魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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2話 体を鍛える

 オッス! オラ晃一! 体造りのために山籠り中だぞ!

 

 冗談です。籠ってません。普通に家から通ってます。

 

 最初は逆立ちで町内一周しようかと思ったけど、流石に他人の目がねえ?

 

 なら人の居ないとこ行こうぜってわけで山の中。修行っぽいね。オラワクワクすっぞ!

 

 で、何しようか迷った結果

 

 

 

 逆立ちで山登りしてます。

 

 

 

 これがなかなかきつい。坂道で逆立ちするのが、こんなに大変だとは。

 

 これなら、腕力は鍛えられるし、体幹は鍛えられるし、いい修行法だな!

 

「それでこんなに手が傷だらけなわけね」

 

「まことにもうしわけない」

 

「はあ……。無茶しすぎよ」

 

 リーゼアリアに治療魔法をかけてもらってます。いやあ便利。流石魔法。

 

「治療魔法があるからって傷ついていい理由にはならないわ」

 

「以後気を付けます」

 

「本当でしょうね?」

 

 ジト目で睨んでくるネコミミ娘。かわええのう。

 

 治療魔法に頼っちゃいけないってのはその通りだよなあ。手負いの状態でも最大限のパフォーマンスを発揮できるようにならなければ。

 

 ちなみに逆立ちの後は、ひたすら正拳突き。いわゆる感謝の正拳突きです。一万回は無理だけどね。

 

 他何したらいいかなって考えてるけど、手ぶらじゃなあ。木刀が欲しいな。あわよくば真剣。

 

 

 

 

 

 そんなふうに体を鍛え、魔法を練習する日々が続いていたある日のこと。

 

「こんなところに子供とは、迷子か?」

 

「君、大丈夫?」

 

 何か美男美女二人組が来ました。

 

 何だよリア充かよこんな山奥に何の用だよとか思ったけど、木刀持ってるし。これはまさか修行仲間ができるのかな?

 

「親はどうした? その眼帯、大丈夫か?」

 

 そういえば俺、眼帯してるんだった。やっぱあの赤目は目立つからね。朝寝ぼけたまま鏡見ると自分にビビるもん。喰種かと思ったもん。

 

「全部大丈夫です。おにーさんたちこそこんな山奥にナニしにきたんですか?」

 

「言い方に何だか他意があるような……」

 

 気の所為だと思います。

 

「俺たちは剣術の修行にな」

 

「何それかっこいい!」

 

 まさかマジで剣術の修行とは。いやはや、浮世ばなれしとるね!

 

「ふふっ。きみは何してたのかな?」

 

「体鍛えてました」

 

「ほう、こんなに小さいのに偉いな」

 

 偉いのか? あと小さい言うな。縮んだのは結構ショックやったんやぞ。

 

「で、おにーさんたちはどんな修行するんですか?」

 

「折角だから、見てみる?」

 

「まじで!」

 

「おい、美由希」

 

「いいじゃん恭ちゃん、ちょっとくらい」

 

 ふむふむ、美由希さんに恭ちゃんさんね。

 

「お願いします! 剣術も覚えたいんです!」

 

 

 

 

 

 結局恭ちゃんさんが折れて、見せてもらいました。あとこの二人は兄妹でした。

 

 やべえよ、この二人。小太刀二刀流とかまじかよ。

 

「すげえ! かっけえ!」

 

 小学生並みの感想。

 

「なんか流派とかあるんですか?」

 

「流派なんて言葉よく知ってるな。御神流だ」

 

 名前もかっけえ。

 

「やっぱ道場でやるのとは勝手が違うねー」

 

「まだまだ修行が足りないな」

 

「ううっ。手厳しい」

 

 いいなあ。俺もやってみたいなあ。

 

「……御神流は流石に教えられないが、剣術の基本なら、俺が少し手解きしてやろうか?」

 

「まじで?」

 

「いいの恭ちゃん?」

 

「ここで会ったのも何かの縁だ。流石に御神流は教えられないが」

 

「いやいや充分。是が非でも!」

 

 やったぜ!

 

 

 

 

 

 今俺の手には、一本の木刀。目の前には、腕をだらりと下げ、リラックスした様子の恭也さん。(恭ちゃんって呼んでみたら睨まれた)

 

「よし、好きに打ち込んでこい」

 

「いきなり過ぎやしませんか」

 

 何も教えられてないんすけど。それは甘えですかそうですか。

 

「とりあえずどのくらい動けるのか知っとかないとね」

 

 美由希さん、苦笑い。

 

 この体では竹刀すら握ったことないんですが。

 

 まあ、やるしかないならやりますよ。

 

「じゃあ、いきます!」

 

 時雨蒼燕流 攻式一の型 車軸の雨

 

 を元にした突き!

