魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

12 / 53
前回より長くなりました。

ここだけ見ると主人公強そうに見えます。


12話 命を賭ける

「第四 傷門 開 !!」

 

 瞬間、俺のリンカーコアから魔力が溢れ出してくる。

 

 説明しよう! 今俺が発動したのは、ガイ先生を参考にした奥義、八門遁甲である。本来は体内にある八つの『門』を開けることで限界を超えた身体能力を手に入れるものだ。俺の場合、リンカーコアに直接干渉し、リンカーコアのリミッターを外す形となっている。八つの『門』が全てリンカーコアに集中した状態と言えば良いだろうか。

 

 一時的にだが魔力量が跳ね上がり、身体強化の効果も大きく上昇するので、通常ではできない技もできるようになる。

 

 ただ、限界を超えたリンカーコアの使用なので、負担も大きい。『死門』まで開いたら、リンカーコアが消しとんで命に関わること間違い無しだ。

 

 それに身体強化の使いすぎによる肉体への反動も半端無い。悲しいことにデメリットはほぼ完璧に再現してしまった。

 

 だが、これでそれなりには戦える。

 

 ジェイドから出した魔力刃を溢れ出てくる化け物達に向ける。

 

「……いくぜ、バケモン共」

 

 まずは。

 

 

 

 

 

『深弾幕結界 -夢幻泡影-』

 

 開幕ぶっぱは基本でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 リンディは画面に映るその光景に、圧倒されていた。

 

 色とりどりの、数えきれない数の魔力弾が敵を囲う。ある程度の規則性はあるようで、円を描くように魔力弾が生まれ、避ける隙間も無く襲いかかる。

 

「これはっ……! 魔力測定、推定AAAランクです!」

 

「なんですって……?」

 

 エイミィが出した測定結果に思わず呟くリンディ。

 

 リーゼ達から聞いていた古夜晃一の魔力量はBだったはず。この出力はおかしい。

 

 だが、この魔力弾の数を見れば納得せざるを得ない。一つ一つの威力はそこまで高くは無いようだが、全て集まれば、ひょっとすると、なのはのスターライトブレイカーに匹敵するのではないか。

 

 急に魔力が上昇した。彼が何かしたのだろうか。

 

 古夜の撃ち出す魔力弾は、まるで結界のように、隙間無く相手を包囲する。夜の空で舞う光の球たちは、どこか、幻想的であった。

 

「綺麗……」

 

 呟いたのは誰だったか。あるいは自分だったかもしれない。

 

 戦いは続く。

 

 

 

 

 

 

 

 流石ゆかりん弾幕。あの触手ども大分減らせたよ。まあ調子に乗っていきなり魔力使いすぎた感は否めないけどね!

 

 今度はぶっとい蛇みたいなのが出てくる。サイズ的にはもはや龍だ。刺々しい鱗を生やしてこっちに突進してくる。

 

『二幻刀』

 

 魔力刃を出す。より魔力を圧縮したので、こっちの切れ味もさっきとは段違いとなっている。

 

 俺は両手の魔力刃を逆手に持つ。

 

 小太刀二刀流――。

 

「 回転剣舞 六連!! 」

 

 龍もどきを切り裂く。自分よりはるかに大きい化物を、俺は一瞬で細切れにした。

 

 休んでる暇はない、復活した触手たちが俺を覆い、動きを封じてくる。囲まれ、逃げ場が無くなってしまった。

 

 だとしても、やることは簡単。全方位を斬るのみ。

 

 魔力刃をもう一つ。今度は、口に咥える。

 

 三刀流――。

 

「 竜巻き!! 」

 

 全身を廻し、全方位に斬撃を飛ばす。絡みつこうとしていた触手を全て斬り飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

 胸に激痛が走った。魔力の無茶な使用にリンカーコアが悲鳴をあげている。

 

 痛みで止まってはいられない。

 

