空条承太郎と奇妙な女神の守護者達   作:( ∴)〈名前を入れてください

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閉話 城 誇り高き男

俺は誰よりも祖国。ドイツを愛していた。その為ならばこの命惜しく無い、誇り高きゲルマン民族として、その叡智の結晶を一身に受けた俺は祖国の為に戦う事を是とした。柱の男達との戦いそれが私を更に強くした。共に戦った戦友『JOJO』はあの戦いから音信不通であり、俺は激戦化していく戦場へと自ら足を運んだ。サイボーグとしての肉体は並みいる敵兵士、敵兵器を打ち倒し破壊し殲滅し。俺という存在が仲間に激励を与えていたと断言出来る、それほどまでに俺は祖国の為に戦った。

 

総統閣下に戦う事を禁じられるまでは

 

「何故なのですか!私はまだまだ戦えます!もっと強く、もっと強靱に!仲間の…この祖国の為に戦えるのです!」

 

「何故私を前線に出して貰えないのですか!教えてくださいッ!総統閣下!」

 

総統閣下は俺にこう仰った。「君が余りにも強過ぎるのがいけないのだ。兵士達は君が倒れれば士気が無くなり、戦線は崩壊する」と。…確かにそんな気がしていた。俺は皆の前線に立ち仲間である同胞に戦う勇気を奮い立たせて欲しいと願い眼前の敵を打ち倒してきた。それはきっと死ぬまで変わらない、そう思ってきた

 

「君は今このナチスで最も大切な存在なのだよ。他の者に代わりがいようとも君だけは、君だけは代わりがいないのだ」

 

「分かってくれ…ルドル・フォン・シュトロハイム君」

 

「総統閣下……」

 

あの時の総統閣下の顔を忘れる事は出来ない。俺がもっと強ければ…俺だけで敵全てを壊滅させる事が出来れば総統閣下にあのような悲しみを背負わせる事は無かったッ!

 

血の涙を流す程悔しかったが命令に従い街から出るのを止めて、私は戦地へ赴く事を止めた。日に日に増える死傷者の数に心を痛めた。俺が前線に出れさえすればと何度心をすり減らしたのか分からない

 

そんな時だ。一人の謎の男が私に話を持ちかけたのは

 

まるで影のような男、そこにいるのかも分からない。今にも壊れそうな雰囲気を出しているが両目に宿る光が男の心が死んでいないと言う事を私に伝えて来る。

 

その男を見た瞬間、俺はコイツがあの柱の男達のような人外の存在だと気付いた

我がドイツにこのような存在がいて良い筈が無い。俺はこの男が何かをする前にここで殺す事を決め腹部にあるバルカン砲を何時でも発射出来るようにした。

 

だが、その考えは男の言葉の前に離散してしまう。

 

「そこまでこの現状に嘆き、苦しむのならば『手にしてはみないか?』この世の全てを凌駕する力を」

 

「何……?」

 

男は自らの事をカールクラフトと名乗り俺に力を与えてやると言ってきた。嘘では無い…直感的に理解した私はその言葉の真意を問い質すも、まるで言葉遊びのような返しかせず俺に選択を迫ってきた

 

この世のすべてを凌駕する力…それは何と甘美な響きだろうか。そんな力があれば我がドイツを完全な勝利に導ける。

同胞がこれ以上血を流さなくても良くなるのだ。なんと素晴らしい事だろうか

 

だが、俺はそれを跳ね除けた、俺の身体は誇り高きゲルマン民族の叡智の結晶。見ず知らずの男に触らせる安い肉体では無いのだ。例えそれが素晴らしい力を手に入れようとも、俺はそれを否定する。

 

「我がナチスの科学力はァァァァァァァアアア世界一ィィィイイイイ!!我が肉体は誇り高きゲルマン民族の叡智の結晶ゥゥゥウウウウ!!貴様のような意味不明な輩が与える力等、こちらから願い下げよォォオオ!!」

 

「必ずしや科学の発達により俺の身体は中国で言われる一騎当千ではなく!一騎無限大数となるのだァァァアアア!」

 

「分かったかァァァッ!怪しい男め!貴様はゲシュタポにでも投獄されて情報をサッサと吐くのだァァッ!!」

 

その言葉と同時に俺は目の前の男をフルパワーで拘束し、俺の見張りをしていた兵士に男をゲシュタポへ連行するように命じた。

 

それから暫くの時が立ち、軍の中で変な噂が立ち始めた。「ラインハルト・ハインドリンヒが何かを企てている」と。ラインハルト…金髪と黄金の瞳を持つ、人体の黄金比とも称される眉目秀麗な男でありゲシュタポの長官である。あの仕事真面目な男がそのような事をする筈が無い。友好を持っていたからこそ分かるがアイツにそんな事をする気は絶対に無い

 

「馬鹿馬鹿しい…そのような事がある訳が無い。あの男がそのような真似を」

 

もしも過去に戻れるのならばこの時の俺を張り倒してやりたい。そしてラインハルトをこの時に殺しておくべきだったのだ。

 

