空条承太郎と奇妙な女神の守護者達 作:( ∴)〈名前を入れてください
空条承太郎は友を大切にする。長らく自分の見た目から、その行動から長らくマトモな友人と呼べる者を作る事が出来なかった承太郎にとって彼等は大切な存在であった。
もしも友人を作ればそれをダシにされて人質宜しく不良に攫われ、助ける為に不良をタコ殴りにすれば友人は自分から離れていく。
今の友人達は人質になる事が無い程強く、承太郎と一緒にいてくれる存在そんな彼等に承太郎はどれだけ救われたのか分からない。
「お前のせいでこうなったんだよ!この馬鹿野郎!」
助けた友人からそんな言葉を何度言われたか分からない。だが承太郎はそれでも自分の心に逆らう事は出来ない。筋の通らない事を平然と行う奴ら、そしてその犠牲となる者達。承太郎にとってそれらは許せない事であり、強者が弱者を無理矢理力を持って捩じ伏せる等論外だ。
初めは友達を助けただけだった。不良にカツアゲされている友人を助けそこから不良に絡まれ始めた。彼は不良に自分の大切な者達を傷つけられる訳にはいかないと絡んできた不良全員を恵まれた体格を持って返り討ちにした。最初は自分だけが対象だった。だが彼は強過ぎた、不良が束になっても返り討ちに出来るほど強かった。
だから友達を狙われた。承太郎の弱味である友人を捕まえて人質にする。これならば承太郎に一泡吹かせれると思った不良達はその時承太郎の友人であった同級生を捕まえて人質にした。
確かに効果的であった。承太郎を呼び出し目の前で友人を痛めつけ、承太郎に「これ以上コイツが殴られたくなければお前が殴られろ」と言うと承太郎は顔を般若のようにしながらもそれを受け入れ不良達に殴られるのを認めた。
そして…その結果は最悪な物だった。不良達は承太郎が抵抗せずに殴られている中、調子にのって承太郎の目の前で友人に更に暴行を加えたのだ。約束を破られた承太郎は怒りのままに暴れ不良をタコ殴りにした。そして友人を開放し謝罪をした瞬間、友人の口からこんな言葉が飛び出してきた。
「お前のせいでこうなったんだろうが!この馬鹿野郎!」と
学生の…それも多感な時期に言われた言葉、それは彼の心に深く刺さった。それから彼は自分から友達を作る事を止めた。友を守ろうとしても守れず傷つけるだけになってしまった承太郎は他人を寄せ付けなくなった。
だが、それでも彼は自分から他人に暴力を振るう事は無かった。彼が拳を振るうのは弱者が虐げられている時と、道理が通っていないような行いをする者達への鉄拳制裁の時だけ
それでも人の噂に囲いは立てられない。何時しか『空条承太郎は札つきの不良で良く暴れる奴』等と言われ始めた。
そして彼が高校生になった時、その環境は少しだが変化した。彼を友人だと言ってくれる少女が現れたのだ。
その少女は何時も1人でいる承太郎に構ってくる。承太郎にとって女は近くでキャーキャー叫んで喧しくて鬱陶しい存在。当然無視を続けた。たが無視をすれどもすれども彼女は彼に話し掛けてくる。
「おはよう!今日も元気そうで何より!」
「…良いか?俺はいわゆる不良って奴だ。そんな俺に関わるんじゃぁない。怪我しても知らねぇぞ」
我慢比べを諦めた承太郎は何時も何時も話し掛けてくる少女にそう一言だけ言ってやる事にした。だが、そう言っても彼女は笑いながら話し掛けてくる。承太郎にとって朗らかに笑いかけてくる異性なんて母親くらいしかいない。だからだろうか、その笑みを見て少し彼女の話を聞こうと思ったのは
「大丈夫!此方には既に一人ヤンキーがいるから1人も2人も変わらないよ!それに人助けをする人に悪い人がいる筈無いし!」