 

「!」

 

 驚き顔の恭也さん。初手から突きとは思ってなかったみたいだ。

 

 突きというのは面が小さく当たりにくそうだが、存外、避け辛いのだ。

 

 相手の視線と刀身を完璧に重ねれば、相手は遠近感を失い、更に避け難くなる。

 

 まあ、俺にそんな技術はないけど。

 

 そして恭也さんはあっさり避けました。予想はしてたけど、あっさり過ぎやしませんかねえ!

 

 ただ予想はしてた。(2回目)

 

 声を張って、突いた木刀を恭也さんが避けた方に薙ぐ。

 

 刀で受ける恭也さん。

 

 俺は止められた方の逆側に打ち込み、斬り下がる。

 

 恭也さんは詰めてこない。

 

 間合いが切れる。

 

 ……さあ、作戦はここまでしか考えてない。どうしようか。はいそこ、全然考えてねえなとか言わないの。

 

「……まさか、いきなり突きで来るとはな」

 

「あっさり避けといてまさかとはなんですか」

 

あとはひたすら斬りかかるしかないな。

 

 突っ込み木刀を振るう。

 

 唐竹、右切上、逆袈裟。

 

 振るう、振るう、振るう。

 

 その全てが簡単に受け止められる。

 

 イップスになりそう。辛くなってきた。

 

「そろそろ、こちらから攻めようか」

 

「!!」

 

 やばいやばいやばい! 当たり前だけど、勝てる気がしねえ!

 

 恭也さんが一歩、踏み込んで来る。

 

 左右の木刀で攻撃してくる。手加減はしてくれてるんだろうけど、4才児には速すぎる。

 

 できるだけ左右の木刀を線で結ぶように構えて防ぐ。

 

 てて手がし、痺れるぅ。

 

 くそ! 反撃しなくちゃ。

 

 大きく一歩跳び下がる。

 

 小太刀の間合いから離れる。

 

 そこから間髪入れず俺は木刀を地面にぶっ刺し、体を鞭のようにしならせ、飛び蹴りをかます。

 

 だが。

 

「勝負あり、だな」

 

「……ぬう」

 

 普通に避けられ、地面を転がって起き上がった時には首筋に木刀が添えられてました。

 

 わかってはいたけど悔しいねぇ。超悔しい。

 

「ここまで動けるとは思わなかった」

 

「ほんとにね」

 

「美由希より動けてたかも知れないな」

 

「うぅ、ひどいよ恭ちゃん」

 

 むう、これはいつかリベンジせねば。

 

「これは教え甲斐がありそうだな」

 

 そういえばそういう話だったな。勝負に夢中で忘れてた。

 

「あはは、忘れてたって顔してるよ」

 

 よし、ガチでマジで頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 もう夕焼け小焼けのお時間だ。

 

 結構スパルタだったなぁ。逆立ち山登りがなければギブアップ待ったなしだったわ。

 

「驚いた。最後まで音を上げないとはな」

 

「すっごいねー君」

 

 恭也さんと美由希さんが意外そうにこちらを見ている。

 

 後半はもう根性だけで頑張ってました。

 

「……いやもう動けないっす」

 

「よくここまで耐えれたねぇ」

 

「そうだな。今まではどんな修行をしてたんだ?」

 

「逆立ちで山登りしてました」

 

二人は揃って何ともいえない顔。何よ?

 

「それはなんとまあ、無茶なことを」

 

 ですよねー。無茶も承知です。

 

「だめだよ。子供がそんな無茶しちゃ。家の人だって心配してるよ?」

 

「あ、その辺はだいじょぶなんで、お気になさらず」

 

 親居ないんで、とは言わない。面倒なことになりそうだからね。

 

「そろそろ帰らなくちゃな」

 

「ありがとうございました」

 

「こっちこそ、いい気分転換になったよ」

 

 割りといっつもここ居るし。また会うだろうな。

 

 さて俺も帰ろう。疲れたし今日はがっつり肉を食おう。

 

 

 

 買い物しながら考える。

 

 なんだかんだいって初めての実戦だったな。良い経験になった。

 

「あ、眼帯君。そっちのお肉の方が新鮮でお得やで」

 

「まじかい。よくわかんね」

 

 いやしかし恭也さんも美由紀さんも強かったなー。あの二人の戦いはなんかもう侍っつーよりニンジャって感じだったし。

 

「ぼくは今日もお使い? お利口さんなのね」

 

「それほどでもあったりなかったり」

 

「どっちやねん」

 

 やっぱ実戦練習は大事だな。もっと経験を積まなければ。

 

 本格的に山籠りをするべきかなぁ。

 

 ……あ、いいこと考えた。

 

 

 

 

 

 グレアムさんに頼んで無人世界でサバイバルしよう。

 

 

 




ちなみにこの日、なのはの公園でブランコイベントが起きてたりします。

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