっきから可笑しい。意識が飛ぶ。まるで、何か抗えない物に操られているようで。あぁ、吐き気がする――

 

「――づま?――なづま?電、どうかしたの?」

 

 ふと気が付いた 。今、何が聞こえた?愛する姉の、雷の声だ。

 何をしていた?何をしている?何を持っている?手元に目線を下げれば、自分は箸を持って、食べかけの白米が入った茶碗を持って。食事の途中?何でいきなり

 冷や汗が止まらない。何が起きた。何が起きている。何をされている。時計に目線をやれば、時間が飛んでいる。数時間も。

 可笑しい、可笑しい、可笑しい。自分でも分からないが、何かが起きている。何が起きている。

 吐き気が止まらない。頭痛が止まらない。冷や汗が止まらない。

 

「ちょっと、電?本当にどうしたの?」

 

 何時の間にか茶碗と箸を置いて俯いていた電の方を雷がゆする。

 心配している目だ。申し訳ないと思う。吐き気と頭痛を抑えてなるべく笑顔を作って大丈夫だと伝えてから茶碗と箸を持つ。

 しかし、雷の心配そうな視線は止まらない。前に座っている響と暁の視線も突き刺さる。無理もない事だ。いきなり妹が挙動不審になっているのだから、不安になってしまうのも仕方がない。

 心配そうに声をまたかけてきた雷に本当に大丈夫だから。となるべく笑顔を作って言う。そして、雷と目が合う。

 綺麗な鳶色の眼。死の線が走っていて、美しくて。この線をなぞったら、どれだけ綺麗な花が咲くことだろうか――

 

「電。ちょっといいかい?」

 

 響の声で意識が現実に引き戻される。そして、自分が考えていたことに酷い嫌悪感を感じる。

 今、雷が死んだら綺麗だとでも考えていたのか?死の線が美しいと思っていたか?己の思考回 路が恐ろしくなる。

 何とか笑顔を作って、なんですか?と声をかけてきた響に返事を返す。

 響は電に向かって、電の眼に向かって指をさすと、こう言った。

 

「電の眼って、赤かったかい?」

 

 響の言葉を聞いた瞬間、電は椅子を蹴って立ち上がった。その音に、騒がしかった食堂から一瞬音が消える。

 眼が赤い?そんな馬鹿な。さっき、眼は青かった。青かったはずだ。

 姉が大丈夫?と声をかけて電に触れようと手を伸ばす。それを振り払う。

 

「体調が悪いから、部屋に戻ってるのです」

 

 朝食を残したまま、電は食堂から走り抜ける。逃げて、己の部屋に転がり込んでハンドミラーを取り出して顔を映す。

 赤い。眼は、赤い。幾ら擦った所で赤は青にならない。

 どうやってもこのままじゃ治らないかもしれない。一旦寝たら治るかもしれない。どうせ、仕事が始まる時間になったら誰か呼びに来てくれるだろう。

 寝転がり、目を閉じると意識が闇の中に沈んでいくような錯覚と共に電は意識を手放した。願う事なら、昨日のような日常が送れますように。眠りにつく瞬間、どうしようもない吐き気と頭痛を感じた気がした。

 

 

****

 

 

 丁度電が食堂から出て行った数分後、電は申し訳ないような表情をしながら食堂に戻ってきて、この間注文したカラーコンタクトを着けたままなのを忘れて動揺していたと説明しながら戻ってきた。

 電のこういうドジは偶に見るものの、あまり見たことはないので、皆が新鮮に思いながらも電のドジを笑っていた 。気掛かりだったのは、第六駆逐隊の面々が若干表情を訝し気にしていた事だろうか。

 食事が終わってから提督は司令室に行き、今日中に片づけなければいけない書類を纏めながら放送で電を呼び出していた。

 理由は簡単。今日は電に休暇を与えようと思っていたからだ。最近、電は書類仕事だけでストレスが溜まっているだろうから、休暇の一つや二つ与えないといけないなと思い、数日前から調整していたのだ。

