魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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原作で正確な描写のないところとなると、どうしてもレベルが落ちてしまいますね。完全に作者の力不足なのですが。


21話 演習とサファリング

 今回の任務はロストロギアの回収。珍しく、異世界での任務である。回収するのは危険性のない、骨董品みたいなもの。

 

 ロストロギアといっても、闇の書みたいに超危険なものばかりではない。歴史的価値を持つものなんかも多いそうだ。それらはオークションにかけられたりしてるらしい。

 

 というわけで今回は正確には任務ではなく、局員の演習という扱いだ。

 

「なのに何で俺が居るんですかねえ」

 

「にゃはは……ごめんね、連れてきちゃって」

 

 そう言って謝ってくる高町。俺、管理局員じゃないんですけど。これ受ける必要ないよね。

 

 本局で任務の報酬の確認を終え、地球に帰ろうかと言うところで、高町とヴィータに確保された。

 

 この任務、ある一人の急用によりメンバーが足りないということになったらしい。

 

 暇な奴誰か居ないかとなった時、俺の名前が挙がったとか。暇な奴代表みたいなの止めてくんない?

 

「まあ良いじゃねーか、どうせ修行以外やることねーだろ?」

 

 隣にきたヴィータが言う。そうですけど。良いように利用されるのは嫌なの。学校だって休まなきゃいけないし。

 

 はあ、気乗りしないなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 演習は、恙なく進んでいった。この世界では今の季節は冬で、雪が降っている。

 

「バリアジャケットがあると寒くなくて良いねぇ」

 

「暢気な奴だな」

 

 飛行しながら雑談をする。

 

「日本ではまだ夏にもなってない時期なのにねえ」

 

「異世界なんだから当たり前だろ」

 

 そうだけどさ。当たり前でも、なんかこう、日本とは違うなぁって思ってしまうんですよ。

 

「冬といえば炬燵にみかんだよな」

 

「あれはロストロギア認定されてもおかしくはねーな」

 

 ほほう。ヴィータも奴の中毒性を思い知ったようだな。

 

「なのはもそう思うだろ?」

 

 ヴィータがそこで高町に話を振った。しかし高町は。

 

「…………」

 

「なのは?」

 

「……! ごめん、ヴィータちゃん。ちょっと、ボーッとしてた」

 

 にゃはは、とどこか力なく笑う高町。

 

「おいおい、休んだ方が良いんじゃねえか?」

 

「任務中に気を抜くとは、よろしくないな」

 

「ヴィータちゃんは良いとして、雑談ばっかの晃一君には言われたくないの……」

 

「ばっかお前、俺のこれは皆をリラックスさせてんだよ」

 

「ダウト、地球帰ったらアイスな」

 

 勝手に罰ゲームが決定したんですが。

 

「それよりなのは。無理すんなよ?」

 

「にゃはは、ごめんね。私なら、大丈夫だから!」

 

 むん、とガッツポーズをする高町。

 

「なら良いけどよ……」

 

 どこか不安そうなヴィータ。働きすぎって周りの連中が言ってたしな。何も起こらなければ良いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィータの不安も関係なく、無事ロストロギアを回収できた。

 

「これってどんなもんなんだ?」

 

「なんでも、人の耳を完璧なケモミミにしてしまうらしい」

 

「……昔の人間の考えることはわかんねえな」

 

「ヴィータお前も大分昔の人間だろ」

 

 あと俺はむしろこれを発明した人に惜しみ無い拍手を贈りたいね。ケモミミ大好き。

 

「私は、晃一君の考えることがわからない時の方が多い気がするの」

 

 ちょっと高町それどういう意味だ?

 

「まあそれは良いとして。回収完了、あとは帰還だな」

 

 スルーかい。

 

 そんな風に、このまま帰って終わりかと思われた、その時、

 

 

 

 

 

 

 突然、デバイスがアラートを鳴らした。

 

 

 

『未確認の反応です!』

 

『急速にこちらに接近してます!』

 

 ジェイドとレイジングハートが知らせてくる。

 

「っ! なのは! 晃一!」

 

「うん!」

 

「ん」

 

 三人でデバイスを構える。今のメンバーでは俺らが一番の戦力だ。固まっていては意味がない。離れて、敵だった時の為に臨戦態勢に入る。

 

「来たな」

 

 視認できるところまで相手が来た。あれは……タイヤ?