 触手だけじゃなく獣も生まれてきた。今度の狙いは俺じゃない。高町だ。砲撃のチャージの為動けないので、無防備に近くなってしまっている。

 

 高町が目を見開いている。巨大な獣が飛びかかり、牙を剥く。

 

「ぉおっ!」

 

 すかさず俺は高町の前に跳び出し、魔力刃で牙を受け止めた。俺の後ろにプロテクションを展開し、それを支えにして踏ん張る。

 

「こ、こういち君!」

 

 何でお前が俺の名前知って……そういや、やがみんが言っちゃってたな。

 

「いいから、お前は集中しろ!!」

 

 高町を怒鳴り付け、獣の牙を押し返す。身体強化の掛けすぎで、骨が嫌な音を立てた。それを無視して獣の懐に潜り込む。

 

 斬る、斬る、斬る。

 

 もっとだ、もっと速く!

 

「スターバーストォッ! ストリィィィム!!」

 

 両手の魔力刃を輝かせ、16連撃を叩き込む。獣の巨体が吹っ飛び、霧散した。

 

『90%』

 

 レイジングハートの声が聞こえた。あと少しだ。

 

 そこで、

 

「がぁっ……!?」

 

『マスター!!』

 

 限界がきた。血が込み上げてくる。視界が真っ赤に染まる。手足の骨にはヒビが、ひどいところは折れている。内蔵にもダメージがいってるだろう。もうこれ以上は命に関わる。

 

 だが。

 

「……っ!」

 

 高町が息を飲むのがわかった。

 

 目の前に現れたのは、竜の頭。召喚魔法の類いだろうか。さっきまでの獣たちが可愛く見える。頭しか出てないようだが俺達なんて余裕で丸飲みできるサイズだ。

 

 このままじゃ、やばい。

 

「第五 杜門……!」

 

 もう一つ、『門』を開ける……っ!

 

『だめですマスター死んでしまいます!』

 

 ジェイド五月蝿い。ほんとにあと少しなんだ。ここで退いたら、ゲームオーバー。だったら限界を超えるしかないだろう。

 

 歯を食いしばれ。命を燃やせ!

 

 ここでやんなきゃ、死んでも死にきれねえっ!

 

「……開!!!」

 

 吠える。

 

 リミッターを外したことで、魔力が蘇る。それと同時に、口から血が溢れてきた。

 

 不快な感覚を無視して眼前の竜を睨み付ける。

 

 視界がモノクロになり、竜の動きがスローになる。命の瀬戸際、極限の集中状態。

 

 魔力を捻り出す。目の前の敵を倒す為に。

 

 目には目を、歯には歯を。そして、竜には竜を。

 

「滅竜奥義……!」

 

 炎を纏う。雷を纏う。竜の鱗を砕き、竜の肝を潰し、竜の魂を狩りとる魔法。この技に、今の俺のありったけを!!

 

「 紅 蓮 爆 雷 刃 !! 」

 

 轟音が響く。荒れ狂う炎が竜の牙を砕き、迸る雷が周りの生物諸共に竜の頭を消し飛ばす。

 

 これで、邪魔物はほとんど倒した。

 

『マスター!!』

 

 それでもまだ触手たちが生えてくる。

 

 俺一人じゃ、ここまでなのか。そう思ってしまった時。

 

 

 

 

 

『チェーンバインド!』

 

 どこからともなく飛んできたバインドが触手達を捕らえる。

 

 軋む体を動かして出所を見ると、二人の魔導師が居た。

 

 高町が言ってたユーノ達が合流したようだ。遅すぎるぜ。

 

『100%』

 

 そしてチャージ完了を告げるレイジングハートの声。

 

「エクセリオンバスター……!」

 

護りきったぞこんちくしょうめ。

 

「ブレイクッ! シュート!!」

 

 桜色の光が、爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 光が収まると、黒いモヤモヤみたいなのが海の上に集まっていた。どうだ? これでダメだったら流石に泣くよ?

