魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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時系列ミスったああああ!!!!
というわけで前話をほんの少し修正しました。

sts前最後のお話し。漫画版の内容です。


31話 縁

 HRが終わり、放課後。高町なのはは管理局の仕事の為、転送ポートへと向かう。そこには既にフェイト・テスタロッサと八神はやての姿があった。

 

「フェイトちゃん、はやてちゃん、お待たせ!」

「私達も今来たところだから、大丈夫」

「問題ないでー」

 

 3人とも、管理局の魔導師だ。ただ、同じ管理局員といっても勤め先は違うので、3人が揃っての出勤というのは、最近では珍しいこととなっている。

 今日の場合、さらに珍しいことが1つ。

 

「今日は晃一君も来るんだっけ?」

「そうなの? 珍しいね」

「レアキャラ扱いやからなぁ」

 

 古夜晃一。一応嘱託魔導師だが、たまにしか依頼は受けず、まして仕事で一緒になるというのは滅多にない。そのため、彼が仕事に参加するときは自然と話題に上がるのだった。

 

「あれ、じゃあその晃一は?」

「私服に着替えてもうアースラらしいで」

 

 フェイトの疑問にはやてが答える。どうやら、向こうにもういるらしい。

 

「じゃあ、行こっか!」

 

なのはの呼び掛けに頷く2人。

 

今日も、仕事が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『それじゃ、今日の任務の確認ね!』

 

 通信指令であるエイミィ・リミエッタからの通信。今日の任務は、2つの遺跡発掘先でロストロギアを回収、その後、本局まで護送するというシンプルなものだ。また、アースラから本局まではアースラの提督であるクロノ・ハラオウンが請け負う手筈の為、なのは達の仕事は少ない。

 現在、エイミィ達のいる次元航行艦アースラから観測指定世界に転送されたなのは達は、目的地に向かって飛行中である。晃一は何やら別件だとかでまだアースラらしい。

 

「今日は平和な任務だねぇ」

「一応、ロストロギアなんやけどな」

「皆、普段はハードだから」

 

 なのはの言葉に二人は相槌を打つ。3人とも魔導師としての戦闘力はトップクラスだ。普段の任務もそれに合わせて、中々危険度の高いものとなっている。

 

『でも、なのはちゃん達3人に、守護騎士の皆もいるわけだから、大抵の任務は平和になっちゃうと思うよ?』

『晃一という劇薬がいるがな』

 

 クロノの言葉に3人は苦笑する。

 晃一、クロノ、そして無限書庫司書長のユーノ達3人はいつも軽口を叩き合っている。なんだかんだ仲が良いというのが周りの評価だ。

 

「お父さんは頼りになるですよ!」

「わかっとるわかっとる」

 

 健気で可愛いリインの主張。何故か古夜を父親と慕うユニゾンデバイスにはやても顔を綻ばせる。

 

『ま、油断しないでね~』

『よろしく頼む』

「「「了解!!」」」

「です!」

 

 

 

 

 

 暫くの飛行の後、なのは達は現地の基地に到着した。先に派遣されていた局員が迎える。

 

「お疲れ様です!本局管理補佐官、グリフィス・ロウランです!」

「シャリオ・フィニーノ通信士です!」

 

 2人の敬礼に、3人も敬礼で答える。

 

「休憩の準備をしております。こちらへどうぞ」

「休憩なんて。こんくらいの飛行がなんでもないの、グリフィス君は知っとるやろ?」

「まあ、そうですが……」

 

 はやての言葉に苦笑するしかないグリフィス。知り合いのようなやり取りになのは達がハテナ顔になる。

 

「あ、2人は初めてやったっけ。グリフィス君て、レティ提督の息子さんなんよ」

「あー!」

「すっごい似てる!」

 

 レティ・ロウラン提督はクロノの母、リンディ元提督の友人である。

 

「じゃあ、晃一君が来るまで少しだけおはなししよっか」

「ま、直ぐに来るやろうしな」

「本当ですか!?」

 