 

『無人機のようです』

 

 ゴーレム兵的な感じか。じゃあ、間違いなく敵だな。

 

 そう思うのとほとんど同時に、謎の無人機が砲撃を放ってきた。

 

「向こうから攻撃してきたから敵だな。破壊するぞ」

 

『シュートバレット』

 

 砲撃を軽く躱し、ジェイドで魔法弾を撃ち出す。相手の動きは単純だ。簡単に当たる。しかし、当たりはしたが、破壊はできなかった。

 

 ……? おかしいな。あのくらいの鉄屑なら破壊できる威力のはずなんだが。

 

 そう思い、相手に近づく。身体強化を掛け、グリーヴァを思いっきり振り降ろした。

 

 その時、力が抜けるような奇妙な感覚が俺を襲う。

 

「!?」

 

 体勢が突然崩れる。飛行魔法の気配が……消えた……? ってふざけてる場合じゃない。後ろから別の一機が刃物を突き出してきた。

 

 身を捻って刃を躱し、逆にグリーヴァを突き刺す。今度も上手く力が入らなかったが、破壊できた。そいつの爆発で少し飛ばされ、そこでやっと飛行魔法が復活する。近いと危険な感じだったので、一旦離れる。

 

「おいジェイドなんだアレ?」

 

『AMFのようです』

 

 えーえむえふ?

 

『アンチ・マギリンク・システムのことで、簡単に言うと、魔法無効化フィールドです』

 

 なんやそれ!? そんなんチートや! チーターやん!!

 

『一定の範囲の魔法は無効化されてしまいますが、物理攻撃を無効化することは出来ません』

 

 丁度視界の内にグラーフアイゼンで敵を粉砕するヴィータが映った。

 

 ……ふむ、成る程。つまりは幻想殺しの範囲が広くなったと考えれば良いわけか。割りと辛くね?

 

『あと、普段よりも多目に魔力を使えば身体強化や飛行魔法も使えるでしょう』

 

 俺は高町達みたいな膨大な魔力は持ってないから、それは厳しいな。

 

「ぎゃあ!?」

 

 局員の一人が攻撃を喰らってしまったようだ。魔法弾を無効化されてしまい、ミッド式の魔導師は攻撃の手段がかなり削られている。他の局員も同じで、防戦一方のようだ。これは不味い。

 

『晃一! なのは! 今の戦力でこいつらを倒すのはきつい!』

 

 今回は演習のつもりで来てた、そこまで実戦経験のない局員がほとんどだから、ヴィータの言う通りだろう。どうしてもあいつらを守りながらになってしまうだろう。

 

『増援を呼んで、あいつらをカバー出来るように固まるぞ!』

 

 ヴィータからの指示。そうした方が良いな。返事を返したところで、違和感に気付く。

 

 

 

 高町が反応しない。

 

 

 

「っ!! なのは! おい! どうした!?」

 

 ヴィータも感づいたようで、念話を使わず叫ぶ。

 

 嫌な予感がして、高町の方を見ると、そこでは。

 

 

 

 

 

 高町が無人機の刃物に刺されていた。

 

 

 

 

 

「なのは!!!」

 

 ヴィータの悲鳴に近い叫び声が響く。無人機はそれを気にすることもなく、高町を振り払う。刃が抜け、飛行魔法を維持できなくなった高町が落ちていく。あの高さから落ちたらバリアジャケットがあっても命に関わる。ましてあの怪我は不味い。

 

 ――八門遁甲 第五 杜門 開!!

 

「っ!」

 

 八門遁甲を解放し、すんでのところで高町をキャッチした。高町を見る。傷が深い。それでも、バリアジャケットがある程度守ってくれたお蔭か、致命傷にはなってないようだ。しかし、出血は多い。

 

「っ……! ごめんね……晃一君……」

 

「喋るな、傷に障る」

 

 意識はあるようだ。ただ只管謝ってくる。

 

「おい晃一! なのはは大丈夫なのか!?」

 

 周りの敵を蹴散らしてヴィータがやって来た。

 

「致命傷にはなってないと思うが、出血が多い。急いで治療しないと」

 

「なのはっ! おいなのはッ!!」

 

 ヴィータが目に涙を溜めながら必死に呼び掛ける。

 

「……ヴィータちゃ……ごめ……失敗しちゃった…………」

 

 高町の息は荒い。口から血も吐いてしまっている。

 

「治療しねえとっ……! おい晃一! お前治療魔法は!?」

 

「俺のはあくまで自分用のだ。他人の治療には使えない。増援が来るまで待たねえと」

 

 増援が来るまでどのくらいだ? ……結構ヤバイな。他の局員が大怪我をしてしまうのも時間の問題だ。

 

「くそっ!! どうする!?」

 

 かなり焦っているヴィータ。……ここは、撤退が一番か。

 