何故ならばこの男は1945年、俺が死んだ2年後に我が同胞が住まうベルリンを地獄の業火に包んだのだから

 

あれは俺が死傷者が日に日に増えこれ以上は耐えられないと無理矢理ドイツを離れスターリングラード戦線に立った時だった。

 

血と硝煙、それも殆ど味方の者が嘆き苦しむ姿を見て俺は最前線へと足を進めた

兵士達は必死に俺を最前線へと立たせる事を拒んだ。だが俺はそれを無視して最前線へと足を踏み込んだ。俺は最前線で戦い、同胞達の流す血と無くす命を減らす為に来たのだから。

 

激戦に次ぐ激戦…そして俺はそこで仲間の撤退を成功させる為にこの身を使い、敵諸共纏めて自爆した。

 

1943年スターリングラード戦線、そこで俺は死にあのカールクラフトと呼ばれる男と契約した。『俺は祖国を守りたい、だから永遠にドイツの同胞の為に戦い続ける』と、そして俺は化け物へと成り下がった。後悔は無かった、死んだ後もドイツの為に戦えるそう考えると不思議と後悔は湧いてこなかった。俺がいなくともドイツを引っ張って行ける男達は沢山いる。ルーデルにラインハルト、お前達がいるならばドイツは未来永劫安泰だと

 

例え、その為ならば人の魂を食べなければ動くとすら儘ならない愚かな存在へと落ちようとも何処も怖くは無かった

 

そして…忘れる事が出来ない。俺が化け物へと堕ち地獄の釜のような場所で、あった男。あうはずが無い。ある訳が無い、お前は俺の分まで総統閣下をお助けしていると、信じていた男が其処にいた。

 

「久しぶりだな我が友シュトロハイム」

 

「ライン…ハルト……何故貴様がここにいるのだ……ここはあの男が言うには死人が、化け物共が集まる場所そんな所に何故いる……?」

 

「まさか…お前はあの男によって無理矢理連れてこられ」

 

俺の言葉を遮りながらラインハルトは話す

 

「違う、それは違うぞ。友よ私は私自身の意思を持って今ここにいる」

 

それからラインハルトは語り始める。己が何時も何かが物足りなかった、そしてそれは俺がゲシュタポに送るように指示したカールクラフトと呼ばれる男によって解消したのだと。そしてあの男によって俺と同じ事をを教授され化け物へと成り下がったのだと

 

「紹介しておこう友よ、私の新たな友人カールだ」

 

「久しくお目に掛かるがこれから宜しく頼むよシュトロハイム殿」

 

目の前の男の笑みを見た瞬間俺の中の何かが弾けた。『怒り』あの時の俺を支配していたのはその感情だけだった

 

「貴様ァァァアアアアッ!良くも我が同胞を…ラインハルトを…我がドイツの柱の一つをォォォオオオッ!!」

 

「喰らえ糞野郎ォォッ!毎分600発発射される腹部バルカン砲ォォォッ!」

 

俺の怒りを込めた弾丸は目の前の糞野郎目掛けて飛んでいった。完璧だ、狙いは外して無い、そう確信出来た。

 

だがその攻撃をラインハルトが黄金の槍を持って全て弾いたのだ。理解をしたくなかった。だがこれで全てを理解した。

 

全ては俺が原因で起きてしまった事なのだと。俺がゲシュタポへ連行するように言わなければ、俺があの場で射殺しておけばこんな事にはならなかったのだ。

 

そして…2年後、あの人生の中で最も最悪な事が起きた

 

「何故だ!止めろ!止めてくれ!何故同胞を殺そうとするッ!?大切な仲間ではないか!」

 

我が祖国を襲った災悪、それは俺がもっとも信頼していた者が起こした者であった。ラインハルトハインドリンヒ…あの糞野郎が言った一言が全ての始まり

 

「同胞を生贄にせよ」

 

「止めろぉぉぉぉぉっ!!」

 

その一声から始まった祖国の蹂躙、殺されていく同胞達、元上司に殺され理解が出来ず死んでいく部下達、無力な者達が悲鳴を上げて死んでいく様

 

素晴らしい建築物の一つ一つが壊され、崩され崩壊していく。街を火焰が包み込む。我がドイツをナチスのマークの形に炎が飲み込んでいく。

 

「よせ!お前達!このような事をお前達がするとは思えん!お前達は操られているのだ!あの男、カールクラフトによって!」

 

俺の声に少し振り返るとそのまま虐殺を続ける者達、そのまま気にせず殺しを続ける者達、俺を悲痛な目で見詰める者達

 

俺は彼等を止めようとした、だがそれは出来ぬ話であった。何故ならばあの男、カールクラフトが私の行動を封じたのだから

 

そうして俺は今この城の中にいる。俺が守れなかった者を、この城の者達を守る為に、不甲斐ない己の罪を拭う為に俺はこの城を守る存在となったのだ

 

これがルドル・フォン・シュトロハイムの全てだ。分かったかねベアトリス君、俺にはもうこの城の者達を守る事しか残っていないのだ。

 

これが今の俺の全てだ

 




シリアス多めなのでご注意

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