ここだけ見ると主人公強そうに見えます。
「第四 傷門 開 !!」
瞬間、俺のリンカーコアから魔力が溢れ出してくる。
説明しよう! 今俺が発動したのは、ガイ先生を参考にした奥義、八門遁甲である。本来は体内にある八つの『門』を開けることで限界を超えた身体能力を手に入れるものだ。俺の場合、リンカーコアに直接干渉し、リンカーコアのリミッターを外す形となっている。八つの『門』が全てリンカーコアに集中した状態と言えば良いだろうか。
一時的にだが魔力量が跳ね上がり、身体強化の効果も大きく上昇するので、通常ではできない技もできるようになる。
ただ、限界を超えたリンカーコアの使用なので、負担も大きい。『死門』まで開いたら、リンカーコアが消しとんで命に関わること間違い無しだ。
それに身体強化の使いすぎによる肉体への反動も半端無い。悲しいことにデメリットはほぼ完璧に再現してしまった。
だが、これでそれなりには戦える。
ジェイドから出した魔力刃を溢れ出てくる化け物達に向ける。
「……いくぜ、バケモン共」
まずは。
『深弾幕結界 -夢幻泡影-』
開幕ぶっぱは基本でしょう。
リンディは画面に映るその光景に、圧倒されていた。
色とりどりの、数えきれない数の魔力弾が敵を囲う。ある程度の規則性はあるようで、円を描くように魔力弾が生まれ、避ける隙間も無く襲いかかる。
「これはっ……! 魔力測定、推定AAAランクです!」
「なんですって……?」
エイミィが出した測定結果に思わず呟くリンディ。
リーゼ達から聞いていた古夜晃一の魔力量はBだったはず。この出力はおかしい。
だが、この魔力弾の数を見れば納得せざるを得ない。一つ一つの威力はそこまで高くは無いようだが、全て集まれば、ひょっとすると、なのはのスターライトブレイカーに匹敵するのではないか。
急に魔力が上昇した。彼が何かしたのだろうか。
古夜の撃ち出す魔力弾は、まるで結界のように、隙間無く相手を包囲する。夜の空で舞う光の球たちは、どこか、幻想的であった。
「綺麗……」
呟いたのは誰だったか。あるいは自分だったかもしれない。
戦いは続く。
流石ゆかりん弾幕。あの触手ども大分減らせたよ。まあ調子に乗っていきなり魔力使いすぎた感は否めないけどね!
今度はぶっとい蛇みたいなのが出てくる。サイズ的にはもはや龍だ。刺々しい鱗を生やしてこっちに突進してくる。
『二幻刀』
魔力刃を出す。より魔力を圧縮したので、こっちの切れ味もさっきとは段違いとなっている。
俺は両手の魔力刃を逆手に持つ。
小太刀二刀流――。
「 回転剣舞 六連!! 」
龍もどきを切り裂く。自分よりはるかに大きい化物を、俺は一瞬で細切れにした。
休んでる暇はない、復活した触手たちが俺を覆い、動きを封じてくる。囲まれ、逃げ場が無くなってしまった。
だとしても、やることは簡単。全方位を斬るのみ。
魔力刃をもう一つ。今度は、口に咥える。
三刀流――。
「 竜巻き!! 」
全身を廻し、全方位に斬撃を飛ばす。絡みつこうとしていた触手を全て斬り飛ばす。
「ぐっ!」
胸に激痛が走った。魔力の無茶な使用にリンカーコアが悲鳴をあげている。
痛みで止まってはいられない。
触手だけじゃなく獣も生まれてきた。今度の狙いは俺じゃない。高町だ。砲撃のチャージの為動けないので、無防備に近くなってしまっている。
高町が目を見開いている。巨大な獣が飛びかかり、牙を剥く。
「ぉおっ!」
すかさず俺は高町の前に跳び出し、魔力刃で牙を受け止めた。俺の後ろにプロテクションを展開し、それを支えにして踏ん張る。
「こ、こういち君!」
何でお前が俺の名前知って……そういや、やがみんが言っちゃってたな。
「いいから、お前は集中しろ!!」
高町を怒鳴り付け、獣の牙を押し返す。身体強化の掛けすぎで、骨が嫌な音を立てた。それを無視して獣の懐に潜り込む。
斬る、斬る、斬る。
もっとだ、もっと速く!