その言葉には確信が持たれており、自分が本当に良い奴だと思ってくれているのが分かった。だが俺はそれを容赦なく突っぱねた。
「……知らねえな」
そう言ってもアイツは俺に毎日話し掛けてくる。そうしていつの日だっただろうか?その状態に変化が訪れるようになった。俺自身がアイツと話すのを嫌じゃないと感じ始めたんだ。そして…まぁなんやかんやあって今の俺達の仲がある。正直、綾瀬には頭が上がらない。アイツのお陰で今の俺があるのだから
俺と友人になってくれた綾瀬香純。本当に久しぶりだった。混じりっけなしの善意ってヤツを感じたのは、俺を不良として見るだけではなくお袋以外に一人の『空条承太郎』として見てくれる奴は存在しないのだと、そう思っていた。そして、そんな自分を友達だと思ってくれている人達がいてくれる。
一緒に馬鹿やったり、笑いあったり出来る友達が俺にまた出来るだなんて思いもしてなかった。その日常が俺にとって心底大切な物だ。無くしたくは無い、そう思っても可笑しく無い筈だ。
彼等と馬鹿をしながら過ごす日々は彼にとって何物にも変える事が出来ない宝物なのだ。
承太郎にとって力無き者を無理矢理捩じ伏せる行為はタブーだと言っても良い。
そしてそれはこの現状でも同じだ。
「たっ…助けて……」
「……」
承太郎の後ろには怯えきった一人の少女、そして目の前には彼の大切な友人の一人である綾瀬香純。暗くなり街灯以外の光が無くなった夜の道の中、3人はいた。現在この街で起きている出来事『諏訪原市連続首切り殺人事件』承太郎は己の心が命ずるままに、自分の街で起きているこの事件を止めようと思い夜の街を徘徊していた。
そして、この状態の綾瀬を見つけたのだ
「綾瀬…テメェ一体何をしようとした。その腕に付いている凶器は一体なんだ?」
「…………」
どんな時でも太陽のように明るい彼女から生気と呼べる物が何一つなくなっており、まるで夢遊病のようにフラフラとしながらゆっくりと承太郎の後ろにいる少女に近付いてくる。承太郎の身体にしがみつき怯える少女。それは承太郎が助けたいと思う強者に虐げられている者であり、目の前の友達が理不尽な暴力を振るう存在だと言うのは誰の目から見ても明らかであろう。
「動くんじゃあないぜ!其処から動いたらぶん殴るぞ!」
「…………」
承太郎の本気の恫喝を聞いても綾瀬は何も答えない、ただその腕に付いている凶器をコチラにユラリと向けるだけだ。
ドドドドドドドドド…両者の間に緊張感が走る。
「どうやら…マジにやる気みたいだな……逃げろ。ここは俺が何とかする」
「たっ…助けて……」
承太郎の言葉が聞こえてないのか少女は承太郎の足に必死にしがみついて動こうとしない。そんな姿を見た承太郎は思わずプッツンと頭にくる
「おいっ!聞いてんのかアマ!テメエはここからさっさと逃げやがれ!」
「こっ…腰が抜けてて動けない……」
空条承太郎は友達を大切にする男だ。そして道理の通らない暴力は絶対に許す事は無い。今綾瀬香純は何時ものような暖かい太陽の笑みを失っており、その姿を見るだけで正気では無い事が分かる。
まるで誰かに操られてでもいないとこれを説明する事が出来ないのだッ!
「(どう見てもアイツは今正気じゃねぇ…何とかしねーと)」
承太郎の心が叫ぶッ!友達を何とかしてでも止めたいと!あの太陽のような笑みを見せてくれた友を助けたいとッ!
「来な!お前のヘッポコ剣道で俺に一撃を入れれると思うんならな!」
足に纏わり付く少女を向こうの茂みに投げ込み、啖呵を吐くと綾瀬が腕に取り付いた凶器を振りかぶりながら承太郎に襲い掛かるッ!ここに空条承太郎、初めての戦いが幕を開けるッ!戦うべき者は大切な友達!綾瀬香純ッ!
亡霊に取り憑かれた心優しき男VS太陽の笑みを失った少女