 なのはの提案にシャリオは大喜びだ。憧れのエース達との会話、滅多に無い機会だろう。

 

「フィニーノ通信士とは初めましてだよね」

「はい! でも皆さんのことはすごーくよく知ってます!」

 

 大興奮といった様子で話す。

 

「本局次元航行部隊のエリート魔導師、フェイト・T・ハラオウン執務官! いくつもの難事件を解決に導いた本局地上部隊の切り札、八神はやて特別捜査官! 武装隊のトップ、航空戦技教導隊所属! 不屈のエース、高町なのは二等空尉! 陸海空の若きトップエース達とお会い出来るなんて光栄です!!」

「あ、あはは……」

 

 正にマシンガントーク。すさまじい勢いのシャリオに、なのは達は苦笑してしまう。

 

「勿論、リインフォースさんも優秀なデバイスだって聞いてますよ!」

「ありがとうございますです!」

 

 リインフォースと笑顔で握手。初対面でここまで話せるのはもはや才能だろう。少し暴走気味だが。見かねたグリフィスがブレーキをかける。

 

「こらシャーリー、失礼だろう」

「あ、いけないつい……」

 

 どうやら無事ブレーキが効いたようだ。

 

「シャーリーって呼んでるんだ。仲良し?」

「あっ……と、すみません。子供の頃から家が近所で……」

「幼馴染みだ!」

 

 幼馴染みという言葉になのは達が反応した。

 

「いいね! 私達も幼馴染みなんだよ」

「私の場合、一番付き合いが長いのは晃一君やな」

 

 そこでシャリオが少し前から気になっていた疑問を口にする。

 

「あの……失礼ですが、晃一さんって?」

「あれ、そっか、フィニーノ通信士は知らないんだ」

「一時期有名になってたけど、最近は何もしてへんからなぁ」

 

 古夜は、闇の書事件のあたりでは少しだけなのは達と一緒に有名になった。しかし彼は管理局に正式に入局しなかったため、フェードアウトしていったようである。

 

「魔導師ランクは……何だっけ?」

「嘱託になったときに取ったCやな。あかんコレ大丈夫やろか」

「え、ええ……」

 

 評価が高いのかいまいちよく分からない。

 

「リインのお父さんですよ!」

「「ええ!?」」

 

 お父さん!? と驚きをあらわにする二人。何回か見た反応にはやて達はくすりと笑った。

 

「ど、どういうことですか?」

「ふふ、今来るから、直接本人に聞いてみたら?」

 

 なのはがそう言った所で、通信が入った。

 

『もこたんインしたお!』

「いや誰やねん」

「もこ、たん……?」

 

 はやてから謎の声にノータイムで突っ込みが入った。手慣れた様子のやり取り。それから間をおいて現れたのは、パーカー姿で右目に翡翠のモノクルを着けた男。古夜晃一である。

 

「悪いな、少し遅くなった」

「大丈夫だよ、こちらシャリオちゃんとグリフィス君ね」

「よろしくお願いします!」

「よろしくー。古夜晃一、普通の魔法使いだぜ」

「晃一君30才やったんか」

「おいちょっと待てそれどこで知った」

 

 自己紹介のつもりが話がそれた。ちなみにはやては晃一の影響かネットサーフィンが結構好きである。

 

「お父さん!」

「おーツヴァイ。一緒の仕事はかなり久しぶりだな」

「はい! 良いところ見せるですよ!」

 

 リインが古夜の指先でじゃれる。

 

「あの、すみません。お父さんって……?」

「ん? ああ、製作者の一人ってだけさ」

 

 深い意味はない。本人は未だに何でなついてるんだろうと思っている。

 シャリオ達は納得。というか、何故その考えが出なかったのかと思ったようだ。

 

「よっしゃ! 晃一君も来たことだし、行こか!」

「よろしくね、シャーリー、グリフィス君」

 

この時古夜は、もう愛称で呼んでるとかコミュ力高えなあ、と思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、私達ももう六年目になるんやなー」

