魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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お久しぶりでございます。


19話 聖夜とRe;バースデー

「晃一君! はよはよ!」

 

 速い速い。そんなに急がんでもデバイスは逃げないよ。

 

 今日ははやてと二人で本局に来ている。

 

 ついに、俺とはやてのデバイスが完成したのだ。

 

 いやー、長かったよ。なんせ古代ベルカ式だから、資料集めから難航したよ。ましてはやてのはユニゾンデバイス。ほぼゼロからのスタートだった。俺のは大体の構造はイメージしてたが、色々と辻褄あわせが大変だった。二次元の武器だからしょうがないのだけれど。

 

 それにしても。

 

「……何の因果かね」

 

「せやな。まさか、今日になるとは」

 

 今日は地球では12月25日、クリスマス。

 

 リインフォースの命日だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、来たか、二人とも」

 

「早いね、くろすけ」

 

「くろすけ言うなと何度言えば」

 

「相変わらず仲ええなあ」

 

 開発室に入るとクロノが居たのでいつものように軽口を交わす。ロッテ姉妹に扱かれた仲間なので結構気が合うんだよね。

 

 仕事で顔を合わせることは滅多にないが、ミッドに来て都合が合えば話すことが多い。ユーノも合わせて三人でね。

 

 古代ベルカの資料集めに無限書庫を使いに行くことも多かったので、ユーノともそれなりに話すのだ。ユーノからはよく高町の学校での様子を聞かれる。青春だよな。本人達はただの友達って否定してるけど。

 

 ユーノはこんな調子だし、高町は鈍そうだし。付き合うってことはあるんだろうかね。二人で話してる時の空気はカップルのそれだったけど。爆発すれば良いのに。パルパルパルパルパルパル…………。

 

 話が逸れた。

 

「完成してるんだろ?」

 

「ああ。今、奥でマリエルが最終調整してるよ」

 

「やっと会えるんやな」

 

 はやてのテンションが上がっている。二年かかったからね。俺も気分が高揚してきたよ。

 

 三人で奥の部屋、新デバイスの居る場所へ。

 

 入ると、満面の笑みのマリエルさんが居た。

 

「ども、マリエルさん。最終調整終わりました?」

 

「うん! 今丁度終わったよ! ついにお披露目! ご覧あれ!!」

 

 マリエルさんが横に移動すると、そこには小さな生体ポッドの中で眠る、一人の少女。そしてその隣にはライオンのネックレス。

 

 

 

 

 

「はやてちゃん命名、『リインフォース・ツヴァイ』と、晃一君命名『グリーヴァ』だよ!」

 

 

 

 

 

 はやてが少女を受け取る。見た目はリインフォースそっくりだ。

 

 少女がゆっくりと目を開く。

 

「認証……完了しました。初めまして! マイスターはやて!」

 

「よろしゅうな、リイン!」

 

 二人とも満面の笑顔だ。ツヴァイの方は先代、この子がツヴァイだからアインスとでも呼ぼうか、より活発化してるな。

 

「そちらの方は、マイスターはやてのお友達ですか?」

 

「そうや。リインの製作にかなり協力してくれたんやで」

 

 まあ、基本は俺とはやてとマリエルさんの三人で作ってきたからな。ものづくりは好きだし、楽しかったわ。

 

「なるほど! よろしくですお父さん!」

 

「誰がお父さんじゃおい」

 

 急にお父さん扱いとか何? はやててめえ笑ってんじゃねえよ。ここら辺の性格の調整お前担当だったろうが。

 

「ぷっくく……いや、間違ってはないやろ?」

 

 そうだけど。確かに産みの親みたいなもんだけど。

 

「産みの親ということは、つまり、お母さんというわけですね!」

 

「あはははは!!」

 

 はやて爆笑。この子は天然なの? どこをどう解釈してそうなったのか。アインスに似てんの見た目だけだわ。

 

「俺はお母さんじゃありません。古夜晃一。名前で良いよ」

 

