魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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難産でした。ラマーズ法をしながら書きました。


8話 飯を食う

 シグナムさん改めシグナムから夜神家について簡単に説明された。

 

 シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。やがみんと暮らしてる四人? は人間じゃないらしい。魔法のプログラムでできた存在とのこと。

 

 ようはあれだろ? AIM拡散力場でできた風斬氷華みたいな。

 

 で、肝心の闇の書のことだが、

 

「知らないままでいてくれないか」

 

 はい?

 

「できれば、闇の書については何も知らないまま主と友人でいて欲しいのだ」

 

 知らないままでいて欲しいって、まあ、デスノートに関わったら死にそうだから嫌だけど。

 

「とりあえず、古夜が考えているようなものではない」

 

 じゃあやっぱ黒歴史ノートのことかな。

 

『それとも違うと思います』

 

 そうかい。まあ、聞いて欲しくないみたいだし、深くは聞かないでおきましょう。ところでシグナムよ。時間、大丈夫か?

 

「む!? まずい! あまり遅くなっては主が心配してしまう!」

 

 大急ぎで帰っていった。自分のことプログラムって言ってた割には随分と人間臭いなあ。立ち居振る舞いとか古風だけど。

 

 さ、俺も帰ろう。急な戦闘で腹減った。

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくして。10月に入りたてのある日のこと。

 

「飯?」

 

「そうや! 夕ご飯、ごちそうするで! こういち君も一人暮らしなんやろ?」

 

 あれ、言ったっけ?

 

「こんなに頻繁に一人で買い物に来てたら、普通そう思うやろ」

 

 そりゃごもっとも。

 

「一人は寂しいしな。ご飯は皆で食べた方がずっと美味しいんやで」

 

 その言い方、やがみんも一人暮らしの経験があるのだろうか。同い年くらいなのに? 俺はともかく、やがみんみたいな子が一人暮らしはいけないでしょ。でもその辺は明らかに地雷なので、触れはしない。

 

「俺は割と平気だけどなあ。学校でも基本一人だし」

 

 勿論クラスメイトと全く話さないわけではない。友達というほど一緒に行動するクラスメイトが居ないだけです。

 

「友達いないんやなあ」

 

 いや、その憐れむような視線はやめてくれ。せめて笑ってよ。

 

「それよりも、来るやろ?」

 

 えーでもなあ。やめてシグナムその断ったら斬るみたいな視線。

 

「あの子に嫌われてるしなあ。押しかけちゃ悪いだろ」

 

 あの子とはヴィータのことである。プログラムでありながらロリータ。ロリコン歓喜のエターナルロリータである。ヴィータ以外はシグナムとの決闘以来態度が柔らかくなって大分打ち解けたんだけどね。ヴィータだけは未だに当たりがきついんだよ。

 

 多分、顔見知り程度だったとはいえ自分たちより先にやがみんと知り合っていたのが、気に入らないんだろう。切っ掛けさえあれば態度を軟化させてくれると思う。生理的に嫌われてたら、その時はしょうがない。俺が枕を涙で濡らすだけである。

 

「だから今日を切っ掛けに仲良うなればええやろ」

 

 むーん。そーかね。

 

「じゃあちょっと待ってて。差し入れを買ってくる」

 

 そんなんええのに、というやがみんをスルーして目的のものを買いに行く。買うのは、対ヴィータ用。もので釣る気まんまんである。

 

 

 

 

 

 夜神家に到着した。そこで俺は重大な事実に気付く。

 

「八神、だと……?」

 

「いやいや私のことやがみんって呼んどったやん驚くとこないやろ」

 

 夜神じゃなかったのか。じゃあやがみんはキラではないのね。

 

「はやて、おかえり!! ……ってなんでてめーがいやがる!?」

 

 ヴィータがお出迎えしてくれた。俺以外に。

 

「夕飯頂きにきました~。ごちになります」

 

「おまえなんかにはやてのギガウマなご飯をやれるか! かえれ!」

 

 完 全 拒 否

 

 だが想定済みだ。その為の差し入れだ。

 

「まあまあヴィータよ。お前の為にアイス買ってきたぞ」

 

 アイスが好きというのは、はやてから聞いた。

 

「な!? ア、アイス! ……はっ!? い、いや、あたしはア、アアアイスなんかで釣られたりにゃんかしねーぞ!」

 

 大分ぎりぎりである。見たまんま子供じゃん。

 

「ふっ。アイスなんか、とな? お前はこいつが何なのか知らないようだ」

 

「な、なんだと!?」

 

「こいつは他のアイスとはまさに一味違う。その人気ゆえ、店によっては売り場すら違う、アイスの枠を超えたアイス!!」

 

「アイスの枠を超えた、アイス……!」

 

 そう、これが、

 

「ハーゲン〇ッツだ」

 

 

 

 

 

 打ち解けた。喜んでくれたようで何より。

 

「おいこういち! もういっこ食べたい!」

 

「はいはいヴィータ、あとは明日のお楽しみにしとき。夕ご飯できたで」

 

「うっ。わ、わかったよ。はやてのご飯も食べたいしな」

 

 大人しく諦めるヴィータ。良い娘やなぁ。

 

「運ぶの手伝おう」

 