「……ヴィータ。高町連れて、他の局員と一緒に撤退しろ」

 

「は!? ……撤退って、お前は?」

 

「殿、だな」

 

 ここに残って、ただ只管無人機を壊す。

 

「お前は他の奴を守りながら撤退してくれ」

 

 俺の提案に、ヴィータは反対してきた。

 

「危険すぎる! それに、お前がここに残る必要なんて……!」

 

 俺はカバーしながら戦うのは苦手だ。傷を負った高町を運びながら他の局員のカバーなんて、到底できない。だったらここに残って、敵をできるだけ減らすのが一番。

 

 迷うヴィータに、俺は語りかける。

 

「頼むよヴィータ。お前は『守護騎士』だろ?」

 

「……!」

 

「前ので分かった。俺に守るのは向いてないよ」

 

 思い出すのは、闇の書との戦い。

 

 基本一人で戦ってきた俺は、味方との連携や他人のフォローが苦手だ。

 

 守るのは、お前の役目。

 

 そう伝えると、ヴィータは少し唸った後、渋々頷いた。高町の為にも一刻も早くここを離れないといけないのはわかっているのだろう。

 

「……わかった。でもだったら晃一お前! …………負けんじゃ、ねーぞ」

 

「……おうよ」

 

 ヴィータが高町に肩を貸しながら、他の局員を連れて飛び去っていく。

 

「さて、ジェイド、グリーヴァ。……かっこつけるぞ」

 

『やれやれ』

 

『あまり無茶はしないで下さい』

 

 グリーヴァを青眼に構える。

 

 返答するわけがないが、無人機達に吠える。

 

 

 

「悪ィが、こっから先は一方通行だ。 侵入は禁止ってなァ!」

 

 

 

 無人機に突っ込み、切りつける。アームドデバイスのグリーヴァが居てくれて良かった。ミッド式のデバイスだけの時よりもAMFの影響が少ない。

 

 飛び回り、跳ね回り、数秒で十体以上の無人機を破壊する。

 

 魔力の消費が激しいな。今は八門遁甲を開いているが、それもいつまで持つか。相手はまだまだ数が残っている。

 

 無人機達はヴィータ達の後を追うような動きを止め、俺を囲むように動き始めた。接近してきた時ほどのスピードはない。細かい動きはできないみたいだ。

 

 AIのレベルそのものも大したものではないな。厄介なのはAMFとその数か。

 

 射撃魔法との相性が最悪なので、ジェイドはリソースを全て補助魔法に割いている。お蔭でなんとか、AMFの中でもいつも通り動けている。

 

 だが、距離を常に近くとっているので、どうしても小さな傷は負ってしまう。刃が掠ったり、爆発で火傷を負ったりだ。

 

 そしてそれ以上に、内部のダメージがヤバイ。言わずもがな、八門遁甲の反動である。

 

「ッ! しまっ……!」

 

 リンカーコアの痛みによる一瞬の硬直。運悪くそのタイミングで突進されてしまった。

 

「ぐはッ!?」

 

 吹っ飛ばされ、グリーヴァを手放してしまった。体勢を立て直すも、グリーヴァを取りに行ける暇はない。

 

 まだ無人機は大分残っている。魔力刃や誘導弾は無効化されてしまうとなると……。

 

 なら、素手で戦うのみ。

 

「このままやるぞ、ジェイド」

 

『……お役に立てず、申し訳ありません』

 

 何言ってんのさ、お前が居るから、俺でもまだあいつらと戦えてんだよ。サポート、頼むよ。

 

『……はい!』

 

 さあ、いくぜ。

 

 

 

「八門遁甲 第六 景門 開!!」

 

 

 

 更にもう一つ、開放する。そして攻撃してくる無人機を俺は素手で殴り付けた。

 

「~っ!!」

 

 バリアジャケットを着ていても素手はきつい。無人機を殴る度に、激痛が走る。

 

 見てないのでわからないが、おそらく指は拉げ、骨は粉々だろう。

 

 それらを無視し、ただ只管、敵を屠る為に拳を振るう。

 

「ぉォおおおあああ゛あ゛あ゛!!!!」

 

 縦横無尽に跳ね回り、全てを一撃で破壊していく。みるみるうちに数が減っていく。

 

 あと少し、あと少しで全部破壊できる。

 

 残り、3――

 

 2――

 

 1――!

 

「根性おおおおおおお!!!!!」

 

 そしてついに、

 

 

 

 最後の一体を、俺の拳が粉砕した。

 

 

 




なのはは原作通り撃墜となりました。

追記
時期変更。秋にもなってない→夏にもなってない

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