魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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これは、サブタイネタバレ、なのか……?


18話 約束とヴァンパイア

 スニーキングミッションだ!(正面突破)

 

 ってことでやってきました廃工場。べただね。

 

 警備の連中は皆拳銃を装備していた。多少は怖かったが、まあ弾が曲がるわけでもないし、恭也さんみたいな戦闘民族が居るわけでもないので割とサクサク進めた。今まで基本ボコられていた所為かやけに弱く感じる。

 

 ずっとイメトレしてロッテ相手に練度を高めてきた俺のCQCが火を噴くぜ!

 

 加減の仕方は知らないので、非殺傷設定の魔法を叩き込んでいく。いやー魔法って便利ですねー。

 

 一応、拳銃は回収しておく。使い方は詳しくは知らないが、弾が込められていて安全装置が外れていれば撃つくらいはできるし、ハッタリにもなるからね。

 

 拳銃片手に月村たちが居るであろうところに突入する。

 

 そこには、鉄柱に縛られた月村とバニングス、そして黒スーツの男が居た。どうやらこいつが主犯のようだ。

 

 銃を突きつける。面白いくらいびっくりしてるな。やったね! ドッキリ大成功!

 

「手を挙げろ」

 

 油断せずに。男を睨む。魔法かどうかは知らないが、妙なことができるはず。

 

「くそがっ! 人間如きが調子に乗りやがって……!」

 

「人間如き?」

 

 え、何こいつ。中二病? 邪王心眼が目覚めちゃうの?

 

 何言ってんだコイツと思っていると、男が動いた。

 

 警備のやつらとは違う、結構動きが速い。

 

 まあでも、恭也さんや美由希さんと稽古している俺には余裕で目で追えるんだけどね。

 

 迷わず引き金を引く。銃声が響く。だが、やはり素人には扱いが難しいらしい。外してしまった。

 

「バカめ!!」

 

 男が腕を振るってくる。俺はそれを片手でいなし、距離を取る。

 

 正面に向き合う形となったため、男の顔が見える。真っ赤な瞳。俺の左目やテスタロッサのものとはまた違う赤。瞳の模様が普通じゃないぞ?

 

「目を見ちゃダメ!!」

 

 月村の叫び声が聞こえた。何故?

 

 もう一度男の顔をみると、

 

「ん……?」

 

 男は醜悪な笑みを浮かべていた。

 

 急に視界がボヤける。意識が混濁してきた。なんだ? 何をされた?

 

「ぐっ!?」

 

 蹴られた。誰にだ? いや、あの男に決まっているだろう。

 

 痛くはないが、すごく気持ち悪い。男の笑い声が五月蝿い。蹴りは全然効いてねえのに調子に乗りやがって。

 

「ははははは! 驚かされたが、所詮は人間のガキだな!」

 

「何を、した?」

 

 男を睨み付ける。男は笑いながら話し始めた。

 

「何って、精神干渉だよ。我々、夜の一族の得意技さ」

 

「やめて!!」

 

 月村が叫ぶ。何故そこで月村が反応する? 夜の一族ってのが関係してんのか?

 

 止める月村を無視して、男が言う。

 

 

 

 

 

「俺とそこの女、月村のご令嬢は、吸血鬼の一族だ。下等な人間とは違う、上位種族なんだよ!」

 

 

 

 

 

 

「なん……だと……?」

 

 こいつと、月村が、吸血鬼?

 

「嘘よね、すずか……?」

 

 バニングスもかなりショックを受けている。嘘だろうと月村に確認しようとするが、

 

「…………」

 

 月村は涙を流している。唇を噛みしめ、血が滲んでいるが、何も答えない。答えられない。その沈黙が表すのは、肯定か。

 

「そこの女は、友達ごっこをしながら、心の中ではお前らを見下してたんだよ!」

 

「違う!!」

 

 男の言葉に月村が反応した。

 

「アリサちゃん達は、本当に、親友だと思ってるもん……!」

 

 涙を流しながらも男の言葉を否定する。

 

「すずか……」

 

 いやいや落ち着け? 情報を整理しよう。この世界、元々魔法はある。てか俺使ってる。そして吸血鬼は実在するらしい。ということは、つまり……。

 

 

 

 

 

 幻想郷が実在する可能性が微レ存……?