 

「フェイト!」

 

 ユーノと一緒に合流したケモミミ娘の嬉しそうな声が聞こえた。視線の先には黒衣に身を包んだ金髪の魔導師が。あの娘がリンディさんが言ってたフェイト・テスタロッサって子か。

 

 あの娘の武器かっけえな。強そう。なんだあれ、エクスカリバー?

 

「こういち君、大丈夫!?」

 

 高町がこっちに飛んできた。かなり心配そうな顔をしている。ユーノ達は高町を怪訝そうに見て、更に俺を見て、目を丸くした。

 

 今の俺の状態は目が充血し、外套の隙間から血が零れているような感じ。マスクと外套のおかげでそこまでひどくは見えないはず。

 

「ふっ。大丈夫だ。問題はなごぶふぅ……っ!」

 

 血を吹き出す。つもりがマスクの所為でできない。マスクの隙間から血が溢れてくる。気持ち悪っ。

 

「こ、こういち君!? ユーノ君治療!」

 

「う、うん!」

 

「うっわーすごい血」

 

「えっと、この人、誰?」

 

 かおす。わたわたしてると、エイミィさんから念話が届いた。

 

『皆、あの黒い淀みから暴走が始まるから、近づいちゃ駄目だよ!』

 

 ふむふむ成程。振りですかな?

 

『あと、晃一君は動いちゃ駄目、大人しくしてて!』

 

 エイミィさんから俺にだけ追加のお達し。動くことすら禁止されたんですが。

 

 

 

 様子を見ていると、突如、光が灯った。

 

 突然のことに一同、目を覆う。目を覆うだけで腕に激痛がッ……!

 

 光の収束した場所には、魔法陣。そしてやがみんと守護騎士たちが居た。

 

「ヴィータちゃん!」

 

「シグナム!」

 

 名前を呼ぶ高町にテスタロッサ。あれ? あなたたち守護騎士と知り合いだったのね。

 

 守護騎士たちの中心に立つ、バリアジャケットかな? を着たやがみんが杖を高く掲げた。

 

「夜天の光よ、我が手に集え。リインフォース、セットアップ!!」

 

 掛け声と共に、やがみんの姿が変わる。髪の色が茶色から白に、瞳の色が青くなった。雰囲気変わるなあ。

 

「……おかえり、皆」

 

 やがみんが言う。その言葉に涙を浮かべてヴィータがやがみんに飛び込んだ。泣きじゃくるヴィータ。

 

 感動の一幕。俺たちはやがみんの方へ近寄った。

 

「なのはちゃんにフェイトちゃん、こういち君も、ごめんなぁ。うちの子たちが迷惑かけて」

 

 やがみんが謝ってきた。それに対し平気だと答える二人。と、そこで。

 

「すまない、水を差してしまうんだが。時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」

 

 肩に棘をつけた真っ黒なバリアジャケットの魔導士が飛んできた。ん? クロノでハラオウンってことは。

 

「もしかしてくろすけ?」

 

「話は聞いてきたが、君がリーゼ達の教え子か。言ってた通り随分と無茶したみたいじゃないか。あとくろすけ言うな」

 

 執務官試験受かったんだねえ。良かったじゃないか。……ん?

 

「話は聞いてきた? 別件ってリーゼ達に会ってきたのか」

 

 クロノがしまった、という顔をした。図星か。てか知られちゃ不味いことだった?

 

 ん~? この状況で、リーゼ達に会ってきたのが知られちゃ不味い、ね。

 

 …………………………………………。

 

「おk把握」

 

「っ!? まさか、分かったのか!?」

 

「まあ、大体は。前々から考えてたことではあったんだよ」

 

 バツの悪そうな顔をするクロスケ。

 

「ま、その話はあとで、だろ?」

 

 詳しい事情なんかは知らんけどね。察しはつくだろ。

 

「……ああ、そうだな」

 

 作戦会議が始まった。俺はもうほとんど動けないのでいらない子扱い。会議にも参加しない。

 

 そうして決まった作戦がこちら。

 

 1,自動防御プログラムの四層バリアを開幕ぶっぱで破壊

 

 2,AAAクラスの一斉砲撃でプログラムのコアが出るまで抉る

 

 3,コアを宇宙空間まで転送。アースラの波動砲アルカンシェルで宇宙の塵に

 

 実際には塵も残らないらしい。この作戦えぐくね?