「スターバーストォッ! ストリィィィム!!」
両手の魔力刃を輝かせ、16連撃を叩き込む。獣の巨体が吹っ飛び、霧散した。
『90%』
レイジングハートの声が聞こえた。あと少しだ。
そこで、
「がぁっ……!?」
『マスター!!』
限界がきた。血が込み上げてくる。視界が真っ赤に染まる。手足の骨にはヒビが、ひどいところは折れている。内蔵にもダメージがいってるだろう。もうこれ以上は命に関わる。
だが。
「……っ!」
高町が息を飲むのがわかった。
目の前に現れたのは、竜の頭。召喚魔法の類いだろうか。さっきまでの獣たちが可愛く見える。頭しか出てないようだが俺達なんて余裕で丸飲みできるサイズだ。
このままじゃ、やばい。
「第五 杜門……!」
もう一つ、『門』を開ける……っ!
『だめですマスター死んでしまいます!』
ジェイド五月蝿い。ほんとにあと少しなんだ。ここで退いたら、ゲームオーバー。だったら限界を超えるしかないだろう。
歯を食いしばれ。命を燃やせ!
ここでやんなきゃ、死んでも死にきれねえっ!
「……開!!!」
吠える。
リミッターを外したことで、魔力が蘇る。それと同時に、口から血が溢れてきた。
不快な感覚を無視して眼前の竜を睨み付ける。
視界がモノクロになり、竜の動きがスローになる。命の瀬戸際、極限の集中状態。
魔力を捻り出す。目の前の敵を倒す為に。
目には目を、歯には歯を。そして、竜には竜を。
「滅竜奥義……!」
炎を纏う。雷を纏う。竜の鱗を砕き、竜の肝を潰し、竜の魂を狩りとる魔法。この技に、今の俺のありったけを!!
「 紅 蓮 爆 雷 刃 !! 」
轟音が響く。荒れ狂う炎が竜の牙を砕き、迸る雷が周りの生物諸共に竜の頭を消し飛ばす。
これで、邪魔物はほとんど倒した。
『マスター!!』
それでもまだ触手たちが生えてくる。
俺一人じゃ、ここまでなのか。そう思ってしまった時。
『チェーンバインド!』
どこからともなく飛んできたバインドが触手達を捕らえる。
軋む体を動かして出所を見ると、二人の魔導師が居た。
高町が言ってたユーノ達が合流したようだ。遅すぎるぜ。
『100%』
そしてチャージ完了を告げるレイジングハートの声。
「エクセリオンバスター……!」
護りきったぞこんちくしょうめ。
「ブレイクッ! シュート!!」
桜色の光が、爆発した。
光が収まると、黒いモヤモヤみたいなのが海の上に集まっていた。どうだ? これでダメだったら流石に泣くよ?
「フェイト!」
ユーノと一緒に合流したケモミミ娘の嬉しそうな声が聞こえた。視線の先には黒衣に身を包んだ金髪の魔導師が。あの娘がリンディさんが言ってたフェイト・テスタロッサって子か。
あの娘の武器かっけえな。強そう。なんだあれ、エクスカリバー?
「こういち君、大丈夫!?」
高町がこっちに飛んできた。かなり心配そうな顔をしている。ユーノ達は高町を怪訝そうに見て、更に俺を見て、目を丸くした。
今の俺の状態は目が充血し、外套の隙間から血が零れているような感じ。マスクと外套のおかげでそこまでひどくは見えないはず。
「ふっ。大丈夫だ。問題はなごぶふぅ……っ!」
血を吹き出す。つもりがマスクの所為でできない。マスクの隙間から血が溢れてくる。気持ち悪っ。
「こ、こういち君!? ユーノ君治療!」
「う、うん!」
「うっわーすごい血」
「えっと、この人、誰?」
かおす。わたわたしてると、エイミィさんから念話が届いた。
『皆、あの黒い淀みから暴走が始まるから、近づいちゃ駄目だよ!』
ふむふむ成程。振りですかな?
『あと、晃一君は動いちゃ駄目、大人しくしてて!』
エイミィさんから俺にだけ追加のお達し。動くことすら禁止されたんですが。
様子を見ていると、突如、光が灯った。
突然のことに一同、目を覆う。目を覆うだけで腕に激痛がッ……!
光の収束した場所には、魔法陣。そしてやがみんと守護騎士たちが居た。
「ヴィータちゃん!」
「シグナム!」
名前を呼ぶ高町にテスタロッサ。あれ? あなたたち守護騎士と知り合いだったのね。
守護騎士たちの中心に立つ、バリアジャケットかな? を着たやがみんが杖を高く掲げた。
「夜天の光よ、我が手に集え。リインフォース、セットアップ!!」
掛け声と共に、やがみんの姿が変わる。髪の色が茶色から白に、瞳の色が青くなった。雰囲気変わるなあ。
「……おかえり、皆」
やがみんが言う。その言葉に涙を浮かべてヴィータがやがみんに飛び込んだ。泣きじゃくるヴィータ。
感動の一幕。俺たちはやがみんの方へ近寄った。
「なのはちゃんにフェイトちゃん、こういち君も、ごめんなぁ。うちの子たちが迷惑かけて」
やがみんが謝ってきた。それに対し平気だと答える二人。と、そこで。
「すまない、水を差してしまうんだが。時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」
肩に棘をつけた真っ黒なバリアジャケットの魔導士が飛んできた。ん? クロノでハラオウンってことは。
「もしかしてくろすけ?」
「話は聞いてきたが、君がリーゼ達の教え子か。言ってた通り随分と無茶したみたいじゃないか。あとくろすけ言うな」
執務官試験受かったんだねえ。良かったじゃないか。……ん?