 車椅子の子にやらせるわけにはいかないね。

 

 

 

 

 

『いただきます!』

 

 テーブルの上には豪華な料理たち。ザッフィー除いても五人。それなりの量がある。これ一人で作ったのか。すごいなやがみん。あ、美味しい。

 

「誰がザッフィーだ」

 

「うまうま」

 

「良かった。今日はお客さんがおるからな。特に気合を入れたんよ!」

 

「こういちが来てくれてよかったぜ!」

 

 いつもよりも豪華な夕ご飯に大喜びのヴィータ。現金なやっちゃな。

 

 っと、これはミネストローネか。あっちにはパスタもあるし、ほんとに小学生が作ったとは思えないな。

 

「これは将来遠月学園かな」

 

 レベルわかんないけど、やがみんなら十傑だって狙えそう。

 

「遠月学園? そんな学校あったっけ?」

 

 ごめんなさいスルーして下さい。

 

「お、これ、ロールキャベツか。ほんと凝ってんな」

 

「あ、それ、私が作ったんですよー」

 

 シャマルさんがそう言ってくる。へーシャマルも料理できんのか。いただきます。

 

「あ、こういち君、気を付けた方が……」

 

「ゴパアッ!?」

 

 体を内部から破壊されるこの感覚、これは、ポイズンクッキング!?

 

「は、謀ったな、シャマル……!」

 

 毒を盛ってくるとは思わなかったぞ……!

 

「盛ってません!?」

 

「あちゃーやっぱり失敗やったか」

 

 シャマルの言い訳は聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 あれ……小町さんじゃないか。またさぼってんのかい。え? 初対面だろうって? まあそんなことは良いじゃないか。閻魔さんに怒られるよ? はい? あたしがさぼってるうちにあんたは帰んなって? そういや、小町が居るってことは……。

 

 

 

 

 

 

「……はっ!」

 

「あ、目が覚めた」

 

 気が付くと、目の前にやがみんが居た。

 

「……まさか、死神に会うとは思わなかったぜ」

 

「どんだけやばいとこまでいっとんねん」

 

 いやーあそこまで死を覚悟したのはサバイバル以来だな。

 

「今、何時だ?」

 

「もう10時や」

 

 大分意識を失ってたな。シグナムにやられた時よりはるかに時間が経ってるって、シャマルの料理怖すぎだろ。

 

「ごめんなあ、うちのシャマルが。私が料理教えてるんやけど、ああやって自分一人でがんばってみると、未だにダークマターができんのや」

 

「ごめんなさいぃ」

 

 いや、良いけど。生きてたし。

 

「遅くなっちまったな。もう帰らんと」

 

「小さい子がこんな遅くに一人で帰っちゃ危ないやろ、泊まっていき」

 

 小さい子って、あなた同い年でしょうに。

 

「へーきへーき」

 

 何の問題もない。恭也さんとかに襲われない限り無事に帰れる。

 

「主はやて、私が送っていきましょう」

 

 シグナムがそう言ってきた。ナイス手助け。

 

 むう、とつぶやくやがみん。お泊り会もしたかったのかな? まあ流石に悪いし、今日は帰らせてもらおう。

 

「じゃあの。ご飯、美味しかったよ」

 

「またな、こういち君」

 

 

 

 

 

「別に家の前まで送らなくても。別に大丈夫っての知ってるだろ?」

 

「主はやてに申し出たからには最後までやり通さねば」

 

 真面目か。

 

「……ありがとう」

 

 ん? 急にどうしたよ?

 

「私たちが現れるまで、主はやてはずっと一人で暮らしていた。お前の存在は、主の支えになっていた」

 

 そりゃあ無いよ。お互い名前すら知らなかった。買い物の時に少し、話すくらいだ。そんな大層なもんじゃない。

 

「いや。主ははやくからお前が一人暮らしだと気づいていた。自分と同じく、幼いのに一人暮らしという境遇のお前に、親近感を感じていたよ」

 

 たとえお前がなんとも思っていなくてもな、とシグナムは付け足す。

 

「同じ境遇の、仲間が居ることは、確かに主の支えになっていた。だから、主に仕える騎士として、はやてと共に暮らす者として、礼を言わせてもらう。ありがとう、古夜」

 

「……そうかい」

 

 ストレートに感謝されると、どうにもこっぱずかしいね。

 

 

 

 

 

 シグナムが帰り、俺は一人、家に入る。

 

「結構楽しめたな」

 

 考えてみたら、友達? と遊んだりなんだりしたのって前世以来だな。

 

『ぼっちのマスターには嬉しいイベントでしたね』

 

「お前最近言動に容赦なくねえ?」

 

『マスターの所為です』

 

 ええー。

 

「ま、こういう日常も良いよね」

 

『少なくとも、魔法生物に襲われ続ける日常よりは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時の俺は、こんな日常が当たり前のように続いていくと、そんな甘ったれたことを、本気で考えていた。

 

 

 

 

 

 今夜の天気はくもり。曇天は月を隠し、闇は深くなる。




主人公は周りのことは割りとどうでも良いと思ってます。だから友達がいなくても特には気にしません。

あと、シャマルのメシマズレベルはバカテスの姫路さんくらいだと勝手に思ってます。

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