 そのお陰か、今日の仕事は何時もよりも多めだが、一人でやっていた頃とそこまで変わらない。

 仕事が始まる数分前。ノックの音と共に電が入室してきた。

 

「失礼します、なのです」

「あぁ、来てくれたか、電」

 

 入ってきた電の目はまだ赤いままだ。相当カラコンが気に入ったのだろうかと思いながらも、余り時間を取っては悪いと、休暇の話をする。

 

「電、今日は休みだ。ゆっくり休め。それだけだ」

「……街に行っても?」

 

 ――何気ない一言。その言葉に提督はなんとなくだが、嫌な予感を感じた。

 まさか。そんなことない。電はただ疑問に思って聞いただけだと自分に言い聞かせて何故か額を伝う冷や汗を帽子の位置を直すようにしながら拭う。

 何なんだ、この言いようのない感覚は。息が詰まりそうで、電に見られているだけで死んだと錯覚してしまいそうだ。

 荒くなりそうな息を整えながら提督は口を開いた。

 

「あ、あぁ。勿論構わないよ。一応、目隠しやサングラスも不要だ。上は一応説得しておいた」

 

 この許可を取る のもかなり大変だった。何故か上は電に休暇を与えず使い潰せ、とかせめて目隠しは着け続けさせろと五月蠅かったが、最近の電の動行等を伝えながらも必死に説得したら渋々許可を貰えた。

 

「……じゃあ、今日は外出しているのです」

「あぁ。また誘拐されないように気をつけるんだぞ」

 

 提督の言葉に電は二つ返事で答えてから退出した。若干言動等が不審な気がしたが、まぁ、気にする事ではないだろう。

 頭痛や吐き気を常に持っているのだから、多少返事が雑になることだってあるだろう。

 その後提督はすぐに書類纏めに入る。後少しで第一艦隊と第二艦隊の出撃だ。マップとコマ、それとパソコンを起動して艦娘の出撃準備は当人達の準備を残すだけになった。

 ペンやコピー機等の不備が無いのを確認しながら時間を潰していと、扉をノックする音が聞こえた。こんな時間に一体誰が、と思いながらも入室を許可すると、入ってきたのは暁を初めとした第六駆逐隊の三人だった。その表情はかなり焦ったような感じだ。

 

「どうかしたのか?艤装に不備でもあったか?」

「違うわ!電は、今どこ!?」

「お、おいおい、落ち着けよ……電は外出させたよ。今日は休暇だ。さっき、鎮守府を出て行ったって報告があったよ」

「が、外出!?」

 

 まさか、羨ましいのか?と思ったが、その表情は明らかにそんな物ではない。響の表情までかなり焦燥に駆られている事から、かなりの問題なのだろう。

 

「司令官。何も言わずに着いてきてくれないか。そうしたら、事態の深刻さが分かる」

 

 響の冷静な、かつ焦ったような声で事態は結構、いや、かなり深刻なのだと分かる。分かった、と頷いて提督は立ち上がって暁達の後を追う。

 連れていかれたのは電の私室。何でここなんだ?と聞いたが、響は鍵が掛かっている筈の電の私室のドアの内側を提督に見せつけるように開け放つ。

 その私室の光景を見た瞬間、提督は血の気が引いた。もしかしたら、驚きの声を漏らしていたかもしれない。

 息を呑み、数秒。提督は口を開いた。

 

「な、なんだ、これ」

 

 電の部屋は、至る所が切り刻まれていた。壁も、ベッドも、タンスも、全て、全てが切られていた。それも、かなり鋭利な刃物で。

 触って確認してみれば、この傷が全て刀ではなく、刀身の短い得物 ……ナイフで付けられている。刀でやったのなら、この斬られた跡はもう少し広くなっている筈だ。

 