「話は聞いてきた? 別件ってリーゼ達に会ってきたのか」
クロノがしまった、という顔をした。図星か。てか知られちゃ不味いことだった?
ん~? この状況で、リーゼ達に会ってきたのが知られちゃ不味い、ね。
…………………………………………。
「おk把握」
「っ!? まさか、分かったのか!?」
「まあ、大体は。前々から考えてたことではあったんだよ」
バツの悪そうな顔をするクロスケ。
「ま、その話はあとで、だろ?」
詳しい事情なんかは知らんけどね。察しはつくだろ。
「……ああ、そうだな」
作戦会議が始まった。俺はもうほとんど動けないのでいらない子扱い。会議にも参加しない。
そうして決まった作戦がこちら。
1,自動防御プログラムの四層バリアを開幕ぶっぱで破壊
2,AAAクラスの一斉砲撃でプログラムのコアが出るまで抉る
3,コアを宇宙空間まで転送。アースラの波動砲アルカンシェルで宇宙の塵に
実際には塵も残らないらしい。この作戦えぐくね?
「あ、そうやシャマル」
「はい、治療ですね」
阿吽の呼吸。シャマルが魔法を唱えた。俺と高町、テスタロッサが癒しの光に包まれる。
あ^~
『ちょ、晃一君!? どうしてこんなに酷い怪我で意識保ってられるんですか!?』
シャマルが驚きの声を挙げた。念話だけど。え、そんな酷いの? 痛みには結構耐性あるからよくわかんないなあ。念話で言ってきたのはやがみんに心配かけない為だろうか。
『大体過去五本の指に入るくらいの怪我ですね』
ジェイドが言う。そう言われるとそうかもね。
「一番じゃないんですね……」
シャマルがなんとも言えない顔をしている。どうしたのか聞くと、絶対この戦いの後は治療に専念して下さいと言われた。え~。
「来るぞ!!」
クロノが叫んだ。皆が身構える。
「あれが、闇の書の、闇」
やがみんが呟く。
いつの間にかシリアスに。暴走が始まった。といっても俺は見学のみである。この部外者感。寂しい。
ヴィータ、高町、シグナム、テスタロッサがそれぞれ大技を放つ。すっげー威力。俺は八門遁甲無しであの出力は無理だから羨ましいなあ。
一枚一枚、自動防御プログラムのバリアを砕いていく。
そうしてバリアが消え、自動防御プログラム本体が剥き出しになった。
今度は砲撃。高町、テスタロッサ、やがみんの三人による一斉砲撃である。
「スターライト……」
「プラズマザンバー……」
「ラグナロク……」
『ブレイカー!!!』
……町の1つは余裕で消し飛ばせるね、こりゃ。
「コア、捕捉しました!!」
シャマルがコアを見つけた。あとは宇宙に転送するのみ。
『転送準備!』
シャマル、ユーノ、アルフの三人が転送用の魔方陣を展開する。
だが、
「っち! こいつ!」
クロノが舌打ちした。抉られた部分が再生し、転移の邪魔をしてくる。
「……ジェイド」
『……魔力ほとんど残ってないんですよ?』
「明日の分も、捻り出す」
『馬鹿ですか』
いい加減、あの再生能力うぜえ。
俺の周りに七つの、七色の光が現れる。意識が遠退くが気合で耐える。ジェイドを向ける。ターゲットはプログラムのコア。
霊符――。
「 夢 想 封 印 ‼ 」
虹色の光がコアに向かって飛んでいく。
着弾し、再生が一瞬だが、止まった。
「今だ!!」
叫ぶ。
『転送!!』
シャマルたちがコアを転送した。
『転送を確認!』
『アルカンシェル、発射!!』
エイミィさんからアースラの方の様子が伝えられる。
空を見ると、一瞬、星が光ったように見えた。
静寂。皆がエイミィさんからの連絡を待っている。
そしてついに、
『自動防御プログラム、反応ロスト! ……皆、お疲れさま!!』
戦いが、終わった。
ザフィーラェ・・・・
次回でA’s編は終了予定です。