魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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スカさんの髪を切るウーノに萌えた作者が33話をお送りします。




33話 クリエイター

 週末。古夜はミッドチルダに来ていた。機動六課の新人二人のデバイス製作に協力するためである。

 

「ここが機動六課か」

 

 機動六課の施設を見上げ、古夜が呟く。

 

 新しくできた部隊なだけあって、隊舎も新しく、大きい。ここのトップが知り合いとは、中々感慨深いものがある。

 

「あ、そういえばレジアスさんは地上本部のトップだったっけ」

 

 もっとすごい首領が知り合いにいた件について。

 

 隊舎に入り、受付で手続きを済ませる。私服姿を見られて一瞬部外者かと思われたが、正式なパスを持ってるので問題はなし。

 

 目的地に向かう。

 

「あ、晃一さん!お久し振りです!」

 

 はやてから渡されたマップを見ながら歩いていると、どこかで見たような女の子と遭遇した。

 

「……誰だっけ?」

「シャリオ・フィニーノですよ!?」

 

 一緒にお仕事したじゃないですかと言うシャーリー。確かに一緒に仕事をしたことはあるのだが、一回きりだったのですっかり古夜は忘れていたのだった。

 

「デバイスルームまで案内しますね!」

「おお、さんきゅー」

 

 方向音痴ではないが、案内があるのは助かる。そう思い、素直に厚意を受けとる古夜。

 

 デバイス製作が目的で来ていたので、自然と話題はデバイス関係に。

 

「製作の進行自体は順調なんだろ?」

「はい。ただ……」

 

 ナカジマの方は固有魔法『ウイングロード』をデバイスに対応させるのが、ランスターの方は射撃型ということで軌道、照準修正の細かい調整が大変で、人手が欲しいかったらしい。

 

「ウイングロード、先天系ねぇ……」

 

 簡単に言うと彼女オリジナルの魔法。故に、今まではデバイスに頼ることなく使ってきたそうだ。

 空中に道を作り出す。空を飛べない陸戦魔導師には有難い魔法だ。

 

「使い方は、晃一さんの戦い方と似ていますね」

「正確には違うんだがな」

 

 古夜がプロテクションを足場として展開するのはあくまで一瞬。跳び回るのが目的。対してウイングロードは道を作る。つまり走り回るのが目的なのだ。

 

 ただ、空中に足場をつくるという点では同じ。古夜が力を貸せる部分も多いだろう。

 

「訓練施設はどうなってるんだ?」

「今は新人達が使ってますね。見に行きます?」

「いや、いい」

 

 空いてたら使いたかったと思ってただけである。

 

 

 

 

 

 

 

「晃一君、久しぶりね!」

「どうもマリエルさん、ご無沙汰してます」

 

 デバイスルームに到着。入ると、マリエルさんが作業していた。

 早速作業に取りかかる。俺、マリエルさん、あとはフィニーノもだ。

 

「2丁拳銃と、ローラースケートですか」

 

 2丁拳銃はともかく、ローラースケートて。

 

「スバルさんにはリボルバーナックルもあるからね。走るためのデバイスだよ」

「なるほど」

 

 それならウイングロードとの調整も比較的簡単になりそうだな。時間はかかりそうだが。

 

 リボルバーナックルはその名の通り、カードリッジシステム搭載の近代ベルカ式拳装着型アームドデバイスだ。

 

「ナカジマ姉の方が左手、ナカジマ妹の方が右手か」

 

 そういえばギンガは左手にしか装備してなかったな。

 拳は左右揃ってこそだから勿体無いとは思うが、あれ母親の形見らしいしなぁ。

 

 姉妹で戦ったらそれはもう完璧なコンビネーションなんだろうね。写輪眼的に考えて。

 

「リボルバーナックルは今も使ってるので、スバルちゃんが訓練してないときに進めているんです」

「じゃあナカジマ妹の方は後にしてランスター妹の方先にいきますか」

 

 魔導師ランクB昇格試験の時の映像を見たけど、アンカーを飛ばしてたり、幻術魔法使ってたり、面白い戦い方だ。

 

「とりま立体機動だよね!」

 

 試験のときに足をぐねってたけど、アンカーをもっと使えるようになればあの状態でも結構動けたと思うんだよね。

 

「あの、なのはさ……高町教導官からのお願いなんですが」

「ん、なにー?」

「近接フォームも頼まれてるんです」

 

 にゃるほど。確かに、クロスレンジで戦えるようにはしておきたいよね。流石教導官。

 

「となると、小回りの効くダガー系かな」

「はい、マリエルさんが作業を行ってます」

 

 じゃあそっちは任せますか。

 

「フィニーノは幻術魔法の演算補助の方頼める?」

「はい!おまかせください!」

 

 じゃあ俺は立体機動の方いきます!

