魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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5話 名前を付ける

 小学生になったよ! 友達100人できるかな? 前世は全校生徒すら100人居なかったのでどうあがいても無理でした。

 

 正直、超退屈。覚悟はしてたけどひらがなの練習は辛いです。

 

 休み時間だって遊ぶような子が居ないので暇で仕方ない。それでも、周りの子を観察するのは割りと暇潰しになる。別にロリコンじゃないからね。俺小さい時こんなんだったかなあ、とかそう思うからだからね。

 

 ってことでうろちょろしてると、何やらもめてる声が。

 

 こそっと覗いて見ると、大人しそうな深い紫色の髪の女の子と、金髪のこちらも女の子がケンカ? している。いや、あれは一方的にやられてんのか。

 

 物陰から覗き見し続けてると、新たな刺客が登場した。茶髪にツインテールのまたまた女の子である。

 

 ツインテールはつかつかと金髪に近づくと。

 

 おもいっきりビンタをぶちかました。

 

!?ここでビンタだと!?

 

「痛い? でも大事なものを盗られちゃった人の心は、もっと痛いんだよ」

 

 何それかっこいい。あなたほんとに小学生? 中身カミジョーさんじゃないよね? 俺が女だったら惚れてたぞ(錯乱)

 

 そして始まる、金髪と茶髪のキャットファイト。ずっと続くのかなと思ってると、紫髪の子が一喝! ……そこでケンカは終わった。

 

 仲直りしたみたいでよかったよかった。ああいうのって、ぶつかったあとは親友になるパターンだよね。青春ですな。

 

 べ、別に親友が羨ましいとかそんなんじゃないし。

 

 

 

 

 

 帰宅すると、珍しく平日なのにリーゼ達が居た。どうしたの?

 

「父様から小学校の入学祝を渡すように頼まれてきたわ」

 

 まじで? グレアムさん太っ腹すぎない? なんかお世話になりすぎのような。

 

「父様にも色々思うところがあんのよ。あんたのことにも、それ以外にも」

 

 思うとこがあんのですか。そういうことなら遠慮せず頂きますけど。この箱、中身何?

 

「インテリジェントデバイス」

 

「ふぁっ!?」

 

 インテリジェントデバイスだとぅ!? めっさ高価なプレゼントですね!? 確かにデバイス欲しかったけど、これは予想外だよ!?

 

 箱を開けると、翡翠の色の宝石のネックレスが入っていた。綺麗だ……。

 

「とりあえず、バリアジャケットを展開してみなさい」

 

 バリアジャケットってなんぞ?

 

「防護服よ。あんたの思い描くデザインになるわ」

 

 なるへそ。高機能コスプレってことね。コスプレかあ。なんかちょっと恥ずかしいね。

 

「セットアップ」

 

『起動します。バリアジャケット、展開』

 

 光に包まれてあっという間に変身完了。といっても服装に変わりはない。いきなりコスプレは、ちょっと、ハードル高いです。

 

 ただ顔は違う。右目に黒い眼帯。それと繋がって歯茎むき出しの口と、ネジの装飾といったデザインのマスク。いつもとは逆で、左の赤目だけを出した覆面。

 

 金木研のマスクと同じデザインである。左目が赤いってのでこれにした。

 

「なんか、趣味悪くない?」

 

 迫力はあるだろ。

 

「そういや、このデバイス名前はなんてーの?」

 

「父様が、あなたに付けて欲しいって」

 

 まじかい。俺にネーミングセンスを求められても困るぜ。

 

「どんな名前にするの?」

 

「んー…………保留で」

 

 そんなほいほい思い付いてたまるか。

 

『私はマスターに名付けてもらえれば何でも良いのですが』

 

「駄目だ。名は体を表す。雑に付けたら後悔する」

 

 女性の声でそう言ってもらえるのは嬉しいけどね。

 

 

 

 

 

 

 俺一人で悶々と考えてもなんなので、アイディアを求めて図書館に来た。本のタイトルとか見てたらいいのありそうだしね。こう、ティンと来たってのがあれば良いな。

 

 待機状態が翡翠の色の宝石で、翡翠は英語でジェイドらしいから、それとももう一語をうまく合わせたいなあ。

 

適当に本を探してうろついていると

 

「あれ、眼帯君。こんなとこで会うなんてな」

 

「おお、スーパー以外で会うのは初めてだな」

 

 スーパーでちょくちょく会ったことのある、車椅子の女の子に遭遇した。

 

「本探しにきたんか?」

 

「まあ、そんなとこだね。そっちはよく来んの?」

 

「それなりにな。ちょうどよかった、そこの本取ってくれへん?」

 

 はいよ。

 

「おお、あんがとな。ってこれちゃうやん! なんやねん『生首探し』って! 怖すぎるわ!」

 

 戦慄の表情を浮かべでいる車椅子少女。ナイスツッコミだね。なんでこんな本がここにあったのだろうか。私、気になります!

 

「そんなホラー読みたくないわ。隣や、隣」

 

 はいはい。

 

「逆や逆。わざとやってるやろ」

 

「いやいやこっちの『虚無僧☆フェスティバル』もおもろそうだろ」

 

「明らかに地雷タイトルやん」

 

 だからこそじゃないか。まあそろそろふざけるのもやめよう。

 

「えっと、『夜の貴婦人』か」

 

 本を手に取る。何か聞いたことあるな。なんだっけ?

 

「これ、ほんとに読むのか?」

 

 めっちゃむずそうだけど。

 

「簡単なのはもうあらかた読み終わったからなあ」

 

 どんだけ読んでんのさ。文学少女か。

 

「……今日は、風が騒がしいな」

 

「ここ室内やろ。それに今日は無風や」

 

 泣いていて欲しかった。ネタが通じないのが、これほど虚しいことだとは。

 

 それにしても、貴婦人、ね。……ん~。

 

「ティンと来た。さんきゅ。じゃあの」

 

「え、ちょ、待っ」

 

 

 

 

 

 

「おーい」

 

『お呼びでしょうか、マスター』

 

「うんにゃ。お前の名前、決まったよ。『レディージェイド』、翡翠の貴婦人って意味だ」

 

 俺のオサレ力ではこれが限界。

 

『レディー……ジェイド。……素敵な名前ですね』

 

 おお、良かった。ちなみに普段はジェイドと呼ぶつもりである。

 

「気に入ってくれて何よりだ。これからよろしく頼むよ、ジェイド」

 

『こちらこそ。よろしくお願いします、マスター』

 

 

 

 

 

 しゃあ、いつものようにやってきたぜ山の中! ジェイドも居ることだし修行にバリエーションを増やせるぜ。

 

「じゃあ、まずは逆立ちで山頂付近まで行こうか」

 

『分かりました。身体強化ですね』

 

「ん? 何いってんの? 魔法は使わないよ?」

 

『え?』

 

 それじゃ修行にならないじゃん。

 

「そのあと、素振り一万回ね」

 

 正拳突きじゃなく木刀の方である。今日からはデバイスがあるので、ジェイドで魔力刃をつくって真剣の素振りのようにしようと思う。

 

『……無茶な』

 

 慣れればなんとかなるもんだよ? 最近やっと一万回こなせるようになってきたし。

 




デバイスの名前はグラーフアイゼンと同じ雰囲気を意識して3時間くらい悩んだ末のものです。

晃一君が真剣で素振り一万回。これでティンとくる人はいるだろうか。

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