 

 

 

 やべえまじかよこれは来たよ! よく考えてみたら月村が吸血鬼ってことは忍さんもってことじゃん! 吸血鬼姉妹だよ最高だね! しかもあそこの家にはノエルさんっていう完全で瀟洒なメイドが居るし。何だよあの家!?

 

 待て待て落ち着くんだ俺。素数を数えるんだ。

 

「……誘拐の時もその精神操作を使ったな?」

 

「ほう、まだ頭が働いているとはな。その通りだ。あの人混みの意識を誘導するのは骨だったぞ?」

 

 成程。魔法ではなかったか。これはやっぱりはやて達が来なくて正解だったな。

 

「さて、茶番もここまでだ」

 

 男が俺の捨てた拳銃をこちらに向ける。

 

「晃一君!!」

 

「晃一!!」

 

 そして、銃声が響いた。

 

 銃弾が、俺の心臓を、貫く――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 って、思うじゃん?

 

「なに……!?」

 

 男が信じられないものを見た様な顔をしている。

 

 俺は普通に立っていた。やったことは至ってシンプル。

 

 銃弾をジェイドで斬った。

 

 蘭ねーちゃんは至近距離で躱してるし、キリトくんは対物ライフルの弾斬ってるし、まあ不可能ではないよね。てか恭也さんなら余裕だろ。

 

 斬った弾の欠片が掠ったか、俺の頬から一筋の血が流れる。

 

「まさかっそんなことが……! そもそも貴様、精神干渉はどうした!?」

 

「ネタバレ乙、とだけ言っておこうか」

 

 タネを早々に言ってくれたからね。精神干渉なんて対処のしようは割とある。みさきち系統だったらみこっちゃんみたいに電磁バリアを魔法で張れば良いし。もっとアナログな魔術系であれば強いショックで立ち直れる。あとは相手より精神的に有利なら良いんだっけ? ソースは二次元なので、確証は無かったが。

 

「くそがぁっ!」

 

 銃を捨てて襲いかかってきた。もう底は知れたな。

 

「灰は灰に、塵は塵に」

 

 使うのは、不良神父の技。俺の周りを魔法の焔がうねる。

 

「吸血殺しの紅十字!!」

 

 両手に焔の剣を生み出す。相手が吸血鬼だから何となく使いたくなったんですよ。

 

 目を見開いてる男に、思いっきり叩きつける。

 

 焔に飲み込まれ、男はあえなく撃沈した。

 

 

 

 

 

「安心しろ。非殺傷だ」

 

 どこが、とは聞かないで下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人を解放して、代わりに男を鉄柱に縛り付ける。

 

「お前らも災難だったな。修学旅行で誘拐されるとは」

 

 流石に同情するよ。

 

「…………」

 

 二人とも無言。ん? どうした?

 

「……アリサちゃん。今まで黙ってて、本当にごめん……!」

 

 月村がバニングスに頭を下げる。ああ、そうか。吸血鬼ってのずっと秘密にしてたんだっけ。

 

「……あの時の言葉、嘘じゃないんでしょ?」

 

「え?」

 

「私たちを親友だと思ってるって」

 

「う、うん!」

 

「私も同じ。なのはたちも絶対にね。……だから、すずかが吸血鬼ってことくらいで嫌いになったりなんかしないわ」

 

「アリサちゃん……!」

 

 抱き合う二人。美しき友情かな。

 

 

 

 

「……それで、あんたはどうなの?」

 

 一頻り泣いたあと、バニングスが聞いてきた。俺に。なんぞや?

 

「あんたはすずかのこと聞いて、どうすんのよ」

 

 え、俺にも聞くの? 月村もめっちゃこっち見てるし、これは答えなきゃいけないのかな?

 

「いや、別に……むしろウェルカムとしか」

 

「あんたほんとにぶれないわね……」

 

 バニングスが呆れた目を向けてくる。俺しょっちゅうそういう目で見られてる気がすんな。

 

 ああ、そうだ。良いこと思い付いた。

 

「約束しようぜ」

 

「……約束?」

 

 そう。

 

「酒飲めるようになったらさ、知り合いの吸血鬼とか皆集めて、宴会をしよう」

 

 東方みたいにさ。あれ、夢なんだよね。

 

「……そんなことで良いの?」

 

 そんなこととはなんだ。人外達との飲み会なんて素晴らしいじゃないか! 鬼とか妖精とかとどんちゃん騒ぎしてみたいじゃん!