 

「あ、待機状態の形態が未定なんですけど、何かありますか?」

「カードで」

「ネックレスで」

 

 即答。先が俺、後がマリエルさん。

 

「カードの方オサレじゃん」

「なのはさんと同じ方がロマンがない?スバルさんは憧れてるんだし」

「じゃあランスターがカード、ナカジマがネックレスで」

「はい決定ね」

「……はや……」

 

 はよ完成させないと。新人達の訓練が始まってるんだから。せめて初出動までには完成させたいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぶっ通しで作業して、気がついたら昼に。デバイスルームで昼食を食べながら作業を続けようと思ってた時、通信が入った。

 

 あれ、珍しい。

 

「どうも。お久し振りですね、オーリスさん」

『ええ、久しぶり』

 

 オーリス・ゲイズ。レジアスさんの娘さん。娘さんって言っても年上だけどね。

 

『父から、あなたがこっちに来てると聞いたの。久しぶりにご飯でもどう?』

「ちょうどいいですね。今昼食を取ろうと思ってたところです」

 

 実は今まで何回かレジアスさんに奢ってもらったことがあったりする。地上の首領なだけあって、おいしいお店知ってたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食場所はクラナガンのちょっとオシャレなフレンチ風レストラン。別世界だからフレンチも何もないけど。

 

「ごめんなさい、遅れてしまって」

「いえいえお気になさらず」

「急用で……父も来れなくなってしまったの」

 

 あらら。まあ陸のトップだし、あってしかるべきだよね。

 

「そっち優先でも良かったのに」

「誘ったのはこっちなんだから、そんな無責任なことはしないわ」

 

 相変わらず真面目な人である。というか二人きりですかあらやだ緊張するわ。いやほんとマジで。

 

「そういえばあなた、新設の六課に出向してるんですって?」

「出向って。俺はあくまでバイトですよ」

 

 きりりとした目でこちらを見据えてくるオーリスさん。

 

「貴方から見て、六課はどうかしら?」

 

 質問。さっきまでとは雰囲気が少し違う。

 

「どう、とは?」

「主観の印象でも良いのよ。教えてくれないかしら」

 

 食事をする手が止まり、視線が合う。

 

「そんな見てませんし、知りませんよ」

「……本当に?」

 

 オーリスさんからの再度の問い掛け。

 

 そして暫しの沈黙。

 

「……勘弁してくださいよ。本当に何も知りませんし興味も有りません。俺は腹芸は苦手なんです」

「…………そう」

 

 オーリスさんが食事を再開した。

 

 取りあえずは信じてもらえたみたいだ。良かった。本当に何も知らないけど、適当なことを言ってボロが出たらはやてに申し訳ないからな。知らぬ存ぜぬが一番だろう。

 

「ごめんなさいね。職業上のクセみたいなものよ」

「今日の昼食も、これが目的ですね?」

 

 恨みを込めた視線を送る。ホイホイ着いていった俺も悪いけどさ。

 

「それも含めてごめんなさい。お詫びに奢るわ」

「……女性に奢ってもらいたくはないので割り勘で」

 

 男のプライドは別物なのよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勤務時間も過ぎ、夜が更けた頃。

 八神はやては、六課開設に関わる雑事をやっと終わらせ、ゆっくりとしていた。補佐のグリフィスは先に帰らせた。他のみんなはとっくに帰り、リインも彼女専用のドールハウスでぐっすり寝ている。

 

「ん~……すっかり遅くなってもうたな」

 

 背伸びをして、帰り支度をする。リインを起こさないよう、そっとドールハウスを持ち、部隊長室を出た。

 

「あれ……」

 

 エントランスに向かう途中、まだ明かりが点いている部屋があった。デバイスルームである。

 

「そういえば今日は」

 

 古夜が手伝いに来てくれる日だった。顔を見せに来て欲しかったのに、忙しすぎて忘れてしまっていたのだった。

 

 ルームに入ると案の定、古夜が独りで作業していた。

 

「こーいっち君!」

「おー」

 

 後ろから飛び付くはやて。

 驚かせようとしたつもりだったが、古夜はまったく動じなかった。

 

「まだ作業しとったん……あー! 酒飲んどる!」

 

 古夜が片手に持っていたコップ。そこから仄かにアルコールの香りがしたのだ。

 

「未成年が飲んだらあかんやろ!」

「こっちじゃ合法だぜ?」

 

 涼しい顔で答える古夜。

 

「今の作業も仕事関係ないし、勤務時間外だ。多目に見てくれよ」

「まったくもう……」

 

 ここら辺は言っても聞かないことは分かってるので、はやては仕方なく流すことにした。

 

「何しとるん?」

「ランスターのアンカー系魔法、俺のにも組み込めないかと思ってな」

 

 マリエルさんから少しだけなら私用で使っても良いと嬉しい許可を頂いたので、ジェイドとグリーヴァをカスタマイズしていたのだ。

 

「立体機動の練習しなきゃな」

「まった修行か」

 

 ジト目で古夜を睨む。

 

「このかわいい幼馴染みが頼んでも渋るのに、修行が絡めば即了承してな」

 

 美少女5人組と言われていたのは知っている。他のみんなと比べてどうかは自信がないが、それでもそれなりにルックスには自信がある。

 

「幼馴染みがかわいいと距離を取りたくなる男子もいるだろう」

「またそういうこと言って」

 

 古夜の背中に問い掛ける。

 

「なんでそんな修行ばっかやねん」

 

 今まで何度も聞いてきた。真面目に答えてくれたことはなかったけれど。

 

「レベルは100にしないと」

「ゲーム脳か」

「そりゃ意味違うだろ?」

 

 いつも通り、適当にはぐらかされる。

 

「……言うならば、フィクション脳だろうかね」

「え?」

 

 古夜が呟いた言葉を、はやては聞き取ることが出来なかった。

 

「いや、なんでもない。少し酔ったみたいだ」

「なんて!? すごい気になる!」

「ハイハイ騒がないツヴァイ起きちゃうよー?」

 

 作業を止め、帰り支度をする古夜に付き纏うが、結局教えてはくれなかった。

 




設定に穴がでないように気を配ってはいますが、ここおかしいだろってところがあればお教えください。

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