魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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素人でも! 二番煎じでも! 厨二くさくても!

かっこいいオリ主を書けるって、証明したい!!


Act.6 『life』
32話 頼み事


 

 声が聞こえる。

 

――ああ…………また、これか。

 

 目の前に映る映像はモヤがかかっていて、声もうまく聞きとれない。

 

 何度も見てきた夢。

 

――いや、違う…………?

 

 気づいた。()()()()()()()()

 

 なら、これは……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピピピピ、ピピピピ。

 

 電子音が鳴っている。

 

「ぅ、ん……?」

 

 やかましく鳴るそれによって、俺は目を覚ました。ゆっくりと身体を起こし、背伸びをする。

 その間も電子音は鳴り続ける。

 

「なんだ……?」

 

 目覚ましは特に設定してなかったと思うが。

 

『マスター、通信です』

「ん?ぁあ、通信か」

 

 なんだこんな朝早くに、などと思いながらもジェイドの通信画面を開く。

 

『おはようさん、晃一君』

「あぁ……はやてか」

 

 画面に映ったのはもはや見飽きた幼馴染み。割と早く身長が伸びなくなった八神はやてである。

 

『なんやそのやる気の無い反応。というか、寝起き?寝癖ひどいで?』

「まだ早いんだから寝起きに決まって……」

 

 そう言いつつも時計を見ると、短針は9と10の間。窓から外を見れば、太陽はもう大分高くなっていた。

 

「……寝坊したわ」

『ホンマ?珍しいなぁ』

 

 起こせよジェイド。

 

『たまにはゆっくりした方が良いと思ったので』

「……はぁ……」

 

 ため息。

 

『授業は大丈夫なん?』

「入ってないから大丈夫のはず……ってか、お前は知ってんだろ」

 

 でなきゃ通信してこないだろうに。

 

「で、何の用だ?」

 

 早速本題へ。いつものように雑談をするつもりなら、夜、仕事終わってから通信してくるはず。

 

『ちょっと晃一君に、お仕事をお願いしたくてな』

 

 はやての言葉を聞いた俺は、軽く頭を振り、意識を覚醒させる。お仕事ということで、ほんの少しだけ頭を真面目に切り替えるのだ。

 

『私、今度部隊を持つことになったんよ』

 

 嬉しそうに、そしてどこか誇らしげにはやてが言う。そういや、少し前から自分の部隊を持ちたいって言ってたな。

 

「なるほどねぇ。子狸も偉くなったもんだ」

『子狸言うなや』

 

 命名したゲンヤさんはいいセンスだと思う。

 それにしても、部隊か。偉くなきゃ持てないだろうけど、どんくらい凄いかは正直よくわからんな。

 

『そんでな、晃一君にちょっと、その部隊に入ってもらいたいんよ』

「却下」

『はや!?もうちょい聞いてくれてもええやん!』

 

 わたわたと慌てるはやて。

 

「管理局に入るつもりは無いって言ってんだろうが」

 

 以前からはやてや高町、クロノやリンディさんなどから誘われてはいるが、全て断っている。頑固な高町なんかは結構しつこくて断るのが大変だ。

 

『別に入局してもらうわけやないから!』

「ならそう早く言いなさいよ」

『なんやろこの理不尽……』

 

 んじゃ、部隊に入ってもらうってはどういう意味なんだ?

 

『ほら晃一君て嘱託やろ?だから私の部隊で晃一君を雇いたいって話や』

「あーなるほど」

 

 早い話、専属になって欲しいってことね。

 

「どんな部隊なのさ?」

 

 部隊にも色々あったはず。高町が確か教導隊だっけ。テスタロッサは執務官だからよくわからん。

 

『名前は古代遺物管理部機動六課。レリック事件の解決がメインの対ロストロギア部隊や』

 

 はやての説明によると、高エネルギー結晶のロストロギア『レリック』を狙う輩がいるらしく、レリックの回収と狙ってる連中の逮捕がメインミッションとのこと。その他、ロストロギア事件を専門にして、部隊としての機動力を上げる目的で設立されたのが『機動六課』らしい。

 

『晃一君にお願いしたいのは部隊の予備戦力になってもらうことと、あとはデバイス関係やな』

「デバイス?」

 

 予備戦力の方は分かるが、デバイスってのは?

 

『新人達の内、特に二人のデバイス製作に協力して欲しいんよ』

「マリエルさんあたりに頼めばいいんじゃ?」

『勿論頼んどるけど、人手は多いに越したことはないし。それに晃一君のアイデアも欲しいねん』

 

 正確には俺のアイデアではないんだけどね。ソースは二次元である。

 

 デバイスに関しては受けるにしろ受けないにしろもう少し知りたい。そう思い、はやてから新人二人の情報を貰う。

 

 スバル・ナカジマにティアナ・ランスターか。

 

「スバル・ナカジマってもしかしてゲンヤさんの娘か?」

『そうそう。ギンガの妹さんやね』

 

 陸上警備隊第386部隊か、こことは仕事したことなかったから知らなかった。ゲンヤさんのいる第108部隊とは何回かあったんだけどな。

 