 

 それに、

 

「ソウルメイトだろう? 重要なのは魂だ。肉体がどうこうじゃないんだよ」

 

「晃一君……」

 

 じゃなきゃ困るよ。

 

「ぶっちゃけ、俺も結構オカルトな存在だと思うし」

 

「えっ?」

 

 あっやべっ。うっかり口に出してしまった。いや、だって転生とかまじオカルトじゃん。

 

 どう誤魔化そうかと考えていると、

 

「どうやらもう終わっちゃったみたいだね」

 

 背後から声。反射的に銃を構える。

 

「こらこら、武器を向けないの。ボクは味方だよ」

 

 そこに居たのは白髪の女性。

 

「忍さんの言ってた、警察の人?」

 

「そうそう。名前はリスティ・槙原。よろしくね」

 

 ハーフさんですか美人ですねー。そう思ってると、なんか頭がチリチリしてきた。電磁バリアを張る。

 

「!」

 

 リスティさんが驚いている。今のあんたですか。

 

「君も、なかなか面白いことができるみたいだね? 電磁バリアか。あまり読めなかったな」

 

「何しれっと頭の中覗いてんですか」

 

「普通なら気づかれないんだけどねー」

 

 まあ、ついさっき正確には違うとはいえ精神干渉を受けたばっかですから。そうでなきゃ気づかなかった。

 

 この人、HGSか。

 

 HGSってのは簡単に言うと超能力者。割と世間でも知られている異能の力である。この辺はやっぱ前世と違うよね。

 

 やべえな、どこまで見られた? はやて達から話を聞いて来てるはずだから、まあ魔法のことはバレてんな。そこは良いとして、前世のことも知られた? それは流石に…………ん? 特に困ることないな。

 

「……んじゃ後始末は任せますよ」

 

「頭覗かれてその反応って、忍から聞いてた通り変な子だね」

 

 失敬な。

 

「あと、発砲した件についてはあとでゆっくり聞かせてもらうからね?」

 

 ははっ、読まれてーら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、誘拐事件は無事に終わった。

 

 月村は結局、高町達にも夜の一族のことを話した。当たり前の話だが、月村を否定する奴は居なかった。それなら、この事件は良い切っ掛けになったんじゃないかなと思う。

 

 夜の一族には秘密を知った者に記憶を消すか、誰にも秘密を話さないことを誓うか選択してもらうらしいのだが、俺を含めて皆が秘密を守る方を選んだ。

 

 あとリスティには前世の記憶があるっていうのがばれた。銃を撃ったりなんだりの説明をしてるうちに頭覗かれた。HGS恐るべし。

 

 そんなわけでリスティのことは呼び捨てに。中身同い年くらいだからね。

 

 それと良いことが一つあった。なんとリスティが銃器の使い方を教えてくれるとのこと。条件は、リスティの仕事を手伝うことである。

 

 やったぜ! これでCQCが完成する!

 

 こんな感じで修学旅行は終わった。

 

 その後変わったことと言えば、月村が前より話しかけてくるようになった。はやては友達同士が仲良くなって何よりと言っている。お前は俺のオカンか何かですか?

 

 大方俺がオカルトな存在っていうのを聞いてシンパシー的なのを感じたんだろう。

 

「つっても、俺は月村みたいに肉体が変なわけじゃないからなあ」

 

「え? じゃあ、幽霊みたいな?」

 

 月村さんそれ肉体が変とか変じゃないとかそれ以前の問題じゃないですかねえ。

 

 違うよ。肉体は普通なはずだよ。俺が言いたいのはこう、魂が普通と違うっていうか、

 

「俺は中身が変なの」

 

 あれ? なんかこれ違くね?

 

『知ってる』

 

 月村とはやてに頷かれた。あるぇー?

 




すずか、友達に打ち明けたことにより体質へのコンプレックスを解消。

リスティ登場。個人的にかなり好きです。アニメに出てないなかで初のとらハキャラでした。

追記
よく考えてみたら敵倒したの初めてですね。おめでとう、主人公。

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