「……それをやったのは、電だ」

「い、電が……?」

「電の様子が変だったから、部屋を監視していたんだけど……電は狂ったように部屋の中でナイフを振り回していたよ」

「電の様子が変だった……?」

 

 まさか、そんな訳ないと口に出そうとしたが、確かに今日一連の事を思えば変だったと言えるかもしれない。

 

「それに、電はカラコンを買ったと言っていたけど……電は何時カラコンを買ったんだい?」

「……そ、それは、通販で」

「荷物は送られて来たら一度、妖精さんがチェックしなきゃいけない筈よ。不審物がないようにね」

 

 そうだ。送られてきた荷物はテロの可 能性があるので、まずは妖精さんが厳密なチェックを行ってから、問題のあるものは破棄する。そして、チェックした物はその日の内に提督にリストとして渡される。

 昨日、そのリストは渡されていない。つまり、電の眼はカラコンではない。

 

「カラコンを外して仕舞うケースもない。ワンデイだったとしたらゴミがあるはず。でも、無い」

「……じゃあ、電は今、どうなっているんだ」

「分からないわ。けど、連れ戻して聞き出さないと。もし、街の中でナイフを振り回したら……」

 

 そんなことしたら、電は確実に解体。それも、殺処分。それに、海軍の立場も悪くなって最悪、政府が艦娘運用禁止令を敷くかもしれない。

 そうなってしまったら、人類は終わる。絶滅を待つだけだ。そんなの、見逃せるわけがない。

 

「すぐに電を追え!脚部艤装と暴徒鎮圧用陸戦装備の持ち出しを許可する!何かが起こる前に電に近づかずに無力化し鎮守府まで連れ戻せ!」

『了解!』

 

 提督の命を受け、三人が駆け出す。暴徒鎮圧用陸戦装備。それは、簡単に言えばゴム弾を装填した拳銃とショットガン。そして、フラッシュバンの非致死装備の事だ。しかし、これをただの少女と変わらない艤装を装備していない駆逐艦が撃てば数発で腕が外れるだろう。だが、体のどこかに艤装が装着されていれば別。背中の艤装本体がなく、海の上でもないため艦娘の超人的とも言えるパワーや身体能力は発揮できないものの、脚部艤装だけでもそこら辺のアスリートよりも遥かに上の身体能力と頑強さを手に入れることができるし、水の上にも立ち、走る事ができる。

 電の素の状態での身体能力は軽く提督や他の艦娘を凌駕しているが、力をある程度解放した艦娘には敵わない。そのため、三人が逆にやられる、という事は殆ど在り得ないが、人では多い方がいい。すぐに司令室に戻り、無線を繋げる。

 

「第一艦隊及び第二艦隊、応答しろ」

『第二艦隊旗艦、木曾だ』

『第一艦隊の龍驤や。どうかしたん?』

「すまん、急だが艦隊の再編成を頼む。第二艦隊は一時解散、第一艦隊を旗艦、龍驤。木曾、夕立、時雨、明石で出撃。天龍と龍田は司令室へ。第一艦隊の指揮はそのまま龍驤へ一任する」

『ちょっと待て提督!いきなりどうしたんだ!?』

 

 天龍の怒鳴り声が無線から流れ、鼓膜を揺るがす。耳に手を当てそれを防ぎ、すぐに要件を話す。

 

「すまん、緊急の事態だ。申し分けないが一度来てくれ」

『……それなりにヤバイようだな。分かった、すぐに行く』

『よー分からんけど、ウチは出撃してればええんやね?』

「頼んだ、龍驤。中破、大破の艦娘が出たら退却してくれて構わない」

『りょーかいや。後はウチに任せとき』

「助かるよ、龍驤」

 

 通信が切れ、提督は椅子に深く座り込む。頭の中は電の事で一杯だった。




電の赤目はMUGENの殺人貴から持ってきました。本編だと解説なんてしていませんが、赤目状態は殺人衝動の暴走状態と思ってください

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