「今年で中学も卒業だしね」

 

 目的地に向かいながらも、しみじみといった様子で話す。

 

「お前ら皆、向こうに引っ越すんだろ?家はどうすんだ?」

「私は卒業の少し前にクラナガンに引っ越す予定や。今は良い家を探してるとこやな」

「私とフェイトちゃんは一緒の家に住む予定なんだ」

「最初のうちは、リンディ母さんの所でお世話になるかも」

「良い家見つかったら、皆でお互いの家に遊びに行こな!」

 

 ハードな仕事で報酬が多い上、なのは達は皆無駄遣いしないため、貯金は中々のものとなっている。まして八神家は一家全員が管理局で働いているため、一軒家の購入もそこまで苦では無いのだった。

 

「晃一君も是非来てな」

「行けたら行くわ」

「それ行かないやつやん」

 

 古夜はなのは達の家に遊びに行くということが殆どない。本人曰く『俺は引きこもりなの』とのこと。それを聞いた皆が、修行してばかりの人間が何を言ってるのかと思ったのだった。

 会話している内に、目的地までもうすぐというところまで来た。

 

「ん? ありゃあ……」

 

 古夜が異変を察知した。目的地の遺跡から黒煙が上がっている。

 

「現場確認!機械兵器らしき未確認体が多数出てます!」

「現場の人の救助には私が行くよ!」

「じゃあ私が指揮するから、フェイトちゃんと晃一君は遊撃頼むで!」

 

 古夜達に指示を出したところで、はやてがリインとユニゾンする。

 

『シュートバレット』

『プラズマランサー』

 

 古夜とフェイトによる魔法攻撃。それに対して機械兵器は魔力フィールドを形成した。

 

「あれは……AMFか」

 

 古夜が呟く。

 アンチマギリンクフィールド。魔力の結合を妨害するフィールドのことである。魔法は魔力の結合によって成り立つ。AMFはそれを妨害することで魔法を封じるのだ。

 

「発掘員は私が守るから、なのはちゃんは攻撃に回ってや!」

「了解!」

 

 はやての指示で、なのはが前線に回る。

 

「スターダスト……!」

「サンダー……!」

 

「「フォールッ!!」」

 

 なのはは石を加速して打ち出し、フェイトは雷を落とす。二人の魔法が機械兵器達を蹂躙した。

 AMFは質量を消すことは出来ない。二人はそこを突き、魔法によって発生した効果で攻撃したのだ。

 

「相変わらずのバカ魔力。羨ましいわぁ」

 

 一方古夜はアームドデバイスのグリーヴァによる物理攻撃。一体一体を順に破壊していく。

 

 敵の殲滅に、時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 ロストロギアの回収が完了した。

 

『こちらシグナム。そっちは大丈夫か?』

「ん、問題ない」

 

 目標を護りながら転送ポイントへと向かう。飛行中、シグナムから通信が入った。

 

『機械兵器の集団がそちらに向かってるようだ。これから破壊する』

「まじか。俺そっち行こうか」

『いらねえよ。なのはも晃一も黙って見とけ!』

 

 シグナムと一緒にいたヴィータから頼もしい言葉が届いた。向こうには、ザフィーラとシャマルもいる。戦力では申し分ないだろう。

 新たな敵は守護騎士達に任せ、飛行を続ける。

 

「そういえば、晃一君は広域魔法使わんかったな」

「まあ、俺の使う弾幕は消費が激しいし、AMF相手じゃ相性が悪いからな」

 

 先程なのは達が使った系統の魔法は、なのは達の魔力量があってこそのものだ。古夜が同じように使えば直ぐにガス欠してしまう。

 

「あの弾幕かぁ……初めてみたときは驚いたな」

「私が見たときはもっと凄かったよ?」

 

 スペルカードを経験したことのあるフェイトの言葉になのはが返す。なのはが見た時というのは闇の書事件の時だ。八門遁甲を使って底上げした魔力を配分を一切考えずに使用したのだから、物量は桁違いだろう。

 

