小学生になったよ! 友達100人できるかな? 前世は全校生徒すら100人居なかったのでどうあがいても無理でした。
正直、超退屈。覚悟はしてたけどひらがなの練習は辛いです。
休み時間だって遊ぶような子が居ないので暇で仕方ない。それでも、周りの子を観察するのは割りと暇潰しになる。別にロリコンじゃないからね。俺小さい時こんなんだったかなあ、とかそう思うからだからね。
ってことでうろちょろしてると、何やらもめてる声が。
こそっと覗いて見ると、大人しそうな深い紫色の髪の女の子と、金髪のこちらも女の子がケンカ? している。いや、あれは一方的にやられてんのか。
物陰から覗き見し続けてると、新たな刺客が登場した。茶髪にツインテールのまたまた女の子である。
ツインテールはつかつかと金髪に近づくと。
おもいっきりビンタをぶちかました。
!?ここでビンタだと!?
「痛い? でも大事なものを盗られちゃった人の心は、もっと痛いんだよ」
何それかっこいい。あなたほんとに小学生? 中身カミジョーさんじゃないよね? 俺が女だったら惚れてたぞ(錯乱)
そして始まる、金髪と茶髪のキャットファイト。ずっと続くのかなと思ってると、紫髪の子が一喝! ……そこでケンカは終わった。
仲直りしたみたいでよかったよかった。ああいうのって、ぶつかったあとは親友になるパターンだよね。青春ですな。
べ、別に親友が羨ましいとかそんなんじゃないし。
帰宅すると、珍しく平日なのにリーゼ達が居た。どうしたの?
「父様から小学校の入学祝を渡すように頼まれてきたわ」
まじで? グレアムさん太っ腹すぎない? なんかお世話になりすぎのような。
「父様にも色々思うところがあんのよ。あんたのことにも、それ以外にも」
思うとこがあんのですか。そういうことなら遠慮せず頂きますけど。この箱、中身何?
「インテリジェントデバイス」
「ふぁっ!?」
インテリジェントデバイスだとぅ!? めっさ高価なプレゼントですね!? 確かにデバイス欲しかったけど、これは予想外だよ!?
箱を開けると、翡翠の色の宝石のネックレスが入っていた。綺麗だ……。
「とりあえず、バリアジャケットを展開してみなさい」
バリアジャケットってなんぞ?
「防護服よ。あんたの思い描くデザインになるわ」
なるへそ。高機能コスプレってことね。コスプレかあ。なんかちょっと恥ずかしいね。
「セットアップ」
『起動します。バリアジャケット、展開』
光に包まれてあっという間に変身完了。といっても服装に変わりはない。いきなりコスプレは、ちょっと、ハードル高いです。
ただ顔は違う。右目に黒い眼帯。それと繋がって歯茎むき出しの口と、ネジの装飾といったデザインのマスク。いつもとは逆で、左の赤目だけを出した覆面。
金木研のマスクと同じデザインである。左目が赤いってのでこれにした。
「なんか、趣味悪くない?」
迫力はあるだろ。
「そういや、このデバイス名前はなんてーの?」
「父様が、あなたに付けて欲しいって」
まじかい。俺にネーミングセンスを求められても困るぜ。
「どんな名前にするの?」
「んー…………保留で」
そんなほいほい思い付いてたまるか。
『私はマスターに名付けてもらえれば何でも良いのですが』
「駄目だ。名は体を表す。雑に付けたら後悔する」
女性の声でそう言ってもらえるのは嬉しいけどね。
俺一人で悶々と考えてもなんなので、アイディアを求めて図書館に来た。本のタイトルとか見てたらいいのありそうだしね。こう、ティンと来たってのがあれば良いな。
待機状態が翡翠の色の宝石で、翡翠は英語でジェイドらしいから、それとももう一語をうまく合わせたいなあ。
適当に本を探してうろついていると
「あれ、眼帯君。こんなとこで会うなんてな」
「おお、スーパー以外で会うのは初めてだな」
スーパーでちょくちょく会ったことのある、車椅子の女の子に遭遇した。
「本探しにきたんか?」
「まあ、そんなとこだね。そっちはよく来んの?」
「それなりにな。ちょうどよかった、そこの本取ってくれへん?」
はいよ。
「おお、あんがとな。ってこれちゃうやん! なんやねん『生首探し』って! 怖すぎるわ!」
戦慄の表情を浮かべでいる車椅子少女。ナイスツッコミだね。なんでこんな本がここにあったのだろうか。私、気になります!
「そんなホラー読みたくないわ。隣や、隣」
はいはい。
「逆や逆。わざとやってるやろ」
「いやいやこっちの『虚無僧☆フェスティバル』もおもろそうだろ」
「明らかに地雷タイトルやん」
だからこそじゃないか。まあそろそろふざけるのもやめよう。
「えっと、『夜の貴婦人』か」
本を手に取る。何か聞いたことあるな。なんだっけ?
「これ、ほんとに読むのか?」
めっちゃむずそうだけど。
「簡単なのはもうあらかた読み終わったからなあ」
どんだけ読んでんのさ。文学少女か。
「……今日は、風が騒がしいな」
「ここ室内やろ。それに今日は無風や」
泣いていて欲しかった。ネタが通じないのが、これほど虚しいことだとは。
それにしても、貴婦人、ね。……ん~。
「ティンと来た。さんきゅ。じゃあの」
「え、ちょ、待っ」
「おーい」
『お呼びでしょうか、マスター』
「うんにゃ。お前の名前、決まったよ。『レディージェイド』、翡翠の貴婦人って意味だ」
俺のオサレ力ではこれが限界。
『レディー……ジェイド。……素敵な名前ですね』
おお、良かった。ちなみに普段はジェイドと呼ぶつもりである。
「気に入ってくれて何よりだ。これからよろしく頼むよ、ジェイド」
『こちらこそ。よろしくお願いします、マスター』
しゃあ、いつものようにやってきたぜ山の中! ジェイドも居ることだし修行にバリエーションを増やせるぜ。
「じゃあ、まずは逆立ちで山頂付近まで行こうか」
『分かりました。身体強化ですね』
「ん? 何いってんの? 魔法は使わないよ?」
『え?』
それじゃ修行にならないじゃん。
「そのあと、素振り一万回ね」
正拳突きじゃなく木刀の方である。今日からはデバイスがあるので、ジェイドで魔力刃をつくって真剣の素振りのようにしようと思う。
『……無茶な』
慣れればなんとかなるもんだよ? 最近やっと一万回こなせるようになってきたし。
デバイスの名前はグラーフアイゼンと同じ雰囲気を意識して3時間くらい悩んだ末のものです。
晃一君が真剣で素振り一万回。これでティンとくる人はいるだろうか。