「分かりました! よろしくお願いします晃一お父さん!」

 

 違う、そうじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 結局、お父さん呼びで固定となってしまった。お父さん以外で呼ばせようとしたけど、『じゃあパパですか?』などと天然を発動させまくったので、もうお父さんで良いやとなってしまった。変に疲れたわ。

 

「あはは、明るい子になってもらおうとは思ったけど、まさかこうなるとはなぁ」

 

「なんで小学生なのに子持ちにならなきゃならんのだ、俺は」

 

 設定年齢ほとんど変わんないでしょうに。せめて兄妹でしょ。

 

 性格ははやてのリンカーコアを少し移植してるからその影響もあるのかもしれない。そのお蔭でツヴァイ本人も魔法を使えるという。あ、これ俺のアイディアね。

 

「晃一君のデバイスも見せてくれへん?」

 

 おっしゃ。ネックレスを手に取る。

 

「それ、ライオン?」

 

「ああ。この世でもっとも強く、誇り高い獣だよ」

 

 このライオンの名前がグリーヴァである。ファイナルファンタジー好きなんですよ。

 

「グリーヴァ、セットアップ」

 

『セットアップ。マスター認証……完了しました』

 

 青年の声。ネックレスが輝き、形を変える。

 

 現れたのは、幅の広い刀身。鍔は無く、刀身にリボルバーが直接繋がっているような構造である。そのため柄も銃のグリップのようになっていて、普通の刀剣類とは違う。そして刀身には獅子の刻印。ここのデザインはかなり拘った。前世の細かいことをどんどん忘れていってるこの頭を捻って絞って完成させた。

 

「変わった形の武器やね」

 

 まあ、シグナムのレヴァンティンよりも剣らしくないからね。

 

「でもかっこいいです!」

 

 ツヴァイわかってるじゃないか。会心の出来だからな。

 

「戦闘では、レディージェイドとの二刀流になるのか?」

 

 クロノが聞いてきた。

 

「いや、ジェイドは近接戦には基本使わなくなるよ。その代わり、遠距離の射撃や補助に特化させる」

 

 その為の改造もジェイドにしてる。

 

「ジェイド、待機状態チェンジだ」

 

『はい。久しぶりの出番、漲ります』

 

 メメタァ。じゃなくて、はよ変われ。

 

 ネックレスだったジェイドが光る。光は移動し、俺の右目へ。

 

「それは、モノクル?」

 

 その通り。翡翠のレンズのモノクロである。

 

「これなら、待機状態でもある程度の機能が使えるからな」

 

 分析だったり視力補助だったり。

 

「確かに。眼鏡型のデバイスはそういう使い方も出来る。では、何故モノクルなんだ?」

 

「そっちのがかっこいいから」

 

「君はそういうやつだったな」

 

 地球ではメガネになると思うけどね。地球でモノクルなんてしてたらただの中二病にしか見えないからね。

 

「それで、この後はどうするんだ?」

 

「すぐに地球に帰るよ」

 

「クリスマスパーティーにリインの誕生パーティーもせんとな!」

 

 翠屋を貸しきってパーティーの予定である。ただ、稼ぎ時なので、営業時間が終わるまでは手伝うことになっている。

 

「パーティーですか! 楽しみです!」

 

「そうだったな。僕とエイミィは家に帰れそうにないが、フェイトは帰れそうだったからな。楽しんで欲しいものだ」

 

 なるほど。そのまま夜にしっぽりと言うわけですな。一年でもっとも多い日らしいし。何がって? おいおい、小学生にそんなこと言わせんなよぉ。

 

「君のそういうところ、ロッテ達にそっくりだな」

 

「褒めんなよ」

 

「照れるなよ」

 

 勿論この辺の会話はツヴァイ達には聞こえないようにしてますよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『メリークリスマース!!』

 