 

「あ、そうやシャマル」

 

「はい、治療ですね」

 

 阿吽の呼吸。シャマルが魔法を唱えた。俺と高町、テスタロッサが癒しの光に包まれる。

 

 あ^~

 

『ちょ、晃一君!? どうしてこんなに酷い怪我で意識保ってられるんですか!?』

 

 シャマルが驚きの声を挙げた。念話だけど。え、そんな酷いの? 痛みには結構耐性あるからよくわかんないなあ。念話で言ってきたのはやがみんに心配かけない為だろうか。

 

『大体過去五本の指に入るくらいの怪我ですね』

 

 ジェイドが言う。そう言われるとそうかもね。

 

「一番じゃないんですね……」

 

 シャマルがなんとも言えない顔をしている。どうしたのか聞くと、絶対この戦いの後は治療に専念して下さいと言われた。え~。

 

「来るぞ!!」

 

 クロノが叫んだ。皆が身構える。

 

「あれが、闇の書の、闇」

 

 やがみんが呟く。

 

 いつの間にかシリアスに。暴走が始まった。といっても俺は見学のみである。この部外者感。寂しい。

 

 ヴィータ、高町、シグナム、テスタロッサがそれぞれ大技を放つ。すっげー威力。俺は八門遁甲無しであの出力は無理だから羨ましいなあ。

 

 一枚一枚、自動防御プログラムのバリアを砕いていく。

 

 そうしてバリアが消え、自動防御プログラム本体が剥き出しになった。

 

 今度は砲撃。高町、テスタロッサ、やがみんの三人による一斉砲撃である。

 

「スターライト……」

 

「プラズマザンバー……」

 

「ラグナロク……」

 

 

 

『ブレイカー!!!』

 

 

 

 ……町の1つは余裕で消し飛ばせるね、こりゃ。

 

「コア、捕捉しました!!」

 

 シャマルがコアを見つけた。あとは宇宙に転送するのみ。

 

『転送準備!』

 

 シャマル、ユーノ、アルフの三人が転送用の魔方陣を展開する。

 

 だが、

 

「っち! こいつ!」

 

 クロノが舌打ちした。抉られた部分が再生し、転移の邪魔をしてくる。

 

「……ジェイド」

 

『……魔力ほとんど残ってないんですよ?』

 

「明日の分も、捻り出す」

 

『馬鹿ですか』

 

 いい加減、あの再生能力うぜえ。

 

 俺の周りに七つの、七色の光が現れる。意識が遠退くが気合で耐える。ジェイドを向ける。ターゲットはプログラムのコア。

 

 霊符――。

 

 

 

「 夢 想 封 印 ‼ 」

 

 

 

 虹色の光がコアに向かって飛んでいく。

 

 着弾し、再生が一瞬だが、止まった。

 

「今だ!!」

 

 叫ぶ。

 

『転送!!』

 

 シャマルたちがコアを転送した。

 

『転送を確認!』

 

『アルカンシェル、発射!!』

 

 エイミィさんからアースラの方の様子が伝えられる。

 

 空を見ると、一瞬、星が光ったように見えた。

 

 静寂。皆がエイミィさんからの連絡を待っている。

 

 

 

 

 

 そしてついに、

 

『自動防御プログラム、反応ロスト! ……皆、お疲れさま!!』

 

 戦いが、終わった。

 

 




ザフィーラェ・・・・

次回でA’s編は終了予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。