「見た目のわりに威力はそこまで無いぞ?」

「質より量なんやっけ」

「もっと質に回しても良いんじゃない?」

「美しさと思念に勝る物は無し、だよ」

「晃一君が言うと違和感半端無いの……」

 

 そこからは特に何もなく、無事、転送ポイントに到着した。目標を転送し、任務完了である。

 

『任務お疲れさま! 食事の準備してるからね!』

 

 せっかく大勢集まったということで、今日は同窓会的なものがある。

 

 

 

 

 

「ただいま戻りましたー!」

 

 古夜達がアースラ内に帰還すると、リンディやエイミィが食事の用意をしていた。美味しそうな匂いがする。

 そこからは各自、自由に食事となった。

 

「すっげー量だな」

「アコース君からの差し入れだって」

 

 豪華な料理達の半分程は彼からのプレゼントである。

 

「アコース?」

「あれ、古夜君知らないんか?カリムの義理の弟や」

「そういえば、話したことがあったような無かったような……?」

「相変わらず人のこと覚えんのやなぁ」

 

 わいわいと賑やかな雰囲気の中、パーティーを楽しむ。

 

「あ!そういえばフェイトちゃん、あの子達の新しい写真持ってきてる?みんなに見せてあげようよ」

 

 ややあって、皆が食事よりも雑談がメインになってきた頃、なのはが言った。

 

「あの子達?」

「ほら、フェイトちゃんが仕事先で会った子達よ」

 

 フェイトが担当する事件では、子供が巻き込まれてしまっていることも多い。フェイトは助けた子供達から良くなつかれていた。

 

「この子は、私が保護者ってことになってるの」

「エリオ・モンディアル、か」

「元気で優しい子なんやで」

「その年で子持ちとか色々大丈夫なのか?」

「子持ちって……」

 

 

 

 

 

 

 

 時間が大分たち、盛り上がりのピークもすぎて暫くという頃。皆が片付けを始める。

 

「こーいっち君!」

「ん? どーしたはやて」

 

 古夜が周りの片付けを一通り済ませ一段落していたところ、はやてが声をかけてきた。

 

「いやいや、晃一君とゆっくりお話しできるの、もうなかなか無いかなと思ってな」

 

 今のうちにお話しとかんとな、とはやて言う。

 

「……なあなあ、なのはちゃんとフェイトちゃんのリボンあるやん?」

「ああ、あの髪結んでるやつか」

 

 なのはが黒の、フェイトが桃色のリボンである。

 

「あれな、二人がジュエルシード事件の後、お別れする時に交換したらしいんよ」

「……へー」

 

 お別れの時、その言葉を聞いて、古夜ははやてが何を話したいのか大体を察した。

 

「いいなあって思って。晃一君とは、一番付き合い長い幼馴染みやし……」

 

 そこまで聞いたところで、古夜はため息をつく。

 

「……あのなあ、交換するような物、俺は持ってねえぞ?」

 

 着けているアクセサリーはジェイドとグリーヴァだけだ。流石にそれをあげることはできない。

 

「うぅ~……でもなぁ……」

 

 はやては納得できないようだ。まったく、と珍しく古夜の方が呆れ顔になる。

 

「……そんなんしなくても大丈夫だよ。お前の新しい家にも遊びに行くし、困った事があったら手を貸すぐらいはするさ」

「……ほんまに?」

「ああ。幼馴染みだからな」

 

 笑う古夜。それを見て、少し暗い顔になっていたはやても笑顔になる。

 

「……しょうがないから、勘弁したるっ!」

「へいへい、ありがとーごぜーます」

 

 大人になるにつれ、知人とは連絡を取らなくなることが多くなってしまうのかもしれないが。

 

 こういうのも悪くはないな、と古夜は思った。

 




ここまで読んでくださったすべての読者様に最大限の感謝を。

はやてがヒロインっぽく見えてれば作者の勝ち。

総合評価が5000を突破しまして、嬉しい限りです。漲ります。
予定では次回に幕間を挟む予定です。

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