 地球に帰って来て、翠屋でパーティーである。メンバーは高町家、月村家、バニングス家、八神家、ハラオウン家、そして俺と相良である。月村家とバニングス家は親が来ていない。忙しいからしょうがないね。テスタロッサはハラオウン家の扱いである。なんでも、正式にリンディさんの養子となったらしい。名前も『フェイト・T・ハラオウン』となったが、シグナムや俺はそのままテスタロッサと呼んでいる。

 

「今ほどお前と一緒に居て良かったと思った時はないぜ」

 

 相良が言う。ユーノが来られなかったので同年代の男が居ないのは嫌だった俺が拉致ってきた。本人が大喜びなので拉致とは言えないが。

 

 相良は俺と一緒に居ることが多いので、ある程度はここの人たちとも面識がある。

 

「俺は今日、美少女五人組と仲良くなって見せる!」

 

 こいつの場合、無邪気で印象は悪くないからな。高町達もそれを良くわかってる。ぶっちゃけ一番はやて達と仲良い男子だと思う。本人は気づいてないと思うが。

 

 相良が高町達に突貫してくのを見送り、一人で料理を頬張る。流石桃子さん。美味しい。

 

「こんな時でも一人なんだね」

 

 誰かと思えば忍さんだった。

 

「あれ、恭也さんとは良いんですか?」

 

「まあ、パーティーのあとにも二人きりで話す予定だしね」

 

 クロノといい、リア充め。

 

「あ、遅ればせながら、御結婚おめでとうございます」

 

「ふふっ、ありがと」

 

 とうとう恭也さんとの結婚が決まった忍さん。幸せオーラ全開である。

 

 それにしても、恭也さんと忍さんの子供か。吸血鬼+戦闘民族高町の血が混ざったら、えげつない子が育ちそうだな。

 

「晃一君はそういうのないの? 気になる子とかさ」

 

「何分まだまだ子供なもので。まだまだ早いですよ」

 

「その返答は子供のじゃないってことは分かってるでしょうに……」

 

 呆れた顔の忍さん。俺の言ってることは間違ってない、二つの意味で。まあ、その辺の事情を知ってるのはリスティだけだが。

 

「あ、そうだ忍さん。俺そろそろ用事あるんで、その辺の連絡お願いします」

 

「ん、良いけど、用事って?」

 

 

 

 

 

「ちょっと、墓参りにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は公園。リインフォースの儀式を行った場所である。墓参りとは言ってきたが別にここに墓があるわけじゃない。

 

 いつか座ったベンチに座る。

 

「……無事、完成して何よりだな」

 

『まだ気にしてたんですね。儀式のこと』

 

 ジェイドが言ってきた。あれは、はやてに何も言わずにやったからな。アインスの意志だったとしても、それなりに罪悪感が残る。

 

「ツヴァイにはアインスの意志が宿ってると良いんだけどな」

 

『デバイスに、意志が宿るのですか?』

 

 今日生まれたばかりのグリーヴァには信じられないみたいだ。デバイスなのだから、まあこの反応が当然と言えば当然なのだが。

 

「科学を極めれば極めるほど、それでは説明の付かないオカルトが見えてくるらしいぞ?」

 

『マスターの存在自体がオカルトですからね』

 

 それは前言った。

 

『そうなの……でしょうか』

 

『マスターと居れば自然と分かりますよ。あと私のことはお姉様と呼びなさい』

 

 お前は一体どこへ向かっているんだ。

 

『畏まりました、お姉様』

 

 素直に聞き入れちゃったよ。どうすんのこれ?

 

 ……こいつもツヴァイと一緒に作られた古代ベルカ式なんだよな。

 

 だったら、アインスの意志がこいつにもちょっとでも良いから宿っていれば良いな、なんて。

 

 

 

 柄にもなく、そんなことを考えてしまった。

 

 

 

 

 




主人公はリインフォース・ツヴァイのことをツヴァイと呼びます。

日常に笑いをと思っていたのに気が付けばこんな雰囲気に。解せぬ。

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