 ……んでもって。

 

「ティーダさんの妹、か」

『そういえば、晃一君は何回か仕事一緒になってたんやっけ』

「……まあな」

 

 あの人、狙撃に関してはやばかったから、色々教えて貰ったりもした。面倒見の良いシスコンだった。全てが過去形。

 

 ……ティーダさんは数年前、殉職した。職業上、仕方ないことと言えばそうなのかもしれないが。

 

「……16才、何歳差だよ。そりゃ見せねえわけだ」

 

 話を仕事の方へ戻す。

 

『で、どうや?受けてくれへん?』

「んー………………」

 

 悩む。いや別に良いんだけど。なんかこう、もやっとするというか、わだかまりというか。迷う。何だろうな。やはり寝起きだからだろうか。

 

「ちょい保留で。今晩までには結論だすよ。間に合うだろ?」

『うん、分かった。それでええよ。考えてくれておおきにな』

 

 寝惚けた頭で考えるのもどうかということで、返事を待って貰うことにした。

 

『あ、そうそう』

「なんだ?」

 

 通信を切ろうとしたところで、はやてに止められる。

 

『六課の設備なんやけどな、結構新しいのが揃えられそうなんよ』

「へー」

 

 何が言いたいのだろうか。

 

『トレーニング設備は最新のVR式で、新人達の訓練時以外は自由に使えそうなんやけど』

「その仕事乗ったわ」

 

 さっすがはやてよくわかってらっしゃる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仕事を受けることになっても学校には行く。基本は土日の通勤ということになった。通勤とか働いてるみたいね。今更な感じだけど。

 支度をして、海鳴大学へと向かう。授業は午後からなので、昼食を学食で済ませるつもりだ。

 俺は海鳴大学に進学した。俺以外にも月村とバニングス、あとは何故か相良もだ。縁とは切れないものである。

 ちなみに学部は俺と月村、バニングスと相良が同じ。

 

「あ、晃一君。こっち席空いてるよ」

 

 キャンパス内の食堂にて席を探してると、月村達がいた。月村が手招きをしている。

 

「いや、どうぞごゆっくり」

「何断ってんのよ」

 

 いやだって、めっちゃ視線集めてるし。相良に集まってるヘイトがこっちに来そうだし。

 

「独りにしないでくれ!」

「いいじゃないっすか相良さん。両手に花ですよ」

「敬語ヤメテ!」

 

 なんやかんやあって、昼食を一緒に取る流れに。

 山菜うどんをすすりながら、雑談する。

 

「二人組になってから大分話しかけられるようになったんじゃないか?」

「そうね、高校のあたりから増えてたんだけど、ここ最近は多すぎて疲れるわ」

 

 面倒そうにバニングスが言う。月村も困ったように笑っている。本当にめんどくさいらしい。

 

「晃一はよくこの視線の中で平然とできるな」

「まわりの奴らは背景だと思えばいいのさ」

「それ、結構ひどいこと言ってるんじゃ……」

 

 そうかね? 基本無関心だから慣れたもんだけど。

 

「ねえ晃一君。雫が遊びたいってせがんでるんだけど」

「またか? 翠屋でしょっちゅう会うだろうに」

「ほんと、雫ちゃんはあんたになついてるわよね」

「遊ぼうって言って真剣持ってきたときはどうしようかと思ったわ」

 

 あと恭也さんがどんな教育してんのかも。

 

「週末、私の家に来れる?」

「あ、悪いあっちのバイト入ったわ。しばらくは無理だな」

「あっちって、魔法関係か?」

 

 相良の言葉に頷く。

 

 いつの間にか、相良は魔法について知ってた。付き合いも長いし、言いふらすような奴じゃないってことで、高町達から教えてもらったらしい。数年間はぶられてた疑惑が発生して大分ショックを受けてた。

 

「しばらくって、珍しくない?」

「まあな。だから翠屋のバイトも休みがちになるかもな」

「雫ちゃんが怒るわよ~?」

 

 バニングスがニヤニヤ笑いながら言う。止めてほしいわ。雫の機嫌が悪くなると恭也さんが殺気を帯び始めるんだから。

 

「相良が相手してくれるさ」

「真顔で『違う』って拒否られる俺の気持ちを少しは考えて」

 

 相良は雫に嫌われてるらしい。

 

 雫のことはともかく、忍さん達に連絡いれなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 少し時間を戻して。

 

「…………ふう」

 

 古夜との通信が終わり、はやては一息ついていた。

 

「晃一君の協力が得られて良かったわ」

 

 機動六課には守護騎士達やなのはにフェイトにも協力して貰う予定だ。戦力としては申し分ない。

 しかし、部隊には能力制限がある。そのため、彼女達には出力リミッターをして貰う必要があるのだ。

 その点、古夜は嘱託な上、登録してある魔導師ランクがCのため、引っ掛かる心配がない。

 遊撃戦力として、頼りの存在となってくれるだろう。

 

「物で釣るみたいになってもうたな」

 

 苦笑しながら一人で呟く。

 

 

 

 事態は、動き出していた。




Sts編、スタートです。

お手柔らかにお願いします。

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